カテゴリー「「R.I.P.」」の33件の記事

2018年6月23日 (土)

PANTERA『REINVENTING THE STEEL』(2000)

海外で2000年3月、日本では同年4月にリリースされたPANTERA通算9作目(メジャー5作目)のスタジオアルバムにして、結果的にはバンドのラスト作となった1枚。前作『THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL』(1996年)発表後、ツアーは行うもすったもんだあって(フィル・アンセルモがヘロインの過剰摂取で心停止に陥る、などなど)フィルとほかのメンバーとの間に大きな隔たりが生まれ、結果として過去最長の4年というリリース間隔が空いてしまうわけです(その合間にライブアルバム『OFFICIAL LIVE: 101 PROOF』の発売はありましたが)。

今作ではメジャーデビュー以降ずっとPANTERAサウンドを手がけてきたテリー・デイトの手を離れ、ダイムバッグ・ダレル(G)とヴィニー・ポール(Dr)のアボット兄弟のほか、スターリング・ウィンフィールドというエンジニアの3人体制でレコーディング。サウンド的にはドラムの芯がかなり太くなった印象があり、ギターサウンドも以前よりふくよかさが増したイメージ。それによって、全体的にヘヴィさがより明確になり、フィルのボーカルとのバランスも抜群で、個人的にも全作品中でもっとも好きなサウンドメイキングかもしれません。

楽曲に関しては、前作『THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL』でのハードコアな路線をより進化させたようなスタイルで、正直リリース当時に聴いたときは「ヘヴィでカッコいいけど、ちょっと聴き手を選ぶ内容かなぁ」と以前ほどリピートしなかった記憶があります

が、あれから18年経った今聴いてみると、意外とキャッチーな1枚であることに気づかされます。フィルのボーカルも、正直ここまでキャッチーだったっけ?と驚いたくらい、スッと入ってくるし(まあ、その後の彼のプロジェクトの数々を通過した今となっては、かなりキャッチーですよね。笑)。

PANTERAらしいグルーヴ感の強いミドルヘヴィチューンや、BLACK SABBATHからの影響が強いプログレッシヴなメタルナンバーなど、とにかく聴きごたえ抜群。2000年といえば、すでにKORNLIMP BIZKITといった新興勢力がシーンに台頭し、さらにはSLIPKNOTのような次世代バンドも登場するタイミング。90年代前半に「メタルシーンの未来」なんて言われたPANTERAも、もはやオールドスクールの仲間入りか……なんて危惧されていたところに、この“PANTERAスタイルの完成型”をこのタイミングに提示したことは、今思えばものすごく大きな意味のあることだったんだなと気づかされます。

結果的に、このアルバムを携えたツアー終了後にバンドは再び決裂。2003年に正式に解散を発表することになります。その後の活動や歴史については、今さら触れるまでもないでしょう……いや、触れたくもないというか。

今日はこれから、このアルバムを爆音で楽しみながら過ごしたいと思います。PANTERAという最強のバンドにリアルタイムで出会えたことを、誇りに感じながら。



▼PANTERA『REINVENTING THE STEEL』
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2018年1月12日 (金)

MOTÖRHEAD『ACE OF SPADES』(1980)

“ファスト”・エディ・クラークが亡くなりました。「へっ、誰?」という人もいるかもしれないけど、僕にとってはレミー・キルミスター(Vo, B / 2015年12月没)、フィルシー・“アニマル”・テイラー(Dr / 2015年11月没)、そして“ファスト”・エディ・クラーク(G)という黄金トリオは決して観ることができなかった布陣ということもあって、かなり憧れの強いラインナップでもあります。

MOTÖRHEADに対する思いは過去のテキストでも散々書いているので、ここでは割愛。今晩は急遽、このアルバムを爆音で聴きながら本作の魅力について触れてみたいと思います。

『ACE OF SPADES』はMOTÖRHEADが1980年晩秋にリリースした、通算4作目のスタジオアルバム。前年に発表した2枚のアルバム『OVERKILL』『BOMBER』がそれぞれ全英24位、12位と好記録を伸ばし続けるなか発表された、決定打的1枚が本作『ACE OF SPADES』であり、実際このアルバムは最高4位まで上昇するヒット作となりました。また、同作からのシングル「Ace Of Spades」も最高15位を記録し、バンドは名実ともに人気者の仲間入りを果たしました。

このアルバム、何が良いって、まずはそのジャケットでしょう。それまでのMOTÖRHEADのアートワークは牙をむいた豚(=War Pig)のキャラクターがデザインされていましたが、本作ではメンバー3人が砂漠だか岩場だかで佇む姿が収められています。もうね、これだけで最高じゃないですか? 革ジャンにタイトなパンツ、ハット、そしてガンベルト。この姿を目にしただけで、どんな音かが伝わってくる。

で、実際に1曲目さから再生すると、あのゴリゴリに歪みまくったベースリフ……名曲「Ace Of Spades」からスタートするわけですよ。最高ったらありゃしない。その後も速い曲、ミドルテンポのブギー、渋いロックが目白押し。メタリックだけどヘヴィメタルではなく、ハードロックかと言われるとそういうわけでもない、そしてパンキッシュなのにパンクとも違う。このMOTÖRHEAD以外の何者でもない証明がこの12曲でなされているわけですよ。

1980年というとパンクムーブメントも終わり、本国イギリスではニューウェイブが流行りだしたと同時に、それまで死にかかっていたヘヴィメタルが新たな波に乗って再編され始めた頃。New Wave Of British Heavy Metal(NWOBHM)と呼ばれるムーブメントが勃発したタイミングですね。その時期に発表された『ACE OF SPADES』やMOTÖRHEADというバンドに対して「NWOBHMのオリジネーター」なんて声が多いのは、そういったいろんなタイミングが合致したのも大きいんでしょうね。

とにかく頭を無にして、ただひたすら大音量で楽しみたいアルバム。どのアルバムも最高だけど、今晩だけは「Ace Of Spades」から「The Hammer」までを通して聴いて、3人の鬼気迫るプレイに浸りたいと思います。



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2018年1月10日 (水)

DAVID BOWIE『BLACK TIE WHITE NOISE』(1993)

今から25年前の1993年春にリリースされた、デヴィッド・ボウイ通算18枚目のスタジオアルバム。80年代末から自身がフロントマンを務める4人組バンドTIN MACHINEでの活動を中心に、1990年にはソロ曲を封印するために大々的なソロライブをここ日本でも東京ドームで実施しましたが、結局TIN MACHINEの2枚目『TIN MACHINE II』(1991年)が大コケしたことで、ボウイは再びソロに戻らざるをえない状況に追いつめられるのでした。

とはいえ、当時のボウイは私生活では1992年にイマンと結婚して順風満帆。商業的に失敗作と捉えられてしまったTIN MACHINEから再びソロに戻れたのも、こうした好状況が後押ししたのかもしれませんね。

アルバムは『LET'S DANCE』(1983年)を手がけたナイル・ロジャースが再びプロデュースを担当。レコーディングにはかつてSPIDERS FROM THE MARSでの盟友ミック・ロンソン(G)がゲスト参加し、CREAM「I Feel Free」やモリッシー「I Know It's Gonna Happn Someday」、THE WALKER BROTHERS「Nite Flights」のカバーを収録など、話題に事欠かない1枚となっています。

実際、本作は56分という長尺ながらも非常にノリが良く、コンパクトで聴きやすい印象なんです。80年代中盤から後半のボウイ的なノリも残しつつ、それが悪い方向に進むことなく90年代前半当時の音楽シーンと見事にシンクロしている。そして、ブラックミュージックのテイストとジャズのフィーリングが至るところに散りばめられており、それによって全体がボウイらしい大人のサウンドへと昇華されている。このバランス感はぶっちゃけ、『LET'S DANCE』以降でもっとも優れているのではないでしょうか。

アルバム中随所に登場するインストナンバーも実験的な要素よりも、モダンなテイストのほうが強く、しっかり時代に寄り添っている。かといって、それが売れ線にどっぷり浸かったものでもない。このさじ加減が絶妙なのが、本作の魅力だと思います。だからこそ、本作は『TONIGHT』(1984年)以来となる全英1位を獲得できたんでしょうね。

この好調ぶりが、『OUTSIDE』(1995年)以降の諸作品へと続いていくと考えると、ボウイに再びメジャーのど真ん中で好き放題やることの楽しさを思い出させてくれた重要作品と受け取ることもできます。実際、僕は90年代のボウイ作品の中では本作と『HOURS...』(1999年)がめちゃめちゃ好きなんですよ。まったくタイプは異なるんですけど、ボウイ“らしさ”という意味では実験的な『OUTSIDE』や『EARTHLING』(1997年)よりも“らしい”内容ですものね。



▼DAVID BOWIE『BLACK TIE WHITE NOISE』
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2017年12月31日 (日)

LINKIN PARK『ONE MORE LIGHT LIVE』(2017)

LINKIN PARKが5月リリースの最新アルバ『ONE MORE LIGHT』を携えて行ったヨーロッパツアーから、オランダ・アムステルダム、ポーランド・クラクフ、ドイツ・ベルリン、イギリス・ロンドン&バーミンガムでのライブ音源をコンパイルした作品。彼らはこの夏に北米ツアーを行い(その一部公演ではONE OK ROCKがゲスト出演する予定だった)、そのまま11月には久しぶりの単独公演(こちらもゲストにワンオク参加予定だった)を実施するはずでした。

『ONE MORE LIGHT』は彼ら最大の武器であった“ヘヴィさ”を極限までそぎ落とし、“モダンなポップサウンド”を積極的に取り入れた実験作でした。もちろん、チェスター・ベニントンがあの声で歌えばそれがLINKIN PARKの楽曲になるのは当たり前の話で、どんなにポップになろうが聴けばそれがLINKIN PARKなのはすぐに理解できました。だからこそ、従来のファンはその違和感に対して反射的に「NO!」を突きつけたのかもしれません。

ツアーが始まる前、マイク・シノダは「LINKIN PARKはアルバムによってサウンドが変化していて、前作も新作とはまったく違うサウンドだったし、その前の作品も、その前も、違うサウンドだった。だから全時代のLINKIN PARKのサウンドをひとつのセットリストに織り交ぜるのは挑戦でもあるし、楽しいことでもある。「One Step Closer」のような昔の曲も、「Heavy」のような最新曲も、ひとつのショウですべてプレイするんだからね」との発言をオフィシャルインタビューで残しています。だからこそ、僕はこの新作を携えたツアーが本当に楽しみでしたし、普段はフェスでしか観ない彼らを初めて単独ツアーで観ようと思ったくらいでしたから。

このライブアルバムは68分程度にまとめられたもので、実際のフルライブから10曲程度間引いたもの。その内容は全16曲中『ONE MORE LIGHT』から8曲と、新作を生でどのように表現しようとしたかが伺えるものとなっています。また、「One Step Closer」や「Papercut」「Faint」「Somewhere I Belong」など初期のヘヴィ系ナンバーや「The Catalyst」といったファストチューンはオミットし、「Crawling」のピアノバージョンといった新作に寄せたアレンジの楽曲を積極的に収録。とはいえ、「Burn It Down」や「New Divide」「What I've Done」「In The End」「Numb」などおなじみの楽曲も多数含まれているので、従来のファンも楽しめる内容といえるでしょう。

けど、あえて上記のような選曲にしたのは、改めて『ONE MORE LIGHT』とは何だったのか?をリスナーに考えてもらう、意識してもらうためだったとも言えるわけで、初期ヘヴィ系ナンバーを排除したことで全体のトーンにも統一感が生まれたわけで。つまり、チェスター最後のツアーを完全版として残すことを選ばず、『ONE MORE LIGHT』の“その先”を見せようとしたのではないでしょうか。チェスター最後の置き土産の中にも、こういったバンドの意思がしっかり落とし込まれているところは、さすが先駆者だと思います。

にしても……これを聴いてしまうと、やっぱり生で体感したかったですよね、『ONE MORE LIGHT』ツアー。彼の死から5ヶ月ちょっと経ちましたが……改めて、ご冥福をお祈りしたいと思います。



▼LINKIN PARK『ONE MORE LIGHT LIVE』
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2017年12月28日 (木)

MOTÖRHEAD『BASTARDS』(1993)

1993年秋にリリースされたMOTÖRHEAD通算11枚目のスタジオアルバム。前2作(1991年の『1916』、1992年の『MARCH OR DIE』)がメジャーのEpic Recordsからのリリースで、前者は健闘したものの後者がほぼプロモーションされなかったことにレミー(Vo, B)らメンバーは激怒。結局レーベルから離脱し、ドイツのレーベルZYX Musicから本作を発表したのでした。が、レーベルの特性もあってか、当時は日本とドイツ周辺のヨーロッパ諸国でしかリリースされず、アメリカなどで発表されたのは2000年代に入ってからでした。

前作『MARCH OR DIE』がミドルテンポの楽曲を中心とした、従来の彼らからしたら“らしくない”作風だったのに反し、本作ではスピード違反で捕まるんじゃないかってくらい飛ばしまくってます。冒頭の「On Your Feet Or On Your Knees」での爆走ロケンローぶりにガッツポーズを取ったかと思うと、続く「Burner」はミッキー・ディー(Dr)のツーバスドラムを効果的に活用したスピードメタル! さらに「Death Or Glory」「I Am The Sword」とスピードナンバーが連発され、前年からの鬱憤がここで一気に吐き出されるかのような展開を見せます。

かと思えば、ミドルテンポの心地よいロックンロール「Born To Raise Hell」があったり、らしくないようで非常に“らしい”仕上がりのバラード「Don't Let Daddy Kiss Me」があったりと、中盤あたりから“遊び”が見え隠れします。

そんな飛ばしまくりの前半から一変、後半はノリノリのロックンロールとメタリックなミドルナンバー、バラード調の「Lost In The Ozone」などがバランス良く飛び出す構成。冒頭4曲のノリを考えると若干落ち着いた印象を受けますが、実はこのバランス感こそ本作の聴きやすさにつながっているのではないかと思っています。

特に序盤はMOTÖRHEADにしては非常にメタリックな仕上がりですが、そこに当時の彼ら(特にレミー)の怒りが表現されているということなのでしょう……そういえば今、リリース当時に頭2曲を狂ったようにリピートしまくったことをふと思い出しました。あの当時の自分の心境にもぴったりな1枚だったのかもしれませんね。

ちなみに彼らは本作を携え、翌1994年初夏に再来日。関東は確かクラブチッタで2日くらいやった記憶があり、僕も1日だけ足を運びました。決して満杯とないえないフロアにがっかりしたものの、本作からの楽曲や名曲の数々に大満足したことは今でもよく覚えています。

“あの日”からもう2年。今日はこのアルバムを爆音で楽しみたいと思います。



▼MOTÖRHEAD『BASTARDS』
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2017年12月25日 (月)

WHAM!『MUSIC FROM THE EDGE OF HEAVEN』(1986)

ジョージ・マイケルが亡くなってから、本日でまる1年。というころで、今日は予定外にもう1本更新しようと思います。

本作『MUSIC FROM THE EDGE OF HEAVEN』はジョージ・マイケル&アンドリュー・リッジリーによるポップユニット、WHAM!が1986年初夏にリリースした3枚目にして最後のオリジナルアルバム。リリース時にはすでにグループは解散(ラストライブ終了)済みでしたので、そこまで大々的にプッシュされた1枚というわけではありませんでした。

というのも本作は当初、北米とここ日本でしかリリースされていないイレギュラーなオリジナル作品だったのです。WHAM!は解散に際して新録曲3曲(リードシングルとして発表された「The Edge Of Heaven」と、「Battlestations」「Where Did Your Heart Go?」)と初期シングルの最新リミックス「Wham Rap '86」の4曲を用意し、イギリス本国でのシングル限定盤にはこれらすべてを収録。北米&日本限定の『MUSIC FROM THE EDGE OF HEAVEN』に先駆けてリリースされたベストアルバム『THE FINAL』(1986年)にはこのうち新録3曲がすべて収録されていたため、わざわざ『MUSIC FROM THE EDGE OF HEAVEN』をリリースする必要はなかったわけです(ちなみに日本では『THE FINAL』も同時期にリリース済み)。まあ、いろんなしがらみがあったんでしょうね(ジャケットの投げやり感からも伝わってきますが)。

そういう不幸な立ち位置の3rdアルバム。全8曲入りということで、上記の4曲以外には1985年のヒットシングル「I'm Your Man」のリミックス(シングルや12インチ盤未収録バージョン)、「Blue」のライブ・イン・チャイナ、冬の定番曲「Last Christmas」、そしてアルバムに先行して発表されたジョージのソロシングル「A Different Corner」という寄せ集め感が否めない選曲。ただ、こうやって聴いてみると当時のジョージが目指していた方向性や、ここから翌年にかけて本格化するソロアーティストとしての指針が見えてきます。

特に“Cool Side”と題されたアナログB面(M-5〜8)のうち、「Last Christmas」を除く3曲(「A Different Corner」「Blue」「Where Did Your Heart Go?」)あたりに次への布石が感じられる気がするのですが(もちろんA面に配置された「Battlestations」にも)。寄せ集めとはいえ、極甘だった前作『MAKE IT BIG』(1984年)をちょっとビターにしたこの感じ、実は嫌いじゃないです。

今ではストリーミングサービスを通じて、世界各国で試聴可能な本作も、つい最近本国イギリスでデジタル販売が開始されたとのこと。ジョージが亡くなったあとというのがなんとも切ないですが、今日は久しぶりにWHAM!三昧で過ごしてみようかと思います。



▼WHAM!『MUSIC FROM THE EDGE OF HEAVEN』
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2017年11月19日 (日)

AC/DC『BACK IN BLACK』(1980)

大ヒットした1979年のアルバム『HIGHWAY TO HELL』に続く、AC/DC通算7枚目のスタジオアルバム(1980年夏発売)。前作から引き続き、プロデュースをジョン・マット・ラングが担当。と、ここまで書くと前作の延長線上にある作風かと想像してしまいがちですが、前作との間にひとつの大事件が発生します。それがフロントマン、ボン・スコットの急逝(1980年2月)でした。バンドの顔ともいえるボンが亡くなったことで、本来はその歩みを止めてもおかしくないところを、AC/DCは前作からまる1年というハイペースで本作『BACK IN BLACK』を完成させるのでした。

新たに加入したシンガーは、イギリス生まれのブライアン・ジョンソン(元GEORDIE)。ボンの歌声はどこか気だるさや色っぽさ(エロさ)も感じられる独特の個性でしたが、ブライアンの歌声はもっと硬質。極論を言ってしまえば、ロックンロールシンガーからヘヴィメタルシンガーに交代したというくらい、バンドの顔が急に変わってしまったわけです。

当然、バンドが作り出すサウンド自体もブライアンの特性を生かしたものにシフトチェンジ。キャッチーで軽やかなイメージのあった『HIGHWAY TO HELL』とは異なり、この『BACK IN BLACK』ではヘヴィでソリッドなハードロックを奏でております。もう1曲目「Hells Bells」からして異質ですよね、それまでのAC/DCを考えれば。冒頭の鐘の音は、亡くなったボンへの鎮魂を意味するのでしょう(確実に『HIGHWAY TO HELL』へのアンサーと思われます)。そして不穏なギターリフから徐々にヒートアップして、いつになくシリアスな表情で、そしてヒステリックなサウンドで新生AC/DCの誕生を高らかに宣言する。こんなにもドラマチックで、聴き手をたぎらせるオープニング、そうはないですよね。

「Shoot To Thrill」のようなロックンロールもあるんだけど、やはりそれまでとはどこか違う。いや、ギターリフを聴けば間違いなくAC/DCなんだけど、やはり新しさを感じさせる。アナログB面1曲目のタイトルトラック「Back In Black」の、音の隙間を効果的に生かしたリフ&リズムワークはHR/HM史に残る名演のひとつです。かと思えば、前作からヒットした「Highway To Hell」の意思を受け継ぐ「You Shook Me All Night Long」もあるんだから……本当、すごいアルバムだと思います。

1曲1曲を抜き出して語るよりも、アルバムをひとつの音の塊として語りたい。『BACK IN BLACK』はそんな作品だと思います。HR/HMの教科書と言ってもいいくらい、まずはこれから聴け!と突きつけたいくらい、「知らなきゃモグリでしょ?」って言いたくなる1枚です。

ブライアン・ジョンソン(Vo)、アンガス・ヤング(G)、マルコム・ヤング(G)、クリフ・ウィリアムズ(B)、フィル・ラッド(Dr)。第二の黄金期を築き上げたこの布陣は、今後再び揃うことはありません。ブライアンの耳の不調によるツアー離脱、マルコムの認知症によるバンド活動休止、フィルの逮捕、クリフの引退……そして……残念でなりません。過去3回の来日中2度、この編成によるステージを観ることができたのは、もしかしたら幸運だったのかもしれませんね。



▼AC/DC『BACK IN BLACK』
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2017年5月26日 (金)

SOUNDGARDEN『SUPERUNKNOWN』(1994)

SOUNDGARDENが1994年春にリリースした通算4枚目のオリジナルアルバム。前作『BADMOTORFINGER』(1991年)が高く評価され、セールス的にもアメリカで200万枚を突破。GUNS N' ROSESやSKID ROWといったHR/HM勢とツアーをしながらも、ちょうどNIRVANA、PEARL JAMを筆頭としたシアトル勢によるグランジ・ムーブメントに突入したタイミングの作品だったこともあり(彼らもまたシアトル出身)、オールドスクールファンと新世代のファンの両方を掴むことに成功したわけです。さらにニール・ヤングあたりともツアーを回ってたし、もはや敵なし状態に突入したタイミングで制作されたのが、この『SUPERUNKNOWN』という傑作だったわけです。

不況とは裏腹にCD全盛期といえる時期の作品とあって、本作は70分超えの大作。アナログ時代だったら間違いなく2枚組アルバムとして評価されたことでしょう。そういう作品とあってか、内容も非常にバラエティに富んだもので、前作以上に音楽性の懐の深さを見せております。

例えばこれまでだったら「BLACK SABBATHやLED ZEPPELINのハードロックサイドにパンクを掛け合わせた」楽曲が中心だったところに、今作では「LED ZEPPELINがやりそうな、サイケデリックなアコースティックナンバー」あたりにも手を出しており、ストレートなロックチューンからサイケデリックバラード、変拍子の効いたハードロック、陰鬱で(ジャンルとしての)ドローンっぽいヘヴィナンバー、アコースティックサウンドを前面に打ち出した民族音楽まで本当に幅広い。作品としての成り立ちは異なりますが、きっとここで彼らは「俺たちの『PHYSICAL GRAFFITI』(LED ZEPPELINが1975年に発表した2枚組アルバム)」を作っておきたかったのかなと。そう思わずにはいられません。

前作の時点でかなりキャッチーさが強まってきてはいましたが、今作では小難しいアレンジを取り入れつつもメロディはさらにキャッチーさが強まっている。1曲目「Let Me Drown」の時点で耳に残る強いメロディが飛び込んでくるし、しかも大半の楽曲が「印象的なフレーズをリピートすることで、聴き手の耳に強くこびりつかせる」ことに成功している。また、ほとんどの楽曲が4分前後(短いもので1分半、長くても7分欠ける程度。しかも1曲だけ)と聴きやすく、曲数が多い(US版は15曲、インターナショナル版は16曲)わりにするする聴けてしまうわけです。すでに前作『SUPERUNKNOWN』の時点でその予兆は見られたわけですが、今作でその手法はさらに極まったと言えるでしょう。

その結果、本作はSOUNDGARDENの作品中唯一の全米No.1を獲得。トータルで500万枚以上ものセールスを記録したのでした。また、本作からのシングル「Black Hole Sun」もスマッシュヒットを記録(全米エアプレイチャート24位)。ミュージックビデオも多数制作されました。

いわゆるグランジ・ムーブメントの中でももっとも正統派HRの色合いが強かったSOUNDGARDEN。NIRVANAはある種パンクだったし、PEARL JAMは最初から王道アメリカンロックだった。SMASHING PUMPKINSはニューウェーブの香りをただよわせ、ALICE IN CHAINSは生粋のハードロック小僧がいろいろ拗らせて小難しい方向に顔をツッコミ出した。ドラッグとかいろんな影響もあってか、どんどん厨二っぽさを拗らせて早死にした奴もいたけど、結局一度も解散せずに生き残ったのはPEARL JAMだけ。だって普通のロックバンドだったんだもん。

そんな中、SOUNDGARDENはアンダーグラウンドなサウンドから徐々に洗練されていき、たどり着いた場所が“現代版LED ZEPPELIN”みたいな変に仙人じみたポジション。80年代後半、多くのHR/HMバンドが欲していたそのポジションを別の形で手にしてしまったわけです。とことん不思議なバンドですよね。

結局彼らは、続く『DOWN ON THE UPSIDE』(1996年)ですべてやりきったとして、1997年4月に解散を発表。潔いんだか、不器用なんだか。



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2017年2月 7日 (火)

THE HELLACOPTERS『HIGH VISIBILITY』(2000)

2015年末から本当にたくさんの、一時代を築き上げたアーティストたちの訃報が続いています。そんななか、つい数日前に元THE HELLACOPTERSのギタリスト、ロバート・ダールクヴィストが亡くなったことを知りました(ソースはこちら)。この名前だとなんとなくピンとこないけど、ロバート・ストリングスといえば「ああ!」と腑に落ちる方も多いのではないでしょうか。

ストリングスを生で観たのはたった1回きり、3度目にして結局最後の来日となってしまった2001年1月の渋谷CLUB QUATTRO公演(当時のレポートはこちら)。ちょうど4thアルバム『HIGH VISIBILITY』を携えて実施されたものでした。最前列で観たというのもあるけど、そのときの熱気や興奮は今でも昨日のことのように覚えています。

ドレゲン(BACKYARD BABIES)が在籍した初期2作にあったパンキッシュなガレージロック色からスピードを若干落とし、よりソウルフルな方向へと移行しはじめた3rdアルバム『GRANDE ROCK』(1999年)を経て、メジャーレーベルへと移籍して制作されたのが2000年リリースの『HIGH VISIBILITY』。作風的には『GRANDE ROCK』で表現した方向性をより突き詰めたもので、シングルカットもされた「Toys And Flavors」「No Song Unheard」で聴ける“エモみの強いブラックテイストのロックンロール”は初期とは異なる魅力に満ち溢れています。

かと思うと、適度な疾走感を持つ「Baby Borderline」「Sometimes I Don't Know」「I Wanna Touch」「Hurtin' Time」のような従来のアップチューンも豊富にあるし、壮大さが加わったことでオープニングにふさわしい1曲に仕上がった名曲「Hopeless Case Of A Kid In Denial」、70年代のKISSがよりソウルフルになったような「You're Too Good」「A Heart Without Home」(特に後者は、終盤にアップテンポに展開するアレンジがいかにもで最高すぎ)、どこか怪しげなフレーズ&メロディがクールな「No One's Gonna Do It For You」もある。『GRANDE ROCK』と同時期にリリースされたミニアルバム『DISSAPOINTMENT BLUES』という習作を経て、その個性を完全に確立させたのが『HIGH VISIBILITY』だったんだなと、本作以降のアルバムを聴くと改めて実感させられます。

初期2作を別モノとして捉えると、THE HELLACOPTERSのアルバムでもっとも好きなのがこの『HIGH VISIBILITY』。もちろんそれ以外のアルバムが本作よりも劣っているという意味ではありませんので、誤解なきよう。どのアルバムもそれぞれの良さがあって好きなのですが、個人的に作品が持つガレージロック度、ポップ度、ソウル度のバランス感が一番絶妙なのが本作なんじゃないかと思うのです。それに加えて、やはり2001年の来日公演が非常に思い出深いものになったことも大きな要因。きっとその後のアルバムでも来日が実現していたら、思い入れや感じ方も変わったのかもしれませんね。

ああ、もう一度ニッケとストリングスのステージ上での絡み、見たかったなぁ……。



▼THE HELLACOPTERS『HIGH VISIBILITY』
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2016年12月31日 (土)

DAVID BOWIE『★(BLACKSTAR)』(2016)

2016年1月8日(金)。午前中から乃木坂46の取材を行い、午後遅くまで作業を続けてから帰り道で購入したのが、この日世界同時リリースとなったデヴィッド・ボウイ3年ぶりの新作『★』と、ちょっと前にリリースされたボックスセット『FIVE YEARS 1969-1973』でした。

前年秋に先行公開されたMV「Blackstar」を観て聴いて、「これは間違いなく傑作だ!」と多くの音楽ファンが思ったことでしょう。派手なボウイではない、穏やかなボウイ。90年代以降の作品では『BLACK TIE WHITE NOISE』(1993年)『HOURS…』(1999年)が好きな自分としては「これはど真ん中な作品になるかも…」と、そういう期待感でいっぱいでした。その思いはアルバムリリース直前に公開された「Lazarus」を聴いても、変わることはありませんでした。

2013年に突如発表された復活作『THE NEXT DAY』も、もちろん大好きでした。しかし、特に日本盤はボーナストラック含め18曲入りということでたくさん詰め込みすぎた感が強く、すべてを理解するまでにはかなりの時間を要した記憶があります。あと、10年ぶりということで、期待が大きすぎたのもあって、ほんのちょっとだけ「ああ、こんな感じか……」とちょっとだけ思ったりもして。

ところが『★』は全7曲、オープニングの「Blackstar」こそ10分前後の大作ですが、トータルで41分程度と非常に聴きやすい内容。人力ドラムンベース的な雰囲気のある前半から、ドリーミーなミドルテンポのパートへと展開する流れなど、クラブミュージックとジャズとサイケデリックロックを掛け合わせたかのようなこの世界観に惹きつけられない人はいないと思います。続く、ジャズファンク的な「'Tis A Pity She Was A Whore」は『BLACK TIE WHITE NOISE』からの流れにある1曲で、ひたすらカッコいい。そこから再びダークな「Lazarus」へと流れる、いわゆるアナログA面の流れは圧巻です。

4曲目(いわゆるアナログB面)は「Sue (Or In A Season Of Crime)」は、2014年に発売されたベスト盤『NOTHING HAS CHANGE』に収録されたジャズアレンジの同名曲を、人力ドラムンベース+ロッキンにリアレンジしたもの。よくぞ『★』の世界観に合ったリアレンジを施したなと、関心させられます。その後も「Girl Loves Me」「Dollar Days」と雰囲気モノの良曲が続き、最後は90年代以降のボウイのカラーが色濃く表れた「I Can't Give Everything Away」で締めくくり。ただただすごいアルバムができたな。70歳目前にまた新しいキャリアが始まるとか、どういうことだよ……と聴き終えた直後にため息をついたことをよく覚えています。

それから3日後の1月11日(月・祝)。午後からSKE48の取材を終え、遅い昼食を取っていると、Twitter上に悪い冗談が次々とアップされる。えっ……それが事実だと気づくまでに、そう時間はかかりませんでした。その日の夜に予定していたライブに足を運ぶ気力が一気に失せ、帰宅してそのままこの『★』や往年の代表作を明け方まで聴き返すことを数日にわたり繰り返しました。

正直、上に書いた『★』の感想は、1月8日に感じたものとは正確には異なるかもしれません。ボウイの死により、すでに思い出補正もかかっているでしょうし。でも、彼の死を知るほんの数日前に発売されたこのアルバムを、リリース日に聴けたことだけは間違いない事実だし、あのときに感じた衝撃も間違いない事実。それを急逝による補正でねじ曲げられる前に感じられた、そこだけは良かったな、幸せだったなと1年近く経った今、より強く思うわけです。

この思い出補正がなかったら、2016年の年間ベストアルバム1位に選んでいただろうか……いや、選んでいたよね。自分のこの気持ちを信じることにします。



▼DAVID BOWIE『★(BLACKSTAR)』
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