カテゴリー「Scorpions」の6件の記事

2019年3月 3日 (日)

ARCH ENEMY『COVERED IN BLOOD』(2019)

2019年1月に発表された、ARCH ENEMYのカバーアルバム。バンド初期からシングルのカップリングやアルバムのボーナストラックとして収録されてきた歴代のカバー曲を1枚にパッケージした作品で、その内訳も初期3作のヨハン・リーヴァ時代、ブレイクのきかっけを作ったアンジェラ・ゴソウ時代、現在のアリッサ・ホワイト=グラズ時代と3世代にわたる、ある種のオールタイム“裏”ベストアルバムとなっています。

取り上げられているカバーはIRON MAIDENJUDAS PRIESTEUROPEMEGADETH、MANOWAR、QUEENSRYCHEPRETTY MAIDSSCORPIONSKISSなど彼らのルーツにあるHR/HMバンドからG.B.H.、DISCHARGEといったハードコアバンド、SKITSLICKERS、ANTI-CIMEX、MODERAT LIKVIDATIONという地元スウェーデンのハードコア/クラストコアバンド、マイケル・アモット(G)がかつて在籍したCARCASS、そしてTEARS FOR FEARSやマイク・オールドフィールドといったポップ寄りまで、バラエティに富んだもの。JUDAS PRIEST、IRON MAIDEN、EUROPE、SKITSLICKERSはボーカリスト違いで複数選ばれているものもあります。

全24曲中、M-1「Shout」からM-11「City Baby Attacked By Rats」までがアリッサ時代、M-12「Warning」からM-20「Symphony Of Destruction」までがアンジェラ時代、ラスト4曲がヨハン時代としっかりブロック分けされているので、そこまで違和感を感じることはないかと。特にアリッサ時代はM-5「Nitrad」から「City Baby Attacked By Rats」までのパンク/ハードコアのカバーが続く流れで統一感を作るなど、構成も考えられていますしね。

ARCH ENEMYの活動を追っているリスナーには、すべて既出で所持している音源ばかりでしょう。しかし、こういった“ファン”アルバムは出すことに意味があるので、そこに文句をつけるのは野暮というもの。そんな中、M-1「Shout」は昨年発売されたアナログボックスセット『1996-2017』やアナログ7インチ盤「Reason To Believe」に収録されていたものですが、CD化はこれが初めて。原曲をよりヘヴィにしたアレンジはどことなくツェッペリン「Immigrant Song」に似ていて、DISTURBEDのカバーバージョンとは違った味わい深さがあります。

そのほかのカバーに関しては原曲まんまのものから凝ったアレンジのものまでさまざまですが、基本的には原曲に対する愛情が強いものが多い印象です。個人的にはPRETTY MAIDS「Back To Back」、EUROPE「Wings Of Tomorrow」、CARCASS「Incarnated Solvent Abuse」、IRON MAIDEN「Aces High」がお気に入りです。

ちなみに、CDブックレットにはマイケル・アモットによる各曲の解説入り。残念ながら日本盤はおろか、配信&ストリーミングもなしの本作ですが、特にストリーミングに関しては過去作もゼロなので、これを機に動いてほしいものです。



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2019年1月20日 (日)

VINCE NEIL『TATTOOS & TEQUILA』(2010)

2010年6月リリースの、ヴィンス・ニール通算3作目のソロアルバム。過去2枚のソロアルバム(1993年の1st『EXPOSED』、1995年の2nd『CARVED IN STONE』)はMOTLEY CRUE脱退中に発表されたものなので、本作『TATTOOS & TEQUILA』はバンド在籍中に唯一発表したソロアルバムということになります。

過去2枚には“良き時代のMOTLEY CRUEの模倣”(『EXPOSED』)、“HR/HM冬の時代にヒップホップなど流行へ迎合した”(『CARVED IN STONE』)といったテーマがありましたが(ヴィンスが公言したわけではなく、ファン側が勝手に解釈したもの)、本作はズバリ“自身のルーツナンバーをストレートにカバーする”というもの。全11曲(日本盤のみボーナストラックを含む12曲)中、オリジナル曲は2曲のみで、ほかはCHEAP TRICK、SWEET、AEROSMITHSEX PISTOLS、THE HOLLIES、SCORPIONS、CCR(CREEDENCE CLEARWATER REVIVAL)、エルヴィス・プレスリー、エルトン・ジョン、ZZ TOPの名曲の“カバーという名のコピー”となっています。

選曲は大半が70年代のもので、つまりヴィンスがMOTLEY CRUEを始める前まで聴きまくったナンバーばかりといったところでしょうか。実際にバンドでカバーしたものも少なくないと思います。CHEAP TRICKがデビューアルバムからの「He's A Whore」だったり、AEROSMITHが名盤『ROCKS』収録のヘヴィチューン「Nobody's Fault」というあたりには、ヴィンスなりのこだわりも感じられます。

また、モトリーでもカバーしたSEX PISTOLSを再びピックアップしていたり、かと思えばエルヴィス「Viva La Vegas」やエルトン「Bitch Is Back」を選曲するたりも、彼のポップセンスやフロントマンとしてのセンスみたいなものを感じたり。まあ、何の捻りもないんですけどね(笑)。

2曲のみ収録されたオリジナル曲のうち、タイトルトラックとなる「Tattoos & Tequila」はプロデューサーであるマーティ・フレデリクセン書き下ろしのミドルナンバー。もう1曲の「Another Bad Day」は盟友ニッキー・シックスとジェイムズ・マイケル、そしてトレイシー・ガンズ(L.A. GUNS)によるミディアムバラード。もともとはモトリー用(おそらくベストアルバム『RED, WHITE & CRUE』かオリジナル作『SAINTS OF LOS ANGELES』向け)に書かれたそうですが、トミー・リーが気に入らなかったためお蔵となった1曲とのこと。まあ『SAINTS OF LOS ANGELES』には合わないポップな曲調なので、外れてよかったのかも。

全体を通して、ヴィンスが持つ陽のイメージがそのままパッケージされた、非常に聴きやすい1枚。『EXPOSED』ほどの派手さはないものの、あのアルバムとの共通項も多数見受けられるので、初期モトリーなどが好きな方なら素直に受け入れられる作品集だと思います。

なお、このアルバムでバックを務めるのは、ジェフ・ブランド(G)、ダナ・ストラム(B)、ゾルタン・チェイニー(Dr)という布陣。ご存知の方もいるかと思いますが、この3人はSLAUGHTERの現メンバーでもあるので、マーク・スローターとヴィンスを入れ替えただけなんですよね。LA界隈、狭いなあ。



▼VINCE NEIL『TATTOOS & TEQUILA』
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2018年7月11日 (水)

SCORPIONS『CRAZY WORLD』(1990)

1990年11月にリリースされた、SCORPIONS通算11枚目のオリジナルアルバム。それまで同郷のエンジニアであるディーター・ダークスとともに制作を進めてきたバンドが、初めてアメリカのプロデューサーであるキース・オルセン(オジー・オズボーンWHITESNAKEEUROPEなど)を迎えて完成させた1枚です。

サウンドや楽曲の質感は、大成功を収めた『LOVE AT FIRST STING』(1984年)と、それに続く『SAVAGE AMUSEMENT』(1988年)の延長線上にあるもの。ですが、本作では過去2作に残っていたヘヴィメタル的側面を極力排除し、「良質なメロディに重点を置いたハードロック」という点に注力した内容になっています。もしかしたらポップでメロウな楽曲を好むものの『LOVE AT FIRST STING』路線が好きだったというリスナーには、若干“軽く”感じるかもしれません。

楽曲制作面では、ブライアン・アダムスHEARTなどで知られるジム・ヴァランスを迎えています。そう知ると「なるほど」と納得できるものがあるかもしれません。実際、僕はジム・ヴァランスが参加していることを知らずに本作を聴いて、「なんだかHEARTみたいになってきたなぁ」と思ったものですから……彼らの中にそういった意図があったかどうかはわかりませんけど。

ですが、楽曲の完成度やアルバムとしてのまとまりは非常に高いものがあります。「Tease Me Please Me」「Don't Believe Her」というオープニング2曲の軽やかさ、メロディアスさはさすがの一言だし、全米4位のみならず世界中で大ヒットした名バラード「Wind Of Change」もポップソングとして非常に優れた1曲ですし。かと思えばアップテンポなロックチューン「Kicks After Six」「Hit Between The Eyes」のような疾走感も兼ね備えている。メタリックなノリとは異なるロックンロールなノリだけど、これはこれで良いじゃないですか。で、ラストには“以前の”SCORPIONSらしさを引き継ぐ泣きメロバラード「Send Me An Angel」も用意されている。どの曲も過剰なドラマチックさは皆無だけど、幅広い層を取り込む求心力がたっぷり感じられる。そういった意味での“非の打ち所のなさ”は抜群すぎるものがあると思います。

正直言えば、リリース当時はそこまで好きなアルバムではありませんでした。が、ベルリンの壁崩壊をはじめとした世界情勢の大きな変動を踏まえた上で、なぜ「Wind Of Change」が世界中でヒットしたのか、そしてドイツのバンドである彼らがなぜこのアルバムに『CRAZY WORLD』というタイトルを冠したのか。そういったことを考えてから再び本作と接すると、また感じ方が変わってきたのも確か。90年代初頭という時代に産み落とされたからこそ意味のある、そんな1枚なのかもしれませんね。



▼SCORPIONS『CRAZY WORLD』
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2017年1月24日 (火)

SCORPIONS『FACE THE HEAT』(1993)

SCORPIONSが1993年9月にリリースした、通算12枚目のオリジナルアルバム。1990年に発表した前作『CRAZY WORLD』ではそれまでの諸作品をずっと手掛けてきたディーター・ダークスから離れ、キース・オルセン(HEARTやEUROPEなど)をプロデューサーに迎え、ポップさを増したロック路線に移行。今作からは「Winds Of Change」という(ある意味歴史的な)大ヒット曲が生まれます。また同作からは泣きのバラード「Send Me An Angel」もシングルカットされ中ヒットとなったことで、「SCORPIONS=バラードバンド」的なイメージが植え付けられつつありました。

本作『FACE THE HEAT』が発表されるまでの3年間、フランシス・ブッフホルツ(B)の脱退やロックシーン流行の変遷(HR/HMからグランジへ)などがあり、同作は「Winds Of Change」での成功は一旦チャラな状態になった中でのリリースだったと言えます。そんな作品のプロデューサーとして白羽の矢が立てられたのは、BON JOVI『SLIPPERY WHEN WET』『NEW JERSEY』やAEROSMITH『PERMANENT VACATION』『PUMP』、そしてAC/DC『THE RAZORS EDGE』をメガヒットへと導いたブルース・フェアバーン。実はブルース起用については『CRAZY WORLD』のタイミングにはすでに話し合われていたそうで、このタイミングに満を持して実現したわけです。

フェアバーンのプロデュース作品というと職業作家を積極的に採用した高品質の楽曲が、クリアで密度の高いサウンドで構築されるイメージが強いのですが、本作もその例から外れない高品質のハードロックサウンドを楽しむことができます。ただし楽曲自体は、バラードバンドのレッテルを払拭するかのようにハードめな作風のものが大半で、純粋なバラードはシングルカットされた「Under The Same Sun」と本編ラストの「Lonely Nights」程度。もう1曲、「Woman」というスローナンバーもありますが、こちらはバラードというよりはヘヴィブルースのイメージが強く、このへんも全体からにじみ出るヘヴィさの余韻なのかなと。

また、職業作家の採用という点においても、フェアバーンは直近に手掛けたAEROSMITH『GET A GLIP』にも携わったマーク・ハドソンを本作でも起用。「No Pain No Gain」「Someone To Touch」「Nightmare Avenue」で楽曲制作に携わるほか、先のバラード「Under The Same Sun」ではクラウス・マイネ(Vo)、フェアバーンと共作しています。マーク・ハドソンが関わったことでポップになったというわけではなく、メロディがより際立ったものになったというのが正解なのでしょう。実際「No Pain No Gain」も「Nightmare Avenue」もヘヴィさやアグレッシヴさを保ちつつ、非常にメロディアスな仕上がりなのですから。

ドヘヴィなミドルチューン「Alien Nation」からスタートし(しかもこの曲が1stシングル!)、さらに重くジワジワくる「No Pain No Gain」へと続く冒頭の構成。そして前作の流れになる軽やかなロック「Someone To Touch」、“SCORPIONS流「Imagine」”と言えなくもない「Under The Same Sun」から再びヘヴィな「Unholy Alliance」と、変化自在な構成はなかなかのもの。“これぞSCORPIONS!”というテンポ感を持ちつつもどこかアメリカンな「Hate To Be Nice」、シャッフルビートが心地よい「Taxman Woman」ときて、終盤に「Ship Of Fools」「Nightmare Avenue」のアップチューン2連発。最後は泣きメロバラード「Lonely Nights」でしっとり締めくくります。いいアルバムじゃないですか、これ! ただ、日本盤はこの後、“神を信じる”という日本語詞サビにギョギョッとする「Kami O Shin Jiru」、アコースティカルな「Daddy's Girl」と、結果的にバラード3連発になるので、このアルバムの“軸”がブレてしまい勿体ない構成に)

リリースされたタイミングによってはもうちょっと好意的に評価され、80年代の作品並みのセールスを記録していたのかもしれませんが、時は1993年。全米24位まで上昇するも、セールス的には50万枚にも満たない結果で終わりました。その後バンドはポップ寄りな『PURE INSTINCT』(1996年)、『EYE II EYE』(1999年)を立て続けに発表しますが、『FACE THE HEAT』から11年後の2004年、『UNBREAKABLE』で再度ヘヴィ路線へと立ち返るのでした。



▼SCORPIONS『FACE THE HEAT』
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2017年1月 8日 (日)

個人的に気になるメタル系職業作家15選

先日KIX『BLOW MY FUSE』を紹介した際、知人が文中に登場したテイラー・ローズやボブ・ハリガンJr.といった職業作家に興味を持ったらしく、「デズモンド・チャイルドやホリー・ナイトあたりは調べたことあるんですが、メタル職業作家の存在すごく気になります」というコメントをいただきました。

実際、80年代後半以降、特にBON JOVIやAEROSMITHの大ヒット以降こういった職業作家の存在はメタル系アーティストにとっても欠かせない存在になっています。90年代に入ると、SCORPIONSやオジー・オズボーンといった大御所ですら採用し始めるわけですからね。それまでバンドの力だけですべてをまかなおうとしていたところ、「もっといい曲を!」というバンド自身の姿勢から積極的に、もしくはレコード会社からの圧力からイヤイヤこういったアクションに行動を移すようになったのかもしれません。

また、職業作家の楽曲をアーティストが取り上げるケースには幾つかのパターンがあり、


①作家が以前発表した楽曲をカバー。
②作家とアーティストが共作(アーティストが書いた楽曲をテコ入れする、あるいは逆のケース)。
③プロデューサーとして制作に加わり、楽曲制作にも携わる。
④作家が書いた新曲をそのまま取り上げる。


の4つが考えられるかと。現在のメタルシーンでは多くの場合②が主流だと思いますが、まれに③で大ヒットを飛ばすケースも見受けられます(AEROSMITHの「I Don't Want To Miss A Thing」など)。

そこで今回は、CDのブックレットでよく目にする作家さんをピックアップしつつ、その中から個人的にピンとくる方々をここで紹介。作家の特性を上記の①〜④で分類し、代表曲な楽曲を紹介していきたいと思います。


<70年代〜>

●ラス・バラード(特性:①②)
この人の場合は楽曲提供というよりも、彼が自身のバンドや他のアーティストに提供した曲をメタル系アーティストがカバーしたことにより、その名が知られるようになったと言ったほうがいいかもしれません。きっかけはグラハム・ボネット期のRAINBOWがカバーした「Since You Been Gone」ですよね。RAINBOWは続くジョー・リン・ターナー期にも「I Surrender」をカバーしてますし。そのRAINBOWの数年前に、当時KISSのエース・フレーリーもラス・バラッド作「New York Groove」をカバーして全米トップ20入りのヒットを記録。KISS自身も90年代に「God Gave Rock And Roll To You」を「God Gave Rock And Roll To You II」と改題してカバーしてますしね。それと今回いろいろ調べて初めて気づいたのですが、NIGHT RANGERが最初の解散前に発表したアルバム『MAN IN MOTION』からのリード曲「I Did It For Love」もラス・バラッド作。加えて、これも全然気にしてなかったんですが、BAD ENGLISHのラストアルバム『BACKLASH』収録曲「So This Is Eden」はジョン・ウェイト(Vo)、ジョナサン・ケイン(Key)との共作曲。時代的に90年代に入ってからの作品なので、世の中的に職業作家との共作が当たり前になった時期にそれまでのカバーとは違った形でのコラボレーションが実現したわけです。

代表作品:ACE FREHLEY「New York Groove」「Into the Night」、BAD ENGLISH「So This Is Eden」、GRAHAM BONNET「Liar」「S.O.S.」、KING KOBRA「Dream On」、KISS「God Gave Rock And Roll To You II」、NIGHT RANGER「I Did It For Love」、PETER CRISS「Let Me Rock You」「Some Kinda Hurricane」、RAINBOW「Since You Been Gone」「I Surrender」


●リチャード(リッチー)・スパ(特性:①②④)
AEROSMITH「Chip Away The Stone」の作者として知られる彼は、もともとソングライター兼ギタリストとして活動していたアーティスト。ソロアーティストとして70年代にアルバムも発表しており、この中からジョニー・ウィンターが「Stone County Wanted Man」をカバーしています。また、エアロにはその後も楽曲提供を幾つかしているだけでなく、ジョー・ペリーが脱退した際にはレコーディングにも参加(1979年のアルバム『NIGHT IN THE RUTS』収録の「No Surprize」「Mia」)。それ以外に目立った共演は、元BON JOVIのリッチー・サンボラの2ndソロアルバム『UNDISCOVERD SOUL』での共作ぐらい。メタル系以外では、P!NKやMIKAといったアーティストにも楽曲提供しています。

代表作品:AEROSMITH「Chip Away The Stone」「Lightning Strikes」「Amazing」「Pink」、OZZY OSBOURNE「Back On Earth」、RICHIE SAMBRA「Hard Times Come Easy」


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2016年12月29日 (木)

SCORPIONS『LOVE AT FIRST STING』(1984)

ドイツのハードロックバンドSCORPIONSが1984年に発表した、通算9枚目のスタジオアルバム。邦題は『禁断の刺青』で、日本での彼らのイメージである「蠍団」は使われていません(「蠍団」が伝われてたのは1978年の『TOKYO TAPES』まで。こちらの邦題は『蠍団爆発!! スコーピオンズ・ライヴ』)。1984年発売の前作『BLACKOUT』で全米10位のヒットを記録してアメリカでも本格的にブレイクした後、そのダメ押しとしてリリースされた今作は全米6位を獲得し300万枚ものセールスを記録。シングルカットされた「Rock You Like A Huuricane」は全米25位、「Still Loving You」は全米64位とそれぞれドイツのハードロックバンドとしては当時異例の高記録となりました。

『LOVEDRIVE』(1979年)以降、徐々にバタ臭さが薄らいでいき、この『LOVE AT FIRST STING』でヨーロッパのバンドならではのカラーとアメリカナイズされたサウンドが絶妙なバランスで成立。このギリギリな感じが日本人のみならず、アメリカ人にもウケたのかもしれません。事実、本作に続く『SAVAGE AMUSEMENT』(1988年)ではアメリカナイズされた音の主張がより強くなってしまってしまいますし。

『LOVE AT FIRST STING』が前後の作品よりも優れていたのはそういった楽曲センスのみならず、各曲が持つテンポ感も絶妙だったことが挙げられると思います。シングルヒットした「Rock You Like A Huuricane」や「Bad Boys Running Wild」「Big City Nights」のようなミディアムテンポのマイナーチューンが中心ながらも、当時のライブでオープニングを飾った「Coming Home」や「The Same Thrill」のようなアップチューン、そして「Still Loving You」という泣きのバラード。これらが当時としては異例のデジタルレコーディングで制作され、非常にクリアで整理された音で楽しむことができる。ドラムのタムタムの音色も独特で、同時期にDEF LEPPARD『PYROMANIA』が大ヒットしていたことを考えると、あれもその時代の流行りだったんだなと気づかされます。

全9曲、最初から最後まで良曲、良メロディ満載で隙が一切ないハードロックアルバム。もしこれからSCORPIONSを聴いてみようと思うなら、間違いなくこのアルバムから触れてみることをお勧めします。

なお、2015年のリイシュー企画でこのアルバムも2CD+DVDからなるデラックスエディションが発売。アルバム本編に当時のデモ音源(アルバム未収録のボツ曲も含まれていますが、これも悪くない出来)や、マディソン・スクエア・ガーデンでの未発表ライブ音源などを楽しめるので、少々値が張りますが予算に余裕があればこちらに手を出してみるのもいいかもしれません。



▼SCORPIONS『LOVE AT FIRST STING』
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