RISE OF THE NORTHSTAR『THE LEGACY OF SHI』(2018)
2019年10月(日本では11月)リリースの、RISE OF THE NORTHSTAR通算2作目のフルアルバム。彼らはフランス出身の5人組ハードコア/ニューメタルバンドで、前作『WELCAME』(2014年)は本国から1年遅れの2015年夏にここ日本でも発売されています。
ご存知のとおり、彼らは大の日本/ジャパニーズカルチャー好き。バンド名は漫画『北斗の拳』がモチーフだし、ステージ衣装は不良漫画をイメージした学ラン、曲中には『ドラゴンボール』をはじめとした日本の漫画/アニメのキーワードや渋谷など日本の地名、侍や不良などのワードが登場するほどで、来日経験も多数。そもそも、今回のアルバムジャケットにもしっかり『SHIの伝承(英タイトルの日本語訳)』と記されています(これ、日本盤のみならず海外盤も一緒ですから)。
アルバム全体がというわけではないですが、本作中の数曲はコンセプチュアルな関連性を持っているようで、それがアルバムタイトルの『SHIの伝承』につながるようです。インタビューなどによると、この“SHI”には日本で言うところの「士」や「死」「詩」など複数の意味を持たせているとのことで、その解釈によってストーリーの感じ方も異なるんだとか。そのへんはぜに歌詞や対訳で確認してもらいたいところです。
さて、気になるサウンドですが……前作までに存在したオールドスクールなハードコア路線が後退し、モダンなニューメタルやラップメタル(ラップコアでは非ず)色が一気に濃くなっています。そういった意味では、前作に対して若干古臭いイメージを持ったリスナーにも受け入れてもらえるのでは……という気がします。個人的には前作までの路線が好みだったので、残念ではありませんが……。
とかいいながらも、リフワークや楽曲の構成はひたすらカッコいいですし、女性による日本語ナレーションから始まるオープニングからの流れはアメリカの同系統バンドには出せない魅力が感じられます。そんなカッコいい曲を聴いていると、突然「渋谷」だの「サイタマ(地名ではなく漫画『ワンパンマン』の主人公のほう)だの聴き慣れたワードが飛び込んできてドキッとさせられたりクスッとさせられたり。
サウンドプロダクション、楽曲のアレンジ力、アルバムの構成力などは格段の進歩が感じられる、相当な力作ではないかと。特に彼らのようなバンドはここ日本でこそウケなかったらどうするよ?っていう存在だと思うので、ぜひとも温かい目で見守りつつ応援してあげてほしい。そう思わずにはいられません。

▼RISE OF THE NORTHSTAR『THE LEGACY OF SHI』
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