RCサクセション『Baby a Go Go』(1990)
忌野清志郎や仲井戸麗市が在籍していたことで知られる‥‥なんて書き方は今更な感じですが、要するに'80年代の日本のロックを代表するバンドのひとつ、RCサクセションが'90年秋に発表した、現時点での最新作‥‥というか、事実上のラストアルバムがこの「Baby a Go Go」。バンドはこの後11月に武道館公演を行い、その後それぞれのメンバーのソロ活動が活発になり、自然と無期限活動休止状態に。時々清志郎とチャボがステージ上で共演したこともありましたが、まぁRC復活の噂は上がっては消え、といった感じで現在に至ってます。
RC、というか清志郎が苦手という人、少なくないと思うんですよ。ひとつにあのキャラクター、そしてあの歌い方や歌声が苦手という声。これ、よく判るんです‥‥実は俺も中学~高校の頃って苦手だったから、清志郎が。理由はよく覚えてないんですが、とにかくダメで。中学くらいになるとひと通り日本のロック大御所辺りにも手を出し始めるんですが、どうしてもRCだけは苦手意識が抜けなくて。高校の頃、タイマーズとかの課外活動やソロもひと通り聴いてたんですが‥‥ダメで。
このアルバムが出た頃は‥‥あ、俺浪人してたんだ。東京に出てった最初の年で、友達から借りたんだわ、このアルバム。シングルにもなった"I LIKE YOU"とか"あふれる熱い涙"辺りは何となくいいなぁと思えたんだけど、そんなにハマる程には好きになれず、上記の武道館公演にも誘われたものの断ったんだよなぁ。今思えば、なんて罰当たりなことをしたんだろうなぁ‥‥と悔やんでも悔やみ切れません。
多分、俺がRCや清志郎の受け入れられるようになった切っ掛けは、声云々よりも「歌詞」だったように思います。ある程度年齢や人生経験を重ねていく中で再会したRCや清志郎の「歌」‥‥歌詞であり歌声であり、それら全てを全身で表現する清志郎というシンガーの存在であったり‥‥が理解できるようになった、いや、もの凄く感情移入できるようになったのが大きかったように思います。別にガキだから判らなかったとは思いませんが、こういうのってやっぱりタイミングとかもあると思うし。俺の場合それが20歳を過ぎてからだったってだけでね。
で、このアルバム。俺的には"空がまた暗くなる"の存在が大きいんですよね。この曲と再会したのが実は2~3年前のことで、清志郎のライヴで歌われたこの曲を「何てアルバムに入ってる曲?」と友人に質問した程、俺の中には記憶に残ってないアルバムだったんですよ、「Baby a Go Go」って。ところがそのライヴの後、このアルバムを中古で探して手に入れ、約10年振りくらいに聴き返したら‥‥ヤラレちゃったわけですよ、他の曲にも。上記のシングル曲の歌詞も改めて読むと心に染みるし、チャボの歌声が渋くてカッコイイ"うぐいす"といい、"Rock'n Roll Showはもう終わりだ"での「バンドの終焉」を彷彿させる歌詞や(そして今現在にも通ずるシチュエーションを持ってるんですよね、この曲。非常に興味深い)、ただただ切ない"冬の寒い夜"といい‥‥ホントいいんですわ。
RCって最初にどのアルバム(時代)を聴くかで、第一印象が大きく変わるんですよね。「ドカドカうるさいロックンロールバンド」をイメージして誤ってフォーク時代に手を出してしまうと「‥‥何だよ!(怒」ってなっちゃうだろうし、スタジオテイクはライヴ盤(「RHAPSODY」)と比べると意外と弱く感じてガッカリしたり‥‥等々。ホントはRCの場合はライヴを体験するのが一番だと思うんですよ。ってそのライヴを一度も体験できなかった俺が言うのもアレですが。清志郎は何度も観てるんで、その凄さは判ってるつもりですよ。うん、まずはライヴで体験するべきかもね!
でも、それとは別に‥‥曲が本来持つ良さってのはアルバムでも知ることができるわけで。特にこの「Baby a Go Go」はそれ以前の「ロックンロールだぜ、ベイベー!」っていう凄んだイメージが皆無で、非常にリラックスした「大人の魅力」を堪能できる1枚になってます。
‥‥でもやっぱり、清志郎はあれから13年経った今でも、大人になりきれないんだな、いろんな意味で。ま、そこが良いところでもあって、悪いところでもあるわけだけど。そしてそんな中途半端なところが好きなわけだけどね。
それにしても‥‥32歳目前となった今、"空がまた暗くなる"を聴くと‥‥29歳の時に聴いたのとはまた違った聞こえ方してきますね‥‥
▼RCサクセション『Baby a Go Go』
(amazon:国内盤CD)