THE RAPTURE『ECHOES』(2003)
今年もまぁ例年通り、いろんな新人さんがデビューしてそれなりに話題になったりしました。最近は音楽雑誌、全く買ってないので(まぁ立ち読みする程度ですか)「ROのイチオシ!」とかその辺はイマイチ判らないんですが‥‥こうやってネットをやってると、それなりに話題になるバンドってのは、やっぱり雑誌とかでも騒がれてる存在なんですかね。
ここ数ヶ月、洋楽のニュースサイトの真似事を続けてるけど、暫く疎かった最新の洋楽情報にもちょっとずつ着いて行けるようになってきたんですね、再び。まぁだからといって全部聴いてるかと言われると全然そんなことないわけで。基本的には知ったかぶりはやめて、知らないものは知らない、知ってるものに関してはそれなりのコメントを付けるようにしてます。なんつーか、基本的には「ニュースクリップで、洋楽のお好みテープ(今ならMDかCD-Rか)を作る」ような感覚でページ作ってるんですね。アイドルポップの後にヘヴィロック持ってきて、その後にテクノを繋いで、最後はファンクの大御所、みたいな‥‥ニュースでDJやってるような感覚とでもいいましょうか。ま、それは言い過ぎですけどね。
大体最近話題になる新人バンドの傾向って、どうしてもリバイバル・ロック系が多いじゃないですか。今更「ブリットポップの流れを組むUKギターロック!」とか力説されても、全然説得力がないというか、そんな流れ組まれても‥‥みたいに思っちゃうし。かといって、そういったリバイバル・ロック系の流れにもちょっと食傷気味だし。ダンスの要素を取り入れたバンド? 去年THE MUSICとか出てきたけど、それ以降でいいのってあまりいないし。つうかさ、そういった上に挙げたような要素全部を含んだバンドが出てくれば、一番手っ取り早いんだけどねぇ‥‥
そこでお客さん! 今日紹介するのはこのバンド、THE RAPTURE。今挙げたようなものを全部含んでこのお値段!‥‥っていう深夜の某TVショッピング風な冗談はこの辺にして‥‥
冗談抜きで、このTHE RAPTUREのアルバム「ECHOES」を聴いてると、俺が最初に書いたような「お好みテープを聴いてる」ような錯覚に陥るのね。ブリットポップだったり、ハウスだったり、ファンクだったり、パンクやガレージやグランジだったり、あるいはダブだったり‥‥そういったような要素をアルバムから感じられるのよ。ただこのバンドの場合、ひとつの曲にそういったいろんな要素が詰まってるのではなくて、曲毎に表情を変えていくのよ。ハウス風の "Olio" でダンサブルに始まったかと思えば、そのまま狂気じみたボーカルを聴かせるパンキッシュなファンク "Heaven" に続くし、かと思うとムーディー且つダウナーなバラード "Open Up Your Heart" がフェイドインしてくるし。ある意味「音のおもちゃ箱」なんだけど、意外と統一感はあるかな。打ち込み主体の曲の後にヘンテコなリズムを持ったファンクが続いても、全然違和感なし。それはきっとバンドとしての確たる信念がちゃんと備わってるからなのかもしれないね。
バンド編成もギター/ベース/ドラム/サックスという4ピースで、他のバンドと比べてもやはり風変わり。サックスが加わることで、曲によっては更に狂気度が増してたりするんだよね。管楽器の音って、時に人の神経を本当に逆撫でるからね。官能的だったり、狂ってしまったり。使う人/使い方ひとつでこんなにも表情を変える楽器‥‥エレキギターもそうだけど、本当に凄い楽器だと改めて思うよ。
さてさて。このバンドの場合曲の良さやバラエティ豊かさも確かに特徴だけど、やはりシンガーのルーク・ジェナーによる狂気じみたハイトーン・ボイスが一番の武器かもしれないね。時にトム・ヨーク(RADIOHEAD)のように弱々しく、そして時にロバート・スミス(THE CURE)のように狂ってる。タイプはちょっと違うけど、TALKING HEADS時代のデヴィッド・バーンを思い浮かべちゃうんだよね‥‥ああ、そういえばバンド自体も何となく全盛期のTALKING HEADSを彷彿させるしね(って思ってるの、俺だけ?)。ポスト・パンクからファンク等のダンサブルな方向へと進化していったTALKING HEADSのように、このTHE RAPTUREも多分ガレージロック的な道から一歩踏み出して、ハウスやファンクといったダンサブルな要素を吸収していったのかもしれないし。その結果が "House Of Jealous Lovers" という超名曲を生んだんだろうし‥‥ま、ホントのところは判らないんだけどね。
とにかく面白い存在なのは間違いないです。こういうバンドってきっと「ハイプ」だの「一発屋」だのいって貶されることが多いと思うんですが‥‥サマソニでのライヴも面白そうだったし、是非単独来日を期待したいところ。時代を変えるようなタイプのバンドではないだろうけど、間違いなく記憶に残るバンドだと思います。