SICK OF IT ALL『XXV NONSTOP』(2011)
2011年11月1日にリリースされたSICK OF IT ALLの10thスタジオアルバム。日本盤未発売。
本作はバンドが結成され、1stリリースとなったデモカセット『SICK OF IT ALL』をリリースした1986年から数えて25周年という節目に制作された、1986年〜2000年代初頭の楽曲を再レコーディングした1枚。ヒット曲と呼べる楽曲こそ含まれていませんが、バンドにとってライブの鉄板となる代表曲を最新の演奏&テンションで表現した、彼らならではの“グレイテストヒッツ”アルバムに仕上がっています。
全21曲中、原曲の収録作は下記のとおり。
1st EP『SICK OF IT ALL』(1987年)M-1、6、10、17、21
1stアルバム『BLOOD, SWEAT AND NO TEARS』(1989年):M-1、2、8、9、10、11、16、17、19、21
2ndアルバム『JUST LOOK AROUND』(1992年):M-7、12、15
3rdアルバム『SCRATCH THE SURFACE』(1994年):M-4
4thアルバム『BUILT TO LAST』(1997年):M-5、13、14、20
5thアルバム『CALL TO ARMS』(1999年):M-3
7thアルバム『LIFE ON THE ROPES』(2003年):M-18
1stアルバム『BLOOD, SWEAT AND NO TEARS』には1st EP『SICK OF IT ALL』収録曲の再録バージョンが複数(M-1、10、17、21)が含まれているので、これらの楽曲は再々録音ということになるのでしょうか(カセットのデモ音源を含めたら4度目の録音ですけどね)。1stアルバム『BLOOD, SWEAT AND NO TEARS』から10曲(M-21はM-1の別バージョンなので正確には9曲)と本作の大半を占めますが、それだけ同作がバンドにとって今も変わらぬ原点であり重要な1枚ということなのでしょう。実際、こうやって再録されたバージョンを聴いてもまったく色褪せていませんし、非常に納得できるものがあります。
一方で、僕が初めて彼らに触れるきっかけとなった2ndアルバム『JUST LOOK AROUND』からは3曲、メジャー移籍一発目となった3rdアルバム『SCRATCH THE SURFACE』からは表題曲1曲のみと、その少なさに驚かされたり、一方でメジャー最終作となった4thアルバム『BUILT TO LAST』からは4曲も選ばれているのは少々意外でした。あと、5thアルバム『CALL TO ARMS』と7thアルバム『LIFE ON THE ROPES』からはそれぞれ1曲ずつ選出されているのに、その間に挟まれた6thアルバム『YOURS TRULY』(2000年)からは選曲ゼロなのも興味深いところです。
メンバー自体は1992年から不動の4人であり、かつベースのクレイグ・セタリ(ex. AGNOSTIC FRONT、ex. STRAIGHT AHEADなど)を除けば3人はすべての原曲に参加しているメンツ。それもあり、アレンジなどはさほど大きな変化は感じられず、むしろライブ感の強いパフォーマンスにバージョンアップされている。音の厚みや重さ、ノリの良さはリレコーディングされた本作のほうが数段上ですし、かつ曲間をほぼ空けずに矢継ぎ早に繰り出される構成もあって原曲以上にスピード感を味わえます。
80年代後半から90年代初頭の、あの時代ならではのサウンドメイク、質感、プロダクションの良さも確かにあり、一概にどっちが上とは言い難いですが、現在の彼らのライブサウンドに近い形でまとめられた本作は時代を超越した統一感を追体験できます。このへんはプロデューサーのチュー・マドセン(MESHUGGAH、SUICIDE SILENCE、DIR EN GREYなど)の手腕によるものが大きそうですね。
2011年時点の老舗NYHCバンドの生き様がダイレクトに伝わる良作。1st EPのジャケットを再現したアートワークも最高ですし、このバンドに初めて触れる上での入門編としてもオススメの1枚です。
▼SICK OF IT ALL『XXV NONSTOP』
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