IGGY POP『EVERY LOSER』(2023)
2023年1月6日にリリースされたイギー・ポップの19thアルバム。日本盤は同年1月18日発売予定。
前作『FREE』(2019年)から3年4ヶ月ぶりの新作。Atlantic Recordsが新設した傘下レーベル・Gold Tooth Recordsへの移籍第1弾アルバムとなり、プロデューサーにも若手のアンドリュー・ワット(オジー・オズボーン、ポスト・マローン、ジャスティン・ビーバーなど)を迎えるなど心機一転の1枚に仕上がっています。
レコーディングにはアンドリューがギターのベーシックトラックで参加したほか、ダフ・マッケイガン(B/GUNS N' ROSES)&チャド・スミス(Dr/RED HOT CHILI PEPPERS)というオジーの近作でもプレイしたリズム隊やジョシュ・クリングホッファー(G/ex. RED HOT CHILI PEPPERS)、ストーン・ゴッサード(G/PEARL JAM)、デイヴ・ナヴァロ(G/JANE'S ADDICTION)、エリック・エイヴリー(B/JANE'S ADDICTION)、クリス・チェイニー(B/ex. JANE'S ADDICTIONなど)、トラヴィス・バーカー(Dr/BLINK-182)、テイラー・ホーキンス(Dr, Piano/FOO FIGHTERS)といった、これぞ“イギー・ポップ・チルドレン”と言わんばかりの精鋭が顔を揃えています。
近年は生々しいガレージロックと穏やかなジャズ/ブルース的作品をほぼ交互に発表してきたイギー。前作『FREE』が後者寄りの作品だったこともあり、続く今作は再びエネルギッシュなパンクロックが期待されるところですが、その期待を大きく上回る内容に仕上がっています。といっても、全曲パンクロック/ガレージロックで固められているわけではなく、むしろイギーのソロキャリアの原点である『THE IDIOT』(1977年)や『LUST FOR LIFE』(1977年)、80年代半ばに本格的復活を果たした『BLAH-BLAH-BLAH』(1986年)あたり、そして90年代以降のハードロック的なテイスト、さらにはTHE STOOGES時代をも網羅したキャリア総括的な作風。なもんですから、悪いわけがない。
オープニングを飾る「Frenzy」や「Day Rip Off」のようなパブリックイメージどおりのガレージロックで華やかさを演出しつつも、初期のニューウェイヴ的色合いを見せるミディアムチューン「Strung Out Johnny」、低音域でアダルトさを醸し出すバラード「Morning Show」など、多彩さに満ちた内容は聴き手をまったく飽きさせることがありません。かと思えば、ジャズ/ブルース路線を彷彿とさせる1分前後のインタールード「The News For Andy」では、イギーのナレーションのようなボーカルワークも楽しめる。そこから「Neo Punk」という疾走ナンバーに続く構成には、思い切り笑わせてもらいました。最高ったらありゃしない。
この4月には76歳(!)の誕生日を迎えるイギー、なお盛んです。日本公演は2007年のフジロック(THE STOOGESとして出演)以来16年も実現していませんが、この傑作を携えた夏フェス出演に期待したいところです。また「The Passenger」でステージに上がりたいですからね(笑)。
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