SEVENDUST『BLOOD & STONE』(2020)
2020年10月23日にリリースされたSEVENDUSTの13thアルバム。日本盤未発売。
Rise Records移籍第1弾となった前作『ALL I SEE IS WAR』(2018年)から2年5ヶ月ぶりに発表される本作は、引き続きマイケル“エルヴィス”バスケットがプロデュースを担当。故クリス・コーネル(SOUNDGARDEN)へのトリビュートとしてカバーされた「The Day I Tried To Live」を含む全13曲は、20年以上のキャリアを持つ彼らならではの安定感に満ちた仕上がりとなっています。
適度なヘヴィさとグルーヴ感、甘すぎないメロディと叙情的な空気感など、すべてがバランスよく配分されたアンサンブルは、時にニューメタルと揶揄されてきましたが、もはやここまで長く続けてきたらそれはひとつの個性であり、誰にも文句を言われる筋合いがないもの。初期の異端さは完全に払拭されてしまいましたが、ベテランならではの高品質な楽曲群を楽しむことができる本作は、非常に優れたHR/HMアルバムではないでしょうか。
冒頭3曲(「Dying To Live」「Love」「Blood From A Stone」)の流れは文句なしですし、どこからどう聴いても“これぞSEVENDUST!”と呼べるものばかり。これらに続くミディアムバラード「Feel Like Going On」の美しさ、そこから再びヘヴィさが復調する「What You've Become」、不思議な浮遊感がクセになる「Kill Me」など、とにかくどの曲もメロディとアレンジの作り込みが素晴らしく、1曲も聴き逃せない流れと言えるでしょう。
中盤以降も、どことなくサイケさを漂わせる「Nothing Left To See Here Anymore」、ザクザクしたリフの刻みとノリの良さ、なめらかなメロディが耳に残る「Desperation」、哀愁味に満ちた世界観が堪らない「Criminal」、グルーヴィーなリズムと個性的なギタープレイが魅力の泣きメロナンバー「Against The World」、グランジからの影響を見事に昇華させた「Alone」、賛美歌のようなイントロからカオスへと突入する「Wish You Well」と良い流れを作り、ラストはSOUNDGARDENの名曲をSEVENDUST流にカバーした「The Day I Tried To Live」で少し光を掴んでエンディングに到達するわけです。
「Dying To Live」から始まる「The Day I Tried To Live」というストーリーも素敵だと思いましたし、リードトラック「Blood From A Stone」に込められた「勝利や敗退、最高の時や最悪な時など、俺たちが今までに経験してきたすべての出来事に刺激を受けて作り上げた曲さ。俺たちにはまだみんなに差しだせるものがあり、そしてまだ伝えたい言葉がたくさんある。メンバー全員の思いを全て引き出したような曲なんだ」(ギタリストのクリント・ロワリーのコメント)という言葉が本作を代弁しているようにも感じられました。こんな時代だからこそ、下や後ろを向くだけでなく、停滞を気にせずに前や上を向いたりして光を掴んでほしい。そんなことを感じさせてくれるポジティブな1枚です。
▼SEVENDUST『BLOOD & STONE』
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