カテゴリー「Riot」の7件の記事

2022年11月 6日 (日)

SEBASTIAN BACH『ANGEL DOWN』(2007)

2007年11月20日にリリースされたセバスチャン・バック(ex. SKID ROW)の1stオリジナルアルバム。日本盤は同年11月21日発売。

90年代後半にSKID ROWを解雇され、ソロ活動に移行したバズ。まず、日本限定でスタジオ録音の新曲を含むライブアルバム『BRING 'EM BACH ALIVE!』(1998年)を発表しますが、2000年以降は『ロッキ・ホラー・ショウ』『ジキル&ハイド』『ジーザス・クライスト・スーパースター』などのブロードウェイ・ミュージカルで活躍するという新たな活路を見出します。その間にも、カバーコンピ『BACH 2: BASICS』(2002年)やTHE LAST HARD MEN名義でのアルバムリリース、VELVET REVOLVERへの加入の噂などがありましたが、2006年にGUNS N' ROSESのライブに同行したのを機にHR/HMシーンへ本格復帰。このアルバム制作へと至るわけです。

プロデュースを手がけたのはロイ・Z(JUDAS PRIESTHALFORDブルース・ディッキンソンなど)。レコーディングにはロイ・Zと同じく当時HALFORDのメンバーだったマイク・クラシアク(G)とボビー・ジャーゾンベク(Dr/RIOT)も参加しており、ほかにもスティーヴ・ディジョルジオ(B/現TESTAMENT、ex. DEATHなど)やアクセル・ローズ(Vo/GUNS N' ROSES)といった面々も名を連ねています。アクセルの他アーティスト作品へのゲスト参加は非常にレアですよね。

楽曲の多くはバズがロイ・Zやバンドメンバーとともに書き下ろしたものですが、中にはAEROSMITH「Back In The Saddle」、マイク・クラシアクが当時在籍していたバンドPAINMUSEUMの「American Metalhead」「Live & Die」といったカバー曲も含まれています。音楽性的には、かつてバズが在籍していたSKID ROWの2ndアルバム『SLAVE TO THE GRIND』(1991年)や3rdアルバム『SUBHUMAN RACE』(1995年)あたり(特に後者かな)のヘヴィ路線に、2000年以降のニューメタル的テイストを散りばめたものが中心。オープニングを飾るタイトルトラック「Angel Down」なんてサウンド/歌唱スタイル含め、モロに2000年代のニューメタル/モダンメタルのそれですものね。そんな中に「You Don't Understand」というメロディアスな正統派HR/HMが突如飛び込んでくると、思わずギョッとしてしまいますが(いい曲なんだけど、本作のテイストを考えると浮いてしまっていて、非常に勿体ない)。

過小評価されすぎ、いや、むしろ否定的な声が多い『SUBHUMAN RACE』の路線をあのまま突き進めていたら、おそらくこうなっていたであろう……という楽曲の数々は、その当時のSKID ROWが展開していたスタイルと比較すると、実はこっちのほうが正しい未来だったのではないか……そう感じずにはいられないほど、バズが活き活きしているのが印象的。ただヘヴィ一辺倒ではなく、しっかりと泣きのバラード「By Your Side」「Falling Into You」も用意されており、『SLAVE TO THE GRIND』以降のSKID ROWが好きだったリスナーにこそ聴いてほしい内容かなと(ロイ・Zやその界隈がサポートしているという点では、「HALFORDの楽曲をバズが歌ったら」的シミュレート作とも言えますが)。

アクセルは意外にも3曲と多くの楽曲にフィーチャーされており、それぞれで“いかにも”な個性的ボーカルを披露しています。バズのハイテンションボーカルとの相性も抜群で、これが90年代前半に実現していたらもっと大きな話題になったのに……と思わずにはいられません(苦笑)。この時期のガンズは1999年の「Oh My God」を最後に新曲を発表しておらず、かの『CHINESE DEMOCRACY』(2008年)が発表されるのはこの1年後と考えると、ガンズファン的には期待を高めてくれる良いつなぎになったのではないでしょうか。

トータルバランスは次作以降には劣るものの、破壊力という点においては彼の作品中もっとも効力が強い1枚です。

 


▼SEBASTIAN BACH『ANGEL DOWN』
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2022年7月15日 (金)

CLEANBREAK『COMING HOME』(2022)

2022年7月8日にリリースされたCLEANBREAKの1stアルバム。

CLEANBREAKはジェームズ・ダービン(Vo/DURBIN、ex. QUIET RIOT)、マイク・フリンツ(G/RIOT)、ペリー・リチャードソン(B/STRYPER、ex. FIREHOUSE)、ロバート・スウィート(Dr/STRYPER)という面々で結成されたスーパーバンドのひとつ。「RIOTやFIFTH ANGELのような伝統的アメリカン・ヘヴィメタルへのオマージュ」をテーマに、時代錯誤な80'sヘヴィメタルを現代に昇華させた(というよりも蘇らせた)ようなピュアメタルが、アルバム全編にわたり展開されています。

ジェームズ・ダービンは短期間QUIET RIOTに在籍したものの、もともとはオーディション番組『アメリカン・アイドル』でJUDAS PRIESTを歌うような生粋のメタル野郎。昨年リリースされたDURBINでのアルバム『THE BEAST AWAKENS』(2021年)でも骨の髄までピュアなメタルを追求していました。このCLEANBREAKはその延長線上にあるもので、個人の名前を打ち出すよりも“バンドのひとり”に徹してDURBINでの世界観を追求した、というのが正しいかもしれません。

楽曲自体は良くも悪くも「ああ、なるほどね(笑)」とニヤニヤしてしまう、王道感の強いUSヘヴィメタル。スピードよりもヘヴィさにこだわったミドルチューン中心で、ダービンのパワフルで伸びやかなボーカルを活かしつつ、熟練メンバーたちが安定感の強い演奏を聴かせています。個々が参加するバンド(RIOT、STRYPERなど)との共通点も見られますが、アレンジにはよい意味で“2000年代以降”の質感も散りばめられています。

ですが、そのへんは本当に味付け程度といったところで、やっぱり軸になる楽曲が往年のUSメタルを彷彿とさせるものなので、新しさ以上に懐かしさが伝わる内容かな。「We Are The Warriors」なんていかにもなタイトル(笑)の楽曲は、80年代前半〜半ばに耳にしたらきっと夢中になったであろう名曲。「The Pain Of Goodbye」も同系統の良曲ですね。

スピードチューン「Still Fighting」もそのクサさに思わず苦笑してしまいますが、モダンメタルなんてもってのほか!と思っている一部の層にはキラーチューンとして響くのではないでしょうか。ホント、35〜40年前の中学生時代にこれ聴いたら一発でハマッたと思います。ですが、今は2022年。こういったスタイルをこの時代に追求するこだわりも理解できますが、個人的にはどうしてもノスタルジックになってしまいます。そこだけは、どうしても譲れないかな。

どの曲も非常によく出来ていますし、驚きや刺激は皆無ですが安心して楽しめる1枚。腐した言い方になってしまいますが、「大人のヘヴィメタル」と呼んでしまいたくなる、ある一定層には安定の良作ではないでしょうか。僕も進んで毎日聴くような内容ではないものの、たまにふとしたときに聴いて「こういう時代も良かったな」と過去を懐かしんでみたいと思います。

 


▼CLEANBREAK『COMING HOME』
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2021年12月28日 (火)

ALCATRAZZ『V』(2021)

2021年10月15日にリリースされたALCATRAZZの5thアルバム。日本盤は同年11月24日発売。

昨年7月にグラハム・ボネット(Vo)、ゲイリー・シェア(B)やジミー・ウォルドー(Key)のオリジナルメンバーにジョー・スタンプ(G)、マーク・ベンケチェア(Dr)という新たな布陣で、実に34年ぶりの新作『BORN INNOCENT』(2020年)をリリースしたALCATRAZZ。充実した新作と携え、その活動も順調に進むものと思われましたが、同年12月にグラハムが突如バンドを脱退。グラハムはARCH ENEMYのジェフ・ルーミス(G)とともにGRAHAM BONNET'S ALCATRAZZを名乗って新たな活動を始め、残された本家ALCATRAZZは新たなシンガーにドゥギー・ホワイト(MICHAEL SCHENKER FEST、ex. RITCHIE BLACKMORE'S RAINBOW、ex. YNGWIE MALMSTEEN'S RISING FORCE、ex. TANKなど)を迎えて早くも次のステップに入ります。

3rdアルバム『DANGEROUS GAMES』(1986年)から『BORN INNOCENT』が34年空いたのに、続く今作までのスパンが1年3ヶ月という短さなのは、もはやギャグとしか思えませんが(笑)、こうして早くも新作を楽しめるのはうれしい限り。バンドの顔=グラハムを失ったALCATRAZZは果たして本当にALCATRZZと言えるのか、早速アルバムを購入して確認してみました(日本ではサブスク未配信なもので)。

基本的な作風、楽曲の方向性は前作の延長線上にあるネオクラシカルスタイルで、その『BORN INNOCENT』での経験を生かしてより磨きをかけた印象が強いかな。『BORN INNOCENT』を好きなリスナーなら間違いなく気に入る内容かと思います。多くの楽曲はジョー・スタンプが中心となって書き下ろされたもので、彼の派手なギタープレイが最良の形で活かされた楽曲ばかり。かと思えば、ドゥギーのカラーが反映された楽曲も含まれており、ドゥギーがTANKのクリフ・エヴァンス(B)と共作したミディアムナンバー「Sword Of Deliverance」はこの布陣ならではと言えるのではないでしょうか。

そんな中、DIO「We Rock」まんまなギターリフを持つ「Turn Of The Wheel」には、イントロの時点で思わず苦笑してしまいますが。さすがにこれはグラハムがいたらできないよね(笑)。

前作同様、今作にもゲストプレイヤーが複数参加しており、前作から引き続きドン・ヴァン・スタヴァン(B/RIOTRIOT V)に加え、ナイジェル・グロックラー(Dr/SAXON)、先のクリフ・エヴァンスと今回は渋めの人選。日本のレコード会社の意見が多分に反映されたであろう前作と比べると、今回のほうがバンドのカラーに合っている気がします。

さて、楽曲面ではなんの不満もない本作。気になるのはドゥギーのボーカルでしょう。正直に言いますが、曲には合っているものの、ALCATRAZZという冠には似合わない気がします。というのも、老いてもなおアタックの強いグラハムの存在感と比較すると、ドゥギーの歌は少々ヌルッとしたイメージで、ちょっとだけ物足りなさを感じてしまう。かつ、ピッチもジャストというよりは若干下にズレており、そこが気持ち悪さ、心地悪さにもつながっている。これ、キーの問題とそういった次元ではなく、彼の歌唱スタイルの問題だと思うのです。なもんで、曲は良いんだけど歌を聴いているとなんとも言えない感覚に陥る……如何ともし難いものです。

あと、前作もそうでしたが、とにかく曲数が多い。海外盤は12曲/62分ですが、日本盤はボーナストラック1曲を含む全13曲/66分と非常に長尺。前作もそれくらいの尺があって、確か「絞りに絞って、全10曲くらいのコンパクトな内容だったら、もっと手放しで喜べたんですけどねえ」と書いたはず(ってそのままコピペしてますが)。本作もあと2曲削って50分前後のコンパクトさだったら、さらに良いと思えたんじゃないかな(とはいえ、ドゥギーが歌ってる時点で気持ち悪さは変わらないのですが)。

なんにせよ、こうやってバンドを存続させて新作を発表し続けてくれるのは、古くからのファンとしてありがたい限り。なかなか来日もままならない状況ですが、どうせなら生でドゥギー・ホワイトが歌う「Jet To Jet」や「Hiroshima Mon Amour」「God Blessed Video」「The Witchwood」などを聴いてみたいものです。

 


▼ALCATRAZZ『V』
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2020年8月 4日 (火)

ALCATRAZZ『BORN INNOCENT』(2020)

2020年7月末にリリースされたALCATRAZZの4thアルバム。『DANGEROUS GAMES』(1986年)以来、実に34年ぶり(!)のニューアルバムです。

『NO PAROLE FROM ROCK'N'ROLL』(1983年)ではイングヴェイ・マルムスティーン、『DISTURBING THE PEACE』(1985年)ではスティーヴ・ヴァイというクセの強いギタリストを迎えてきたALCATRAZZ(というかグラハム・ボネット)。『DANGEROUS GAMES』ではダニー・ジョンソンという前任2名と比べるとネームバリューもカリスマ性も劣る人選だったためか、バンドは同作を最後に解散することになります。

その後、2006年に再結成してからはハウイー・サイモンを迎えてライブ活動を行っていましたが、2019年にジョー・スタンプという技術的にも知名度的にも文句なしのアックスマンが加入。ゲイリー・シェア(B)やジミー・ウォルドー(Key)といったオリジナルメンバー、そしてマーク・ベンケチェア(Dr)という新編成でオリジナルアルバム完成へと至るわけです。

気になる内容ですが、ネオクラシカルを基盤にした「いかにもグラハム・ボネットらしい」ハードロックが展開されています。ALCATRAZZらしいと言えば「らしい」仕上がりですし、別にALCATRAZZ以外の名前で発表されたとしても「グラハム・ボネットが関わったバンド」として捉えたら納得のいく内容ではないでしょうか。つまり、ALCATRAZZでデビューして以降のグラハムは常にこういった楽曲スタイルが求められ続けてきた、という表れかもしれません。そういう意味では、文句なしに満足できる「HR/HMの良作」だと断言できます。

ジョー・スタンプのプレイはどうかといいますと、「London 1666」や「Darkness Awaits」などではジョー・スタンプらしいテク&フレーズ炸裂のリフ&ソロワークを楽しむことができます。が……実は日本盤ボーナストラック含む全15曲中、6曲でゲストギタリストをフィーチャーしており、せっかくの見せ場が少なくなっている気がしないでもありません。だって、タイトルトラック「Born Innocent」にはクリス・インペリテリ、「Finn McCool.」には若井望、「I Am The King」にはボブ・キューリック(R.I.P.)などが参加しているわけですから。それでも、クセの強いゲストに負けない個性を発揮しているので、最後まで安心して楽しめるのではないでしょうか。

とにかく本作、34年ぶりの新作というお祭り感が強く、スティーヴ・ヴァイが「Dirty Like The City」の作曲に携わったのに加え、RIOTRIOT Vのドン・ヴァン・スタヴァン(B)やMICHAEL SCHENKER FESTのスティーヴ・マン(今回はブラス・アレンジ)などもゲスト参加。その他のゲストプレイヤー含め、グラハムとALCATRAZZを祝福するような豪華な仕上がりとなっています。その結果が全15曲で68分半という長尺にも表れているのでしょう。海外盤は「Darkness Awaits」と「Reality」を除く13曲入りで60分以内に収まっていますが、はやり長すぎて1曲1曲のインパクトが薄まってしまっているのは否めません。特にその感覚は、後半に進めば進むほど……絞りに絞って、全10曲くらいのコンパクトな内容だったら、もっと手放しで喜べたんですけどねえ。

まあ、だからといって捨て曲が含まれているわけではないので、ここからじっくり時間をかけて、すべての曲を堪能できればと思います。良い曲が多いというのも困りものですね(苦笑)。

 


▼ALCATRAZZ『BORN INNOCENT』
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2020年4月10日 (金)

RIOT『THE PRIVILEGE OF POWER』(1990)

1990年2月にリリースされたRIOTの7thアルバム。

トニー・ムーア(Vo)、ボビー・ジャーゾンベク(Dr)など新メンバーを迎え、起死回生の前作『THUNDERSTEEL』(1988年)で劇的な復活を果たしたRIOT。マーク・リアリ(G)、ドン・ヴァン・スタヴァン(B)という編成で制作したこのアルバムは日本で高い評価を受け、1989年12月には待望の初来日公演が実現(来日前にベーシストがスタヴァンからピート・ペレスに交代)。その際にセカンドギタリストとしてマイク・フリンツ(G)が加入し、初期の楽曲を再現可能なツインギター編成が再び完成します。

この来日前に制作していたのが、この『THE PRIVILEGE OF POWER』というコンセプチュアルな作品集。全10曲で58分という当時としては比較的長めのアルバムは、良い意味で前作を踏襲しつつも、バンドとしての新たな挑戦も多数詰め込まれた1枚です。

レコーディング自体はムーア、リアリ、スタヴァン、ジャーゾンベクという『THUNDERSTEEL』と同じ編成で実施。それに加え、本作には豪華なゲストプレイヤーが多数参加していることでも当時話題になりました。そのメンツもジョー・リン・ターナー(Vo)というHR/HM界隈から、T.M.スティーヴンス(B)、G.E.スミス(G)、ジェイムズ・“ブラッド”・ウルマー(G)などジャズ/ファンク畑のプレイヤー、さらにはTOWER OF POWERなどのブラスセクションまで……「えっ?」って人選ですよね。

コンセプトアルバムということで、本作には曲間に長めのSEが多々挿入されています。オープニング「On Your Knees」からしてすぐには始まりませんし、1曲終わると間にテレビのニュース番組みたいなナレーションが挿入されて、すぐ曲に入らない。かと思えば、「Killer」みたいにゴージャズなホーンセクションが後ろで鳴ってる曲まであるんですから(苦笑/ジョー・リン・ターナーとのツインボーカルは最高なんですけどね)。

本作と前後して、EXTREMEがファンクメタルというスタイルでブレイクを果たし、「Get The Funk Out」のようにブラスをフィーチャーした楽曲で支持を集めますが、別にRIOT自身はファンクをやっているつもりもなければ、単純に味付けとしてブラスを入れただけ。楽曲自体はストレートなパワーメタルだし、リズムも跳ねていませんし。だからこそ、当時このアルバムを聴いて困惑したんですよ、「え、何がやりたいの?」って。

HR/HMが多様化した現在ならこういう作風も理解できますし、曲間のSEさえ気にならなければ1曲1曲のカッコよさや完成度の高さを素直に楽しむことができると思います。「Dance Of Death」や「Black Leather And Glittering Steel」のスピードメタル感も「Runaway」や「Maryanne」の叙情的スタイルも最高ですし。ですが……「Storming The Gates Of Hell」のラッパ……お前だけは解せないんだ(苦笑)。進軍ラッパを表現しているんでしょうけど、挿入の仕方含めて気の抜けた法螺貝みたいで……うん。曲自体は本当にカッコいいんですけどね。

もしSEなしのバージョンとか存在したら、もしブラスなどの装飾を排除した“Nakedバージョン”が存在したら……このアルバムの評価、もっと違ったはずなんですよ。いや、今となってはこれはこれで全然ありなんですけど。個人的には最後まで真顔で聴き通すのが難しい1枚です。

 


▼RIOT『THE PRIVILEGE OF POWER』
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2018年5月10日 (木)

RIOT V『ARMOR OF LIGHT』(2018)

前作『UNLEASH THE FIRE』(2014年)からRIOT V名義で活動を再開させたRIOT。彼らの通算16作目、RIOT Vとしては2作目となるニューアルバムが本作『ARMOR OF LIGHT』です。今回もジャケット、最高ですね(笑)。

オリジナルメンバーのマーク・リアリ(G)を失い、マイク・フリンツ(G)とドン・ヴァン・スタヴァン(B)を中心に再編成されたRIOT Vですが、前作から新加入のトッド・マイケル・ホール(Vo)がいよいよ本作で本領発揮か?という素晴らしいボーカルを聴かせてくれます。

サウンド的には『THUNDERSTEEL』(1988年)以降の路線ではあるのですが、本作はスピード感以上にドラマチックさに重点を置いたのが功を奏し、1曲1曲が聴き応えのある仕上がりに。オープニングの「Victory」から「End Of The World」へと続く泣きメロ満載のファストチューン連発に思わずガッツポーズしたかと思うと、『THUNDERSTEEL』期を思わせるスラッシーな「Messiah」が飛び出したりと、とにかく気をつかせぬ展開の連続です。

どの曲にもしっかり“RIOTらしさ”が感じられつつも、そことも違う“何か新しいもの”が始まろうとしている感覚が前作以上に強まっている。そこは、『UNLEASH THE FIRE』発表前後のツアーを経て強めた絆によるものが大きいのかもしれません。RIOT時代に築き上げたスタイルを引き継ぎつつも、「RIOT V」という新しい名前を得たことによる新たな道を切り開くことも重要な命題であるわけですから。

マイク・フリンツとニック・リー(G)からなるツインリードソロも随所に盛り込まれておりますが、どれも自然な形で飛び込んでくる。そう、無理してる感がないんですね。“RIOTらしさ”を意識しすぎて「どこかに入れないと」みたいな感じではないから、こちらも素直に向き合える。なおかつ、トッド・マイケル・ホールの高音域の伸びの良さと力強さが本当に気持ちよく、バックのパワフルな演奏にまったく負けていない。逆に考えると、ここまで歌えるシンガーがいるからこそ、ツインリードも随所に盛り込めるし、演奏もどこまでもドカドカと派手にやれるわけですね。

7曲目「Armor Of Light」までひたすら突っ走り、8曲目「Set The World Alight」でようやくミディアムテンポのメロウナンバーが登場するのですが、続く9曲目「San Antonio」で再度ファストチューンに。その後は10曲目にミドルヘヴィ調の「Caught In The Witches Eye」、11曲目にシャッフルナンバー「Ready To Shine」ときて、本編ラストは再び疾走系の「Raining Fire」で終了。日本盤にはボーナストラックとしてミドルナンバー「Unbelief」と、名曲「Thundersteel」の再録バージョンが追加されています。

……あれ、バラードとかないんだ……というのが、最初に聴き終えたときの素直な感想。これだけしっかりした曲が書くことができて、しっかり歌えるシンガーがいるんだから、1曲くらい朗々と歌い上げるメタルバラードがあってもいいのに。とにかくファストチューンが多すぎて、後半のミディアムナンバーが登場するまで変化に乏しいというのもあって、できればそういう1曲が欲しかったなと。そこだけが残念でした。

ボーナストラック「Unbelief」もバラードとは違うけど変わったタイプの楽曲なので、アルバム本編に入っていたらちょっと印象が変わったかも。とにかく、オッサンが60分近く聴くにはちょっとカロリー高いかな、というのが本音です。だからといって、別に悪い作品というわけではないので勘違いないように。

なお、デラックス盤には2015年の『KEEP IT TRUE FESTIVAL』でのライブ音源13曲を収めたボーナスディスク付き。過去の名曲群を現編成で楽しめる貴重な音源なので、ぜひこちらをチェックしてみることをオススメします。



▼RIOT V『ARMOR OF LIGHT』
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2017年1月 7日 (土)

RIOT『THUNDERSTEEL』(1988)

RIOTの記念すべき復活作、というか第二のデビュー作と呼ぶにふさわしい1988年発売の6thアルバム。RIOTというと頭がオットセイ、首から下が人間という謎のキャラクターが映ったジャケットのイメージが先行しがちですが、楽曲的には「Warrior」や「Narita」といった初期のイメージが強かったと思います。ツインリードを多用した、古き良き時代のハードロックといいますか。良くも悪くもそのイメージ止まりだったかなと。しかも80年代に入ると、これといった大きなヒットにも恵まれず、徐々に先細りしていたと思うんです。

ところが、1988年に突如この『THUNDERSTEEL』というアルバムとともに大復活。アルバムで聴ける音楽性もオールドスクールなハードロックから、一気にパワーメタルやスラッシュメタル的なスタイルへと進化したもんだから、そりゃ当時はびっくりしましたよ。

ハイトーンボーカルが特徴のトニー・ムーア、そして超絶ドラマーのボビー・ジャーゾンベクの加入がバンドにもたらした影響はかなり大きかったと思います(レコーディングでは一部のドラムを当時LIONのマーク・エドワーズが叩いてます)。哀愁に満ちたメロディはそのままに、リフワークやアレンジは現代的なものになり、スピード感もヘヴィさも当時のメタルに負けないものでしたし、実際言われなかったらこれがRIOTの新作だと誰も信じなかったと思います。

のちに、これと同じような体験をとあるバンドですることになるんですよね。それがJUDAS PRIEST『PAINKILLER』(1990年)。感覚的にはあれに近いかもしれません。もっと最近だと……いい例え、ありますかね?

とにかく。今聴いてもオープニングの「Thundersteel」の衝撃は変わらないし、「Flight Of The Warrior」や「On Wings Of Eagles」、「Johnny's Back」の疾走感は気持ちいいし、「Bloodstreets」や「Run For Your Life」のパワーメタル感はハンパないし、聴いていてため息が出る。こういう変化の仕方、こういう成功の仕方もあるんですね。

残念ながら2012年にリーダーのマーク・リアリ(G)が亡くなってしまいましたが、バンドは現在も存続中。2014年にはアルバム『UNLEASH THE FIRE』を発表し、何度か来日公演も行いました。

このアルバムも1988年発売。そう考えると、HR/HMシーンにおける1988年ってひとつのピークだったのかもしれないですね。



▼RIOT『THUNDERSTEEL』
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