BON JOVI『100,000,000 BON JOVI FANS CAN'T BE WRONG』(2004)
2004年11月にリリースされた、未発表中心で構成されたBON JOVI初のBOXセット。海外盤はCD4枚+インタビューで構成されたDVDの5枚組仕様ですが、日本盤のみBOX未収録のシングルC/W曲を10曲集めたボーナスディスクCDを追加した5CD+DVDの6枚組となっています。
本作は1984年にデビューしたBON JOVIの20周年と、トータルセールス1億枚突破を記念して制作されたもの。これまで正式リリースされていなかった未発表曲のデモ音源、アルバム曲として発表済みの楽曲のデモバージョン、シングルのカップリングや映画のサウンドトラック盤などでリリースしてきたアルバム未収録曲を集めたもので、CD4枚に50曲(日本盤はCD5枚に60曲)というボリューミーな内容となっています。
80年代のデモや未発表曲は比較的少なく、『NEW JERSEY』(1988年)用に多数制作された楽曲群は皆無(日本盤のみ、既発の「Let's Make It Baby」をDISC 5に収録)。これは、のちに『NEW JERSEY』のデラックス盤(2014年発売)でまとめてリリースされていることを考えると、『NEW JERSEY』完全版(というか『SONS OF BEACHES』)をのちにちゃんと形として残したいという考えがあったのでしょうね。
ということで、デモの大半は『KEEP THE FAITH』(1992年)以降のもので構成されており、中にはリッチー・サンボラ(G, Vo)が初ソロアルバム『STRANGER IN THIS TOWN』(1991年)のために用意したデモや、デヴィッド・ブライアン(Key)が映画『メンフィス』に提供したボーカル曲、ティコ・トーレス(Dr)がリードボーカルを務める未発表曲まで含まれており、バンドとしての蔵出し感が非常に強い内容となっています。
そんな中に、ほんの少しですが80年代のデモ音源も含まれておりまして、1986年の「Someday Just Might Be Tonight」は時期的に『SLIPPERY WHEN WET』(1986年)のために制作されたものなのでしょう。曲の質感的には次の『NEW JERSEY』か、あるいは『KEEP THE FAITH』あたりにも通ずるものがあり、この“枯れた”感はジョン・ボン・ジョヴィ(Vo)が若くして持ち合わせていたものなのだと気づかされます。そのほか、1985年の「We Rule The Night」はモロにハードロック色濃厚で微笑ましいですし、1986年の「Out Of Bounds」はいかにも『SLIPPERY WHEN WET』からのアウトテイクというノリで嫌いじゃないかな。
個人的に興味深いのは、既発曲のデモバージョン。どのような流れを経て完成に至ったのか、完成版から削られた未公開のメロディなどその過程が垣間見られるという点でも、お得感がかなり強いのではないでしょうか。DISC 4の最後にシークレットトラックとして収められている「Livin' On A Prayer」含め、隅々までその違いを確かめてみてください。
デモやアウトテイクといわれると「ボツ曲ってことは出来が悪いんでしょ?」って思ってしまいがちですが、そこはBON JOVIのこと。これまでもシングルのカップリングなどで発表してきた平均点以上の未発表曲を聴けばおわかりのとおり、基本的にはほかの同系統のバンドよりも優れた良曲ばかり。中には「本当にこれでボツなの?」と思わされるものも多いですし、「Real Life」や「Good Guys Don't Always Wear White」などサントラでしか聴くことができなかった“隠れた名曲”にもこの機会に触れることができる本作。初心者にはオススメしませんが、BON JOVI好きを公言するリスナーには必ず引っかかるポイントがある作品集だと思いますよ。
こんな貴重なボックスセットがストリーミングサービスで手軽に楽しめるようになるなんて。なんて便利な世の中になったんでしょうね。
▼BON JOVI『100,000,000 BON JOVI FANS CAN'T BE WRONG』
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