TOM MORELLO『THE ATLAS UNDERGROUND FIRE』(2021)
2021年10月15日にリリースされたトム・モレロの最新ソロアルバム。日本盤(輸入盤国内仕様)は同年10月20日発売予定。
個人名義では『THE ATLAS UNDERGROUND』(2018年)に続く3年ぶり2作目のソロアルバムですが、THE NIGHTWATCHMAN名義を含めるとこれが6作目。RAGE AGAINST THE MACHINEやAUDIOSLAVE、STREET SWEEPER SCIAL CLUB、PROPHETS OF RAGEとは異なり、曲ごとにコラボレーターが異なるという点においては、『THE ATLAS UNDERGROUND』同様に真の意味でのソロ作品と言えるでしょう。
今作も相変わらずゲスト陣が豪華で、ブルース・スプリングスティーンやエディ・ヴェダー(PEARL JAM)、BRING ME THE HORIZON、PHANTOGRAM、クリス・ステイプルトン、グランドサン、マイク・ポズナー、ダミアン・マーリー、フェム、プロトハイプ、デニス・リクセゼン(REFUSED)、サマ・アブドゥルハーディとジャンルも多岐にわたる人選。トムはそれぞれのコラボレーターに合わせた作風、曲調で楽曲制作を進め、その中でいかにも彼らしいギタープレイを披露しています。
オープニングを飾る「Harlem Hellfighter」ではEDM調のトラックに日本語で歌う女性ボーカル(おそらくボーカロイドか?)に、いきなり度肝を抜かれる。かと思えば、続くAC/DCのカバー「Highway To Hell」ではブルース・スプリングスティーン&エディ・ヴェダーという新旧“Voice of America”が暑苦しいボーカルバトルを繰り広げる(笑)。ここではさすがにトムの個性がボーカルに負けてしまっていますね。さらに、BMTHを大々的にフィーチャーした「Let's Get The Party Started」もBMTHの色が強すぎる。あれれ、大丈夫かトム・モレロ……。
PHANTOGRAMをフィーチャーしたエレクトロポップ「Driving To Texas」以降も、ギターの活躍頻度はそこまで高くない。というより、ギターをギターと聴かせないようなエフェクトが施されていたり、楽曲を構築する上での素材と化していたりと、むしろトムはコンポーザー/アレンジャーとしての個性を発揮しているような作品なのかなと、聴き進めていくうちに感じました。いわゆるRATM的なテイストを期待すると痛い目に遭いますが、彼が制作してきた楽曲の色は至るところに散りばめられているので、聴く人が聴けば「トム・モレロらしい1枚」と理解できるかもしれません。
ラップボーカルものよりも、しっかり聴かせる歌モノのほうがらしい色を発揮しているし、「Naraka」や「The Achilles List」で聴くことができるエレクトロ調エフェクトのギターソロに今のトムがやりたいことが表れている気がしたりと、過去にとらわれずに前進を続ける彼にリスナー側がどこまでついていけているのか……。個人的にはベースはいかにもRATMテイストながらもエレクトロな味付けを施すことで新鮮味が増した「Charmed I'm Sure」や「Save Our Souls」、女性ボーカルならではの艶やかさが心地よい「Driving To Texas」や「Night Witch」みたいな楽曲がお気に入りです。
統一性の強いスタイルではなく、あくまで現代的なプレイリスト風の作風もいかにもソロらしくて好印象。この手の作品はコラボ相手の人選やネームバリューに多少左右されがちですが、今作においてはバランス感に優れていると思うし、前作以上なんじゃないかなという気がしました。しばらくは難しいことを考えずに、大音量で楽しみたいと思います。
▼TOM MORELLO『THE ATLAS UNDERGROUND FIRE』
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