2019年1月 9日 (水)

ROXY MUSIC『ROXY MUSIC』(1972)

1972年初夏に発表された、ROXY MUSICの1stアルバム。当時のメンバーはブライアン・フェリー(Vo, Piano)、ブライアン・イーノ(Synth)、アンディ・マッケイ(Sax)、フィル・マンザネラ(G)、ポール・トンプソン(Dr)。レコーディングにはグラハム・シンプソン(B)の名前があるものの、同時すでに正式メンバーではなかった、という話も。プロデュースを手がけたのはKING CRIMSONで作詞を担当していたピート・シンフィールドで、これは当時の所属レーベルがクリムゾンと同じE.G. Recordsだったことが大きく影響しています。

それもあってか、本作にはプログレッシヴロックの香りもちらほら感じられます。7分前後もある「If There Is Something」や「Sea Breazes」、「2HB」なんてまさにそれですよね。サックスを含む編成というのも、初期クリムゾンに通ずるものがありますし。

ところが、ご存知のとおり初期の彼らはグラムロックの範疇で語られることが多い。それは当時のファッションだったり、デヴィッド・ボウイの前座としてツアーを回ったりなど、そういったことも大きく影響しているのでしょう。いや、楽曲自体にもその香りはたっぷり感じられますけどね。

デビューシングル「Virginia Plain」からして“そっち側”だし、アルバムのオープニングを飾る「Re-Make/Re-Model」も同じく。「Chance Meeting」や「Would You Believe?」の耽美さなんて、疑いようがないほどにグラムロックのそれですからね。そりゃ仕方ないですわ。

ただ、このバンドを単なるグラムロックやプログレの枠で括れないものにしているのが、ブライアン・イーノの存在。奇抜なビジュアルはもちろん、その奇抜なサウンドメイキングは間違いなく本作を特別なものに昇華させています。楽曲単位で普通にカッコいいと思っていると、突如耳に飛び込んでくるヘンテコな音……これがまたクセになるんですよね、不思議と。だからなのか、イーノ脱退後の後期ROXY MUSICを聴くと至極真っ当なバンドに思えてしまう。まあ、彼の脱退と引き換えに、バンドは大成功を収めるわけですが。

実はROXY MUSICって20代までは全然良さがわからなかったバンドのひとつなんです。リアルタムではすでにブライアン・フェリーは伊達男なソロシンガーでしたし、最初に手にしたアルバムが『AVALON』(1982年)でしたから。映画『ヴェルヴェット・ゴールドマイン』を通じて、ちょっとだけ初期に触れたものの、あまりピンと来ず……結局、さらにいい大人になってから改めて聴いてどハマりしたという。きっと今みたいにサブスクリプションサービスがあったら、20年前にどハマりしてたのかな……わからないけど。

そもそもボウイも好き、クリムゾンも好き、なんならBOØWYや布袋寅泰も好きな時点でこの頃のアルバムにハマらない理由はないんですけどね。そういった意味では、本作が一番思い入れがあるんですよ。なんでこれに20年前気づかなかった、俺よ。うん、世の中いろいろです。



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投稿: 2019 01 09 12:00 午前 [1972年の作品, Roxy Music] | 固定リンク

2019年1月 3日 (木)

STING『...NOTHING LIKE THE SUN』(1987)

スティングが1987年秋に発表した、通算2作目のスタジオソロアルバム。本作からは「We'll Be Together」(全米7位/全英41位)、「Be Still My Beating Heart」(全米15位)、「Englishman In New York」(全米84位/全英51位)、「Fragile」(全英70位)、「They Dance Alone」(全英94位)などのシングルヒットが生まれ、アルバム自体も全米9位、全英1位という好成績に恵まれました。特に「We'll Be Together」「Englishman In New York」が当時ビールやビデオテープのCMソングに使用されたこともあり、日本のファンの間でも馴染み深いアルバムの1枚と言えるでしょう。

前作『THE DREAM OF THE BLUE TURTLES』(1985年)THE POLICE時代の恩恵もあり大ヒットを記録。そういう意味では続く今作でソロアーティストとしてのスティングの真価が問われるわけですが、そういった外野からの声を完全に無視するかのように、このアルバムではジャズを軸にした独自の世界観が展開されています。

アルバムのオープニングを飾る「The Lazarus Heart」のジャズやフュージョンを彷彿とさせるノリ、「Englishman In New York」でのレゲエとジャズをミックスしたテイストは、まさにスティングならではと言えるでしょう。また、「They Dance Alone」後半の展開や、ジミ・ヘンドリクスのカバー「Little Wing」に感じられるインプロ的緊張感は、本作に到るまでに彼が経験したソロツアーが大きく反映されているのではないでしょうか。

そういえば、本作は参加メンバーもそうそうたるもので、ルーベン・ブラデス(Vo, G)、ハイラム・ブロック(G)、エリック・クラプトン(G)、マーク・ノップラー(G)、アンディ・サマーズ(G)、マーク・イーガン(B)、ケンウッド・デナード(Dr)、マヌ・カチェ(Dr)、アンディ・ニューマーク(Dr)、ケニー・カークランド(Key)、ブランフォード・マルサリス(Sax)、ギル・エヴァンス(オーケストラ指揮)、GIL EVANS ORCHESTRAなど、ジャズやフュージョン、ブラックミュージック、ロックなどさまざまなジャンルからトップアーティストが勢揃い。ギル・エヴァンスが参加してるというのが、そもそもポップス/ロック界的には当時、相当衝撃的だったような記憶があります。

『THE DREAM OF THE BLUE TURTLES』と比較すると全体的に穏やかで、ロックやポップスのジャンルにおいてはかなり地味な部類に入る作品だと思います。事実、当時高校生だった自分にはかなり大人な内容で、正直すぐに気に入ったかと言われると微妙でしたし。が、中にはグッとくる楽曲も多かったですし、スティングが活動を重ねアルバムを重ねていくごとに、振り返ってこの作品を聴くと「これ、ものすごいアルバムなんじゃないか……」と少しずつ気づくという。そんな濃さと奥深さを持つ傑作のひとつだと思います。

ですが本作、実はかなり闇の深い1枚でもあります。本作の制作に向かう過程で、スティングは最愛の母親を亡くしています。また、ツアーで訪れた南米で触れた、現地の内戦などでの犠牲者たち……こういった出来事から受けた死生観が、歌詞に落とし込まれている。それがアルバム全体を多く「明るくなりきれない」空気につながっているのではないでしょうか。

また、本作は当時としては破格のフル・デジタル・レコーディング作品。そんな触れ込みもあって、当時のCDとしてはかなり音が良かった記憶が。もちろん、現在はもっと音の良い作品は山ほどあるので、今となってはどうってことのないトピックですが。



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投稿: 2019 01 03 12:00 午前 [1987年の作品, Eric Clapton, Police, The, Roxy Music, Sting] | 固定リンク