2017/02/18

SKID ROW『SUBHUMAN RACE』(1995)

湾岸戦争勃発を機に世界的不況へと突入していくさなかに発表されたSKID ROWの2ndアルバム『SLAVE TO THE GRIND』は、それでも全米初登場1位、トータルセールス200万枚という当時の状況から考えれば上出来の結果を残しました。特にここ日本では1991年、1992年と2年連続でのツアーが実現し、前者では日本武道館、後者では代々木第一体育館とアリーナ会場でライブを実施する盛況ぶりを見せます。また1992年秋にはカバー曲で構成されたEP『B-SIDE OURSELVES』 を発表して、『SLAVE TO THE GRIND』に伴うワールドツアーをひと段落させるのですが、バンドはすぐに次作の制作には入りませんでした。これはHR/HMに取って代わりNIRVANAやPEARL JAMといったグランジ勢がシーンを席巻していたことで、マネジメントから新作制作に「待った」がかかったとも言われています。

空白の1993年を経て、1994年からは新たにボブ・ロックをプロデューサーに迎え3rdアルバム制作を開始。こうして1995年3月にようやくリリースされたのが、本作『SUBHUMAN RACE』なのです。

まず聴いておわかりのとおり、怒りと勢いで制作された前作と打って変わって、本作は同じ怒りをモチーフにしながらも非常にコントロールされた内容です。だからこそ、アレンジ面においてもテクニカルな要素が目につき、セバスチャン・バックのボーカルも時に抑制を効かせ、時に感情を爆発させるというメリハリがついたことで、全体的にダイナミックさが目立つ。また疾走感よりもグルーヴを重視したテンポ感は、『SLAVE TO THE GRIND』以降に発表されたMETALLICAのブラックアルバム、PANTERA『VULGAR DISPLAY OF POWER』などの新世代メタル作品、そしてSOUNDGARDENやALICE IN CHAINSといったグランジバンドからの影響と言えるでしょう。このテンポ感が軸にあることで、全体のトーンが定まっているようにも感じられます。

セバスチャン・バックが当時このアルバムを語る際、JUDAS PRIESTの『BRITISH STEEL』を引き合いに出していましたが、リフに次ぐリフというアレンジ、アップテンポの曲を含むものの基本的にはミドルテンポが持つグルーヴでぐいぐい引っ張り、音の鋭さで聴き手を圧倒させる作風は確かに通ずるものがあるように思います。

本作が発表された頃にはグランジブームもひと段落した時期ではあったものの、SKID ROWのようなバンドは一世代前の存在として片づけられてしまったためか、またレーベルがこの手のバンドと真剣に向き合わなかったためか、チャート的には全米35位という結果で終わってしまいます。とはいえ、オープニングを飾るグルーヴィーな「My Enemy」、地を這うようなリズムが気持ちいい「Beat Yourself Blind」、変拍子を用いたサイケな「Eileen」、「Slave To The Grind」を整理して一段上へと昇華させたような「Subhuman Race」、ヘヴィなリフ&ビートが心地よい「Frozen」、ダイナミックな「Face Against My Soul」や「Medicine Jar」、SKID ROWらしい泣きのバラード「Into Another」、感情を抑えた適度な熱量が魅力の「Breakin' Down」など良曲満載で、決して数字がすべてではないことを証明する1枚ではないでしょうか。

この翌年の1996年にバズ(セバスチャン)がバンドを脱退。SKID ROWの黄金編成はたった3枚で幕を降ろすことになり、2017年現在まで彼の復帰は一度も実現していません。つい先日、新たなシンガーとして元DRAGONFORCEのZPサートが正式加入したばかり。レイチェル・ボラン(B)がイエスと言わない限りは、残念ですが今後もバズの復帰は絶望的なんでしょうね。



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投稿: 2017 02 18 12:00 午前 [1995年の作品, Skid Row] | 固定リンク

2017/02/17

SKID ROW『SLAVE TO THE GRIND』(1991)

デビューアルバムがバカ売れし、BON JOVIやMOTLEY CRUEのオープニングアクトから自身のヘッドライナーツアーへと移行すると、各地で大盛況。ところが、セバスチャン・バック(Vo)のトラブルメイカーぶりが各地で発揮され、一悶着起こして別の意味で話題になります。その矛先はバンドをデビューへと導いたBON JOVIへと向けられ険悪な雰囲気に。

そんな状況下で制作されたのが、1991年6月にリリースされた2ndアルバム『SLAVE TO THE GRIND』です。前作『SKID ROW』では“パンクマインドでHR/HMを鳴らして”いましたが、本作ではパンクマインドがより肥大し、鳴らすサウンドもHR/HMよりも激しさを増しすという“Too much”な内容に仕上がっています。

サウンド的にも、よく整理されていて聴きやすかった前作から一変、より生々しさが増し、ドラムは前のめり感が強く、ギターも極力オーバーダビングされていないような印象を受けます。そしてボーカルの無軌道感……決まったメロディをしっかり歌うのではなく、感情の赴くままに歌い叫び、多少音程が外れようが気にしないし直さない。“Well-made”感が強かった前作とは真逆の、 “録って出し”感濃厚な仕上がりなのです(とはいえ、そこはマイケル・ワグナーの手腕によるものも大きく、実はギリギリのバランス感で成り立っているようにも聴こえます)。

楽曲的にもヘヴィブルースという呼称がふさわしい「Monkey Business」から始まり、“SKID ROW版「Ace Of Spades」”の呼び名がぴったりな「Slave To The Grind」、グルーヴィーな「The Threat」、前作でのバラードとはひと味違ったヘヴィさを持つ「Quicksand Jesus」と、1stアルバムの硬派な部分をより煮詰めたようなナンバーばかり。そこに直球すぎるタイトルの「Get The Fuck Out」や「Riot Act」といった疾走パンクチューン、のちのMETALLICA、PANTERAにも通ずるミドルヘヴィナンバー「Mudkicker」、ドラマチックな王道パワーバラード「Wasted Time」など緩急に富んだ楽曲が加わることで、“どこか一辺倒な雰囲気なのに、なんだかんだ最後までスルッと聴けてしまう”不思議な魅力を作り上げることに成功しています。

実はこのアルバムの発売タイミングからビルボードの集計方法が変わったことで、この『SLAVE TO THE GRIND』はアルバムチャート初登場1位という快挙を初めて成し遂げることになります。今では当たり前のような「初登場1位」を初めて獲ったのが、実はHR/HMアルバムというのも非常に興味深い話ですね。本作からはシングルヒットに恵まれず、唯一「Wasted Time」が全米88位にチャートインしたのみ。いわゆる“4 letter word”(Fuck だのShitだの下品な言葉)を多用した歌詞が多かったことでラジオから敬遠されたものの、アルバム自体は200万枚を超える数字を残しました。また、本作リリース後はPANTERAやSOUNDGARDENを前座に迎えてヘッドライナーツアーを行っていたのも、このアルバムを聴けばなるほどと頷けてしまいます。



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投稿: 2017 02 17 12:00 午前 [1991年の作品, Skid Row] | 固定リンク

2017/02/16

SKID ROW『SKID ROW』(1989)

“BON JOVIの弟分”的存在として1989年初頭にメジャーデビューを果たしたSKID ROW。デビュー作『SKID ROW』からの1stシングル「Youth Gone Wild」のMVは当時、ここ日本でもTBS『PURE ROCK』で毎回のようにオンエアされることでHR/HMファンの間で浸透していきました。だって曲良しサウンド良し、ボーカルのセバスチャン・バックのルックス良し声良しで非のつけどころが見当たらなかったんですから、仕方ないですよ。

“BON JOVIの弟分”云々は、メンバーのデイヴ・スネイク・セイボがジョン・ボン・ジョヴィの幼馴染で一緒にバンドをやっていたことがあること、ジョンが運営する「New Jersey Underground」のサポートでデビューにこぎつけたこと、同じドグ・マギーがマネジメントを担当していることから。『SLIPPERY WHEN WET』(1986年)で天文学的大ヒットを記録し、続く『NEW JERSEY』(1988年)もそれに匹敵するヒット作となったタイミングでのデビューだったこともあり、SKID ROWは1年と経たぬうちに大成功を手にします。

1stシングル「Youth Gone Wild」こそ全米99位と低調に終わりますが、続く泣きのバラード「18 And Life」は全米4位、アコースティックギターを取り入れたパワーバラード「I Remember You」も全米6位を記録し、アルバム自体も最高6位、現在までにアメリカのみで500万枚を超える大ヒット作となっています。ホント、アメリカにおける HR/HMブーム末期に登場した最後の大型新人という呼び名がふさわしい存在だったと思います。

ヒットシングルがバラードばかりですが、アルバム全体を覆うのは若さ、怒り、抑圧、衝動という攻めの空気感。パンキッシュな雰囲気の「Piece Of Me」やポップなHR「Can't Stand The Heartache」もありますが、基本的にはパワフルな「Big Guns」、疾走感あふれる「Sweet Little Sister」、そしてアンセミックな「Youth Gone Wild」などメタリックな色合いがこのバンドの持ち味。そこにパンクなスタンスが加わることで、バンドとして唯一無二の個性を確立していくことになります。

ちょうど西海岸からGUNS N' ROSESが登場し、それに応えるように東海岸からSKID ROWが登場。パンクマインドでHR/HMを鳴らしてはいるものの、最終的にお互い異なるスタイルを作り上げたのは非常に興味深いところです。



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投稿: 2017 02 16 12:00 午前 [1989年の作品, Skid Row] | 固定リンク

2005/07/08

寝る前にこれ聴け!(1)

 新コーナー。昔懐かしい(といっても、'80年代半ば〜'90年代前半を中心とした)HM/HRのアルバムを毎回3枚取り上げるというコーナー。単純に、俺が寝る前にこの3枚をCD棚から引っ張り出して聴くだけ、という話。何の役にも立たないかと思いますが‥‥

まず1枚目。


・SKID ROW「SLAVE TO THE GRIND」('91)
 久し振りに引っ張り出して聴いてみたら、スゲーかっこ良かった。全米初登場1位とか、当時GUNS N'ROSESやMETALLICAといったバンドのオープニングアクトをやってたとか、前座にFAITH NO MOREやSOUNDGARDEN、PANTERA等を使ってたとか、そういった情報はどうでもよく、とにかくひたすらカッコいい。そして泣ける曲多し。


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・WINGER「IN THE HEART OF THE YOUNG」('90)
 RATTのプロデューサー(ボー・ヒル)が手掛けてることから、RATTフォロワー的に思われてたデビュー当時。何となくサウンドと声がそれっぽかったからね。けど、メンバーは全員スタジオミュージシャンなり誰かのバックなりで鍛え上げられた名手ばかり。テクニカルHRの極み。
 けどこのアルバムではDEF LEPPARD的な楽曲指向を強めてるんだよね。曲によっては打ち込みベースを使ってたり、あるいはプログレ並みのテクニカル路線だったり。バランス的に一番好き。中途半端っていう人もいるみたいだけどね。


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・SADS「THE ROSE GOD GAVE ME」('01)
 唯一色の違う、しかも邦楽、そして2001年の作品。けどこれがメチャメチャ良い。
 ほぼ全編英語(日本語曲は数曲のみ)、MOTLEY CRUEやMARILYN MANSONなんかを彷彿させるヘヴィロック路線。SADSは「BABYLON」までしか聴いてなくて、その後の清春ソロは聴いてたんだけど、良いねこのアルバム。普通にハードロック/ヘヴィロックじゃんか。ギターとドラムが現在THE DUST'N'BONEZにいるせいか、空気感が似てるよね。ま、プレイとかはまんまだけど。
 ボーカルのせいで好き嫌いハッキリするだろうけど、意外と洋楽HRファンにもアピールするんじゃねーの? 俺は肯定派。


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投稿: 2005 07 08 01:30 午前 [1990年の作品, 1991年の作品, 2001年の作品, Sads, Skid Row, Winger] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック