ANTHRAX『XL』(2022)
2022年7月15日にリリースされたANTHRAXのライブアルバム&ライブ映像作品の同梱パッケージ。日本盤は同年8月12日発売予定。
この作品は2021年に結成40周年を迎えたANTHRAXが、7月16日に行ったアニバーサリー・ストリーミングライブイベント『XL』の模様を音源&映像で完全収録したもの。全22曲が2時間以上にわたり披露されており、ライブならではの生々しさと同時に無観客ライブということもあり、スタジオライブ的な質感で「2020年代のANTHRAXによるグレイテストヒッツ」を存分に味わうことができます。
なお、現時点でパッケージ版(輸入盤)が未着のため、ここでは音源に関して話を進めていきます。
2代目シンガーのジョーイ・ベラドナ(Vo)を据え、スコット・イアン(G, Vo)、フランク・ベロ(B)、チャーリー・ベナンテ(Dr)、そしてジョナサン・ドネイズ(G/SHADOWS FALL)という編成で行われたこのグレイテストヒッツ・ライブ。ボーナストラックを含む全25曲の内訳は下記のとおりとなります。
1stアルバム『FISTFUL OF METAL』(1984年):1曲
2ndアルバム『SPREADING THE DISEASE』(1985年):5曲
3rdアルバム『AMONG THE LIVING』(1987年):6曲
4thアルバム『STATE OF EUPHORIA』(1988年):3曲
5thアルバム『PERSISTENCE OF TIME』(1990年):2曲(「Time」イントロを含めれば3曲)
コンピレーションアルバム『ATTACK OF THE KILLER B'S』(1991年):2曲
6thアルバム『SOUND OF WHITE NOISE』(1993年):0
7thアルバム『STOMP 442』(1995年):0
8thアルバム『VOLUME 8: THE THREAT IS REAL』(1998年):0
9thアルバム『WE'VE COME FOR YOU ALL』(2003年):0
10thアルバム『WORSHIP MUSIC』(2011年):3曲
11thアルバム『FOR ALL KINGS』(2016年):3曲
ああ、やっぱりジョン・ブッシュ(Vo)時代の4作は完全無視か(笑)。ジョーイ復帰直後は『SOUND OF WHITE NOISE』から「Only」あたりが申し訳程度に披露されていたけど、オリジナルアルバム2作を経た今となっては必要ないということですか、40年の歴史を振り返るというのに。
というわけで、このライブ作品はあくまで「ジョーイ・ベラドナ在籍時のグレイテストヒッツ」でしかありませんのでご注意を(ジョン在籍時を大肯定する筆者にとってこれはつらい)。『FISTFUL OF METAL』からレアな「Metal Thrashing Mad」とか、ジョーイ参加第1弾の『SPREADING THE DISEASE』から「Lone Justice」や「Medusa」「Aftershock」とレア曲も選ばれているものの、それでもジョーイ時代完全無視はないわ。
選曲的に『SPREADING THE DISEASE』から5曲、『AMONG THE LIVING』から最多の6曲というのは納得せざるを得ない。『AMONG THE LIVING』に関してはファンおよびバンド自身が最高傑作と思っていますし、同作完全ライブをするくらいですから。ただ、『STATE OF EUPHORIA』から「Now It's Dark」がセレクトされたのはちょっと意外かな。「Be All End All」はたまにやってたけど、MVが制作されたとはいえこれはレアなのかな。それ以外は普通っちゃあ普通かな(オープニングの「Time」のイントロから「Fight 'Em 'Til You Can't」へと流れる構成は驚いたけど)。
演奏自体は無観客で冷静に向き合っているからか、かなりスタジオ音源に近いアレンジ/プレイかな。なので、特に文句もなく楽しく聴くことができます(ジョーイ時代の楽曲がゼロなこと以外は)。あ、あと「Bring The Noise」にはPUBLIC ENEMYのチャック・Dがゲスト参加しています。
あ、それで思い出したわ。「Bring The Noise」はやるのになぜ「I'm The Man」はないの? ANTHRAXの40年を振り返る上でもっとも重要な1曲なのに。そういう“遊び”が少なくてストイックな部分が目立つ本作は、古くからのファンには少々物足りないかもしれません。これも映像付き(Blu-ray)で楽しんだら印象が変わるのかしら。
“BIG 4(=METALLICA、SLAYER、ANTHRAX、MEGADETH)”の中でもっともレーベルを転々としているためか、オールキャリア・グレイテストヒッツの見込みが薄いANTHRAXだけに、せめてライブ作品だけでは本気で40年を総括する選曲に期待したかったな。まあ、そうなると最低2日は必要になるから厳しいか。なんにせよ、僕自身はちょっとだけ消化不良な内容でした。
▼ANTHRAX『XL』
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