SIMPLY RED『STARS』(1991)
1991年10月にリリースされた、SIMPLY REDの4thアルバム。アメリカでは76位と、過去の作品と比べて低調で終わっていますが、本国イギリスでは前作『A NEW FLAME』(1989年)に続く1位を獲得。「Something Got Me Started」(全米23位/全英11位)、「Stars」(全米44位/全英8位)、「For Your Babies」(全英9位)、「Thrill Me」(同33位)、「Your Mirror」(同17位)とヒットシングルが多数生まれたこともあり、イギリスだけで300万枚を超えるメガヒットを記録しました。
ソウルやR&B(ブルー・アイド・ソウル)を軸にしながらも、サウンド的にはハウスやジャズファンクなど当時流行していた最新のダンスミュージックも取り入れられており、ポップス層からクラブ層まで幅広く受け入れられた1枚だったような記憶があります。
この当時、メンバーとして屋敷豪太(Dr, Programming)が参加していたことでも大きな話題となりましたが、まあとにかく1曲1曲の完成度が異常に高い。シングルヒットした「Stars」や「For Your Babies」のポップミュージックとしての存在感の大きさ、「Your Mirror」のジャズの影響下にありながらもマイケル・ジャクソン級のソウル感、「She's Got It Bad」のファンクロックとしてのグルーヴ感、「Model」に漂うダビーな空気など、桁外れの楽曲がずらりと並ぶのですから、そりゃ売れるわけですよ。
そして、こういった楽曲を時に優しく、特にファンキーかつセクシーに歌い上げるミック・ハックネル(Vo)のボーカリストとしての力量も、ハンパないったらありゃしない。加えて、そのバックを支えるプレイヤー人の演奏力。そつなくこなしているようで、実はめちゃくちゃ高い技術の上で成り立っていることは、何度も聴き込むことで理解できました。完璧な楽曲と完璧な歌と完璧な演奏が生み出す自然体。これって実はすごく難しいことだと思うんです。
世代的にはもちろんデビュー時の「Holding Back The Years」(全米1位/全英2位)の頃から知っていますし、アルバムにも普通に“流行のポップス”として触れてきましたが、今作はそことはまた違った光や存在感を放っているように思います。言い方を変えれば……リリースから30年近く立っているにも関わらず、今聴いても新鮮に楽しめるというエヴァーグリーンな1枚。そんな時代を超越した作品と断言できます。
とか言いながら、実は本作、リリースしてすぐは手を出さなかったんですね。テレビのチャート番組(たぶんフジテレビの『BEAT UK』)で「Something Got Me Started」は耳にしていたものの……ところが、1992年に入って数ヶ月間イギリスに滞在した際、ラジオやMTV、CDショップで本作からのシングル「Stars」や「For Your Babies」を耳にして、「なんじゃこりゃ!?」と驚くわけです。しかも、これがSIMPLY REDの楽曲だと知って、さらにびっくり。そりゃ購入しますよね、現地で(当時はCDウォークマン的なものはまだ高価だったか発売されてなかったかで、当然カセットテープで購入)。
なので、このアルバムを聴くと当時のイギリスの景色が思い浮かんでくるんです。そんな、個人的にはとても重要な1枚。それを抜きにしても名盤なんですけどね。