SLOAN@渋谷クラブクアトロ(1999年12月11日)
SLOANってバンドを知ったのはもう4~5年前の話で、たまたま親友がジャケ買いで彼等のサード(「ONE CHORD TO ANOTHER」)を手にしたのが切っ掛けだった。で、ダビングして貰うわけだが、これがハードポップというか、ギターポップというか、「メジャー色が濃いインディーバンド」って印象を受けた。悪い意味じゃないよ? むしろ褒め言葉。ルックスはインディー、音はメジャー級。何が悪い? よくその親友と話したのは「このバンドって、アイドル級のルックスの奴がひとりでもいたり、長髪で化粧でもしてたら、きっとCHEAP TRICKみたいに人気出るんじゃない?」という事。これは今回一緒にいたトルーパー佐藤氏も同じような事を言っていた。(「'70年代にデビューしてたら、BAY CITY ROLLERSみたいになってたんじゃないか?」)
何でそんな事を言うかというと、このバンド、今の時代にしては器用すぎるのですよ。だって全員が曲書けて全員がリードボーカルをとれる。しかも曲毎に楽器チェンジをする。KISSだってそこまでは出来なかったでしょ? それにKISSはピーター・クリス(Dr)は曲書かなかったし。全員が曲を書けるバンドってのも、最近の日本でも少ないよね? 思いつくところだとラルクとかグレイとか? それでもやっぱり中心人物がいての全員作曲だからねぇ。ところがSLOANはレベルが違う。アルバム聴いてもらったとおりなのよ。全員の書く曲にはそれぞれの色があって、それぞれがクオリティー高い。こんなバンド、他にQUEENしか思いつかないね? 悪いけど、「rockin'on」あたりの読者だけでは勿体無い存在だな? 最近では「BURRN!」なんかでもハードポップ/ギターポップバンドが取り上げられる事が多く、その辺の垣根はなくなりつつある。SLOANのメンバーが大のKISSファンという事もあり、その辺のファンも今回のライヴに足を運んだんじゃないだろうか?
さてさて、そのライヴ。直前に日本のwilberryが前座としてつく事が決まり(この日だけ)、かなり期待していた。wilberryには同じ銚子出身のベーシストが在籍する事もあって、影ながら応援している。しかし‥‥悪いけど、SLOANとはミスマッチだったように思う。wilberry自体、UKロックとかニューウェーブの影響が強い音だけに、SLOANのような「ライヴではエンターテイメント性重視」的なバンドとはやりづりかったんじゃないかな?と終わった後思った。メンバーも(特にVo.)終始苛ついていたようだし。かなり刺々しいMCが印象的だった。こういうバンドだというなら仕方ないけど、もしSLOAN目当ての客に対してだとしたら、失礼すぎる。プレッシャーを感じるのは痛い程判る。けど、それとこれとは話が別。捌け口が間違ってるって。近年ではフジロック等、欧米のバンドと肩を並べて演奏する機会が多い。それが自分達目当ての客じゃなくても、金を貰ってステージに立ってる以上、プロとして徹するべきだと思う。ひと昔前の日本のインディーバンドじゃねぇんだから。(苦笑)だからといって媚びろと言ってるわけではないけど‥‥俺はあれをカリスマとは呼びたくないし、思いたくもない。単に他のメンバーが地味だったから、余計にVo.の行動、発言が目に付いただけだ。本当のカリスマってそういうもんじゃないって‥‥BLURのデーモンとかRADIOHEADのトムあたりが好きなのは何となく判るんだけど、今のままじゃ彼等のコピーで終わってしまう。勿体ないって。まぁ今回は5曲だけだし、本来の姿じゃないのかもしれない。そういう意味では同情するけど、どんな条件でも常に同じアピールが出来なきゃ、いつまで経っても下北止まりだよ?(苦笑)
さて、気分を取り直してSLOANに話題を移そう。とにかく初体験のSLOAN。話には聞いていたが、こんなに凄いバンドだとは‥‥正直見くびり過ぎていた。比較的落ち着いた印象を与えた彼等の新作だったが、ライヴはこのアルバムからの曲が中心だったにも関わらず、とにかくアグレッシヴ!(驚)下手なハードロックバンドよりもハードだった。演奏は上手いし、コーラスもバッチリ。そして楽器パート変えてもしっかりしてるし。何しろ曲がいいんだから‥‥他にこんなバンド、2つしか知らない。そのちょっと前に観たCHEAP TRICKと、先頃解散したTHUNDERくらいだ。前者はアメリカのハードポップの元祖、後者はイギリスの伝統的ハードロックの後継者だが、共通点がある。ライヴ、とにかくライヴバンドだという事。派手なステージセットもなく、アリーナクラスだろうが場末のクラブだろうが、常に同じ高レベルのライヴを見せてくれる。そしてお客とステージとの一体感を感じさせるMC‥‥SLOANもこういうバンドだと思った。
上手い、凄い、かっこいい‥‥これ以上の言葉が出てこない。(苦笑)これじゃレポート失格だな?(爆)まぁ雰囲気だけでも掴んでくれれば‥‥結局は観なきゃ意味ないし。地元カナダではものすごい存在らしく、それはライヴ盤からも伺える。日本ではクアトロ2日かぁ‥‥ホールクラスで観たらどうなるのかな? それでも同じようにおれたちを燃えさせてくれるのかなぁ? CHEAP TRICKもTHUNDERもホールクラスでの来日経験があるし、海外ではスタジアムの経験もある。SLOANはどうだろう? KISSが最後のツアーをスタートさせるが、是非カナダ公演でオープニングを勤めて欲しい。そして今年のフジロックかサマーソニック2000で再来日して欲しい。もっと多くの人にこの素晴らしさを伝えた。そんなバンドだよ。
ただ、こんな凄いバンドでもひとつだけ気になる事が‥‥それはやっぱり、楽器チェンジの時の「間」。あれだけエンターテイメント性を重視してるんだから、あの間も何か楽しませてはどうだろうか? まぁあの「間」も含めてSLOANのライヴなんだろうけどね。ちょっと気になっただけ。折角の勢いが勿体無いな、と。
いや~、カナダって本当にいいアーティストが多いよね? 古くはRUSH(笑)、最近では俺がイチオシのロン・セクスミス。アメリカでもまだこの手のバンドはインディーが主流なんだろうけど、早くメジャークラスで成功するバンドが現れて欲しいなと思う。その第1候補がSLOANなのは紛れもない事実だ。ハードポップ勢で世界的にセールスで成功を収めているのは(ちょっと違うかもしれないけど)FOO FIGHTERSくらいだもの。あとは現状が変わるだけ‥‥時代は明らかに変わってきてるんだから、もうちょっとだな?
最近、SLOANのリリースのサイクルが短くなってきている。下手したら2000年もアルバムをリリースしてくれるだろう。そうなると3年連続で来日って事になるのか。絶対に次は観た方がいい。「損した!」なんて感じさせない、正にプロフェッショナルの仕事を体験する事ができるから。
[SETLIST]
01. Friendship
02. All By Ourselves
03. Losing Califormia
04. Don't You Believe A Word
05. Sensory Deprivation
06. On The Horizon
07. Marquee & Moon
08. Iggy & Angus
09. Edge Of The Scene
10. So Beyond Me
11. I Am The Cancer
12. Delivering Maybes
13. The NS
14. Long Time Coming
15. Take Good Care Of Poor Boy
16. Keep On Thinkin'
17. Money City Maniacs
[ENCORE]
18. Summer's My Season
19. The Good In Everyone
20. Anyone Who's Anyone