自身の音楽人生に於いて『原点的存在といえる重要作品』を紹介していくという企画第四弾は、'80年代後半に登場し、その短い活動期間の間我々に強烈なインパクトを与え続け、'90年代後半には2度に渡る再結成を果たしたものの、残念ながら先頃また解散してしまった、日本が誇るロックンロールバンド、RED WARRIORSが'87年にリリースしたセカンドアルバム、「CASINO DRIVE」を紹介したいと思います。多分自分と同年代の人達なら覚えているでしょう、このバンドを。非常に日本人らしくなく、それでいて最も日本人らしいロケンローバンドを。
バンドの歴史とかはこの際省きますが、このバンドの登場は俺にとってはちょっとした事件だったんですよ。まぁこういう「勘違いしてんじゃねぇの?」的なバンドってのは当時日本には腐るほどいたわけですが、何故か彼等の場合は目に、そして耳に残ったんですよね。歌詞は聴いてるこっちが恥ずかしくなるようなものだったりするのに(所謂洋楽ロケンローにありがちな「SEX, WINE & R&R」的世界観を日本語にそのまましてしまったかのようなもの。ま、それだけじゃないんですけどね、彼等の場合は)、耳障りのいいメロディ‥‥要するにキャッチーだったわけですよ。そして独特なサウンド。これは特にギターのサウンドですけどね。あのギターサウンドはとにかく「???」となったわけでして(レコーディングの際、アンプの表と裏両方にマイクを立て、裏側からの音を高めにミックスする方法らしいんですわ、確か)。ストラトのフロントピックアップの音なんだけど、もっと隠ったような音で、別にエフェクターによるものでもなさそうな、何とも表現し難い音。これには本当にヤラレタ!って思いましたもの、当時。そして最後は、ダイヤモンド☆ユカイのボーカルでしょう。ある種日本人離れした歌唱法といいましょうか。当時の日本人によるこの手のバンドのボーカルって、メタルっぽい高音シャウトに走るか、あるいは線が細くて低音みたいなタイプばかりだったんですね。だから、ユカイの迫力ある歌唱法ってのは俺の中で西城秀樹や世良正則以来の衝撃だったわけで。まぁ要するに、こういう暑苦しいタイプのシンガーが好きなわけですよ、俺。
ファーストアルバム「LESSON 1」というのは、正しくそういった「洋楽ロックの直訳版」的な1枚だったわけですが、それから約8ヶ月後にリリースされたこのセカンドアルバムでは、バンドとしてかなりの飛躍を果たしてるわけですね。例えば楽曲や歌詞。ファーストにもその片鱗はあったのですが、このセカンドではロケンロー一辺倒な作風ではなく、もっとバラエティ豊かな作風になっていて、カズーを用いたちょっとおちゃらけた雰囲気が漂う"OLD FASHIONED AVENUE"、アコースティックギターがメインとなるバラード"MORNING AFTER"、同じくアコギのストロークが印象深いポップな"JOHN"、そして先行シングルとしてもリリースされたゴージャスな"WINE & ROSES"等、とにかく前作のストレートな印象を覆すかのような緩急がついた作風になっています。勿論、前作から引き継いだロケンロー路線も更に線が太くなった印象を受け、バンドのテーマ曲ともいえる"CASINO DRIVE"、マイナーなストレートチューン"I MISS YOU"、ヘヴィーブルーズ"OUTLAW BLUES"、デビュー前からあったファンキーなダンスチューン"MONKEY DANCIN'"、ライヴで栄えるワイルドな"FOOLISH GAMBLER"と、どれも捨てがたい名曲揃い。歌詞においてもそれまでのようなロケンロー的世界観を歌ったものから更に一歩踏み込んだかのような深い内容のものまで、幅が広がったといえるでしょう。個人的には男女の別れを歌った"MORNING AFTER"、そしてユカイが愛するジョン・レノンについてその思いをストレートに歌った"JOHN"の歌詞がその曲調と相俟って、忘れられない名曲として心の中に残ってます。
サウンド的にも前作よりも更に重心が低くなったかのような太くてえげつない音像が印象深く、またスピード感がある疾走チューンが多かったファーストと比べても全体的に曲のテンポが落ちている為、更に思い印象を受けます。が、実際にはそこまでヘヴィというわけではなく、実はポップな作風なんですよね。続くサード「KINGS」と比べると、その差は歴然としてるんじゃないでしょうかね?
バンドとしてはこのアルバムでブレイクしたといっても過言ではなく(実際オリコンのトップ10に入りましたしね)、俺が初めて彼等を生で観たのもこのアルバムリリース前後の「1,000円武道館公演」だったので(チケット代金が1,000円という、前代未聞のライヴを彼等は武道館と西武球場において行っています)、余計に印象深いアルバムになってます。一番好きなアルバムとなると、実は最初の解散前の異色作「SWINGIN' DAZE」だったりするんですが、名曲度の高さ・多さからいえば、間違いなくこの「CASINO DRIVE」に軍配が上がるでしょう。
かのTHE YELLOW MONKEYが最初にメジャー契約する時、「RED'Sがいた会社だから、ここにした」と言わしめた、'80年代の日本コロンビア。実は俺も同じようなことを考えてたことがあって、「メジャーからロックンロールのレコードを出すなら、間違いなくコロンビアからだな」なんて夢のようなことばかり考えてましたよ。理解あるスタッフに囲まれて、こんなポップでグルーヴィーなロケンローをやりたかったなぁ‥‥
▼RED WARRIORS『CASINO DRIVE』
(amazon:国内盤CD)