カテゴリー「Slaughter」の5件の記事

2019年1月21日 (月)

MARK SLAUGHTER『HALFWAY THERE』(2017)

SLAUGHTERのフロントマン、マーク・スローター(Vo, G)が2017年5月にリリースした2ndソロアルバム。

マークはSLAUGHTERでの『BACK TO REALITY』(1999年)を最後に、まとまった音源をリリースしておらず、その後2015年に発表されたマーク初のソロアルバム『REFLECTIONS IN A REAR VIEW MIRROR』まではトリビュートアルバムなどに参加するのみにとどまりました。そう考えると、ここ数年のソロ活動は往年のファンには嬉しい限りです。

前作はインディーズからのリリースだったものの、続く本作はデヴィッド・エルフソン(MEGADETH)が新たに設立したレーベル・EMP Label Groupから発売。前作同様にプロデュース、およびドラム以外のほとんどの楽器をマークが担当。ドラムは前作とは異なるジョシュア・セス・イーガンが、一部の楽曲でベースをジェイミー・ミラードが担当います(ジョシュアはP!NKなどの作品でプレイしている方のようです)。

基本的にSLAUGHTERでやっていてもおかしくないようなハードロックあり、SLAUGHTERではできないような“いかにもソロシンガーが歌いそうな”ロック/ポップチューンありだった前作の延長線上にある1枚ですが、個人的には前作以上にハードロック色が強まっているような印象を受けました。

例えばオープニングを飾る「Hey You」なんて、そのままSLAUGHTERでプレイしても何ら違和感のない良曲ですし、続く「Devoted」なんてSLAUGHTERにはないタイプのメタリックなヘヴィチューンですし。さらに「Conspiracy」や「Reckless」ではグランジ以降のヘヴィロックが展開されていたりと、なかなか攻めまくりじゃないですか。なんでバンドでやらないんでしょうね(笑)。

かと思えば、往年の名バラードを彷彿とさせるアルバムタイトルトラックやビートルズチックなハーモニーが含まれたポップな「Turn It」、若干AORっぽさもにじみ出ている「Not Here」、モロにジョン・レノンからの影響が強いサイケ調の「Arms Full Of Empty」もある。このへんを聴いちゃうと、なるほど、ここまで含めてやりたいんだな、そりゃあソロになるか……と納得させられます。

マークのボーカルは往年のハイトーンこそ期待できないものの、中音域を中心に味わい深い歌声を聴かせてくれます。確かにあの超高音こそが彼の持ち味でしたが、これはこれで悪くないし、ところどころで“あの”SLAUGHTERっぽさが感じられる。あんなバケモノみたいなハイトーンを20年後も求めるのは酷ってものですよ。

あ、あと本作での聴きどころのひとつは、マークのギタープレイでもあるわけで。これがなかなかの腕前でして、そりゃバンドじゃなくて全部自分で表現してみたいって思いたくなるわな。特に「Devoted」や「Supernatural」、「Arms Full Of Empty」あたりからは高度なテクニックや独特のセンスを存分に感じ取れるはずです。

きっと「なんでSLAUGHTERで……」と思ってしまうのって、結局過去の名曲を聴きたいだけなのかな、とふと思ってしまいました。こうやってアーティストとして、前向きに新しいことにトライしているのを受け入れてあげてもいいんじゃないかな。その中で、ボーナスとして過去の名曲が飛び出したら、それは儲けものってことでいいじゃないの。ね?



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2019年1月20日 (日)

VINCE NEIL『TATTOOS & TEQUILA』(2010)

2010年6月リリースの、ヴィンス・ニール通算3作目のソロアルバム。過去2枚のソロアルバム(1993年の1st『EXPOSED』、1995年の2nd『CARVED IN STONE』)はMOTLEY CRUE脱退中に発表されたものなので、本作『TATTOOS & TEQUILA』はバンド在籍中に唯一発表したソロアルバムということになります。

過去2枚には“良き時代のMOTLEY CRUEの模倣”(『EXPOSED』)、“HR/HM冬の時代にヒップホップなど流行へ迎合した”(『CARVED IN STONE』)といったテーマがありましたが(ヴィンスが公言したわけではなく、ファン側が勝手に解釈したもの)、本作はズバリ“自身のルーツナンバーをストレートにカバーする”というもの。全11曲(日本盤のみボーナストラックを含む12曲)中、オリジナル曲は2曲のみで、ほかはCHEAP TRICK、SWEET、AEROSMITHSEX PISTOLS、THE HOLLIES、SCORPIONS、CCR(CREEDENCE CLEARWATER REVIVAL)、エルヴィス・プレスリー、エルトン・ジョン、ZZ TOPの名曲の“カバーという名のコピー”となっています。

選曲は大半が70年代のもので、つまりヴィンスがMOTLEY CRUEを始める前まで聴きまくったナンバーばかりといったところでしょうか。実際にバンドでカバーしたものも少なくないと思います。CHEAP TRICKがデビューアルバムからの「He's A Whore」だったり、AEROSMITHが名盤『ROCKS』収録のヘヴィチューン「Nobody's Fault」というあたりには、ヴィンスなりのこだわりも感じられます。

また、モトリーでもカバーしたSEX PISTOLSを再びピックアップしていたり、かと思えばエルヴィス「Viva La Vegas」やエルトン「Bitch Is Back」を選曲するたりも、彼のポップセンスやフロントマンとしてのセンスみたいなものを感じたり。まあ、何の捻りもないんですけどね(笑)。

2曲のみ収録されたオリジナル曲のうち、タイトルトラックとなる「Tattoos & Tequila」はプロデューサーであるマーティ・フレデリクセン書き下ろしのミドルナンバー。もう1曲の「Another Bad Day」は盟友ニッキー・シックスとジェイムズ・マイケル、そしてトレイシー・ガンズ(L.A. GUNS)によるミディアムバラード。もともとはモトリー用(おそらくベストアルバム『RED, WHITE & CRUE』かオリジナル作『SAINTS OF LOS ANGELES』向け)に書かれたそうですが、トミー・リーが気に入らなかったためお蔵となった1曲とのこと。まあ『SAINTS OF LOS ANGELES』には合わないポップな曲調なので、外れてよかったのかも。

全体を通して、ヴィンスが持つ陽のイメージがそのままパッケージされた、非常に聴きやすい1枚。『EXPOSED』ほどの派手さはないものの、あのアルバムとの共通項も多数見受けられるので、初期モトリーなどが好きな方なら素直に受け入れられる作品集だと思います。

なお、このアルバムでバックを務めるのは、ジェフ・ブランド(G)、ダナ・ストラム(B)、ゾルタン・チェイニー(Dr)という布陣。ご存知の方もいるかと思いますが、この3人はSLAUGHTERの現メンバーでもあるので、マーク・スローターとヴィンスを入れ替えただけなんですよね。LA界隈、狭いなあ。



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2018年7月 6日 (金)

SLAUGHTER『THE WILD LIFE』(1992)

1992年4月に発売された、SLAUGHTER通算2枚目のスタジオアルバム。デビューアルバム『STICK IT TO YA』(1990年)が200万枚を超えるヒット作となったのを受け、完全にその延長線上にある作風でまとめられています。

どこかひねくれたメロディを持つミドルテンポの「Reach For The Sky」でスタートすると、続くアップチューン「Out For Love」では前作からのヒットシングル「Up All Night」がラジオから流れてくるというシャレた仕掛けも用意。曲調やアルバムの構成もかなり前作を意識しているので、新作なのに初めて聴いた感が薄い1枚です。

あ、それでもオーバープロデュース気味だった前作と比較して、本作はもっと“むき出し感”が強いかも。そのへんは1992年という時代に合わせているのかもしれませんね。ただ、そのオーバープロデュース感こそがSLAUGHTERの魅力でもあったんですが……。

で、そのオーバープロデュース感を見事に引き継いでいるのが、4曲目「Days Gone By」かなと。完全にQUEENを意識したピアノバラード風の1曲なのですが、単なるバラードで終わってない風変わりなポップロック調なところも、後半のコーラスの重ね方も、往年のQUEENを彷彿とさせます。前年11月にフレディ・マーキュリーが亡くなったことを受けて制作されたであろうことが、聴けば想像できる1曲です。前作の延長線上にある楽曲が多い中で、この曲が本作においてかなり強いフックになっていることは、間違いありません。

もちろん、そのほかにも日本のVOW WOWに提供した「Move To The Music」のセルフカバーや、泣きメロのミディアムナンバー「Real Love」、ブルースハープをフィーチャーした渋めの「Old Man」など印象に残る曲は含まれていますが、いかんせん14曲で60分オーバーという内容はちょっとトゥーマッチすぎやしないかなと。もう2、3曲フックになる印象深い曲が含まれていたら、また違ったんでしょうけど……ちょっと狙いすぎてやりすぎた感が強いかもしれません。

チャート的には前作を超える全米8位を記録していますが、セールスは前作の4分の1にあたる50万枚程度で終了。シングルヒットも「Real Love」が最高69位にランクインしたのみ。まあグランジ全盛の中でこれだけの成績を残せたのは、ある意味では奇跡なのかもしれませんが。

あ、現行CDはさらにボーナストラックが追加されており、70分超えの大ボリュームになっております。まあ、こっちは本当におまけ程度の内容。やっぱり「Old Man」から「Days Gone By」のアコースティックインストでしっとり終わるほうが、この長尺作品にはぴったりな気がするので。



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2017年3月26日 (日)

SLAUGHTER『STICK IT TO YA』(1990)

1990年に上京してからしばらくテレビのない生活を送っていたため、ラジオをよく聴いていたんです。土曜深夜のbayfm『POWER ROCK TODAY』はもちろんのこと、平日はニッポン放送『オールナイトニッポン』を2部まで聴く日々……AMだけではなくFMもいろいろ聴いてました。そのなかで、確かNACK5だったと記憶していますが、アメリカ西海岸のメタル専門FM局『KNAC』のプログラムを流す番組があったと思うんです。それを毎週聴きながら勉強したり飯食ったりして。

で、そこで気になる曲をみつけて。DJも当然英語だからアーティスト名、曲名がはっきり把握できない中、なんとなく聞き取ることができた「Up All Night」というタイトル。確かに曲中何度もそう歌ってたもんな。この甲高いボーカルとDEF LEPPARDみたいなサウンドプロダクション、アメリカのバンドっぽいけどそこまでパーティ感が強くない曲調、嫌いじゃないなぁ、むしろ好きだなぁ……と思っていたんです。残念ながら、その曲に関してはここで終わり。アルバムまでたどり着くことはありませんでした。

それからしばらくして、今度は別の番組で「Fly To The Angels」というバラード調の楽曲を知ります。いわゆるパワーバラードとはちょっと違った、不思議な雰囲気を持つナンバーで、タイプは違うけどWINGERあたりにも通ずると思っていたんです。その曲を歌うのがSLAUGHTERというバンドだと知り、当然「Fly To The Angels」をちゃんとリピートしたいがために輸入盤店でアルバムを探し、ついに手に入れるわけです。

すると……あ、あの「Up All Night」だ!と。ここで「Up All Night」=「Fly To The Angels」=SLAUGHTERとすべてがつながるのでした。ここまでの数ヶ月、長かった。

そんなSLAUGHTERの1stアルバム『STICK IT TO YA』。アメリカではこの頃、すでにヒットしていたんですよね。Billboard最高18位まで上昇し、200万枚ものセールスを記録。「Up All Night」も全米27位のヒット曲となっており、「Fly To The Angels」はトップ20入り(全米19位)を果たしていたのでした。しかも、このSLAUGHTERのメンバーであるマーク・スローター(Vo, G)とダナ・ストラム(B)は80年代にVINNIE VINCENT INVASIONの一員として活躍。そう、高校時代に大好きだったアルバム『ALL SYSTEMS GO』にも参加していた人たちだったのです。そりゃ気に入るわけだ。

アルバムはいわゆる80年代的なビッグプロダクションを用いた硬質なサウンドで、マークのハイトーンボーカルを前面に打ち出しながらもコンパクトで親しみやすい構成の楽曲が中心。しかもLED ZEPPELIN(「Eye To Eye」「Fly To The Angels」)やAC/DC(「She Wants More」「Loaded Gun」)を彷彿とさせる楽曲、ポップさを前面に打ち出した「Spend My Life」「You Are The One」「Gave Me Your Heart」、ワイルドなアメリカンHR「Up All Night」「Burnin' Bridges」「That's Not Enough」と非常にバラエティに富んだ内容なんだから、楽しくないわけがない。本当によくできたデビューアルバムだと思います。

HR/HMブーム末期に登場したSLAUGHTERもFIREHOUSE同様、その後時代に翻弄されるわけですが、もう1年早くデビューしていたらここ日本でもさらに高い評価を得ることができたんじゃないかなと。実際初来日もこのアルバムの時点では実現しなかったと記憶してますし、非常に勿体ない限りです。



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2017年1月11日 (水)

VINNIE VINCENT INVASION『ALL SYSTEMS GO』(1988)

1987年から1989年くらいまで、TBSにて日曜深夜に放送されていたHR/HM系プログラム『PURE ROCK』。この番組の中ではアメリカのHR/HM系専門FM局「KNAC」でのオンエアチャートが紹介されていて、いわゆるシングルカットやMV制作されていない「アメリカのラジオならではの楽曲」がランクインしているのも特徴でした。

ここで個人的にずっと気になっていたのが、ロバート・プラントばりのハイトーンボーカルが印象的な「Ashes To Ashes」というミドルテンポの楽曲。「VINNIE VINCENT INVASION」というバンド名を目にして「Vが3も入ってるバンド名、カッコいいな」と、ボンクラにも程がある感想しか思い浮かばなかった自分、どうかと思います。だって、あれだけ愛聴してきたKISS『CREATURE OF THE NIGHT』の立役者であるヴィニー・ヴィンセントのバンドだって、最初の時点で気づかなかったんだから。

ヴィニーがKISS脱退後に結成したのが、このバンド。先の「Ashes To Ashes」が収録されているのが、1988年(またかよ)に発表された2ndアルバムにしてラスト作となる『ALL SYSTEMS GO』でした。当時のメンバーはヴィニー(G)のほか、マーク・スローター(Vo)、ダナ・ストラム(B)、ボビー・ロック(Dr)という4人。バンド解散後、マークとダナはご存知、SLAUGHTERとして1990年にデビュー作『STICK IT TO YA』を発表して大ブレイク。ボビーはNELSONに加入して、同じく1990年にデビュー作『AFTER THE RAIN』が大ヒットしています。ヴィニー、踏んだり蹴ったりだな。

さて、アルバムのほうですが……結果論ではありますが、のちのSLAUGHTERにも通ずる重厚なコーラスワークと適度に軽いアメリカンハードロックサウンドを交えつつ、ヴィニーのアグレッシヴなギタープレイとマークの超絶ハイトーンボーカルが終始暴れまくる1枚となっております。ちょっとクラシカルな要素を持つ楽曲は「Ashes To Ashes」や、シングルカットされ映画『エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター 最後の反撃』のサントラにも収録された「Love Kills」、ミディアムテンポのバラードタイプ「That Time Of Year」ぐらいでしょうか。

残りはどこかしらに脳天気さが見え隠れする、アメリカナイズされたハードロック。もちろんそれはそれでカッコいいので問題ないですが、本作を聴くと改めてヴィニーって「KISSの人」なんだなと実感させられるわけです。かといって、単なる「KISSの延長」で終わっておらず、ちゃんとKISS時代に見せた以上のことを楽しめるし、何よりマーク・スローターという稀代のシンガーと組んだことによる奇跡を見せてもらえたという意味でも非常に価値のある1枚なんじゃないでしょうか。

KISSファンすべてが楽しめるかと問われると疑問ですし、両手をあげてオススメはしませんが、少なくともSLAUGHTERの諸作品が気に入っているというHR/HMファンには間違いなく楽しめる作品だと思います。SLAUGHTERよりもギターが前面に出ていて、適度に激しさもあるので十分堪能できるはずです。



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