2017/06/22

POISON『NATIVE TONGUE』(1993)

3枚のマルチプラチナムアルバムを発表したものの、早くも登場した2枚組ライブアルバム『SWALLOW THIS LIVE』(1991年)が大きなヒットにつながらず、C.C.デヴィル(G)が脱退(事実上のクビ)。POISONにとって最初にして最大の難関となったギタリスト問題も、しばらくしてリッチー・コッツェンというバカテクギタリストの加入により解決し、1993年初頭に通算4作目のスタジオアルバム『NATIVE TONGUE』がリリースされます。

当時のリッチーの評価は、現在のような「ブルースフィーリングあふれる、歌心のあるギタリスト」というものではなく、「シュラプネル系のテクニカル&速弾きギタリスト」というもの。しかし、POISONで聴かせるそのプレイは、確かにテクニカルではあるものの速弾き一辺倒ではなく、非常にレイドバックしたプレイでした。たぶん、多くのHR/HMファンが驚いたのではないでしょうか。

作品を重ねるごとにグラム路線から脱却し、前作『FLESH & BLOOD』(1990年)ではマッチョな(それでいて“枯れ”も感じさせる)サウンドにまで到達したPOISONでしたが、本作『NATIVE TONGUE』ではリッチーという才能を得たことで、その路線を一気に本格的なものへと昇華させることに成功。それまでのニセモノ感はどこへやら、本作から聴き始めたリスナーは間違いなく「こういうバンド」だと勘違いするはずです(笑)。

にしても、本作の完成度といったら……客観的に見ても、過去イチの出来ではないでしょうか。まず本作は、オープニングの「The Scream」やシングルカットもされた「Stand」など、ゴスペル色の強いハードロックが次々と展開されていきます。過去3作と比べたら、一聴して地味に感じるかもしれません。しかし、サウンド自体はこの手のレイドバックしたハードロックの中でもかなり派手めで、そのへんのPOISONというバンドのこだわりが感じられます。

また、バラードにしても過去のパワーバラードとは異なり、ソウルの影響下にある本格派バラード「Until You Suffer Some (Fire And Ice)」も飛び出し、当時は「どうしたPOISON?」と呆気にとられたものでした。が、今聴くと本当に良いですね、これ(笑)。前作での「Something To Believe In」で見せた路線の究極系と捉えると、非常に納得がいくといいますか。

後半には、従来の路線に近い「Strike Up The Band」や「Ride Child Ride」「Blind Faith」などストレートなハードロックもあるものの、やはりテイスト的には本作のマナーに従ったもの。まぁ『FLESH & BLOOD』からの流れで考えれば、本作の後半は前作の延長(=我々の知るPOISON)、前半はリッチー主導の本格路線(=過去のPOISONを覆す)ということになるんでしょうね。

すでにHR/HM冬の時代に突入していたものの、本作は全米16位、50万枚を超える中ヒットを記録。確かに前作までのマルチプラチナムと比較すれば“落ちた”ように見えますが、同時代に活躍した他のバンドと比較したら一番善戦したと思います。

結局リッチーは本作1枚のみで脱退。本作での路線をさらに推し進めたソロ作を続発したのちにMR. BIGに加入したり、ビリー・シーン(B)やマイク・ポートノイ(Dr)とTHE WINERY DOGSを結成したりするわけです。そういう意味では、今のリッチー・コッツェンにとって原点的1枚とも言えますね。POISONにとってはどのポジションの作品になるのかわかりませんが。



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投稿: 2017 06 22 12:00 午前 [1993年の作品, Poison, Richie Kotzen] | 固定リンク

2017/06/01

MR. BIG『ACTUAL SIZE』(2001)

2001年夏に発表された、MR. BIG通算6枚目のスタジオアルバム。プロデューサーには、リッチー・コッツェン(G, Vo)が連れてきたリッチー・ズィート(リッチーが参加したPOISON『NATIVE TONGUE』(1993年)やリッチーの『MOTHER HEAD'S FAMILY REUNION』(1994年)などを手がけたプロデューサー)が迎えられ、ほぼリッチー・コッツェン主導のもと制作された1枚と言っていいでしょう。

事実、ソングライティングの面ではバンドの創始者であるビリー・シーン(B)が1曲(「How Did I Give Myself Away」)のみクレジットされているだけで、大半がリッチー、そしてエリック・マーティン(Vo)、さらにはパット・トーピー(Dr)がそれぞれメインで書かれた楽曲が中心。ビリーのプレイもオープニングの「Lost In America」や「Suffocation」でこそテクニカルなフレーズが登場するものの、全体的には地味の一言。完全に存在感を消されているような印象すら受けます。

だって、アルバムからのリードシングル「Shine」(リッチー・コッツェンとリッチー・ズィートで書かれたポップチューン)の地味さといったら、前作『GET OVER IT』(1999年)以上ですから。途中、ギターとベースのユニゾンフレーズも登場しますが、決してテクニカルなものではないし。ボーカルにしても、コーラスをとるリッチーの存在感が前作以上で、エリックが歌っているからMR. BIGのアルバムであることを思い出すくらい。リッチーの声に気を取られてたら、確実に彼のアルバムと勘違いしちゃうんじゃないでしょうか。

確かに、リッチーの持ち味を生かした「Suffocation」(しかもこの曲、パットがチャック・ライトらと書いた楽曲なのだから驚き)をはじめカッコいい曲も複数存在します。しかし、それらは別に「MR. BIGである必要のないもの」ばかり。エリックやリッチーがソロでやればまったく問題のない楽曲ばかりなんです。

そういえば、先の「Suffocation」しかり、本作ではパットが今まで以上に大活躍しています。意外にもフックになってくるのは「Crawl Over Me」「Cheap Little Thrill」など、パットが書いた曲ばかりですし。それも、どこかポール・ギルバート時代に通ずる不思議な魅力があるんですから……もしかしたらMR. BIGがこの時点でもMR. BIGらしさを保てていたのは「エリックの声」という対外的な要素と、パットのソングライターとしての才能だったのかもしれませんね。

そんなパットの頑張りがあったものの、ビリーからしたらそりゃあ不満たらたらですよね。実際、リリース前のインタビューでビリー、かなり本音を漏らしていたはず。その結果、リリースを待たずしてビリーがバンドから解雇されるという青天の霹靂。その直後にバンドは本作とそのツアーをもって解散することを発表し、そのツアーにもビリーが参加することを改めてアナウンスするのです。要はビリー、サポートメンバー扱いですよ。

2002年春にはここ日本でもフェアウェルツアーを行いましたが、僕は行ってません。そんなギスギスしたバンド、見たくないもの。

そんなネガティブな思い出が多い作品だけに、個人的にはどうしても正当な評価を下しにくいのですが……バンドが無事再結成した今聴くと、そこまで悪くない作品だなと思いました。ただ、「これをMR. BIGがやるべきか?」と問われたら「NO」と即答しますけどね。



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投稿: 2017 06 01 12:00 午前 [2001年の作品, Mr. Big, Richie Kotzen] | 固定リンク

2017/05/31

MR. BIG『GET OVER IT』(1999)

1996年秋以降に活動休止期間に突入し、それぞれソロワークなどを経てバンド活動を再開させようとしたMR. BIG。しかしポール・ギルバート(G, Vo)がバンド脱退を表明し、再始動が暗礁に乗り上げそうになります。そんな彼らにもとに救世主として登場したのが、すでにソロアーティストとしての地位を確率していたギタリスト、リッチー・コッツェンでした。「えっ、あのPOISONの?」というツッコミはナシの方向で。むしろそこは「あのMOTHER HEADS FAMILY REUNIONの?」くらいにしておきましょう。

冗談はさておき、ブルージーかつファンキーなプレイ&楽曲が信条のリッチーを迎えて制作され、1999年秋に無事発表されたのがこの通算5作目のオリジナルアルバム『GET OVER IT』になります。

ソングライターとしてポップマエストロ方向へと進みつつあったポールのカラーが消えたことで、バンドは再び原点である「ソウルフルでブルージーなハードロック」を取り戻すことに成功。1曲目「Electrified」から枯れまくりなハードロックを楽しむことができるし、続く「Static」ではエリック・マーティン(Vo)とリッチーのツインボーカルをフィーチャーした、これまでのMR. BIGにはない武器も登場します。

……あれ、これが“みんなの求めていたMR. BIG”でいいんだっけ? アルバム1曲目はもっと派手で、ギターとベースが激しいインタープレイを聴かせてくれるんじゃなかったの? ギターの音もこんなに枯れまくりでいいんだっけ?

そう、これがリッチー加入後のMR. BIG最大のハードルなのです。ギターが玄人好みのプレイ&質感になったことで、80年代的な派手さは払拭。代わりに“無駄に本格派”という地味さを獲得してしまう。エリックのボーカルやビリー・シーン(B)のソングライティング力(もちろんリッチーのソングライティング力も)を生かすには十分すぎる武器ですが、きっと90年代前半にMR. BIGに夢中になったHR/HMファンには「これじゃない」感が強かったのではないでしょうか。事実、僕がそうでしたから。

確かに要所要所にテクニカルなプレイは登場しますが、それも本当に味付け程度。決してメインの武器となることはありません。アコースティックバラード「Superfantastic」やROLLING STONESばりにアーシーなR&R「A Rose Alone」、リッチーのファンクギターとエリックのソウルフルな歌が融合した「Hole In The Sun」、本作中もっとも演奏が派手な「Dancin' With My Devils」、セッション色の強い「Mr.Never In A Million Years」など確かに聴きどころが多い作品ではあるものの、それでも前作にあたる『HEY MAN』(1996年)にあった派手さはここにはない。それを「物足りない」と取るか「本格派志向になった」と取るかで、本作の評価は大きく二分するのではないでしょうか。

決して悪いアルバムではないけど(むしろ良い作品だけど)、これをMR. BIGでやらなくてもいいんじゃないか。リリースから20年近く経った今でもそう思わずにはいられません。けど、このへんの作品があったからこそ、のちのTHE WINERY DOGSへとつながっていくんだから、そういう意味ではテン年代以降のHR/HM史を語る上で重要な過去作なのかもしれませんね。



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投稿: 2017 05 31 12:00 午前 [1999年の作品, Mr. Big, Richie Kotzen] | 固定リンク