カテゴリー「Rolling Stones」の29件の記事

2019年6月26日 (水)

THE ROLLING STONES『EXILE ON MAIN ST.』(1972)

1972年5月に発表された、THE ROLLING STONES通算10作目(イギリスで。アメリカでは12枚目)のスタジオアルバム。前作『STICKY FINTERS』(1971年)から1年1ヶ月という短いスパンで届けられた、全18曲入りの2枚組アルバム(CDでは1枚)は引き続き全英/全米1位を獲得。「Tumbling Dice」(全英5位/全米7位)、「Happy」(全米22位)というヒットシングルにも恵まれました。

ミック・テイラー(G)加入後2作目に当たる本作はジミー・ミラーを再度プロデューサーに招き、ロンドンやロサンゼルス、フランスなどでレコーディングを敢行。曲によっては1969年頃から存在するものが含まれていたり、音楽的にもロックンロールやブルース、カントリー、ソウル、ゴスペル、ハードロックなどさまざまなサウンドが感じられることから雑多な印象も強い作品集でもあります。

その「ストーンズ流ロックの見本市」みたいなアナログ2枚組(彼らにとっては初の試みでした)はリリース当初こそ評価は高くなかったようでした。が、僕が洋楽ロックを意識的に聴き始めた中学生時代にはすでに「70'sストーンズの最高傑作」みたいな高評価を獲得しており、僕自身もそういう認識で本作と初めて接した記憶があります。

最高傑作かどうかは別として、確かにいろんなタイプの曲が含まれていてお得感があるし、1曲はひっかかる佳曲が存在する。けど、殺傷力としては前作『STICKY FINTERS』のほうが上じゃない?と感じたのもまた事実。アルバムとしてのまとまりという点においても、確実に前作のほうが上ですものね。

しかし、聴き込めば聴き込むほどにいろんな魅力が見えてくるのが、この『EXILE ON MAIN ST.』なのかなと。それくらいクセになるスルメ的アルバムと言えるんじゃないでしょうか。

とにかく、力みすぎていないのが良い。しかも1曲1曲がコンパクト。だから、18曲も収録されているのに聴く側のこちらも終始リラックスして楽しめる。そこが良し悪しあるとは思いますが、僕としてはこういう楽しみ方ができるストーンズのアルバムも良いんじゃないかと思っています。

それは、60年代末の『BEGGARS BANQUET』(1968年)から始まったアメリカ南部への傾倒に対する最終結論のようでもあり、いろいろ遊びまくった結果でもあるのかなと。それがこのリラックス感にもつながっているのかもしれませんね。

そういえば、この時期はメンバーの多くがドラッグ癖でだいぶひどい状態だったと聞きます。この「軸はあるのに雑多」な方向性はそういった当時の環境も大きく影響しているのでしょうか。そこも含めて、歴史的資料価値の高い1枚と言えるかもしれません。

ちなみに、本作は2010年に未発表テイクを追加したデラックス盤が発売済み。こちらは一部楽曲に追加レコーディングが行われたという話もあり、新曲としても十分通用する未発表曲があったりと、なかなかの内容です。それもあって、再発ながらも全英1位/全米2位を記録しています。こちらもオススメです。

 


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2019年5月21日 (火)

THE ROLLING STONES『HONK』(2019)

2019年4月発売のTHE ROLLING STONES最新ベストアルバム。本来はこの春からスタートする予定だった全米ツアーに合わせたアイテムだったのですが、ご存知のとおりミック・ジャガー(Vo)の急病でツアー延期に。なんともとんちきなタイミングでのリリースになってしまいましたが、それでも全英8位、全米23位というまずまずの数字を残しました。

いわゆるアーティスト公認のベストアルバムとしては、2012年の『GRRR!』以来6年半ぶり。『GRRR!』には新曲2曲が含まれていましたが、本作はRolling Stones Records設立後初のアルバム『STICKY FINGERS』(1971年)から最新スタジオアルバム(ブルースカバーアルバム)『BLUE & LONESOME』(2016年)までの全スタジオ作品から最低1曲ずつ選ばれ収録(2枚組およびボーナスディスク付きデラックス盤のみ)という代物になります。また、3枚のディスクから抜粋したCD1枚ものも海外のみでリリース。ここでは、3枚組仕様のデラックス盤について話を進めていきます。

70年代以降のベストということで、「(I Can't Get No) Satisfaction」も「Jumpin' Jack Flash」も、本タイトルの元ネタとなっているであろう「Honky Tonk Women」も入っていない。ですが、これだけの代表曲(全38曲)がズラリと並ぶとなかなか壮観なものがあります。実際、ほとんどの曲が口ずさめますしね。

また、ベストアルバムとはいえ単なるヒット曲集では終わっておらず、一般的なベスト盤からは漏れることの多い「Doo Doo Doo Doo Doo (Heartbreaker)」(1973年の『GOATS HEAD SOUP』収録)や同アルバムのオープニングを飾る「Dancing With Mr. D」(オープニング曲)、「Rocks Off」(1972年の『EXILE ON MAIN ST.』収録)が含まれているのも興味深いところ。アップテンポの「Respectable」(1978年の『SOME GIRLS』収録)や「Rough Justice」(2005年の『A BIGGER BANG』)あたりが収録されているのも、セレクト的に面白いなと思います。要するに、このへんが全米ツアーでは披露されるんじゃないか……ってことだったのかな。

あ、このベストアルバムですがフィジカル&デジタルとストリーミングとでは曲順が異なるのでご注意を。僕も最初、ストリーミングで楽しんでからCDを購入したのですが、リッピングしたものを聴き始めたら2曲目から全然違う曲順でびっくりしたので。

まあ既発曲中心のDISC 1および2についてはこれくらいでいいでしょう。今回特に強くオススメしたいのはこの2枚ではなく、デラックス盤のみで聴くことができるDISC 3なのですよ。

こちらは全10曲入りのライブアルバムとなっており、収録時期も2013年から2018年と非常に幅広いもの。こちらには60年代の「Get Off Of My Cloud」や「She's A Rainbow」「Let's Spend The Night Together」「Under My Thumb」が含まれているけど、上に挙げたような王道の代表曲はゼロ。まあそのへん含めたらほかのライブ盤と一緒になっちゃうしね。

このライブ盤の魅力はそういった60年代曲や「Dancing With Mr. D」「Shine A Light」といった70年代曲の最新ライブバージョンだけでなく、豪華アーティストとのコラボレーション曲が豊富に含まれている点でしょう。「Beast Of Burden」ではエド・シーラン(ストリーミングでは本作のみ未配信。契約の関係でしょうか)、「Wild Horses」ではフローレンス・ウェルチ(FLORENCE & THE MACHINE)、「Dead Flowers」ではブラッド・ペイズリー、「Bitch」ではデイヴ・グロール(FOO FIGHTERS)がそれぞれ参加しており、各々のカラーが濃く表れた好演を楽しむことができます。

個人的にはフローレンスが参加した「Wild Horses」の色気、デイヴ・グロールのハイテンションぶりに笑みがこぼれる「Bitch」がお気に入り。これらを聴くためだけにアルバムを購入しても損はしないかと。10曲入りライブアルバムにしては割高ですが、おまけに36曲入りベストアルバムが付いてくると考えればお安い気がしません?

気づけば2014年から実現していないストーンズ日本公演。これを機にそろそろ……と思うのですが。待ってます。

 


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2019年4月27日 (土)

THE ROLLING STONES『TATTOO YOU』(1981)

1981年8月に海外でリリースされた、THE ROLLING STONES通算16枚目(イギリスにて/アメリカでは18枚目)のスタジオアルバム。「Start Me Up」(全英7位/全米2位)、「Waiting On A Friend」(全英50位/全米13位)、「Hang Fire」(全米20位)というシングルを含み、アルバム自体も全英2位、全米1位(9週連続)を獲得。特にアメリカでは久しぶりに実施された大々的なツアーの成功も手伝って、400万枚以上を売り上げる大ヒット作となりました。

前作『EMOTIONAL RESCUE』(1980年)を携えたツアーが翌年に延期になり、その埋め合わせ(およびツアー時のプロモーション)のために急遽制作が決まった本作。それが前作から1年弱という短いスパンで発表された理由に当たります。

ところが、当時すでにミック・ジャガー(Vo)とキース・リチャーズ(G, Vo)の不仲はひどいものとなり始め、曲作りはうまく進まなかったそうです。それもあって、本作には前作はそれ以前のアルバムからの録音済みのアウトテイクにオーバーダビングをした楽曲が多く含まれています。

例えば、オープニングを飾る代表曲「Start Me Up」は1977年頃(『SOME GIRLS』)のセッションがベースだし、「Slave」は1975年頃(『BLACK AND BLUE』)のセッションが元に。「Tops」や「Waiting On A Friend」なんて1972〜3年頃(『GOATS HEAD SOUP』)の音源が下地になっているそうですから。

それもあってか、アルバムとしての方向性は若干とっ散らかっている印象も。「Hang Fire」や「Neighbours」なんてパンク以降のストーンズのそれだけど、「Slave」は70年代前半の危うさを伴うストーンズっぽいし、「Worried About You」あたりはまた違った年代の彼らをイメージさせる。しかも、レコーディング環境もまちまちということで、本来ならサウンドの質感や録音状況もバラバラだったはずなのに、名手ボブ・クリアマウンテンの手により統一感を得ることに成功。結果として、現在まで安心して楽しめているわけです。

バカ売れした作品ということで代表作のひとつと数えられることも多い1枚ですが、不思議と印象が弱い作品であるのもまた事実。オープニングの「Start Me Up」の印象がめちゃめちゃ強いくらいで、ほかの曲は可もなく不可もなくといったところ。もちろんそれは悪いという意味ではなく、ストーンズのアルバムとしては平均的な内容ということを指しているのですが。

印象的には地味な『EMOTIONAL RESCUE』ですけど、個性という点においては本作よりも1枚上手。しかも本作の次が『UNDERCOVER』(1983年)ですから、『TATTOO YOU』はどうしても“普通”という評価を下さねばならなくなる。めっちゃ売れたのに、そういう不遇を持つ1枚かもしれませんね。

 


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2019年1月 7日 (月)

THE ROLLING STONES『LET IT BLEED』(1969)

1969年12月に海外でリリースされた、THE ROLLING STONES通算8枚目(イギリスにて/アメリカでは10枚目)のスタジオアルバム。前作『BEGGARS BANQUET』(1968年)でブルース/ロックンロールへと回帰した彼らが、その路線をさらに推し進めた傑作のひとつ。60年代後半の彼らを語る上で、『BEGGARS BANQUET』と併せて紹介されることの多い1枚です。

本作のレコーディング中に、オリジナルメンバーのブライアン・ジョーンズ(G)が脱退。代わりにミック・テイラーが加入し、「Country Honk」と「Live With Me」の2曲のみですが早くもその手腕を発揮しています。

本作の凄みは、ブルースやカントリーなどのルーツミュージックをベースにしつつも、「Gimme Shelter」や「Monkey Man」のようにサイケデリックでダークなナンバーや、約7分にもおよぶ(ライブでは10分を超えることも)プログレッシヴなブルースロック「Midnight Rambler」、ゴスペルをフィーチャーした壮大なバラード「You Can't Always Get What You Want」といった、その後のストーンズに必要不可欠な名曲を多数残していることでしょうか。そもそも、アルバムのオープニングが不穏な雰囲気の「Gimme Shelter」から始まるという時点で、本作が『BEGGARS BANQUET』と並んで名作と捉えられている理由がおわかりいただけるかと(前作はいきなり「Sympathy For The Devil」始まりですからね)。これも、ベトナム戦争などの影響で不安定だった当時の世相を反映させた結果なんでしょうね。

「Tonky Tonk Women」のカントリーバージョン「Country Honk」こそ牧歌的な曲調ですが、それ以外の楽曲からはいつも以上にシリアスな空気を感じる。「Live With Me」はまだしも、若干緩やかな雰囲気の「Let It Bleed」でさえ節々から殺伐としたものが見え隠れするんですから、どれだけ1969年って怖い時代だったんだよって話ですよ。自分もまだ生まれていなかったですし、その数年後に生を受けたとはいえリアルタイムでは当時のことは覚えてないですから。ここ日本は高度成長期末期だったとはいえ、まだまだ貧富の差も激しかったですし、それが戦争を行なっていたアメリカとなると……ミック・ジャガー(Vo)やキース・リチャーズ(G, Vo)の目にはどう映っていたんでしょうね。

加えて、本作制作中にはブライアンの急逝(7月3日)もあり、こういった不幸もアルバムのダークさに拍車をかけたはず。そういった意味では、ダークでネガティヴだった60年代末に自身でけじめをつけた、そんな区切りの1枚だったのかもしれません。

それにしても、本当に名曲揃いの1枚で捨て曲皆無。キースが初めて全編リードボーカルを担当した「You Got The Silver」もあるし、ロバート・ジョンソンのカバー「Love In Vain」もある。後者はライブバージョンのほうが優れていますが、このスタジオバージョンも悪くない。また、キースが全面的にギターを担当しているという点においても、本作は注目すべき1枚ではないでしょうか。

ここまでで一度ダークさを振り切り、ミック・テイラーを加えたストーンズは続く『STICKY FINGERS』(1971年)で正真正銘の再生を遂げることになります。



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2018年12月 7日 (金)

THE ROLLING STONES『VOODOO LOUNGE』(1994)

1994年7月にリリースされた、THE ROLLING STONES通算20作目のオリジナルアルバム(イギリスにて。アメリカでは22枚目)。ビル・ワイマン(B)脱退後初のオリジナルアルバムで、レコーディングにはマイルス・デイヴィスやスティングのサポートで知られるダリル・ジョーンズが参加。以後、彼は現在に到るまでツアーやレコーディングに参加する準メンバーとしてバンドに関わっています。

前作『STEEL WHEELS』(1989年)のセールス的成功および大々的なワールドツアーが好評を得たこともあり、本作は全英1位/全米2位という高記録を残していますが、シングルに関しては「Love Is Strong」(全英14位/全米91位)、「You Got Me Rocking」(全英23位/全米113位)、「Out Of Tears」(全英36位/全米60位)、「I Go Wild」(全英29位)と大きなヒットにはつながりませんでした(なんでも、ストーンズとしてヒットシングルが生まれなかったは初めてのアルバムなんだとか)。

プロデュースを手がけたのはドン・ウォズとTHE GLIMMER TWINS(ミック・ジャガーキース・リチャーズ)。本作の前に、キースは『MAIN OFFENDER』(1992年)、ミックは『WANDERING SPIRT』(1993年)とソロアルバムを制作しており、それぞれストーンズとして久々の長期ツアーから解放されたためか、非常にストレートなロックを聴かせてくれました。そういうモードも影響してなのか、ストーンズとして5年ぶりの新作となったこの『VOODOO LOUNGE』は非常に“Back to basic”的な作風となっています。

確かに、産業ロック的でとても“Well-made”だった前作と比べると、本作のスカスカ感と肩の力の抜けた演奏は古くからのストーンズファンが知る“らしさ”に満ちあふれています。60年代のポップサイドにも通ずる「New Faces」や「Moon Is Up」あたりは、その肩の力の抜け具合が良い方向に作用した好例だと思います。特に「Moon Is Up」は、単なる焼き直しで終わらないモダンさがあり、常にアップデートを繰り返していることを感じさせます。

かと思えば、60年代末のオカルトチックな雰囲気を漂わせる「Love Is Strong」がアルバムのオープニングを飾ったり、70年代前半のワイルドサイドをイメージさせる「You Got Me Rocking」や「I Go Wild」もある。「Suck On The Jugular」は80年代以降のダンス/ディスコ路線をモダン化させたものだし、キースVo曲のプログレッシヴなブルース「Thru And Thru」もある。原点回帰すると同時に、これまでのストーンズをごった煮しつつ新たなテイストも包括する。歴史の長いバンドが今もなお、成長過程にあることを伺わせるのがこの『VOODOO LOUNGE』の魅力だと思います。

確かに変態的なベースラインがなくて物足りないって声もわかりますが、オープニングが「Love Is Strong」でラストが「Mean Disposition」という時点でこのアルバムは最高なんですよ。僕はこのユルさがたまらないんです。



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2018年10月10日 (水)

THE ROLLING STONES『BRIDGES TO BABYLON』(1997)

1997年9月にリリースされたTHE ROLLING STONESの21stアルバム(イギリスにて。アメリカでは23枚目のアルバム)。全英6位、全米3位という好成績を残し、アメリカでは100万枚を超えるセールスを記録したほか、「Anybody Seen My Baby?」(全英22位)、「Saint Of Me」(全英26位、全米94位)、「Out Of Control」(全英51位)といったシングルヒットを生み出しました。

産業ロック的な『STEEL WHEELS』(1989年)から『VOODOO LOUNGE』で原点回帰。ビル・ワイマン(B)というオリジナルメンバーを欠きながらも、レコーディング&ツアーメンバーとしてダリル・ジョーンズ(マイルス・デイヴィスのバンドや、スティングの1stソロツアーに参加)が加わったことで「クセは弱いけど安定感の強いロック&ソウルバンド」へと進化しました。そこから続くこの『BRIDGES TO BABYLON』では、『VOODOO LOUNGE』でのスタイルに当時主流だったダンスミュージックやデジタルサウンドを加えた革新的なものとなっています。

プロデュースは前作『VOODOO LOUNGE』(1994年)から引き続きドン・ウォズ&THE GLIMMER TWINS(ミック・ジャガーキース・リチャーズ)という安定の布陣に、ダニー・セイバー(マドンナデヴィッド・ボウイU2オジー・オズボーンKORNなど)、THE DUST BROTHERS(ベックBEASTIE BOYSサンタナヴィンス・ニールなど)、ロブ・フラボニ(ボブ・ディラン、エリック・クラプトン、THE BEACH BOYSなど)、ピエール・ド・ビューポート(キースのギターテック)といったモダンなプロデューサーとトラディショナルな面々が多数参加。こうして1枚のアルバムに多数のプロデューサーが参加するのはストーンズ史初のことで、曲ごとに変化をつけるという新たな試みが施されています。

それは演奏面にも言えることで、例えばオープニングの「Flip The Switch」や11曲目「Too Tight」ではアップライトベースを導入。モダンな色合いが濃い「Anybody Seen My Baby?」や「Out Of Control」ではサンプリングを導入したり、「Saint Of Me」では打ち込みのダンスビートを同期させたブリットポップ的手法が採られている(この曲ではベースをミシェル・ンデゲオチェロがプレイ)。「Might As Well Get Juiced」にもそれっぽいシンセがフィーチャーされていたりと、まあミックらしさに満ち溢れているんですよね、このアルバム。

かと思うと、キースVo曲が史上最多の3曲(「You Don't Have To Mean It」「Thief In The Night」「How Can I Stop」)も収録されている。そう考えると、トータル性重視というよりはそのときにやりたいことをいろいろ詰め込んだ実験作と言えなくもない。実際、トータルバランスは近作の中では一番バラバラですしね。

だけど、今でも演奏される頻度の高い「Out Of Control」が含まれているという点においては、バンドにとって無視できない1枚なのかもしれません。

にしても、このアルバムから次のスタジオアルバム『A BIGGER BANG』(2005年)まで、まさか8年もブランクが空くなんて当時は思ってもみませんでしたよ。視点を変えたら、ここでいろいろやり尽くした感も強かったのかもしれませんが……。



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2018年9月21日 (金)

THE ROLLING STONES『STEEL WHEELS』(1989)

1989年8月にリリースされた、THE ROLLING STONESの19thアルバム(イギリスにて。アメリカでは21枚目)。前作『DIRTY WORK』(1986年)から3年ぶりの新作にあたり、全英2位、全米3位を記録(アメリカでは200万枚を超えるヒット作に)。本作からは「Mixed Emotions」(全英36位、全米5位)、「Rock And A Hard Place」(全英63位、全米23位)、「Almost Hear You Sigh」(全英31位、全米50位)というシングルヒットも生まれましたが、この結果からですと“アメリカ>イギリス”寄りなアルバムということになるのでしょうか。アルバム発売直後の8月31日からはワールドツアーもスタート。その一環で、1990年2月には東京ドーム10回公演という、今では考えられないような規模感の、待望の初来日公演も実現しました(僕もこのうちの1公演に足を運び、アリーナ最前ブロックでノックアウトされました)。

ミック・ジャガー(Vo, G)キース・リチャーズ(G, Vo)の不仲でストーンズ活動再開が絶望的となり、ミックは『PRIMITIVE COOL』(1987年)、キースは『TALK IS CHEAP』(1988年)とそれぞれソロアルバムを発表。ミックなんてストーンズより先に、1988年春に東京ドームで初来日公演をやっちゃいましたからね。

そんな中、1989年に入ってから2人の仲が修復に向かい、そのままバンドでスタジオ入り。プロデュースをミック&キースとクリス・キムゼイ(過去にプロデューサーとして『UNDERCOVER』、エンジニアとして『STICKY FINGERS』『SOME GIRLS』『EMOTIONAL RESCUE』に参加)を手がけ、チャック・リーヴェル(Key)といったおなじみのメンツに加え、マット・クリフォード(Key)やサラ・ダッシュ(Cho)、リサ・フィッシャー(Cho)、バーナード・ファウラー(Cho)などその後のツアーにも参加する面々が新たに参加しています。

サウンド的には“産業ロック版ストーンズ”と揶揄したくなるくらい、モダンで硬質な音作り。かなりミックのカラーが反映されているのかなと思いきや、楽曲面ではキースらしいリフやメロディも至るところに感じられ、良い具合に2人の色がミックスされているのかなと。それこそ「Mixed Emotions」という楽曲のタイトルどおりに(本来は困惑のほうの意味ですけどね)。

ミックにしろキースにしろ、歌声がすごくみずみずしくて、それぞれのソロアルバムのときより若返っているような印象すら受けます。また、チャーリー・ワッツ(Dr)のドラムも冴えているし、ロニー・ウッド(G)もミックとキースをうまいことサポートしながら自分の色を出している。ビル・ワイマン(B)に至ってはある意味いつもどおり変なフレーズ弾きまくりで、「Break The Spell」では個性出しまくり。

そうそう、本作って王道な曲がたくさんある一方で、変な曲も含まれているアルバムでもありますよね。ツアーのオープニングSEに使われた「Continental Drift」の民族音楽っぽさや、どす黒いブルースロック「Break The Spell」とか。「Almost Hear You Sigh」もストーンズというよりはキースのソロっぽいしね(変な曲ではないけど)。

ストーンズが90年代に突き進むために、改めて足並みをそろえた。そのために必要なドーピングがここに施されている……そう考えると、非常に納得のいく作品ではないかと。個人的には、やっぱり初来日の思い出が強いので忘れられないアルバムです。

が、このアルバムと続くライブアルバム『FLASHPOINT』(1991年)がビル・ワイマン最後のアルバムになるとは、この頃は考えてもみなかったですけどね。



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2018年8月21日 (火)

THE ROLLING STONES『THROUGH THE PAST, DARKLY (BIG HITS VOL.2)』(1969)

昨日の「Jumpin' Jack Flash」つながりで引っ張り出したのが、このアルバム。高校生の頃、これと『BIG HITS (HIGH TIDE AND GREEN GRASS)』(1966年)を同時購入し、初期のTHE ROLLING STONESをひたすら勉強しまくったのも、今となっては懐かしい思い出です。

本作は1969年9月に英米でリリースされた、通算2枚目のベストアルバム。タイトルからもわかるように、『BIG HITS (HIGH TIDE AND GREEN GRASS)』に続く第2弾ということで、ヒットシングルの数々がセレクトされています。

実はこのアルバム、英米同時リリースながらもそれぞれ選曲が異なるんですよね。60年代はTHE BEATLES同様、国ごとにオリジナルアルバムの選曲が少しずつ異なったり、本国では発売されていないアメリカ制作のアルバムがあったりと、いろいろ複雑なんですよね。

で、僕が購入したのは「Jumpin' Jack Flash」から始まるイギリス版の選曲のほう(『BIG HITS (HIGH TIDE AND GREEN GRASS)』はもともとアメリカ制作だったのですが、のちに異なる選曲のイギリス版も発売。こちらも僕が購入したのはイギリス版選曲のほうです)。

イギリス版のほうは選曲が非常に興味深く、基本的には1967〜69年のサイケデリック期の楽曲が中心。「2000 Light Years From Home」や「We Love You」「She's A Rainbow」「Dandelion」といった楽曲はこの当時ならではといえるもので、そこに初期の「You Better Move On」やフォーキーな「Sittin' On A Fence」、サイケデリック期と南部ロック期の間にある「Street Fighting Man」、70年代ストーンズの兆しが見え始めた「Honky Tonk Women」が入り乱れてと、バンドとしての過渡期ぶりが凝縮されているんですよね。

このへんのどっちつかずな感じもストーンズらしいと思うし、こんななんだからそりゃあ70年代後半以降のディスコやらダブやら、あらぬ方向に進んでしまうのも致し方ないのかなと。ストーンズを80年代半ばから聴き始めた後追い世代としてはそう思うわけです。

ちなみに、「Paint It Black」から始まるアメリカ版のほうも後から聴いてみたのですが、やっぱりしっくり来ないんですよね。もうね、「Jumpin' Jack Flash」のあとに「Mother's Little Helper」が来る流れがする込まれてしまっているので。こればかりはどうにもなりません。

今でこそCD複数枚でキャリアを総括するベストアルバムは当たり前ですけど、アナログ盤ならではの曲数(12曲程度で40分前後)は手軽に聴けて、しかもリピートしやすいので“ながら聴き”には最適。いやあ、良質なベストアルバムですよこれは。



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2018年8月20日 (月)

ARETHA FRANKLIN『ARETHA』(1986)

1986年10月にリリースされた、アレサ・フランクリン通算34枚目のスタジオアルバム。アルバムの大半を前作『WHO'S ZOOMIN' WHO?』(1985年)を手がけたナラダ・マイケル・ウォルデンが、2曲のみアレサ自身が、そして1曲だけキース・リチャーズTHE ROLLING STONES)が担当。前作の全米13位(ミリオン)には届かなかったものの、本作も全米32位まで上昇し、50万枚以上売り上げています。特に本作からは、ジョージ・マイケルとのデュエット曲「I Knew You Were Waiting (For Me)」が全米1位の大ヒットとなったほか、「Jumpin' Jack Flash」(全米21位)、「Jimmy Lee」(全米28位)、「Rock-A-Lott」(全米82位)という数々のヒットシングルが生まれています。

僕自身、初めて手に取ったアレサ・フランクリンのアルバムが本作でした。当時中学生だったものの、ストーンズのキースとロニー・ウッドをゲストに迎えた「Jumpin' Jack Flash」のカバー(当然キースがプロデュース)は、原曲とは異なるスローなテンポで、なおかつソウルテイストが強まったクールなアレンジで、MVともどもヘビロテした記憶があります。この曲でドラムを叩いているのが、のちにキースのバンドに加わるスティーヴ・ジョーダン。キーボードはストーンズのサポートでおなじみのジャック・リーヴェルだし、本当にオールスターバンドによる豪華なカバーなんですよね。

この1曲聴きたさに手にしたアルバムでしたが、オープニングを飾る「Jimmy Lee」(今聴くと時代を感じますね)、WHAM!解散後のジョージ・マイケルが華やかな歌声を聴かせてくれる「I Knew You Were Waiting (For Me)」と、とにかくポップさが際立つアルバムではないかと。いかにもなソウルバラード「Do You Still Remember」も当時は非常に大人っぽさを感じつつ、背伸びしながら聴いていました。懐かしい。

アナログB面は派手なディスコチューン「Rock-A-Lott」を皮切りに始まるも、ゆったりしたリズムのソウルチューン「An Angel Cries」、ストリングス&ブラスをフィーチャーしたゴスペルナンバー「He’ll Come Along」、ラリー・グラハムとのデュエット「If You Need My Love Tonight」など、全体的に落ち着いた印象。ラストはブロードゥエイミュージカル『フィニアンの虹』から「Look To The Rainbow」のカバーでしっとり幕を下ろします。

1986年当時の僕は、とにかくMTVで気になった曲があったらジャンル問わず、まずはアルバムをレンタルして聴くことが習慣になっていました。このアルバムもその延長だったのですが、ストーンズやジョージ・マイケルといった取っ付きやすさがあったおかげで、すんなり入っていけました。今となってはアレサ・フランクリンの魅力はここじゃないことは承知しておりますが(笑)、それでも記憶の片隅にはいつもこのアルバムが存在していました。そりゃあ、『LADY SOUL』(1968年)とか聴いたほうがわかりやすいですけどね。それでも、気づけばこの週末はこのアルバムばかり聴いていたのですから……まあ、こうしてここで取り上げるのも自分なりのトリビュートになってるのかな。



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2018年6月 2日 (土)

THE ROLLING STONES『EMOTIONAL RESCUE』(1980)

1980年6月に海外でリリースされた、THE ROLLING STONES通算15枚目(イギリスにて/アメリカでは17枚目)のスタジオアルバム。前作『SOME GIRLS』(1978年)でディスコビートを導入した「Miss You」が全米No.1になったり、かと思えばアルバム自体はパンキッシュでぶっきらぼうな側面が強かったりと、アメリカだけで600万枚を超えるヒット作になりましたが、続く今作も全米1位を獲得。前作は2位止まりだったイギリスでも1位を獲得し、アメリカのみで200万枚を超えるセールスを打ち出しました。

前作の「Miss You」をより推し進めたようなソウル/ディスコチューン「Dance (Pt. 1)」からスタートする本作は、全体的にインパクトの弱い1枚としてファンの間では知られています。じゃあ駄作なのかと言われると、まったくそんなことはなく、むしろ“マニアが喜びそうな隠れた名盤”的に好むリスナーも少なくないのではないか……最近この作品を聴き込んでいるうちに、そう思うようになりました。

確かにストーンズらしいロックンロールナンバーも「Summer Romance」や「Let Me Go」「Where The Boys Go」「She's So Cold」など存在しますが、それ以上に本作の目玉は前作から続くディスコ路線に加えて、レゲエやダブの要素が加わり始めているところでしょう。

レゲエの軽やかさが感じられる「Send It To Me」をはじめ、ミック・ジャガー(Vo)がほぼ全編ファルセットで歌うダブテイストのソウルナンバー「Emotional Rescue」。この2曲の存在はかなり大きく、先の「Dance (Pt. 1)」と併せて本作のキモと呼びたいところ。が、多くのストーンズファンはこういった変化球よりも、先のロックンロールナンバーに目が耳が行ってしまい、結果「いつもよりインパクトが弱い」と認識してしまう。勿体ない。本当に勿体ない1枚です。

ミックが歌うカントリーバラード「Indian Girl」やブルージーなミディアムスローナンバー「Down In The Hole」、そしてアルバムを締めくくるキース・リチャーズ(G)歌唱バラード「All About You」も良い味を出している。僕自身は上のロックナンバーよりも新機軸3曲や「Down In The Hole」、そして「All About You」のような楽曲に本作の魅力を見出してしまいます。だからこそ、“マニアが喜びそうな隠れた名盤”なのかもしれませんね。まあ、名盤というのはちょっと言い過ぎな気もしますが……。

勢いと荒さに満ちた『SOME GIRLS』と、鉄壁さが際立つ次作『TATTOO YOU』(1981年)に挟まれたことでどうしても地味さが目立ってしまいがちですが、これはこれでなかなかな1枚だと思っています。

 


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