SHINEDOWN『PLANET ZERO』(2022)
2022年7月1日にリリースされたSHINEDOWNの7thアルバム。
全米5位/ゴールドディスク(50万枚以上)を記録した前作『ATTENTION ATTENTION』(2018年)から4年2ヶ月ぶりの新作。彼らにしてはずいぶんと間隔が空いた印象がありますが、それもこれもコロナ禍の影響なのでしょう。しかし、そんな困難をものともせず今作も全米5位の好記録を残し、3rdアルバム『THE SOUND OF MADNESS』(2008年)から5作連続全米TOP10入りを果たしました。
前作同様にメンバーのエリック・ベース(B)をプロデューサーに迎えた本作は、モダンなエレクトロサウンドを随所に導入した前作とは異なり、良い意味でポストグランジからモダンメタル側に“振り切った”作風だなと。また、歌モノ自体は13曲ですが随所にインタールードを用いることでストーリー性を強めた作風に仕上がっていおり、全20トラック/約49分をスルスルと聴き進めることができます。
前作はブレント・スミス(Vo)を襲った精神的トラブルや心の葛藤がそのまま反映されたダークなテイストでしたが、今作はオープニングSE後に勢いよくなだれ込むアップテンポのメタルチューン「No Sleep Tonight」でいきなりハートを鷲掴みにされます。ちょっと往年のSCORPIONSを彷彿とさせるこの曲に驚きを隠せないまま、良い形でタイトルトラック「Planet Zero」へと続き、その後も陰湿で不穏なロボットキャラクター“Cyren(シレン)”の機械的なナレーション=インタールードを挿入することで、全体を通して没入感が強まっている。下地には確かにポストグランジの香りが感じられるものの、良い意味でモダンメタルサイドにアップデートされており、ナレーションが生み出す(少々古い例えですが)近未来感にも見事マッチしているのです。
今作は新たに設立されたプライベートスタジオにて、時間をじっくりかけて制作されたこともあってか、1曲1曲の作り込み具合も際立つものがあります。先にSCORPIONSからの影響について触れましたが、メロディラインにおいては「America Burning」あたりからもその匂いが感じられます。本人たちは意識していないのかもしれませんが、良い意味でオールドスクールのHR/HMからの影響をにじませ、かつ骨格となるポストグランジ以降の音と、2010年代以降のモダンメタル的味付けを随所に散りばめる。そういった個性的な楽曲群をインタールードでつなぐことで、違和感なくアルバムを通して楽しめるわけです。例えば、先の「America Burning」みたいにダイナミズムの効いたハードロックとアコースティック色強めのアーシーなバラード「A Sympton Of Being Human」をごく自然に続けて楽しめるのも、そうしたインタールードによる効果が大きいのではないでしょうか。
HR/HMファンを納得させる楽曲を随所に用意しつつラジオフレンドリーな楽曲もしっかり存在し、昨今のサブスクを通じて受け入れられそうな作りの楽曲まで含まれている。単曲で聴いたときに感じる充実度はもちろんですが、コンセプチュアルな作品としてのアルバムの完成度も段違い。前作も非常に優れた1枚でしたが、今作はSHINEDOWNが新たな領域に到達しつつ、そこで大きな結果を打ち出すという偉業を成し遂げた傑作ではないでしょうか。ロックファンのみならず幅広い層に届いてほしいですし、これを聴いて「ロック、まだまだ面白いじゃん」と感じてもらいたい。そんな可能性を秘めた2022年における重要作です。
▼SHINEDOWN『PLANET ZERO』
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