SAM SMITH『THE THRILL OF IT ALL』(2017)
世界的メガヒット作となったデビューアルバム『IN THE LONELY HOUR』(2014年。日本盤は2015年)から、気づけば3年半ぶりの新作。プレッシャーもひときわ大きかったと思う。しかし、そんなことは余計な心配だった。
サム・スミスは本作制作にあたり「ポップレコードではなく、私的な日記を作るつもりだった」と語っている。これはまさにそういう作品であり、リードシングルの「Too Good At Goodbyes」は過去の恋愛について独白する、非常にパーソナルな内容だ。それにあわせてか、サウンドもどこか内向的で、アルバムが進むにつれてダークさが増していく。
音数の少ないアレンジ、特に終盤にかけて登場するゴスペル色の強いコーラスワークからは、そういった彼の胸の内があらわになっているように思え、刹那や悲しみすら感じさせる。万人ウケするハッピーなアルバムではないかもしれない。しかし、こういった“正直な作品”こそ今の世の中もっとも求められていることも知っている。そういう意味では、これは時代が求めた必然的作品かもしれない。深夜、ひとりでじっくり向き合いたい1枚。
※このレビューは本作リリース時、『TV BROS.』に掲載されものを加筆・修正して掲載しています。
▼SAM SMITH『THE THRILL OF IT ALL』
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