2003/04/13

SEPULTURA『ROOTS』(1996)

1996年というのはその後のヘヴィミュージックにとってとても歴史に残る1年でした。RAGE AGAINST THE MACHINEが「EVIL EMPIRE」で全米1位を取ってしまったり、KORNやTOOL、MARILYN MANSONといった新世代ヘヴィバンドが次々とアルバムをチャート上位入りさせた、正しく「新しい時代」を予感させる1年。そしてそんな中、チャート上位入りは果たせなかったものの、ここにもう1枚どうしてもその仲間に入れたい歴史的名盤があります。それが今回紹介するSEPULTURAの6枚目のアルバム「ROOTS」です。

ブラジル出身の4人組、元々はデスメタル/スラッシュメタルバンドだったという過去を持つ彼等は、ここ日本でも'91年にリリースされた4作目「ARISE」で一気にブレイクしました。俺も当時、このアルバムで彼等を知ったのですが、その頃は別に特別な存在とも思わず、単純に「SLAYER直系のデスメタル」くらいにしか感じてなかったんですね。そんな彼等に対して特別な視線を向けるようになったのは、'93年リリースの5作目「CHAOS A.D.」からでした。もうね、完全に別のバンドに化けちゃってるの。METALLICAの変化よりも驚いたもん、あの「スピードを徹底的に抑えた、リズムに力を入れたアレンジ」に。サウンドも飛躍的に向上したし、かなりメジャー色が強くなったとも感じたし(とはいっても、ボーカルは相変わらずのデスボイスなんですが)。さすがにこの時は来日公演行ったもんなぁ。

んで、そこから約2年数ヶ月振りにリリースされたこの「ROOTS」は、前作を更に押し進めたかのようなリズム/グルーヴを強調した、それでいて他のヘヴィミュージックとは一線を画する要素を持った非常に個性的で(当時は)他にはないヘヴィサウンドを聴かせてくれる名盤なわけですよ。その「他のヘヴィミュージックとは一線を画する要素」というのが、今ではどうってことないかもしれませんが‥‥所謂「ブラジル・ルーツミュージックとの接近」だったわけで。自身のブラジリアンとしての「ルーツ」に今一度目を向けた、彼等にしか作れなかったアルバム。当時、ヘヴィミュージックといえばアメリカ主流だったわけで、上に挙げたようなバンドは皆アメリカのバンドでした。そんな中、デスメタルバンドだったSEPULTURAがブラジル人にしか出来ない、ブラジル人だからこそ成し得たサウンドを新たに構築した。まだ前例がなかっただけに全面的に受け入れられたとは言い難い状況でしたが、彼等がいなければその後のヘヴィロックの発展はなかったと言い切ってもいいでしょう。

その特異性はまず4曲目"Ratamahatta"を聴いてもらうと判るでしょう。現地では有名らしいブラジル人パーカッショニスト、カルリーニョス・ブラウンが参加したこの曲。ラテン・パーカッションだけでなくボーカルでも参加しているカルリーニョスといい、完全に現地の言葉で歌われるその歌詞といい、ヘヴィなラテンロックというか‥‥それだけでは表現しきれない特異性を感じます。また、2曲目"Attitude"のイントロで聴ける民族楽器「BERIMBAU」を導入したり(この楽器は所々で用いられています)、更には12曲目"Itsari"。これはブラジル国境付近に暮らす原住民サヴァンテ族と、現地まで足を運んだSEPULTURAの4人が共演し、それをライヴ録音した音源(アルバムラストにもシークレットトラックとして、その時のセッションが収められています)。所謂インストナンバーなんですが‥‥真の意味での「ルーツ・ミュージック」を、現在ヘヴィロックバンドをやってる若者4人がヘヴィロック・アルバムの中に入れてしまったという事実。確かにその前作「CHAOS A.D.」の中にもそれに近いナンバー "Kaiowas" がありましたが、この"Itsari"はその比じゃありません。ラテンミュージックの原点という意味合いだけでなく、こういったリズムを重視する音楽の原点とも呼べる地点まで立ち返ることで、彼等は更に何歩も前進したわけです。しかし、その「飛躍的前進」がたまたま「バンド内の不和」と重なり、その路線での更なる進化を見ることなく(マックスの脱退→黒人シンガーの加入)、バンドは新しい道を模索せねばならなくなります。

そうそう。もう1曲、このアルバムには特筆すべき楽曲があります。8曲目"Lookaway"です。何せ作曲を現LIMP BIZKITのDJリーサル(当時はまだヒップホップ・ユニットHOUSE OF PAINに在籍)との共作、作詞はKORNのジョナサン・デイヴィス、ボーカルをマックスとジョナサン、そして当時FAITH NO MOREのマイク・パットンの3人で務めるという豪華作。リンプのようなハネたリズムというわけではなく、引きずるようなヘヴィサウンドにスクラッチが入り、マックス、ジョナサン、マイクの3人がこれでもか!?という程に絶叫しまくるんですよ‥‥当時日本ではKORNはまだ無名に近い存在。今でこそ全米チャートを席巻する程にまでビッグになりましたが、現在でもヘヴィロック界を代表する3人(マックスはSOULFLYで、マイクは現在DILLINGER ESCAPE PLANということでいいのでしょうか?)の共演。その後DJリーサルがLIMP BIZKITへと進んでいったこと等を考えると、非常に興味深い1曲であり、ある意味その後の歴史を決めたかのような革新的な1曲なのではないでしょうか?(ってのは言い過ぎですか?)

勿論、その他の楽曲も文句なしにヘヴィでカッコイイ。もう1曲目"Roots Bloody Roots"が始まった瞬間に名盤決定してしまうもの。あの雪崩のようなヘヴィサウンドは今聴いてもメチャクチャ重いし、ググッとくる。かと思えば、最後に"Dictatorshit"みたいな1分半にも満たない爆走ハードコア・チューンを持ってくる。明らかに初期のスラッシュ・サウンドとは別物になってしまってますが、そのカッコ良さはハンパじゃないし、こういうヘヴィロックの中でも比較的「幅広い」事をやれるのはやはりメタル出身の彼等だからこそ、とは思いませんか?

'96年以降、特に'98年頃を境にヘヴィロックは世界的にブレイクし、その後もメタルやパンク/ハードコア以外の要素を取り入れたバンドが数多く登場しています。現在では飽和状態に陥っているシーンの中で、やはりこの「ROOTS」を超えるような「ヘヴィ」なアルバムはその後、数枚しか登場していないと個人的には思ってます(ぶっちゃけ、SLIPKNOTが登場するまで、自分の中ではこのアルバムが最もヘヴィなアルバムに君臨していたわけです)。何をもって「ヘヴィ」と呼ぶのか。表面的なサウンドを指してか、それともその歌詞を指してか‥‥勿論その両方を有するのは当然なのですが、俺はもっとこう‥‥内面から湧き出る「ヘヴィさ」を求めているわけで、だからこそ初期のKORNやSLIPKNOTのアルバム2枚は素晴らしかったのですよ。そして、SEPULTURAがアメリカ人でも日本人でもない、ブラジル人だからこそ表現できた「ヘヴィさ」。ブラジルという国でロックすること、そしてブラジルの情勢、彼等のルーツ‥‥そういった『彼等が「ネガティヴ」と感じてきた要素』を全面的に出したからこそ成し得た「ヘヴィさ」。だからこそ誰にも真似できなかったわけで、唯一無二のサウンドとなった。そう考えると、本当に凄いアルバムだよなぁ‥‥と今更ながらに感じています。

残念なのは、このアルバムに伴う来日公演が中止になり、このラインナップはその後崩壊してしまったこと。昨年だったか、このアルバムでのツアーを収めたライヴアルバムがリリースされましたが、かなり凄いことになってるし、それまでのベスト盤的内容にもなってるので、この「ROOTS」でSEPULTURAに興味を持った人は是非聴いてみるといいでしょう。ま、SOULFLYを聴いている人はちゃんとこのアルバムを聴いてるとは思いますが。これまでSOULFLY及びSEPULTURAをスルーしてきて、このアルバムで彼等にハマッた人は是非SOULFLYのファースト~「PRIMITIVE」も聴くことをオススメします。



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投稿: 2003 04 13 04:22 午後 [1996年の作品, Sepultura] | 固定リンク