2018年8月24日 (金)

SHINEDOWN『ATTENTION ATTENTION』(2018)

2018年5月にリリースされた、SHINEDOWN通算6枚目のスタジオアルバム。3作目『THE SOUND OF MADNESS』(2008年)が初の全米TOP10入り(8位)を記録し、200万枚を超えるヒット作になったのを機に、以降の作品はすべて全米チャートで10位内に入っている彼ら。最新作も初登場5位というこう記録を残しています。

前作『THREAT TO SURVIVAL』(2015年)がポップな作風で、初期のガッツのあるサウンドを好むリスナーからは若干敬遠されがちでしたが、続く本作は本来のヘヴィさをモダンな質感にシフトさせた意欲作。それもそのはず、本作は心の中でささやく“悪魔”や忍び寄る不安と戦いながら生きる人々の様を時にヘヴィで引きずるようなサウンド、時には現代的なエレクトロサウンドを織り交ぜながら表現したコンセプトアルバムなのですから。

本作はブレント・スミス(Vo)を襲った精神的トラブルや心の葛藤がそのまま反映されていると言われています。アルバム冒頭を飾る「Devil」はまさにこのアルバムを象徴するような1曲で、先に挙げた「心の中でささやく“悪魔”や忍び寄る不安」を表現したもの。「Kill Your Conscience」ではSNSによって行動が縛られた現代人への怒りが綴られ、「Get Up」はうつ病に苦しむ人たちへ向けた応援歌、「The Human Radio」では自分の真実のために戦い続けることを歌い、「Brilliant」では心の強さで恐怖に打ち勝った瞬間が描かれている。もうこれだけで……ブレントに何が起こったのか、想像に難しくありません。

では、このようなテーマがどういったサウンドで表現されているかというと……意外とネガティヴすぎないんですよね。もちろんヘヴィでダーク、悲哀に満ちたサウンドもところどころで登場しますが、モダンな色付けを用いつつもしっかり光が感じられるのです。要するに、冷たくない。人工的な味付けをしていようが、どこかに必ず人の温もりが感じられるのです。いわゆるポスト・グランジ勢の中でも彼らが頭ひとつ飛び抜けた存在なのは、こうした「ネガティヴを享受して、聴き手にポジティヴを与える」ところに秘密があるのかもしれませんね。

デビューアルバム『LEAVE A WHISPER』(2003年)を初めて聴いたときは、正直アメリカでこんなに大きな存在になるなんて想像もしていませんでした。だけど、こうやっていろんなものを受け止めて前に進んできた彼らだからこそ、今の地位があり、このアルバムがある。ここ日本での評価は決して高くはありませんが(なにせ、2015年8月に初来日が実現したばかりですから)、この意欲作を携えた再来日にもぜひ期待したいところ。よろしくお願いします!



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投稿: 2018 08 24 12:00 午前 [2018年の作品, Shinedown] | 固定リンク

2005年10月29日 (土)

V.A.『KILLER QUEEN -A TRIBUTE TO QUEEN-』(2005)

さて、目下絶賛来日中のQUEEN + PAUL RODGERS御一行様ですが、やはり来日する前は懐疑的な声があったと思うんですよ、特に古くからのファンから。けど、実際にこの目で見てしまうとやはり……QUEENという偉大さに対してリスペクトをしつつ、ブライアン・メイやロジャー・テイラーがポール・ロジャースという「友人」と思う存分楽しんでQUEENナンバー、さらにはFREEやBAD COMPANYの曲を演奏してる……っていうことを、もの凄い説得力を持って披露してくれるもんだから、観る側としては文句の言いようがないわけですよ。だってねぇ、約2時間半近くに渡って、それこそ30曲近くも演奏してくれるんですからねぇ。僕はあのセットリスト見ただけで涙ぐみましたもの。

今年は『WE WILL ROCK YOU』のミュージカルが来日したり(当然僕も行きました)、先のQUEEN + PAUL RODGERSがあったり、もっといえば去年からの『JEWELS』のヒットなどがあって、かなりQUEENに注目が集まった1年だったじゃないですか。そんな中、リリースされたこのトリビュートアルバム『KILLER QUEEN -A TRIBUTE TO QUEEN-』。アメリカでは8月に、ここ日本では来日公演に合わせて10月後半にリリースされたばかりで、リリース元がQUEENのアメリカでの配給元である「Hollywood Records」ということもあり、もっとも公式トリビュート盤に近い存在な1枚ではないかと思うんです。以前にも「EMI」からこの手のトリビュートが出たこともあったけど、あのときはダンス系のみだったし。今回みたいなロック/ポップス/オルタナティヴといったもっともQUEENが影響を与えたシーンからのフィードバックは恐らく初めてのことだと思うので、普段はこの手のトリビュート盤を買わない僕ですら、これは真っ先に買いました。

参加アーティストはそれこそ多岐に渡り、そのへんはAmazonのリンク先を見てもらえば一目瞭然だと思うんですが……みんなそれぞれに原曲に忠実だったり、独自の色にまで昇華させてしまっていたり、その愛情表現の方法はさまざまで、良い意味で聴きやすく、破綻してないなーと。それが嬉しくもあり、また物足りなくもあり。まぁトリビュート盤というのはそういうのが多いですからね、そこまで過剰な期待はしてなかったですけど。

でも聴き応えありますよ、それなりに。完全にゴスペルバラードに昇華してしまったデヴィン・デグロウの「We Are The Champions」もそうだし、ストーナーチックなヘヴィロックへと進化したジョシュ・オム(QUEENS OF THE STONE AGE)が歌いELEVENが演奏する「Stone Cold Crazy"」もそうだし、個性的なアーティストっていうのはやはりカバー曲でも己の色へと昇華してしまうんですね。

かと思えばSUM41による「Killer Queen」やROONEYによる「Death On Two Legs」みたいに、原曲まんまの完全コピーすらある(彼らがここまで素直なカバーをするとはちょっと驚きでした)。あのLOS LOBOSがQUEEN(「Sleeping On The Sidewalk」)をカバーするというのもある意味面白いし、ジョン・オブライオンによる「Play The Game」もらしくて聴き応えあったし。うん、これだけでも平均点以上ですよね。

しかし、このアルバムには本当の意味でのハイライトがふたつ用意されていました。それはふたつの「Bohemian Rhapsody」カバーなんですよ。

前半のハイライトであるコンスタンティン・Mとミュージカル『WE WILL ROCK YOU』ハリウッド版キャストによるカバーは、原曲まんまなんですが、中盤のオペラパートもミュージカル同様すべて完全コピーされてるのがさすがというか。ちょっと鳥肌立ちますね。

そしてもうひとつのカバーは、かのTHE FLAMING LIPSによるサイケデリック・バージョン。こちらも基本的には完全コピーに近いんだけど、そこは彼らのことですから……完全にLIPSバージョンになってしまってる。ていうか、彼らのオリジナル曲ですよこれ! 多重録音ならではの中間パートは正に「涅槃からの誘い」ですし、このドリーミーな感じこそLIPSの極みといったところでしょうか。こちらも違った意味で泣けますね。

ほかにも名カバーは幾つもあるしホントは1曲1曲についてコメントしていきたいんですが、それをやると相当な長さになるんで、今回は割愛。QUEEN好きで昨今のロックシーン(主にアメリカン・オルタナ・シーンね)に興味を持っている人なら間違いなく楽しめる1枚だと思いますよ。これを聴いて改めてQUEENの偉大さにひれ伏すもよし、来日公演前に聴いて気分を高めるもよし。LIPSバージョン「Bohemian Rhapsody」だけでもぜひ聴いてみてくださいよ!



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投稿: 2005 10 29 09:18 午後 [2005年の作品, Compilation Album, Joss Stone, Queen, Queens of The Stone Age, Shinedown] | 固定リンク

2004年11月29日 (月)

SHINEDOWN『LEAVE A WHISPER』(2003)

以前は洋楽系ニュースサイト的なことに手を出していましたが、それを始めた切っ掛けというのは実に些細なことで。単純に、俺が「今現在の」洋楽シーンに疎かった、ということ。それが始まりなんです。

だってさ。去年のフジロックでTHE LIBERTINESを観て、誰がピートで誰がカールかなんて全然判らなかったんだから。アルバム聴いて普通にいいな、と感じてライヴ観てみたいと思って。それで友達に「ピーター来てた?」って聞かれて、てっきり真ん中で歌ってた奴(実はカール)をピートだと勘違いしてた俺は、「おお、来てた来てた!」とかテキトーに返事してたくらいだし……ホント、それくらいの知識しかなかったんですよ。

もっと言ってしまえば、知識なんてなくても音楽は聴ける。そんなものに頼っていると、いずれそれらが自分にとって単に「ノイズ」にしか感じられなくなる日が来る、それもまた事実なんですけどね。でも俺は、単純にもっと知りたいと思ったから、自らニュースを集めるようになった。だって周り(ネット)を見回しても、自分が信頼出来るような洋楽系ニュースサイト、全然なかったし。邦楽はぶっちゃけ「ミュージックマシーン」ひとつあれば十分だったし(世間的にはいろいろ意見はあるようだけど、個人的にはここだけ目を通しておけば問題ないと思ってる。掲示板含めてね)。でも洋楽となると、やはりニュースソースの問題(企業系情報サイトはまだしも、各アーティストのオフィシャルサイトは全て外国語ですから、それらを翻訳し理解してから取り上げる必要がある)だったり、邦楽以上に広い世界ですから趣味の幅も異常にデカい。だからどうしても好みのアーティストに限定しまいがちで、逆に広く扱うサイトでも知識の乏しさが目立って妙に信用できなかったり。だから自分で始めた。ホントそれだけなんですよ。最初はそれこそ、自分の興味の範囲内のアーティストのみ取り上げ、段々といろいろ見えてくるようになると、今度はもっと幅広く扱うようになり、結果的には洋楽全般を扱うようになった、と。

けどね、そんなの1年と続かなかった。続かなかった理由のひとつは、単純にプライベート上の問題。そこまで更新に時間を割けない状況になってしまった。自然とPCに向かう時間も減っていき、同時に更新に対する情熱も冷めていった。元々はレビューを中心にしたサイトだったし、それ自体はまだ全然続けたいと思ってたけど、やはり一度線引きの必要が出てきた。ぶっちゃけ、これ以上ニュースサイト的なことを続けることに、興味がなくなってしまった、と。これがふたつめの理由かな。ま、全部が全部、微妙に繋がってるんですけどね。

その後、俺がどこから洋楽情報を入手してるかというと……実はこの8月以降、他所のニュースサイトって殆ど目にしてないのね。いや、たまに覗いてるサイトはあるけど、それも週に1回、あるいは数週間に1回程度。まぁ俺自身がネット巡回を殆どしなくなってしまったのも影響してるんだけど。それにしても、凄く生意気な言い方をさせてもらえば、あー俺がやってたようなニュースサイトって他にないんだな、そりゃ需要あるわけだ、って思ったわけ。他所のニュースサイトの皆さんには申し訳ないけど。だってさ、その人が何故そこに向かったか、何故そういうニュースサイトを始めたのか、とか、そういった背景が見えてこない、ただ企業サイトから情報拾ってきた、いわばニュースサイトの孫サイト的なのが大半じゃない? 本当に面白いと思えるサイトは、やはりそれなりに知識に長けてたり文章力があったりする人がやってるサイトばかりで、そういう人って結局ブログ的な方向に行っちゃってて、厳密にはニュースサイトではないんだよね。俺が私的リンクに貼ってる人達のサイトってのが、正にそういう方向性のサイトばかりで。情報を仕入れるというよりはむしろ、読み物として面白いサイトばかり。もっと淡々と、そして面白い洋楽総合ニュースサイトってあってもいいと思うんだけど。

と、かなり批判的なことばかり書いちゃいましたが。本題に入りましょう。俺がこの数ヶ月、そういった洋楽の情報……というよりも「新しい音」と接する機会をどこで得ていたかというと、それはもうネットラジオと実際のラジオなんですよ。自分でもネットラジオの番組を持っていて、そこで積極的に「新しい音」を紹介してきていましたが、洋楽雑誌を殆ど信用していない俺としてはやはり「出音」こそ全てだな、と。CDショップの視聴だったり、MTVだったりラジオだったり、そこでの出会いが特にここ数ヶ月、非常に重要な役割を果たしてくれてます。

今回紹介するSHINEDOWNというバンドも、実は海外のネットラジオと、某FM局の番組で知りました。後で彼等がSILVERTIDEと並び、今アメリカで注目されている新人だということを知ったり、あるいはTHE DARKNESSの全米ツアーのオープニングアクトを務めたなんて情報を耳にしたり。けどそんなのは補足に過ぎないわけですよ。単純に音がカッコ良かった。曲が魅力的だった。それが全てだったわけですから。

レビューサイトをやってきて一番辛いのは、いくら長文を書いて大絶賛しても、実際に音を聴かせられないことなんですよね。そういう意味で、手軽に個人でネットラジオをやれるようになった昨今の状況は、俺みたいな人間にとっては非常にやりやすい状況になってるんですよね。

今回、こうやって新しいサイト名に「RADIO TMQ」を彷彿させる「TMQ-WEB」という名をつけたのは、やはりラジオとの連動性をもっと強めようと思ったから。洋楽に限定されてしまいますが、こうやってこのサイトで取り上げたアーティストの音をダイレクトに伝えられるというのは、やはりやりやすいですよ。いくら俺が「このSHINEDOWNというバンドは、SILVERTIDEよりも更に土着的で、よりアメリカ人好みの音。SOUNDGARDEN以降、あるいはCREED以降の『音』を鳴らし、それでいてトラディショナルなアメリカン・バンド……LYNYRD SKYNYRD辺りの色も持つ、ちょっと日本人には地味に映るかもしれない、けど非常に良質なバンド」と彼等を褒めたところで、これを読んだ人がどこに比重を置くか……SOUNDGARDENのフォロワー的なポイントを重視するのか、あるいはトラディショナルなアメリカン・バンドという点を重視するのか。それによって、見方/感じ方も大きく変わると思うんですよ。勿論、それは俺の文章力の問題も大きいわけですが、けど読み手が興味を持つポイントによって、また解釈も少しずつ変わってくるとも思えるわけでして。そういう意味ではこれらの文章を取り上げた後に、ラジオで改めて紹介するというのは、本当に良い手段だと思うんですよね。

そんな思いを込めて、このサイトを立ち上げようと思ったのです。そして……SHINEDOWNはいいバンドですよ。国内盤は出てませんけど。出す予定もないみたいですけど。



▼SHINEDOWN『LEAVE A WHISPER』
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投稿: 2004 11 29 01:24 午前 [2003年の作品, Shinedown] | 固定リンク