RSO (RICHIE SAMBORA / ORIANTHI)『RADIO FREE AMERICA』(2018)
海外では2018年5月上旬、日本では6月下旬にリリースされた、リッチー・サンボラ(ex. BON JOVI)とオリアンティによるプロジェクト・RSOの1stアルバム。プロデュースを手がけたのが、かのボブ・ロック。ボブは曲作りにも携わっており、リッチー&ボブの組み合わせから想像できるサウンド&楽曲が展開された、なかなか聴きごたえのある1枚に仕上がっています。
レコーディングにはクリス・チェイニー(B)、デイヴ・ピアース(B)、アーロン・スターリング(Dr)、クリス・テイラー(Dr)など名うてのプレイヤーが多数参加していますが、リッチーとオリアンティはボーカル&ギター以外にもベースやキーボード、プログラミングにも携わっているようです。
リッチー・サンボラという人は決して非凡なギタープレイヤーではないし、ソングライターとしてもひとりでは100%の力を発揮できない人だと思っています。つまり、ジョン・ボン・ジョヴィやデズモンド・チャイルドといった才能あるソングライターをサポートすることで自身の個性を発揮する、ある種バイプレイヤー的な存在ではないでしょうか。
そして、オリアンティという人についてはマイケル・ジャクソン最後のライブに参加する予定だったことで名を馳せ、その後ソロ作をスマッシュヒットさせましたが、この人もマイケルや、のちに絡むアリス・クーパーのような絶対的フロントマンの隣でこそ映える人だと思うのです(個人的見解ですが)。
そんな2人が恋仲になり、音楽活動まで一緒に行う。それ自体は決して悪いことではないですし、実際このアルバムの出来もリッチーが最後に参加したBON JOVIのアルバムより良い曲が多いと思っています。が、突出した“何か”が足りないのもまた事実。全体的に80点近くまでは獲れるんだけど、そのボーダーを超える決定打がないのです。だから、いくら80点に近い楽曲が15曲並ぼうが、ただぼんやりと時間が過ぎていってしまう。悪くないだけに、非常に勿体ない1枚だと思いました。
2人で歌ったり、リッチーやオリアンティが単独で歌う曲があったり、曲調も往年のBON JOVIを思わせる派手なハードロックがあったり、内省的なアコースティックナンバーがあったり、いろいろやってます。が、ここには「Livin' On A Prayer」も「Bad Medecine」も「It's My Life」も「Have A Nice Day」もない。それと同じクオリティーの1曲を求めるのではなく、そういった“アルバムの軸になる1曲”が欲しかった。それだったら15曲もいらないし、たとえ10曲入りでも誰も文句は言わないんですよ。
だからこそ、この2人が普通に歌う曲よりもアリス・クーパーをフック的にフィーチャーした「Together On The Outside」みたいな曲のほうが印象に残ってしまう。貶しようのない内容だけに、本当に困りものの1枚です(一応褒めているんですけどね)。