カテゴリー「Ratt」の10件の記事

2019年6月15日 (土)

RATT『REACH FOR THE SKY』(1988)

1988年11月にリリースされたRATTの4thアルバム。初期2作(1984年の1st『OUT OF THE CELLAR』、1985年の2nd『INVASION OF YOUR PRIVACY』)と比べ、前作『DANCING UNDERCOVER』(1986年)はセールス的にも半減、チャート的にも過去2作のトップ10入りから大きく落とし最高26位止まり。シングルヒットも「Dance」(全米59位)のみという結果で、シーンがHR/HM中心に回り始めているわりには思うような成績を出せずにいました。

そんな中、バンドは新たな試みとして過去3作を手がけたボー・ヒルから、新たにマイク・ストーン(QUEENJOURNEYWHITESNAKEなど)をプロデューサーに招集。しかし、彼が導入したデジタルレコーディング技術に周りがついていけず、結果としてレーベルがボー・ヒルを招集してレコーディングをサポートさせることに。結果、このアルバムのクレジットには2人の名前が並ぶこととなりました。

また、ボー・ヒルが復帰したことでソングライティング面でも彼の影響が至るところに反映。クレジットを見ると、全10曲中7曲に彼の名前を見つけることができます。結果として、これが吉に出たのではないかと個人的には思っています。

例えば、バンドとしての新境地を切り開いた「Way Cool Jr.」(全米75位)。ブラスセクションを導入したブルージーなこの曲は、間違いなく新たな代表曲になったと思います。ただ、当時はまだ「AEROSMITHみたいなR&R寄りはまだしも、HR/HMバンドがブラスセクションをフィーチャーするってどうなの?」っていう負のイメージが強かった印象もあり、賛否両論だったような。

と同時に、「I Want A Woman」(全米75位)も初期の「Round And Round」に通ずるキャッチーな楽曲だったにも関わらず「ポップすぎる」と批判された記憶も……今聴くとすごくよくできた曲で、全然日和った感ないんですけどね。

オープニングを飾るミドルヘヴィの「City To City」といい、お得意のファストチューン「Chain Reaction」といい、シングルカットしてもおかしくなかったキャッチーな「What's It Gonna Be」や「What I'm After」といい、良い曲はそれなりに多く含まれているのですが、同じくらいインパクトの弱い曲も並んでおり。それによって全体の印象が薄くなってしまっているという、アルバムとしては非常に残念な1枚です。良い曲あるのにね。

ロビン・クロスビー(G)在籍時の5作品中、もっとも“弱い”アルバムかもしれませんが、それでも良い曲は良いので、初期3作や別の意味で“最強”な5thアルバム『DETONATOR』(1990年)を聴いたあとに触れてみてはどうでしょう。

あ、ちなみに本作は前回の最高26位を上回る17位を記録。セールス不振でツアーは短縮されましたが、最終的には売上100万枚を突破していることを付け加えておきます。

 


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2019年3月26日 (火)

RATT『DANCING UNDERCOVER』(1986)

1986年8月(日本では10月)にリリースされたRATT通算3作目のオリジナルアルバム。過去2作同様にボー・ヒル(WINGERWARRANTアリス・クーパーなど)がプロデュースを担当しています。本作からは「Dance」「Body Talk」「Slip Of The Lip」がシングルカットされましたが、ヒットしたのは「Dance」(全米59位)のみ。それも影響してかアルバム自体も最高26位と、過去2作で達成した連続TOP10入りを逃し、セールスも100万枚程度に止まっています。

路線的には過去2作とほとんど一緒。“Ratt 'N' Roll”と呼ばれるミドルテンポの楽曲が中心ですが、そこに「Drive Me Crazy」のようなアップチューンがあったり、「Body Talk」のようなメタリックなファストチューンがあったりと、アルバムとしての緩急はしっかりついている。

また、各楽曲の完成度も過去2作と比べてそこまで劣るとは思えない。事実、シングルカットされた「Dance」や「Body Talk」はシンプルにカッコいいハードロックナンバーだし、特に前者のキャッチーさはそれ以前のシングルヒットにも引けを取らないと思うのです。シングル曲のないB面(M-6以降)も悪くないし、ラストの「Enough Is Enough」も新鮮さが感じられるんですよね。

では、なぜ大きなヒットに結びつかなかったのでしょう。それは、おそらくスティーヴン・パーシー(Vo)の単調なボーカルスタイルによるものが大きいのではないかと。みんな、そこに気づいてしまったのです。

1986年8月というと、のちにメガヒットを記録するBON JOVIの3rdアルバム『SLIPPERY WHEN WET』がアメリカでリリースされたタイミング。RATTとBON JOVIはほぼ同じタイミングにデビューを果たし、同じペースでアルバムを発表してきましたが、どうしてここまで差が付いてしまったのかと問われたら、結局は楽曲の良さとそれを表現する者の器用さなのかなと。ジョン・ボン・ジョヴィも決してテクニカルなシンガーではありませんが、スティーヴンと比べたら曲ごとに色を変えることができる人。バラードも“味”で聴かせられてしまうシンガーなのです。

ところが、スティーヴンには繊細なラブソングもキャッチーなパワーバラードも歌えない。いや、歌えるんでしょうけど、リスナーが求めるものにはならない。実はこのへんがネックになり、RATTはこのアルバム以降迷走期に突入することになるわけです。皮肉な話です。

RATTというバンドを軸にして考えれば良作なのに、外側で拡大し始めたシーンからみたら「いつも同じで単調」とみなされてしまう。つくづく不幸なバンドだと思います。



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2018年6月14日 (木)

RATT『INVASION OF YOUR PRIVACY』(1985)

1985年6月(日本では7月)に発表された、RATT通算2枚目のスタジオフルアルバム。メジャーデビューアルバム『OUT OF THE CELLAR』(1984年)は折からのLAメタルブームに見事に乗っかり、全米7位まで上昇。トータルで300万枚を超えるセールスを記録したほか、「Round And Round」の全米12位を筆頭に、「Wanted Man」(全米87位)、「Back For More」(全米ロックチャート27位)といったヒットシングルも生まれました。

前作から1年4ヶ月という短いスパンで制作された今作は、引き続きボー・ヒル(WINGERKIXアリス・クーパーなど)がプロデュースを担当。基本的には前作の延長線上にある作風で、前作『OUT OF THE CELLAR』を気に入った人ならスッと入っていける1枚ではないかと思います。

本作はシングルカットされた「Lay It Down」(全米40位)と「You're In Love」(全米89位)の印象が特に強く、それ以外の8曲との間に差があるようなイメージもあります。実際、本当にこの2曲は突出した完成度だと思いますが、それ以外にも良い曲はあるんですよ? 例えばスティーヴン・パーシー(Vo)が単独で書いた「Never us Love」とか、今は亡きロビン・クロスビー(G)とスティーヴンの共作による「Give It All」、RATT流ヘヴィバラード「Closer To My Heart」、ホアン・クルーシェ(B)単独ライティングによる「What You Give Is What You Get」とか、いかにも“らしい”曲満載ですし。

それでも本作が前作と比べて「インパクトが弱い」などと言われてしまう理由は、楽曲のバラエティの幅にあるのかなと思うわけです。例えば、全体的に楽曲のテンポ感が非常に似通っている。「You're In Love」タイプの楽曲がもっともBPMが速いもので、それ以外はミドルテンポ、もしくはもうちょっとBPMの落ちるミドルヘヴィの楽曲ばかり。前作における「The Morning After」みたいな疾走系のハードロックチューンが皆無なため、どうしてもアルバムとしての起伏に欠ける。決してメロウとは言い難いスティーヴンの歌唱スタイルもあって、聴く人によっては退屈と感じてしまうかもしれない。それが本作最大の欠点なのかなと。

ただ、そういった欠点もRATTというバンドにおける魅力のひとつと言えなくもないわけで、このようなミドルテンポの楽曲を指して“Ratt & Roll”なんて呼ぶ声もあったりします。そういう点においては、彼らが個性を確立した1枚と言えるでしょう。

初期3作の中ではもっとも評価が低いかもしれませんが(個人的には1st>3rd>2ndなので)、これはこれで嫌いになれない。フックになるギターリフや節回しも、聴けば聴くほどクセになるし。そのへんを受け入れられるか否かで、本作に対する評価はだいぶ変わりそうな気がします。



▼RATT『INVASION OF YOUR PRIVACY』
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2017年11月16日 (木)

JON BON JOVI『BLAZE OF GLORY』(1990)

1990年8月にリリースされた、ジョン・ボン・ジョヴィBON JOVI)初のソロアルバム。本作は当時公開されたアメリカ映画『YOUNG GUNS II』(邦題『ヤングガン2』)にインスパイアされて制作したもの。当初、映画サイドはBON JOVIの「Wanted Dead Or Alive」を劇中で使用したいと申し出たのですが、これに対してジョンは新曲を多数用意し、このうち「Blaze Of Glory」と「Billy Get Your Guns」のみが劇中で使用されることになりました。

海外盤ジャケットを観ておわかりのとおり、本作はアルバムを通して『YOUNG GUNS II』の世界観が描かれており、先の「Wanted Dead Or Alive」や『NEW JERSEY』(1988年)で表現してきた“カウボーイソング”が一気に開花しております。

そもそもBON JOVIの楽曲使用を申請されたのに、なぜジョンのソロだったのかと申しますと、この時期BON JOVIは2年近くにわたるワールドツアーを終えたばかりで、バンドとしての動きが一切ないタイミング。ぶっちゃけ、バンド内の状況も決して良好とは言い難いものであり、それもあってジョンはソロという“もうひとつの手段”を試してみたんでしょうね。

なもんで、楽曲自体はすべてジョンひとりで書かれたもの。メロディセンスはさすがですが、ちょっとシンプルかつコンパクトなものが多いかな。そういった楽曲をプロデューサーのダニー・コーチマーや、ケニー・アロノフ(Dr)、ランディ・ジャクソン(B)、ジェフ・ベック(G)といった名手たちと色付けしていくのですが、BON JOVIのような高性能ハードロック色皆無の、完全にレイドバックしたカントリー寄りのアメリカンロックが完成するわけです。もうこれ、完全にジョンが憧れるブルース・スプリングスティーンですね。もしくはジョン・メレンキャンプとか、ああいった“枯れた”ロックを奏でる人たち。納得です。

ゲストも豪華でキース・リチャーズのバンドでおなじみのワディ・ワクテル(G)やRATTのロビン・クロスビー(G)をはじめ、エルトン・ジョン(Piano, Vo)、リトル・リチャード(Piano, Vo)などなど。エルトンは「Dyin' Ain't Much Of A Livin'」でジョンとハモっているし(聴けばすぐにわかりますよね)、リトル・リチャードは「You Really Got Me Now」でジョンとデュエットしており、ホンイキの歌声を聴かせてくれてます。

中でも、ジェフ・ベックの存在感が別格すぎ。ミック・ジャガーのソロアルバムでもかなり好き放題弾いてましたが、本作でもやってくれてます。この人、ロッド・スチュワートといい、やっぱり存在感のあるフロントマンと一緒に何か作ると、自分のソロとはまた違った個性を発揮するんですよね。本当に面白い存在です。

あと、久しぶりに聴いて思ったのですが、「Santa Fe」って「Always」以降のBON JOVIピアノバラードに通ずる世界観がすでに存在するんですよね。思えば「Always」もジョン単独で書いた曲だし、改めて腑に落ちるものがありました。

アルバムは全米3位で200万枚以上のセールス、シングル「Blaze Of Glory」は全米1位を記録し、今でもBON JOVIのライブで披露される機会が多い1曲になりました。この成功があったから、数年後の「Always」(1994年)そして『THESE DAYS』(1995年)につながっていくわけです。




▼JON BON JOVI『BLAZE OF GLORY』
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2017年11月 5日 (日)

RATT『OUT OF THE CELLAR』(1984)

1984年春に発表された、RATTの記念すべきメジャーデビューアルバム。デビューと同時に本作からのシングル「Round And Round」が全米12位のヒット曲となり、アルバムも全米7位まで上昇、300万枚以上を売り上げる最大のヒット作となりました。

1983年にQUIET RIOTDEF LEPPARDがチャート上でメガヒットを遂げ、それに続くようにMOTLEY CRUEなどアメリカ産の新世代HR/HMバンドが次々とセールス的に成功を収めるという好状況の中、鳴り物入りでデビューを果たしたのがRATTとBON JOVIでした。2組はほぼ同時期にデビューを飾り、RATTが早くから成功を収めたことでBON JOVIは一歩遅れをとる形となってしまいます(ま、2年後には一気に逆転してしまうんですけどね)。

昨日のQUIET RIOTの項でも触れましたが、この時期のバンドがヒットするのに必要不可欠だったのが、MTVでの露出。つまり、それまでラジオヒットを重要視していた制作サイドは「いかに人の目を惹きつけるミュージックビデオを制作するか」に注力するようになるわけです。キャッチーな曲&音作りという点においてはラジオが主戦場だった時代となんら変わらないのですが、そこにヴィジュアルの強みが加わることは、派手で個性的な存在が多かったL.A.出身のハードロックバンド=L.A.メタルバンドにとっては好都合だったわけですね。

「Round And Round」のMVを観ればわかるように、RATTはヴィジュアル的にも“派手すぎず、ケバすぎず”と非常に親しみやすいルックスでした。しかもウォーレン・デ・マルティーニ(G)のようなグッドルッキンなメンバーがいたことで、女性人気的にはかなり高かったと記憶しています。

また、サウンドのほうもポップなメロディを持つ楽曲が多いものの、そのサウンドはヘヴィでザクザクしたギターサウンドが主体。ウォーレン&ロビン・クロスビーのリフワーク&ソロプレイは当時のギターキッズにはヨダレものの美味しい要素満載でしたし、ラジオライクなポップナンバー(「Round And Round」「Scene Of The Crime」)、ヘヴィなミディアムナンバー(「Wanted Man」)、ライブ映えする疾走チューン(「She Wants Money」「The Morning After」「I'm Insane」)、アコースティックギターを導入したドラマチックな楽曲(「Back For More」)など楽曲も親しみやすいものばかり。HR/HMマニアはもちろんのこと、そちら側に詳しくないライト層にも存分にアピールする作風は、前年のQUIET RIOTやDEF LEPPARDにも匹敵するものです。

結局彼らは本作を超えるヒット作を生み出すことはできませんでしたが、1984年から1990年にかけて残した5枚のオリジナルアルバムは(賛否あるでしょうけど)僕的にはどれも非常に優れた作品です。



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2017年6月13日 (火)

RATT『DETONATOR』(1990)

RATTが1990年夏に発表した、通算5作目のフルアルバム。スティーヴン・パーシー(Vo)、ロビン・クロスビー(G)、ウォーレン・デ・マルティーニ(G)、フォアン・クルーシェ(B)、ボビー・ブロッツァー(Dr)というデビュー時からの黄金期メンバーによる最後のアルバムになります。

1stアルバム『OUT OF THE CELLAR』(1984年)以降、地味に少しずつセールスを落とし続けていたRATTが、起死回生とばかりに制作したのが本作。「BON JOVIの爆発的ヒットやAEROSMITHの再ブレイクよ再び……」という思いで(かどうかは知りませんが)プロデューサーおよびソングライターとしてデズモンド・チャイルドを迎え、本気でヒット作を生み出そうとします。

RATTといえば、スティーヴンの癖の強いボーカルと、ミッドテンポでグルーヴ感の強い楽曲というイメージがあったかと思います。それがリスナーにとって引っかかりになると同時に、聴き手を限定してしまっていた面もあります。そこで本作では、癖の強かった楽曲をよりストレートでわかりやすくし、ポップでキャチーな歌メロを乗せることでRATT本来の癖を薄めていくのです。

確かにオープニングの「Shame Shame Shame」や「Lovin' You's A Dirty Job」あたりは本来のRATTに近いものの、異常にポップに響くメロディが含まれていたりと、「どこか違う」と感じてしまった古くからのファンも少なくないはず。さらに「One Step Away」みたいな爽やかなポップメタルまで登場するもんだから、「??」となってしまうし、しまいにはバンド史上初のバラード「Givin' Yourself Away」まで飛び出すのですから……そりゃあ反感買いますよね。

チャート的には全米23位と健闘しますが、セールスは前作『REACH FOR THE SKY』(1988年)の約半分となる50万枚止まり。シングルカットされた「Lovin' You's A Dirty Job」「Shame Shame Shame」「Givin' Yourself Away」に至ってはBillboardにチャートインすらしませんでした。

……がしかし。本当にこのアルバム、駄作でしょうか? 確かにRATTらしさは薄められていますし、「One Step Away」や「Givin' Yourself Away」には苦笑してしまいますが、全体を通して聴くとそこまで悪くない、いや、悪くないどころか非常に優れたHRアルバムだと思うんですよ。「Hard Time」や「Top Secret」(初期からあった曲をリアレンジしたもの)といった激しい楽曲もあるし、何よりオープニングの「Shame Shame Shame」のカッコ良さといったら。この曲、個人的RATTベストソングの3本指に入るほど好きな曲です。

ちなみに本作、ロビンが作曲に携わった楽曲は2曲のみ(「All Or Nothing」「Can't Wait On Love」)。前作では10曲中6曲に関わっており、そのへんもとっつきやすさにつながっていると同時に、翌1991年に彼がバンドを脱退する引き金になったんでしょうね。

 


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2017年3月22日 (水)

STEPHEN PEARCY『SMASH』(2017)

5月13、14日に幕張メッセイベントホールで開催が決まった、L.A.メタル界隈のレジェンドたちが一堂に会する屋内フェス『L.A. METAL SUMMIT in TOKYO』。こちらの2日目ヘッドライナーとして出演するのがスティーヴン・パーシー、ウォーレン・デ・マルティーニ、フォアン・クルーシェ、カルロス・カヴァーゾによるRATT。もはやボビー・ブロッツァーのRATTはどこへやら(日本では確実に受け入れられないだろうけどね)。

そんな、あれこれ慌ただしくなり始めたRATT界隈から年始にスティーヴン・パーシーの4thソロアルバム『SMASH』がリリースされました。ソロとしては2008年の『UNDER MY SKIN』以来約9年ぶり、直近のリリースとなると2010年のRATT『INFESTATION』以来約7年ぶり。その間にスティーヴンも59歳になってしまいました……。

さて、アルバムはダークなスローナンバー「I Know I'm Crazy」からスタート。「全然声が出てないじゃん……」な低音ボイスに若干不安になりますが、2曲目「Ten Miles Wide」以降は我々がよく知る“Voice of RATT”を堪能することができます。安心した。

楽曲自体もメロディ、テンポ感含めRATTの延長線上にあるナンバーばかりで、往年の彼を知るHR/HMファンなら間違いなく楽しめる1枚だと思います。また「Shut Down Baby」「What Do Ya Think」「Summers End」みたいなLED ZEPPELIN風ヘヴィブルースも含まれており、同系統の楽曲が多い本作中で程よいアクセントとなっています。

そう、もともとRATTって決して楽曲の幅が広いタイプのバンドではなかったし、スティーヴン自体も幅広く何でも歌えるタイプのシンガーではないので、この金太郎飴的アルバムは聴く人によっては退屈と感じてしまう可能性もゼロではありません。RATTの全盛期を知らない若い子たちがこれを聴いてどう感じるのか、非常に気になるところです。

ちなみにレコーディングに参加しているのは、2005年からスティーヴンのソロバンドでの片腕的存在Erik Ferentions(G)、初期RATTやROUGH CUTTのメンバーだったMatt Thorn(B)、WHITE LIONやザック・ワイルドのPRIDE & GLORYにも在籍した経験を持つGreg D'Angelo(Dr)。ギタープレイからはRATTほどの強い個性は感じませんし、耳に残るフレーズも少ないのですが、楽曲のメロディ自体はクセになるものが多いのも事実。そういう意味では“Voice of RATT”の個性を存分に生かした、“Voice of RATT”のためだけに作られたアルバムと言えるでしょう。スティーヴンの歌を最良の形で楽しむ作品集。個のぶつかり合いを楽しむRATTとは異なる作風ではあるものの、これもまた“もうひとつのRATT”と言えるかもしれませんね。



▼STEPHEN PEARCY『SMASH』
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2017年1月23日 (月)

RATT『INFESTATION』(2010)

バンドにとってボーカルは“顔”みたいなもの。その声が変われば、バンドの顔も変わる。つまり、リードボーカルさえずっと変わらなければ、多少音楽性が変化してもかろうじてそのバンドだと認識してもらえるし、音楽性が一環していてもボーカルがころころ変わればなんとなく違和感を覚えるのです。もちろん、RAINBOWのようにボーカルが変わることで、その音楽性を変化させていく手法を取ったバンドもいるわけですが、ここではギタリスト中心ではなく、あえてボーカルを軸にしたパーマネントなバンドという視点で語っていきたいと思います。

80年代に一世を風靡したRATTは、90年代に入ってすぐに解散。しかし90年代後半にロビン・クロスビー(G)を除く編成で再結成します。のちにロビンが亡くなり、全盛期のラインナップでの復活は叶わぬ夢となりますが、彼らの場合ボーカルのスティーヴン・パーシーとリードギターのウォーレン・デ・マルティーニさえ在籍していればRATTと名乗ってもなんら問題ないと思うのです。だから2000年代に入り、スティーヴンが脱退して元LOVE/HATEのジジー・パールをボーカルに迎えたと知ったときは「さすがにそれは……」と思ったものです。

ところが、2000年代後半に入りスティーヴンがバンドに復帰。彼とウォーレン、ボビー・ブロッツァー(Dr)の80年代ラインナップに元QUIET RIOTのカルロス・カヴァーゾ(G)、元VINCE NEIL BANDのロビー・クレイン(B)という布陣で制作されたのが、2010年に発表された11年ぶりのオリジナルアルバム(通算7枚目)『INFESTATION』です

アルバムからのリードトラック「Best Of Me」が初公開されたとき、そのあまりにも「RATTな音」に驚愕し、「俺たちのRATTが帰ってきた!」と歓喜したのを昨日のことのように覚えています。どれが「RATTの音」なのかと問われると、とても感覚的なものなのですが……ウォーレンのギターリフ、テンポ感、スティーヴンの声が合わされば、それは間違いなく「RATTの音」として成立するんじゃないかと思うのです。それはアルバムオープニングの「Eat Me Alive」にも言えることで、この2曲のみで間違いなく「ああ、あのRATTが帰ってきた」と断言できてしまうのだから不思議なものです。

アルバムは正直、80年代後半の数作よりもRATTらしい作風だったと思います。先に挙げた2曲は歴代のヒットシングルに並ぶ代表曲になりうる完成度ですし、それ以外の曲も聴けば「RATTらしい」と納得できるものばかり。「Last Call」のツインリードも、「Lost Weekend」のリフ〜リードの流れも、すべてが「RATTらしい」。ただ、100%RATTかと問われると……自信がないのも事実。何か物足りなさも感じる。それが何なのか、リリース当時は気づきませんでした。

ここ最近、ボビーが知らないメンバーをかき集めてRATT名義でツアーをしたことに対して、ウォーレンが抗議し、スティーヴン、ウォーレン、カルロス、そして全盛期メンバーのフォアン・クルーシェ(B)の4人がRATTの名曲たちを演奏するツアーを行うことを発表しました。このメンツを見て気づきました……「そうか、フォアンのコーラスだ!」と。アルバムに足りなかった要素はこれだったんです。確かに『INFESTATION』にもそれらしいコーラスが入っているんですが、微妙に違うんですよね。

ボビーの決してうまくはないドラム(ときどきモタるしね)、フォアンの個性的なコーラス、ウォーレンの独特なギターリフ、そしてスティーヴンの唯一無二な歌声。ここにQUIET RIOTで一時代を築いたカルロスのギターワーク&ソングライティングが加わることで、RATTは全盛期にも勝るような作品を作ることができるはずなのに……世の中、うまくいかないものですね。再びRATTがひとつにまとまることを願いつつ、今日はこの7年前のアルバムを聴きたいと思います。



▼RATT『INFESTATION』
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2005年6月16日 (木)

RATT『RATT & ROLL 81-91』(1991)

 懲りずにまたLAメタルについて語りますよ! 今度はRATT!

 所謂LAメタルというムーブメントの中から出てきたバンドの中で‥‥QUIET RIOTを除いて‥‥恐らく一番最初にアメリカでヒットを飛ばしたのが、このRATTだったはず。メジャーデビュー盤『OUT OF THE CELLAR』に収録された "Round And Round" というポップなナンバーがビルボードのシングル・トップ20入りしたのを切っ掛けに、彼等は一躍有名になっていったんだよね。丁度MOTLEY CRUEが『SHOUT AT THE DEVIL』を出した後だったかな‥‥MTVの後押しもあり、デビューしていきなりアリーナツアーとかやってたような記憶が。ここ日本ではほぼ同時期にデビューしたBON JOVIの方が人気を博していたけど、アメリカでは逆の立場で、RATTの前座でBON JOVIがやってたりとかしてね‥‥ま、それから数年で全世界的に立場が逆転しちゃうんだけど。

 RATTはひと癖もふた癖もあるスティーヴン・パーシーのボーカルで好き嫌いがハッキリしちゃうと思うんだけど、意外とメロはポップなものが多くてね。テンポ的にもBPMが80〜110くらいの曲が大半だそうで、そういうミドルテンポの曲を指して「ラットンロール」なんていう造語まで出来た程で。例えばインディー盤に収録された(ベスト盤には収録)代表曲のひとつ "You Think You're Tough"、メジャー1stから "Wanted Man" や "Back For More"(これはインディー盤の焼き直しね)、2ndだと "Lay It Down"、3rdだと "Slip Of The Lip"、4thだと "Way Cool Jr."、そして解散前のラスト作となった5thだと "Lovin' You's A Dirty Job"‥‥こういった曲こそがRATTの魅力という人もいます。勿論それらが最も「らしい」曲調なんだけどね。

 

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2005年3月11日 (金)

2005年にRATTって言われてもねぇ?

ラットの再録ベスト!? その実態は…(CDJournal.com)

 これ、数日前にHMVで見つけてたんだけど。最初てっきり「MICKEY RATT」としての初期音源(つまり「RATT」以前の音源)がCD化されたのかと思ったら、曲目を見て‥‥何で "Lovin' You's A Dirty Job" とか入ってるの!?ってビックリしたわけですよ。で、解説読んで納得という。

 このレーベル、例のHOLLYWOOD ROSE時代のガンズ音源をリリースしたところだそうで。サイトを覗いてみたら、あれよあれよ‥‥LYNCH MOB(元DOKKENのギタリスト、ジョージ・リンチのバンドね)、QUIET RIOT、L.A.GUNS、WHITE LION‥‥何だか既に『終ってる』感が漂ってるんですが‥‥更に当のスティーヴン・パーシーのサイトも覗いてみたんですが‥‥ディスコグラフィーのページ(「MUSIC」をクリック)を見て‥‥MICKEY RATTで小金稼いでるよ、この男‥‥まぁ君が創始者だしね。誰も文句は言わないだろうけどさ‥‥にしても‥‥ARCADEってアルバム4枚も出してたのか! そっちに驚いたよ俺は。セカンドまでは追ってたんだけどね。

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