THE RASMUS『DARK MATTERS』(2017)
フィンランド出身の4人組バンドTHE RASMUSが2017年10月に発表した、通算9作目のスタジオアルバム。ワールドワイドデビューを果たした『DEAD LETTERS』(2004年)から数えると、5枚目のアルバムということになります。今作『DARK MATTERS』リリース後の昨年11月には実に11年ぶりの来日公演も実現しており、新作同様久しぶりに彼らの名前を耳にしたという日本のリスナーも少なくないかもしれませんね。
かくいう僕も、『DARK MATTERS』のリリースを知ったときに「まだ活動していたんだ!」と思ったくらい。一応アルバムが発売されたら毎回ちゃんと聴いてきましたが、前作『THE RASMUS』(2012年)からもう5年も経っていたんですね。というか、2012年に『THE RASMUS』というアルバムを聴いていた事実すら、遥か彼方のことのように思えて、体感的には10年ぶりくらいのイメージだったことを正直に告白しておきます。
さて、今回のアルバムですが、どこからどう聴いてもTHE RASMUSな1枚。当たり前の話ですが。どういうことかというと、「穏やかでダークでメロウ、そして適度にハード」という彼らのパブリックイメージどおりの内容なのです。
オープニングの「Paradise」を聴くと、もはやHR/HMの範疇では語りきれないバンドに進化したなと思いきや、「Wonderman」あたりではしっかりとヘヴィな側面も見せている。でも、本作の軸になるのは現代のヒットチャートの中心にあるR&Bやクラブミュージック的なアプローチ。それらを彼らなりに解釈し、あくまで味付けとして取り入れることでモダンなカラーを強めることに成功しています。
もともと“そっち側”との親和性の高いスタイルでしたし、久しぶりの新作でこういったアプローチをとったとしても何ら違和感はなく、不思議と「今までもこうだったじゃん」と勘違いしてしまうほど。「Nothing」や「Empire」といった楽曲はもっとも振り切った作風ですが、しっかり聴き込めばメロディそのものはスマッシュヒットを記録した日本デビュー作『DEAD LETTERS』の頃と何も変わってないことに気づかされるはずです。
ただ、彼らのメロディに備わっているダークな要素が、R&Bやヒップホップ的なアプローチを導入することで若干薄らいでいるのも確か。と同時に、その影響により聴きやすさがさらに増しているという事実もあるので、従来のファンからしたら一長一短かもしれません。
アプローチこそHR/HMの範疇からかなり外れていますが、だからこそいろんなところにまで届いてほしい1枚。全10曲で35分程度(ボーナストラック2曲を除く)という短さも非常に現代的で聴きやすいですしね。