SKID ROW『RISE OF THE DAMNATION ARMY - UNITED WORLD REBELLION: CHAPTER TWO』(2014)
2014年8月5日にリリースされたSKID ROWのEP。日本盤未発売。
前作『UNITED WORLD REBELLION: CHAPTER ONE』(2013年)に次ぐ本作は、三部作の第2弾。参加メンバーは前作同様にジョニー・ソーリンガー(Vo)、デイヴ・スネイク・セイボ(G)、スコッティ・ヒル(G)、レイチェル・ボラン(B)、ロブ・ハマースミス(Dr)の5人。
内容も前作から引き続き、オリジナル5曲+カバー2曲の全7曲で構成されています。前作で先祖返りしてリスナーを驚かせた彼らですが、前の1枚をデビュー作『SKID ROW』(1989年)寄りのテイストと無理矢理括るならば、続く今作は2ndアルバム『SLAVE TO THE GRIND』(1991年)寄りのテイストで統一されているかな、という衣装を受けます。良くも悪くも『SKID ROW』の路線を焼き直した楽曲が散見されたものの、個人的にはご祝儀的に高評価を与えた前作を経て、ここでは『SLAVE TO THE GRIND』のテイストを用いているものの、より今の5人らしさが強く滲み出ているかな、という気もしています。
前作にあったメジャーキーのパワーバラードは皆無で、唯一「Catch Your Fall」がそっち寄りの1曲。ただ、ここでは『SLAVE TO THE GRIND』に収録されていそうなダークサイドを表現しており、かつ単なる焼き直しで終わらないオリジナリティも伝わってくる。
かと思えば、「Slave To The Grind」の“腹違いの弟”的なファストチューン「Damnation Army」があったり、地を這うようにダーク&ヘヴィな「Zero Day」がある。後者のみギリギリ3rdアルバム『SUBHUMAN RACE』(1995年)的かなという気がしますが、全体を通して聴いたときの統一感もあって、スルスルと楽しめてしまう。本来彼らが4thアルバム『THICKSKIN』(2003年)でやろうとしていたことの一端ってこういうことだと思うんですが、ようやくここであの路線が消化できたんじゃないでしょうか。10年かかったか……(苦笑)。
カバー曲はQUEEN「Sheer Heart Attack」、AEROSMITH「Rats In The Cellar」とド直球なセレクト。どちらもアップテンポの軽やかなハードロックですが、むしろこの2曲って前のEPに入れるべきだったんじゃないかな。で、前のEPに収めていたE・Z・O「Fire Fire」やJUDAS PRIEST「United」がこっちに入っていると収まりがよかったような気がするんですが……難しいものですね。
本EP発売前の2014年4月には19年ぶりの来日公演も実現。三部作完結編の登場を期待されていたところ、2015年春にジョニーが脱退。以降、トニー・ハーネル(TNT)やZPサート(ex. DRAGONFORCE)がフロントに立っていますが、噂される三部作完結編となるフルアルバムはいまだ届けられず。そして、2021年6月末にジョニーの病死がアナウンスされました……。
実は昨日からの更新は、この訃報を受けて「このタイミングにフラットな視点で、ジョニー在籍時のSKID ROWを総括しよう」と思ったことがきっかけでした。2014年の来日時は仕事の都合などもあり足を運ぶことができませんでしたが、本当にあのとき無理してでも観ておけばよかったな……と今回振り返ってみて改めて実感しました。
ZPサートを含む布陣で三部作をしっかり完結させてくれるのか、それとも別の方向へと進むのか。なんにせよ、今のSKID ROWから目を逸らすことなく、しっかり行く末を見届けようと思います。
最後に、ジョニー・ソーリンガーの冥福をお祈りいたします。
▼SKID ROW『RISE OF THE DAMNATION ARMY - UNITED WORLD REBELLION: CHAPTER TWO』
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