2018年7月 6日 (金)

SLAUGHTER『THE WILD LIFE』(1992)

1992年4月に発売された、SLAUGHTER通算2枚目のスタジオアルバム。デビューアルバム『STICK IT TO YA』(1990年)が200万枚を超えるヒット作となったのを受け、完全にその延長線上にある作風でまとめられています。

どこかひねくれたメロディを持つミドルテンポの「Reach For The Sky」でスタートすると、続くアップチューン「Out For Love」では前作からのヒットシングル「Up All Night」がラジオから流れてくるというシャレた仕掛けも用意。曲調やアルバムの構成もかなり前作を意識しているので、新作なのに初めて聴いた感が薄い1枚です。

あ、それでもオーバープロデュース気味だった前作と比較して、本作はもっと“むき出し感”が強いかも。そのへんは1992年という時代に合わせているのかもしれませんね。ただ、そのオーバープロデュース感こそがSLAUGHTERの魅力でもあったんですが……。

で、そのオーバープロデュース感を見事に引き継いでいるのが、4曲目「Days Gone By」かなと。完全にQUEENを意識したピアノバラード風の1曲なのですが、単なるバラードで終わってない風変わりなポップロック調なところも、後半のコーラスの重ね方も、往年のQUEENを彷彿とさせます。前年11月にフレディ・マーキュリーが亡くなったことを受けて制作されたであろうことが、聴けば想像できる1曲です。前作の延長線上にある楽曲が多い中で、この曲が本作においてかなり強いフックになっていることは、間違いありません。

もちろん、そのほかにも日本のVOW WOWに提供した「Move To The Music」のセルフカバーや、泣きメロのミディアムナンバー「Real Love」、ブルースハープをフィーチャーした渋めの「Old Man」など印象に残る曲は含まれていますが、いかんせん14曲で60分オーバーという内容はちょっとトゥーマッチすぎやしないかなと。もう2、3曲フックになる印象深い曲が含まれていたら、また違ったんでしょうけど……ちょっと狙いすぎてやりすぎた感が強いかもしれません。

チャート的には前作を超える全米8位を記録していますが、セールスは前作の4分の1にあたる50万枚程度で終了。シングルヒットも「Real Love」が最高69位にランクインしたのみ。まあグランジ全盛の中でこれだけの成績を残せたのは、ある意味では奇跡なのかもしれませんが。

あ、現行CDはさらにボーナストラックが追加されており、70分超えの大ボリュームになっております。まあ、こっちは本当におまけ程度の内容。やっぱり「Old Man」から「Days Gone By」のアコースティックインストでしっとり終わるほうが、この長尺作品にはぴったりな気がするので。



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投稿: 2018 07 06 12:00 午前 [1992年の作品, Slaughter] | 固定リンク

2017年3月26日 (日)

SLAUGHTER『STICK IT TO YA』(1990)

1990年に上京してからしばらくテレビのない生活を送っていたため、ラジオをよく聴いていたんです。土曜深夜のbayfm『POWER ROCK TODAY』はもちろんのこと、平日はニッポン放送『オールナイトニッポン』を2部まで聴く日々……AMだけではなくFMもいろいろ聴いてました。そのなかで、確かNACK5だったと記憶していますが、アメリカ西海岸のメタル専門FM局『KNAC』のプログラムを流す番組があったと思うんです。それを毎週聴きながら勉強したり飯食ったりして。

で、そこで気になる曲をみつけて。DJも当然英語だからアーティスト名、曲名がはっきり把握できない中、なんとなく聞き取ることができた「Up All Night」というタイトル。確かに曲中何度もそう歌ってたもんな。この甲高いボーカルとDEF LEPPARDみたいなサウンドプロダクション、アメリカのバンドっぽいけどそこまでパーティ感が強くない曲調、嫌いじゃないなぁ、むしろ好きだなぁ……と思っていたんです。残念ながら、その曲に関してはここで終わり。アルバムまでたどり着くことはありませんでした。

それからしばらくして、今度は別の番組で「Fly To The Angels」というバラード調の楽曲を知ります。いわゆるパワーバラードとはちょっと違った、不思議な雰囲気を持つナンバーで、タイプは違うけどWINGERあたりにも通ずると思っていたんです。その曲を歌うのがSLAUGHTERというバンドだと知り、当然「Fly To The Angels」をちゃんとリピートしたいがために輸入盤店でアルバムを探し、ついに手に入れるわけです。

すると……あ、あの「Up All Night」だ!と。ここで「Up All Night」=「Fly To The Angels」=SLAUGHTERとすべてがつながるのでした。ここまでの数ヶ月、長かった。

そんなSLAUGHTERの1stアルバム『STICK IT TO YA』。アメリカではこの頃、すでにヒットしていたんですよね。Billboard最高18位まで上昇し、200万枚ものセールスを記録。「Up All Night」も全米27位のヒット曲となっており、「Fly To The Angels」はトップ20入り(全米19位)を果たしていたのでした。しかも、このSLAUGHTERのメンバーであるマーク・スローター(Vo, G)とダナ・ストラム(B)は80年代にVINNIE VINCENT INVASIONの一員として活躍。そう、高校時代に大好きだったアルバム『ALL SYSTEMS GO』にも参加していた人たちだったのです。そりゃ気に入るわけだ。

アルバムはいわゆる80年代的なビッグプロダクションを用いた硬質なサウンドで、マークのハイトーンボーカルを前面に打ち出しながらもコンパクトで親しみやすい構成の楽曲が中心。しかもLED ZEPPELIN(「Eye To Eye」「Fly To The Angels」)やAC/DC(「She Wants More」「Loaded Gun」)を彷彿とさせる楽曲、ポップさを前面に打ち出した「Spend My Life」「You Are The One」「Gave Me Your Heart」、ワイルドなアメリカンHR「Up All Night」「Burnin' Bridges」「That's Not Enough」と非常にバラエティに富んだ内容なんだから、楽しくないわけがない。本当によくできたデビューアルバムだと思います。

HR/HMブーム末期に登場したSLAUGHTERもFIREHOUSE同様、その後時代に翻弄されるわけですが、もう1年早くデビューしていたらここ日本でもさらに高い評価を得ることができたんじゃないかなと。実際初来日もこのアルバムの時点では実現しなかったと記憶してますし、非常に勿体ない限りです。



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投稿: 2017 03 26 12:00 午前 [1990年の作品, Slaughter] | 固定リンク

2017年1月11日 (水)

VINNIE VINCENT INVASION『ALL SYSTEMS GO』(1988)

1987年から1989年くらいまで、TBSにて日曜深夜に放送されていたHR/HM系プログラム『PURE ROCK』。この番組の中ではアメリカのHR/HM系専門FM局「KNAC」でのオンエアチャートが紹介されていて、いわゆるシングルカットやMV制作されていない「アメリカのラジオならではの楽曲」がランクインしているのも特徴でした。

ここで個人的にずっと気になっていたのが、ロバート・プラントばりのハイトーンボーカルが印象的な「Ashes To Ashes」というミドルテンポの楽曲。「VINNIE VINCENT INVASION」というバンド名を目にして「Vが3も入ってるバンド名、カッコいいな」と、ボンクラにも程がある感想しか思い浮かばなかった自分、どうかと思います。だって、あれだけ愛聴してきたKISS『CREATURE OF THE NIGHT』の立役者であるヴィニー・ヴィンセントのバンドだって、最初の時点で気づかなかったんだから。

ヴィニーがKISS脱退後に結成したのが、このバンド。先の「Ashes To Ashes」が収録されているのが、1988年(またかよ)に発表された2ndアルバムにしてラスト作となる『ALL SYSTEMS GO』でした。当時のメンバーはヴィニー(G)のほか、マーク・スローター(Vo)、ダナ・ストラム(B)、ボビー・ロック(Dr)という4人。バンド解散後、マークとダナはご存知、SLAUGHTERとして1990年にデビュー作『STICK IT TO YA』を発表して大ブレイク。ボビーはNELSONに加入して、同じく1990年にデビュー作『AFTER THE RAIN』が大ヒットしています。ヴィニー、踏んだり蹴ったりだな。

さて、アルバムのほうですが……結果論ではありますが、のちのSLAUGHTERにも通ずる重厚なコーラスワークと適度に軽いアメリカンハードロックサウンドを交えつつ、ヴィニーのアグレッシヴなギタープレイとマークの超絶ハイトーンボーカルが終始暴れまくる1枚となっております。ちょっとクラシカルな要素を持つ楽曲は「Ashes To Ashes」や、シングルカットされ映画『エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター 最後の反撃』のサントラにも収録された「Love Kills」、ミディアムテンポのバラードタイプ「That Time Of Year」ぐらいでしょうか。

残りはどこかしらに脳天気さが見え隠れする、アメリカナイズされたハードロック。もちろんそれはそれでカッコいいので問題ないですが、本作を聴くと改めてヴィニーって「KISSの人」なんだなと実感させられるわけです。かといって、単なる「KISSの延長」で終わっておらず、ちゃんとKISS時代に見せた以上のことを楽しめるし、何よりマーク・スローターという稀代のシンガーと組んだことによる奇跡を見せてもらえたという意味でも非常に価値のある1枚なんじゃないでしょうか。

KISSファンすべてが楽しめるかと問われると疑問ですし、両手をあげてオススメはしませんが、少なくともSLAUGHTERの諸作品が気に入っているというHR/HMファンには間違いなく楽しめる作品だと思います。SLAUGHTERよりもギターが前面に出ていて、適度に激しさもあるので十分堪能できるはずです。



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投稿: 2017 01 11 12:00 午前 [1988年の作品, Slaughter, Vinnie Vincent Invasion] | 固定リンク