SEBASTIAN BACH『ANGEL DOWN』(2007)
2007年11月20日にリリースされたセバスチャン・バック(ex. SKID ROW)の1stオリジナルアルバム。日本盤は同年11月21日発売。
90年代後半にSKID ROWを解雇され、ソロ活動に移行したバズ。まず、日本限定でスタジオ録音の新曲を含むライブアルバム『BRING 'EM BACH ALIVE!』(1998年)を発表しますが、2000年以降は『ロッキ・ホラー・ショウ』『ジキル&ハイド』『ジーザス・クライスト・スーパースター』などのブロードウェイ・ミュージカルで活躍するという新たな活路を見出します。その間にも、カバーコンピ『BACH 2: BASICS』(2002年)やTHE LAST HARD MEN名義でのアルバムリリース、VELVET REVOLVERへの加入の噂などがありましたが、2006年にGUNS N' ROSESのライブに同行したのを機にHR/HMシーンへ本格復帰。このアルバム制作へと至るわけです。
プロデュースを手がけたのはロイ・Z(JUDAS PRIEST、HALFORD、ブルース・ディッキンソンなど)。レコーディングにはロイ・Zと同じく当時HALFORDのメンバーだったマイク・クラシアク(G)とボビー・ジャーゾンベク(Dr/RIOT)も参加しており、ほかにもスティーヴ・ディジョルジオ(B/現TESTAMENT、ex. DEATHなど)やアクセル・ローズ(Vo/GUNS N' ROSES)といった面々も名を連ねています。アクセルの他アーティスト作品へのゲスト参加は非常にレアですよね。
楽曲の多くはバズがロイ・Zやバンドメンバーとともに書き下ろしたものですが、中にはAEROSMITH「Back In The Saddle」、マイク・クラシアクが当時在籍していたバンドPAINMUSEUMの「American Metalhead」「Live & Die」といったカバー曲も含まれています。音楽性的には、かつてバズが在籍していたSKID ROWの2ndアルバム『SLAVE TO THE GRIND』(1991年)や3rdアルバム『SUBHUMAN RACE』(1995年)あたり(特に後者かな)のヘヴィ路線に、2000年以降のニューメタル的テイストを散りばめたものが中心。オープニングを飾るタイトルトラック「Angel Down」なんてサウンド/歌唱スタイル含め、モロに2000年代のニューメタル/モダンメタルのそれですものね。そんな中に「You Don't Understand」というメロディアスな正統派HR/HMが突如飛び込んでくると、思わずギョッとしてしまいますが(いい曲なんだけど、本作のテイストを考えると浮いてしまっていて、非常に勿体ない)。
過小評価されすぎ、いや、むしろ否定的な声が多い『SUBHUMAN RACE』の路線をあのまま突き進めていたら、おそらくこうなっていたであろう……という楽曲の数々は、その当時のSKID ROWが展開していたスタイルと比較すると、実はこっちのほうが正しい未来だったのではないか……そう感じずにはいられないほど、バズが活き活きしているのが印象的。ただヘヴィ一辺倒ではなく、しっかりと泣きのバラード「By Your Side」「Falling Into You」も用意されており、『SLAVE TO THE GRIND』以降のSKID ROWが好きだったリスナーにこそ聴いてほしい内容かなと(ロイ・Zやその界隈がサポートしているという点では、「HALFORDの楽曲をバズが歌ったら」的シミュレート作とも言えますが)。
アクセルは意外にも3曲と多くの楽曲にフィーチャーされており、それぞれで“いかにも”な個性的ボーカルを披露しています。バズのハイテンションボーカルとの相性も抜群で、これが90年代前半に実現していたらもっと大きな話題になったのに……と思わずにはいられません(苦笑)。この時期のガンズは1999年の「Oh My God」を最後に新曲を発表しておらず、かの『CHINESE DEMOCRACY』(2008年)が発表されるのはこの1年後と考えると、ガンズファン的には期待を高めてくれる良いつなぎになったのではないでしょうか。
トータルバランスは次作以降には劣るものの、破壊力という点においては彼の作品中もっとも効力が強い1枚です。
▼SEBASTIAN BACH『ANGEL DOWN』
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