カテゴリー「Sammy Hagar」の11件の記事

2020年4月20日 (月)

VAN HALEN『LIVE: RIGHT HERE, RIGHT NOW』(1993)

1993年2月に発表されたVAN HALEN初のライブアルバム。

今ほど映像作品が安価で流通していなかった80年代、デヴィッド・リー・ロス在籍時のライブ作品は公式リリースされることはありませんでした。しかし、サミー・ヘイガーにフロントが代わってから、初のライブビデオ(当時はVHSでしたね)『LIVE WITHOUT A NET』(1987年)をリリース。『5150』(1986年)からはMVが1本も制作されたなかったこともあり、このライブ映像は“動くVAN HAGAR”を目撃できるという意味で、非常に重宝しました。また、日本のファンは1989年初頭の“VAN HAGAR”初来日時(『OU812』ツアー)の東京ドーム公演が、当時テレビ朝日で深夜に放送されたものを録画して、それこそビデオテープが擦り切れるほど楽しんだのではないでしょうか(僕もそのひとりですが)。

で、作品としては『LIVE WITHOUT A NET』に続いて発表されたのが、1993年1月発売の『LIVE: RIGHT HERE, RIGHT NOW』というライブビデオ。全17曲入りで120分という、『FOR UNLAWFUL CARNAL KNOWLEDGE』(1991年)を携えたツアーの様子をまるまる楽しめるという、非常に画期的な映像作品でした(DVDが登場する以前はビデオテープ主流だったこともあり、2時間を超えるライブがまるまるリリースされることは少なく、60〜90分程度に編集されることが多かったのです)。

今回紹介するライブアルバムは、このライブ映像作品のCD版ということになりますが、収録曲数は24曲と映像版より7曲多い構成。つまり、ツアーで披露された楽曲を網羅するような“いいとこ取り”な内容、要するに“1993年時点でのVAN HAGARグレイテストヒッツ”的作品に仕上がっているわけです。

なので、大ヒットした『FOR UNLAWFUL CARNAL KNOWLEDGE』からの楽曲群を軸に、「When It's Love」や「Dreams」「Love Walks In」「Finish What Ya Started」といったサミー期のヒット曲も楽しめ、なおかつ「Ain't Talkin' 'Bout Love」「Panama」「You Really Got Me」「Jump」というデイヴ期の代表曲、さらには「One Way To Rock」「Give to Live」といったサミーのソロナンバー(日本盤初版にはボーナスディスクで「Eagles Fly」も楽しめました)や、ここでしか聴けないTHE WHOのカバー「Won't Get Fooled Again」も堪能できる、至れり尽くせりなセットリストなのですよ。

『FOR UNLAWFUL CARNAL KNOWLEDGE』ツアーなので同作からの楽曲が多いのは致し方ありませんが、それでも来日が実現しなかった1991年当時の“脂の乗ったプレイ”を存分に味わえるという意味では、あの頃本作が果たした役割は非常に大きなものがありました(実は、演奏や歌の大半はあとからスタジオ修正/再録音されていることを、のちにサミーが明かしているのですが……)。アンディ・ジョーンズ特有のモワッとした、クセの強いミックスは2020年に聴くとちょっとアレですが、結局サミー在籍時のライブ作品はこれが最後(CDではこれが最初で最後)だったので、今となっては非常に貴重なアイテムと言えるかもしれませんね。なんだかんだで好きなライブアルバムです。

 


▼VAN HALEN『LIVE: RIGHT HERE, RIGHT NOW』
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2020年4月19日 (日)

VAN HALEN『THE BEST OF BOTH WORLDS』(2004)

2004年7月にリリースされた、VAN HALENにとって2作目のベストアルバム。

初のグレイテストヒッツ・アルバムとなった『BEST OF VOLUME 1』(1996年)から8年ぶりのベスト盤ですが、その間にバンドが発表した新作は三代目ボーカルのゲイリー・シェローン(EXTREME)が参加した『VAN HALEN III』(1998年)のみ。しかも、ゲイリーはその後しばらくして脱退しております。どうしてそんなタイミングにまたベスト?という経緯は、実は2004年当時に書いた『5150』(1986年)レビューに記されております。

つまり、ゲイリー脱退→ボーカル不在時にエディ・ヴァン・ヘイレンの舌癌発覚で活動休止→サミー・ヘイガー復帰&ツアー実施→ツアーに向けた新しいアイテムが必要→新曲作ろうぜ、ということでこのお手軽ベストが用意されたわけです。なので、同じベストでも『VOLUME 2』にはならなかったわけですね。

とはいえ、その内容はCD2枚組ということもあり全キャリアを網羅するような大ボリューム。デビュー作『VAN HALEN』(1978年)からサミー在籍時ラスト作となった10thアルバム『BALANCE』(1995年)までのオリジナル作に、当時バンド唯一のライブアルバムだった『LIVE: RIGHT HERE, RIGHT NOW』(1993年)からのテイクも含む全36曲で構成されています。

あれ、『VAN HALEN III』の楽曲は……って、ツアーでサミーがこの作品からの楽曲を歌うとは思えませんしね。あと、『BEST OF VOLUME 1』に収録された「Humans Being」やデヴィッド・リー・ロスとの12年ぶり新曲も未収録。ここまで入れてしまったら、全米1位まで獲得した『BEST OF VOLUME 1』がカタログとして意味を持たなくなってしまうので、あえて差別化したんでしょうか。

アルバムは『BEST OF VOLUME 1』同様に、デビュー作収録のインスト「Eruption」からスタート。“2つの世界(デイヴ期、サミー期)のベスト”といいながらも、結局はエディのバンドなんだっていう象徴的なオープニングですよね。で、そのあとにサミー歌唱の新曲3曲が続くのですが、『VAN HALEN III』からの続きというよりは、サミーが参加した『BALANCE』からの続いという印象が強い作風かな。ダウンチューニングでヘヴィさを強調していますが、芯にあるのは開放的なアメリカン・ハードロック。アレンジには随所にサミーー在籍時の名曲群を彷彿とさせる味付けが、豊富に用意されています。シングル向けな突出した魅力こそ薄いものの、おまけとしては十分な役割を果たしているです。

以降はデイヴ期/サミー期、リリースされた時期関係なく、ご機嫌なナンバーが目白押し。「You Really Got Me」や「(Oh) Pretty Woman」「Dancing In The Street」など『BEST OF VOLUME 1』からは外されたカバー曲も含まれており、まさにキャリアを総括するような“ベスト of ベスト”と断言できる内容です。シングル曲だけを楽しみたければ、本作だけ持っていれば十分っていう作品集ですね(むしろ、チャートインしたシングル曲でここに収録されていないのは「So This Is Love?」くらいかな? ラジオヒットした「Somebody Get Me A Doctor」や「Mean Street」「Don't Tell Me (What Love Can Do)」あたりも収録容量の関係で外れているけど)。

可能性は薄いけど、もし今後VAN HALENが再び表舞台に舞い戻り、ツアーを行うようなことがあれば……デイヴが歌う新曲を含む“3つめのベスト盤”が生まれる可能性がありますが、その可能性はゼロに近いのかな。

 


▼VAN HALEN『THE BEST OF BOTH WORLDS』
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VAN HALEN『BEST OF VOLUME 1』(1996)

1996年10月にリリースされた、VAN HALEN初のベストアルバム。

デビューアルバム『VAN HALEN』(1978年)から直近の最新オリジナルアルバム『BALANCE』(1995年)までの10作から、厳選されたヒットシングルの数々とアルバム未収録のサントラ提供曲、そしてデヴィッド・リー・ロスと12年ぶりに制作した新曲2曲を含む全17曲で構成。「なんであの曲がないの?」とツッコミたく気持ちを抑えつつ、CD1枚に収めるならこれがベストかな?というコンパクトな1枚に仕上がっています。

デビュー作収録の衝撃的なインスト「Eruption」からスタートする構成は素晴らしいと思うのですが、本来ならそこに続くはずの「You Really Got Me」は未収録で、代わりに「Ain't Talkin' 'Bout Love」が並ぶという選曲には当時ひっくり返ったものですが、おそらくオリジナル曲にこだわった結果こういう選曲になったんでしょうね。なので、カバー曲ばかりがシングルカットされた5thアルバム『DIVER DOWN』(1982年)からは1曲もセレクトされておらず。そういった点では若干消化不良気味かもしれません。

また、基本的に各アルバムから代表的ヒット曲を1曲セレクトしている形ですが、アルバム自体がバカ売れした作品からは複数ピックアップしているのも、まあ納得の範疇。ちなみに『VAN HALEN』(「Eruption」含め3曲)、『1984』(1984年/「Jump」と「Panama」。日本盤はボートラとして「Hot For Teacher」追加の3曲)、『5150』(1986年/「Why Can't This Be Love」「Dreams」)、『FOR UNLAWFUL CARNAL KNOWLEDGE』(1991年/「Poundcake」「Right Now」)の4作品がそれで、デイヴ時代とサミー・ヘイガー時代半々といったところでしょうか(選曲的にはトータルでデイヴ歌唱曲が多めですけどね)。

気になる初収録曲3曲についても。サミー在籍時最後の楽曲となった「Humans Being」は映画『ツイスター』提供曲。1996年前半にシングルリリースもされましたが、楽曲としては『BALANCE』からの流れを組むモノトーンなヘヴィ路線。サビ以外はパッとしない印象で、アルバムの中に入っていたら“流して”しまいそうな1曲かもしれません。

で、デイヴが参加した新録2曲もその傾向が強い“普通の曲”。「Can't Get This Stuff No More」は初期デイヴ参加作にありそうなノリですが、5分以上もあると間延びした感が否めず。「Me Wise Magic」は序盤の低音ボーカルに違和感を覚えますが、サビでの“開ける”感はさすがかなと。「第1期VAN HALEN復活!」と過剰に期待しすぎたせいか、その期待を裏切られた感は否めません。とはいえ、彼らのヒット曲を手軽に楽しみたいという点においては、本作は非常に重宝する1枚ではないかと思います。入門編としても最適ですしね。

タイトルにあるとおり、本来ならこのあと『VOLUME 2』も計画していたんでしょうけど、ご存知のとおりバンドは本作のあとにオリジナルアルバムを2枚しか発表していませんし、ヒット曲にも恵まれず。結果、別の形でベストアルバムを制作することになるのでした。

 


▼VAN HALEN『BEST OF VOLUME 1』
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2019年5月20日 (月)

SAMMY HAGAR & THE CIRCLE『SPACE BETWEEN』(2019)

2019年5月発売の、SAMMY HAGAR & THE CIRCLEによる1stスタジオアルバム。

2014年に結成されたこのバンドは、サミー・ヘイガー(Vo, G)と元VAN HALENのマイケル・アンソニー(B)、サミーの近年の活動におけるパートナーであるヴィック・ジョンソン、そしてジョン・ボーナム(LED ZEPPELIN)の実子であるジェイソン・ボーナム(Dr)という4人編成。2015年にライブアルバム『AT YOUR SERVICE』を発表していますが、正式なスタジオアルバムはこれが初となります。

いわゆる“スーパーバンド”ではあるものの、先のライブアルバムではサミーのソロナンバーに加え、サミー在籍時のVAN HALEN、MONTROSEやLED ZEPPELINといったレジェンドバンドの名曲がカバーされていました。こういったロッククラシックをライブで披露し続けることで、このバンドならではのグルーヴ感を数年かけて構築していったということなのでしょうか。

実際、本作で展開されているサウンドやグルーヴ感は非常に肩の力が抜けたナチュラルなもので、各メンバーが過去に在籍したバンドのカラーを多少感じさせつつも、THE CIRCLEというバンド“らしさ”がデビュー作の時点でしっかり完成している印象を受けました。

正直このメンツなら派手で豪快なアメリカンハードロックが期待できそうなものですが(事実ライブアルバムはそういうテイストでしたしね)、土着的なアメリカンロックをルーツにしながらアコースティック色を随所に織り交ぜている、非常に落ち着いた“大人のロック”を聴かせてくれるのです。

サミー自身、加齢により以前ほどハイトーンが出なくなってきたというのもあるのでしょうが(もう71歳ですからね!)、メロディのトーンもかなりクールというか落ち着いていて、声を張り上げて歌うようなほとんどない。「Free Man」のようなヘヴィロックも存在するものの、ダウンチューニングすることでキーが低くなり、それにあわせてトーンも落ち着いている。でも、これはこれで非常にカッコいいと思います。

楽曲自体も2〜3分台のものが大半で、全10曲で約35分という短さ。音楽的方向性含め、まるで70年代のロックアルバムのようで、1曲1曲に無駄がない点含めて気軽に楽しめるのは良作だと思います。演者側のリラックスした雰囲気が伝わってくることもあって、リスナー側も肩肘張らずに気楽に再生できる。視点を変えれば「アクが弱い」とも言えるわけですが、70〜90年代に数々のヒット作を生み出してきたサミーが残り少ない音楽人生をこういう形で楽しもうとしている。もうこれはこれでいいんじゃないかと思います。

最後に。やっぱりマイケル・アンソニーのハイトーンコーラスが入ると、楽曲の雰囲気が一気に引き締まりますね。今のVAN HALENに足りないのはまさにこれなんですよね。そりゃバンドへの復帰を打診するわけだ(笑)。

 


▼SAMMY HAGAR & THE CIRCLE『SPACE BETWEEN』
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2019年4月27日 (土)

SAMMY HAGAR『MARCHING TO MARS』(1997)

1997年5月にリリースされたサミー・ヘイガーの10thソロアルバム。80年代半ばから10年以上にわたりVAN HALENの2代目シンガーとして活躍したこともあり、前作『I NEVER SAID GOODBYE』(1987年)から10年ぶりのフルアルバムとなります(1994年に新曲2曲を含むベストアルバム『UNBOXED』も発表)。

VAN HALEN脱退後最初のソロアルバムということもあり、アルバムには豪華なゲスト陣が多数参加。スラッシュ(G/GUNS N' ROSES)、ヒューイ・ルイス(Harmonica)、デーモン・ジョンソン(G/当時BROTHER CANE、現BLACK STAR RIDERS)、エリック・マーティン(Cho/MR. BIG)、ブーツィー・コリンズ(B)、マット・ソーラム(Dr/ex. GUNS N' ROSES)、そしてロニー・モントローズ(G)、デニー・カーマッシ(Dr)、ビル・チャーチ(B)というMONTROSEのオリジナルラインナップなど……1曲ごとに編成がことなるレコーディングメンバーは、当時固定のバンドメンバーを持たなかったサミーならではと言えるでしょう。

楽曲自体はVAN HALEN在籍時から書き始めたそうで、中にはMEAT LOAFに提供した「Amnesty Is Granted」(1995年のアルバム『WELCOME TO THE NEIGHBORHOOD』収録曲。同作ではサミー自身もボーカルで参加)のセルフカバーも含まれています。確かに、90年代中期のVAN HALENがやっても不思議じゃない豪快なハードロックナンバーがいくつか含まれています。「The Yogi's So High (I'm Stoned)」あたりはアレンジさえ変えれば、VAN HALENでもやれそうですしね。

かと思えば、オープニングを飾る「Little White Lie」や「Leaving The Warmth Of The Womb」「On The Other Hand」のようにアコースティックギターを多用したブルースロック/ブルースハードロックがあったり、ソウルフルなバラード「Who Has The Right?」「Kama」があったり、ファンク色の強い「Would You Do It For Free?」があったりと、ソロならではのバラエティ豊かさもしっかり用意されている。サミー自身、VAN HALENでの活動を経たことでよりメジャー感の強いソングライターに成長したことは間違いない事実であり、その成果をこの1枚に凝縮したと受け取ることもできるのではないでしょうか。

VAN HALEN加入前のソロ作が好きという声も非常によくわかります。確かに前作『I NEVER SAID GOODBYE』以降は良くも悪くもVAN HALEN“っぽさ”が全体を覆っていますし。まあそれだけ、あのバンドで得たもの、残したものが大きかったという表れなのかもしれませんね。

サミー在籍時のVAN HALEN(の楽曲)が好きな人なら、文句なしに楽しめる1枚だと思います。エディ・ヴァン・ヘイレンのようにテクニカルなギタープレイは皆無ですが、サミーらしいストロングスタイルのプレイは存分に味わえますので。

 


▼SAMMY HAGAR『MARCHING TO MARS』
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2018年7月31日 (火)

VAN HALEN『BALANCE』(1995)

1995年1月にリリースされたVAN HALEN通算10枚目のスタジオアルバム。サミー・ヘイガー(Vo)参加作としては4作目にして、最後のオリジナル作品となります。

このバンドの興味深いところは、HR/HM冬の時代に突入した90年代前半〜半ばも好セールスを維持しているところ。グランジ前夜に発表された前作『FOR UNLAWFUL CARNAL KNOWLEDGE』(1991年)は全米1位を獲得しただけでなく、アメリカだけで300万枚を超えるセールスを記録。続く本作も全米No.1に輝き、同じく300万枚以上も売り上げています。ただ、前作以降は大きなシングルヒットには恵まれず、本作からは「Can't Stop Lovin' You」が全米30位、「Not Enought」が全米97位と低調で終わっています(リード曲「Don't Tell Me (What Love Can Do)」は全米メインストリームロックチャートで1位に輝いていますが)。

前作から80年代の派手なアリーナロック色に、若干マニアック(玄人好み)なテイストが加わり、意外と時代に呼応したスタイルを確立させていた彼ら。その作風は本作でも引き継がれており、例えば「Don't Tell Me (What Love Can Do)」でのダークな曲調は従来の持ち味であると同時に“グランジ以降”を思わせるものでもあります。

かと思えば、軽やかでポップなアメリカンハードロック「Can't Stop Lovin' You」があったり、じっくり聴かせるピアノバラード「Not Enought」もある。と同時に、本作には珍しくインストナンバーが3曲も含まれている。「Strung Out」は次曲「Not Enough」への伏線的な小楽曲ですが、「Doin' Time」はアレックス・ヴァン・ヘイレン(Dr)のプレイを前面に打ち出したパーカッシヴなインスト、続く「Baluchitherium」はバンドスタイルで演奏される本格的なインストゥルメンタルナンバーなのです。サミー・ヘイガー加入後は“歌モノ”のイメージがより強まっていましたが、3曲中2曲がインタールード的なものであるとはいえこうした楽曲が増えていることに、バンドとして変革期を迎えつつあるのかな、なんてことを当時考えたことを思い出しました。

もちろん、それ以外にはサミーのパワフルなボーカルやエディ・ヴァン・ヘイレン(G)の圧倒的ギタープレイが大々的にフィーチャーされた“歌モノ”ナンバーがずらりと並び、オープニングの「The Seventh Seal」からラストのドラマチックバラード「Feelin'」までの全12曲(トータル53分)、するっと聴けてしまいます。『5150』(1986年)以降の“VAN HAGAR”作品を好きなリスナーなら文句なしで楽しめる1枚だと思います。

ちなみに、本作のプロデュースを手がけたのはかのブルース・フェアバーン。輸入盤のみに採用されたあのジャケットのみならず、この組み合わせにも当時は驚かされたものです。

 


▼VAN HALEN『BALANCE』
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2018年2月10日 (土)

SAMMY HAGAR『I NEVER SAID GOODBYE』(1987)

1987年初夏にリリースされた、サミー・ヘイガー通算9枚目のスタジオアルバム。当時はすでにVAN HALENのフロントマンとして活躍していたタイミングで、バンド活動に専念するためソロ活動はストップさせていたのですが、当時ソロ契約していたGeffen Recordsとの契約が残っていることから制作期間10日という急ごしらえで本作を完成させました。

プロデューサーはサミーのほか、VAN HALENでの相方であるエディ・ヴァン・ヘイレン、そしてデヴィッド・ソナーという布陣。エディは演奏面においてはベーシストに徹し、ギタープレイは「Eagles Fly」1曲のみ。それ以外のギターはすべてサミーが担当し、ほかにはジェシー・ハームス(Key)、デヴィッド・ローサー(Dr)というサミーのソロ活動で気心の知れた面々が参加しています(一部楽曲では、かのオマー・ハキムが叩いています)。

大ヒットした前作『VOA』(1984年)では“これぞアメリカンロック”的ポジティブかつ豪快なハードロックを聴かせてくれたサミーですが、今作のソングライティング面はVAN HALENでの経験がかなり反映されているように感じます。シングルヒットもした「Give To Live」(全米23位)や「Eagles Fly」(全米82位)には“VAN HALEN以降”の香りがしますし(「Give To Live」はのちにVAN HALENが発表する「When It's Love」と同系統ですし)、「When The Hummer Falls」「Hands And Knees」あたりに漂うハードエッジなスタイルは『5150』(1986年)にも通ずるものがありますし。

かと思えば、前作までの流れを汲む陽気な「Boys' Night Out」や「Returning Home」みたいな曲もあるし、ブルージーなスタイルが『OU812』(1988年)にも通ずる「Standin' At The Same Old Crossroads」みたいな曲、そこからメドレーのように続くブギー調の「Privacy」もある。半ばやっつけで作ったソロアルバムではあるんだけど、本作で試したことがちゃんと次のVAN HALENのアルバムにつながっていることを考えると、本作はサミーとエディにとって遊びかつ実験の場であったのかもしれませんね。そう考えると、本作に収められた「Give To Live」や「Eagles Fly」がのちのVAN HALENのツアーでも(弾き語りで)披露されたことも納得がいくというか。

そういえば、Geffen時代に発表したサミーの一連のソロアルバム、デジタル配信されていないんですよね。3月にはこういう企画でCD国内盤が再発されるようですが、この機会にストリーミング配信も……と懇願するのは僕だけでしょうか。



▼SAMMY HAGAR『I NEVER SAID GOODBYE』
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2017年5月22日 (月)

VAN HALEN『FOR UNLAWFUL CARNAL KNOWLEDGE』(1991)

1991年初夏に発表された、VAN HALEN通算9枚目のオリジナルアルバム。

『5150』(1986年)からバンドに加わったサミー・ヘイガー(Vo)にとっては、『OU812』(1988年)に続く3枚目の参加アルバムとなります。この時期から米Billboardチャートの集計方法が変わったことで、SKID ROWの2ndアルバム『SLAVE TO THE GLIND』がアルバムチャート初登場1位を獲得しましたが、翌週に発売されたこの『FOR UNLAWFUL CARNAL KNOWLEDGE』も続いて初登場1位を記録。「Top Of The World」(全米27位)、「Right Now」(全米55位)と過去2作と比べたら大きなヒット曲は誕生しなかったものの、現在までに300万枚を売り上げる好成績を残しています。

『5150』で“VAN HAGER”と揶揄されるほど、サミー色に染まったVAN HALENでしたが、続く『OU812』はデヴィッド・リー・ロス時代のテイストも復活。一部で「リリースする順番が逆だったらそこまで批判されなかったのに」という声まで上がりましたが、今作ではリスナー側もすでにサミーのカラーに慣れたこともあり、“VAN HAGAR 2作品+初期テイスト+α”という独自の路線を貫いています。

ピックアップに電動ドリルを近づけることによって生じるあのサウンドから始まる「Poundcake」を最初に聴いたときは、時期的に(その数ヶ月前に発売された)MR. BIG『LEAN INTO IT』を思い浮かべたものですが、このダイナミックでひたすらカッコいいアリーナロックを聴けばそんなことどうでもよくなくなるという。そして続くストレートなアップチューン「Judgement Day」のカッコよさたるや。このオープニング2曲の掴みだけで、本作が名作なのは間違いない!と聴き始めた当初確信したのを今でも覚えています。

ダークな「Spanked」な「Pleasure Dome」は過去になかったタイプだし、「Runaround」もいかにも初期VAN HALENにありそうな親しみやすいロックチューン。イントロのギター&ベースのユニゾンからしてクールな「Man On A Mission」、これぞ“VAN HAGAR”な「The Dream Is Over」、本作中唯一キーボード(ピアノ)を用いたシリアス調のミドルチューン「Right Now」、メロウな王道ナンバー「Top Of The World」と、とにかく捨て曲なし。従来のVAN HALENらしさを引き継ぎつつも、これまでになかったタイプの楽曲も登場していて、新鮮な気持ちで接することができる。音の質感もこの“適度にヘヴィかつメロディはポップ”という楽曲に合っているから、トータルで50分を超えているのにスルスルと聴き進めることができるんです。

個人的にはVAN HALENの全作品中で一番好きなアルバムが本作。もちろんデイヴ時代の諸作品も捨てがたいし、『5150』もお気に入りなんですが、自分が理想とするロックアルバムはこれかなと思うのです。

バンドは本作を携えたワールドツアーの模様を収めた初のライブアルバム『LIVE: RIGHT HERE, RIGHT NOW』を1993年にリリース(同名の映像作品も発表)。この音源を聴いて、改めて『FOR UNLAWFUL CARNAL KNOWLEDGE』での来日公演が実現しなかったことを何度悔やんだことか……。

 


▼VAN HALEN『FOR UNLAWFUL CARNAL KNOWLEDGE』
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2004年9月16日 (木)

とみぃ洋楽100番勝負(28)

●第28回:「Dreams」 VAN HALEN ('86)

2度目の登場となるVAN HALEN。しかし、前回紹介した頃(デイヴ・リー・ロス在籍時)とは明らかに違う‥‥シンガーのチェンジ。サミー・ヘイガーという既に『Voice of America』なる称号を手にしていた有名シンガーを向かい入れ、更にサウンド的にもよりポピュラリティーある方向へとシフトチェンジした1枚である、「5150」というアルバムの中で、名曲中の名曲と呼べるであろう "Dreams" という曲。ホント完璧ですよね、全てにおいて。

イントロのシンセ&エレピはちょっと'80年代的ですが、やっぱりこのイントロを聴くとね‥‥気持ちが高揚するというか。で、リズムインしてボーカルが入って‥‥とにかくメロディの流れがね、俺的に完璧なわけですよ。サビまでの流れといい、サビでの盛り上がりといい。そしてギターソロね。1回目のもいいけど、ラストの如何にもエディらしいタッピングプレイがね、鳥肌モノでして。ただ凄いプレイってわけじゃなくて、しっかりメロウで曲の流れにピッタリという。やっぱり鼻血ものですな。

これ聴いちゃうとデイヴと別れて正解だったよな、と。勿論デイヴはデイヴでまた凄いことをやらかしちゃうわけですが‥‥それにしてもVAN HALENという名前でここまでの変化をしちゃうわけですからね。きっと俺等よりも若い世代はサミー時代のVAN HALENしか知らないわけですよね、リアルタイムでは。それが当たり前として存在してたわけですから。そういう意味では‥‥最初に聴いた時の違和感も確かにあったわけですよ。ボーカルが違うとか、曲が異常にポップだとか。でもさ‥‥曲の良さには敵わないよ。ホントに凄いもん、今聴いても。

今年に入ってやっと活動再開したVAN HALEN。このアルバム時のメンツでの復活ってことで、当然ながらこの "Dreams" もライヴでやってるわけでして‥‥いつになったらここ日本で、再びあの "Dreams" が聴けるんでしょうかねぇ‥‥

 


▼VAN HALEN「5150」(amazon

2004年5月26日 (水)

VAN HALEN『OU812』(1988)

サミー・ヘイガー加入後2作目となるVAN HALEN通算8枚目のアルバム『OU812』。リリース当時は意外と賛否あったように記憶してるけど、その割りにはメガヒットを記録したんだよね。記憶が間違ってなければ当時だけでも400万枚以上売ってるはずだし、シングルヒットも4曲出てるし(「Black And Blue」「When It's Love」「Finish What Ya Started」「Feels So Good」)、約10年振りの来日公演も東京ドームで実現したし(ま、ソールドアウトにはならなかったわけですが)。前作『5150』での大ヒットを後押しするには十分な役割を果たしたんじゃないかな?

聴いてもらえば判るように、前作の延長線上にある作風なんだけど、よりソフトになった印象が強いかな。全体の音像も前作と比べると薄くて細いイメージがあるし(ある意味、デイヴ・リー・ロス時代の音作りに戻ったかのような印象)、ギターがいつもよりも前に出てないような気が‥‥その分、サミーのボーカルが完全に前面に押し出されてるのと、いつも以上にキーボード(シンセ)が目立っています。といってもシンセが入ってる曲って10曲中たったの3曲なんだよね。だけど頭2曲(「Mine All Mine」「When It's Love」)がそのシンセ導入曲なもんだから、余計にそのイメージが強いのかな。今聴いてもかなりポップな印象ですよね、この2曲は。

速い曲にしても、例えば前作でいう「Get Up」と今作での「Source Of Infection」とでは全然感じが違うしね。明らかに今作の楽曲の方が軽めでポップな印象。ま、「Get Up」と比べる自体がどうかと思うけどね。

丁度このアルバムがリリースされた1988年前後って、所謂ルーツロック的な路線がもてはやされていた時代なんですね。BON JOVIが「Wanted Dead Or Alive」という曲で提示した路線、所謂「ブルーズ」を基調としたハードロックに目が行きだした頃。VAN HALENも彼らなりのブルーズをこのアルバムで表現してくれてます。

これまでもブルーズっぽい楽曲はあったものの、そのものを、あるいはモロなブルーズロックを披露したことはありませんでした。このアルバムでは「Cabo Wabo」や「Black And Blue」といった曲で、VAN HALEN流ブルーズロックを聴かせてくれているわけですが、そのどれもがちゃんと「どこからどう聴いてもVAN HALENの曲」として成り立っている辺りはさすがというか。デイヴが歌ってもそれっぽくなってたでしょうけど、あの当時の時代の流れを考えると、サミーが歌った方がよりフィットしてるんじゃないかな?と思えるのです。いや、サミーだったからこそ実現したのかも。アルバムラスト(本来はCD用ボーナストラックで、アナログ盤には未収録。ま、CD主流の現在においてはどうでもいい豆知識ですが)を飾るLITTLE FEETのカバー「A Aporitical Blues」なんて、間違いなくこのメンツじゃなきゃ出来なかっただろうカバーでしょうしね(で、これがまたらしいようならしくないような感じで、非常にカッコいいんですわ)。

サミー在籍時の4作品の中では恐らく一番評価が低い作品と思われていますが、このアルバムでのこういった挑戦が続く新作への布石になっていたりするんですよね‥‥うん。

そういえば、このアルバムがリリースされた頃(当時高校2年生)、最初に友達が買って、それをみんなが借りてダビングして、音楽仲間&バンド仲間全員に広まっていったんですが、聴いた感想がみんな一緒だったのが面白くて、今でも記憶に残ってます。それは「こっちを先に出せばよかったのにね?」という意見。そう、『1984』に続くアルバムは『5150』ではなくて、この『OU812』の方がよかったんじゃないか、サミー加入後1作目として『OU812』を先に作るべきだったんじゃないか?ということですよ。その後の歴史を見てきた今となっては「う~ん?」と思いますが、当時は本気でそう感じたんですよね。それだけ『5150』というアルバムのインパクトって強かったんだよな、そしてデイヴ時代をリアルタイムで通過した世代としては違和感があったんだよなぁ、と。

 


▼VAN HALEN『OU812』
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