ROBERT PLANT『FATE OF NATIONS』(1993)
1993年5月にリリーされた、ロバート・プラント通算6作目のオリジナルアルバム。日本盤は1ヶ月遅れの同年6月に発売されています。
80年代後半のHR/HMブームの延長で、LED ZEPPELINに再評価が集まり、カタログのCD廉価盤リリース(日本において)、Atlantic Recordsの周年イベントでの再結成ライブ、さらにはジミー・ペイジ初のソロアルバム『OUTRIDER』(1988年)やプラントの4thソロアルバム『NOW AND ZEN』(1988年)のリリースおよび両作にお互いゲスト参加するなどのトピックもあり、『NOW AND ZEN』はアメリカで300万枚を超える大ヒットに。続く『MANIC NIRVANA』(1990年)も全英15位/全米12位のスマッシュヒットを記録するなど、個人としても非常に充実した時期を迎えていた90年代前半、プラントはこの『FATE OF NATIONS』で新たな試みに挑戦します。
それは、打ち込み主体だった過去2作(『NOW AND ZEN』『MANIC NIRVANA』)から打って変わって、バンドサウンドを軸にしたアルバムを制作すること、バンドメンバーに名うてのミュージシャンを迎えることでした。
クリス・ヒューズ(TEARS FOR FEARS、ピーター・ガブリエル、ポール・マッカートニーなど)を共同プロデューサーに迎えた本作では、曲ごとに多彩なゲストプレイヤーが参加。そこで気に入なったメンバーが、おそらくその後のツアーにも参加することになったのではないかと想像しますが、そのメンツはフランシス・ダナリー(G/ex. IT BITES)、ケヴィン・スコット・マクマイケル(G/ex. CUTTING CREW。2002年逝去)、マイケル・リー(Dr/ex. LITTLE ANGELS)といった新しいところから、ダグ・ボイル(G)、チャーリー・ジョーンズ(B)、クリス・ブラックウェル(Dr)、フィル・ジョンストン(Key)など過去のアルバム/ツアーにも参加した面々も見つけることができます。
プラントはこのアルバムについて「本作を制作する前に、MOBY GRAPEやJEFFERSON AIRPLANE、ティム・ハーディン、QUICKSILVER、TRAFFICなど自分のルーツを振り返った」とコメントを寄せていますが、これがすべてなんでしょうね。つまり、LED ZEPPELINに参加する前、音楽を始めた頃の気持ちにまで一度立ち返って、改めて音楽を作ろうとした。そのために気心知れた仲間だけじゃなくて、新しい血も加えることで化学反応を期待したと。
その結果、「Calling To You」や「Memory Song (Hello Hello)」「Promised Land」などずっと避けてきたツェッペリン的ハードロックに堂々とチャレンジしているわけです。まあ、過去2作でその助走はできていたので、今作でそれに挑むことはそう難しくなかったと思います。環境的にも追い風が吹いていましたしね。
かと思えば、トム・ハーディンのカバー「If I Were A Carpenter」含めトラッド調の楽曲もいくつか含まれておるし、「29 Palms」のようなAOR風ポップロック、「Great Spirit」というソウルナンバーも用意されている。全編でツェッペリンしまくっているわけではなく、自身のルーツに忠実にさまざまなタイプの楽曲に挑戦する。ある意味ではバンド時代〜ソロ活動の集大成とも言える作風ではないでしょうか。そういう意味では雑多と言えなくもないですが、自分は前時代的な打ち込みポップ主流だった近作よりも好きな1枚です。
にしても、ここでの試みがそのままツェッペリンのセミ再結成……PAGE AND PLANTへとつながるとは、このときは考えてもみませんでしたが(またこの締めかよ。笑)。
▼ROBERT PLANT『FATE OF NATIONS』
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