ROCK CITY ANGELS『YOUNG MAN'S BLUES』(1988)
海外では1988年、ここ日本では1989年1月にリリースされたROCK CITY ANGELSのメジャーデビューアルバム。当時アナログでは2枚組で発表されましたが、CDでは1枚に収められています。
1988年に入り、前年デビューのGUNS N' ROSESが爆発的ヒットを飛ばし、ホクホク顔だった所属レーベルのGeffen Records。装飾をそぎ落とした本格派のハードロックが徐々に求められていく流れの中、当然のように「第二のガンズ」を探すべく新人を青田買いしていくわけですが、そこで射止めたのがフロリダ出身の5人組ロックバンドだったROCK CITY ANGELS。結成当初はグラムロック的でしたが、徐々に本作で聴けるブルージーな土着的ロックへとシフトしていったようです。ちなみに、デビュー前には当時まだ無名だったジョニー・デップも在籍していたとのことです(本作が楽曲クレジットには彼の名前も)。
二匹目のドジョウを狙ってデビューした彼らですが、ぶっちゃけ全然ガンズじゃないです。ガンズというよりも、その数年後にデビューするTHE BLACK CROWESに近いかもしれません。それもそのはず、本作のプロデューサーはZZ TOPなどを手がけてきたジョー・ハーディ。確かに70年代のZZ TOPに通ずるものがあるかもしれません。
ここ日本ではTBS『PURE ROCK』でオープニング曲「Deep Inside My Heart」のMVがちょくちょく流れており、その小汚いルックスとTHE GEORGIA SATELLITESにも通ずる古臭いブギーサウンドがそれなりにインパクトを与えていました。全編こういった土着的ロックかといいますとそうでもなく、「Damned Don't Cry」のように自身のルーツであるグラムロックをまんま表現した曲もあれば、ダイナミックなハードロック「Wild Tiger」もあるし、オーティス・レディングのソウルバラードをカバーした「These Arms Of Mine」もある。疾走感のある「Rumblefish」、ゴリゴリのハードブギー「Boy From Hell's Kitchen」、ピアノとアコギをフィーチャーしたカントリーバラード「Liza Jo」、ファンキーなダンスロック「Beyond Babylon」など、とにかく聴き応えのあるR&Rアルバムです。こうやって聴き返すと、ハードロック色の強いROLLING STONESみたいなイメージもあるなと。当時は「第二のガンズ」という色眼鏡が最初にあったので、子供だった自分はそこまで気づけませんでしたが。
時代が早すぎたとか売り出し方を間違えたとかいろいろあると思いますが、リリースから30年近く経った今だからこそ再評価したい1枚じゃないでしょうか。本作発表後、彼らはアメリカからイギリスに渡り、そこでTHIN LIZZYのブライアン・ロバートソン(G)を新メンバーに迎えレコーディングを行ったようですが、それらの音源は発表されることなくGeffenから離脱。その後も地味に活動していたようですが、2012年にボーカルのボビー・デュランゴが死去。これを機に、バンドは解散してしまったようです。
本作、日本盤は初版以降廃盤状態。海外では10年くらい前に別レーベルから再発されたようですが、こちらもすでに廃盤。デジタル配信もされていないので、残念ながら中古で探すしかなさそうです。