カテゴリー「Smashing Pumpkins」の20件の記事

2022年3月 3日 (木)

SCORPIONS『HUMANITY: HOUR I』(2007)

ヨーロッパで2007年5月14日、北米では同年8月28日にリリースされたSCORPIONSの16thアルバム。日本盤は『蠍団の警鐘 - ヒューマニティー:アワーI』の邦題で、同年6月20日発売。

前作『UNBREAKABLE』(2004年)でHR/HM路線へと回帰したものの、チャート的には成功したとは言い難かったSCORPIONS(前々作『EYE II EYE』(1999年)から2作連続でBillboardアルバムチャートランク外)。しかし、さらにハード路線を極めた今作では全米63位と、『PURE INSTINCT』(1996年)の最高99位以来となる全米チャート入りを成し遂げます。

新たなプロデューサーとしてデスモンド・チャイルドBON JOVIAEROSMITHKISSなどとのコライトで有名)&ジェイムズ・マイケル(SIXX:A.M.のフロントマン。およびPAPA ROACH、HAMMERFALLなどのプロデューサー)を迎えた本作は、前作以上に往年の“らしさ”をメロディやアレンジに取り戻しつつ、モダンなヘヴィさも効果的に取り入れた意欲作。また、ビリー・コーガン(Vo/SMASHING PUMPKINS)が「The Cross」、エリック・バジリアン(G/THE HOOTERSなど)が「Love Will Keep Us Alive」、ジョン・5(G/ROB ZOMBIEなど)が「Hour I」にゲスト参加しているのも、このプロデューサーならではの人選かもしれません。

実は本作、バンドにとってキャリア初のコンセプトアルバム。デズモンド・チャイルドが大まかなストーリーを草案し、楽曲制作が進められたとのこと。ソングライターとしても著名な2人をプロデューサーに迎えたこともあり、彼らは作曲でも全面的に関与。それ以外にもマーティ・フレドリクセン、アンドレアス・カールソンなど人気のソングライターがコライトで名を連ねており、ある意味では外部のライターたちがバンドに“らしさ”を思い出させていると受け取ることもできるのではないでしょうか。その効果は非常に絶大で、80年代のSCORPIONSらしいメロディラインやアレンジを随所から見つけることができます。

一方で、前作から引き続きダウンチューニングを起用していることで、そのダークさが本作が持つヘヴィさを強めることに一役買っている。「The Game Of Life」や「You're Lovin' Me To Death」での程よいメロウ&ヘヴィさはその好例だと断言できます。

かと思えば、過去数作でトライしたビートルズQUEENの流れを汲む壮大なバラード「The Future Never Dies」があったり、グランジ以降のモダンヘヴィネスをなぜか2007年に取り入れた(笑)「321」もある。後半、バラードタイプの楽曲が立て続けに収録されており(「Love Will Keep Us Alive」「We Will Rise Again」「Your Last Song」「Love Is War」)、そこで若干萎えてしまいますが、ミドルパートでビリー・コーガンをフィーチャーしたメロウなヘヴィロック「The Cross」やグランジ寄りのリフワークが印象的なアンセムナンバー「Humanity」がラストに置かれているので、アルバムとしてもなんとなく締まる印象を受けます。

ヘヴィながらもソフトさもしっかり感じられるのは、全体を通してデヴィッド・キャンベルによるオーケストレーションが効果的にフィーチャーされているからでしょうか。ドラマチックなヘヴィロックという点ではSCORPIONSの全キャリア中、本作がもっともバランス感に優れているように感じます。バンドとしてもようやく過渡期を抜け出しそうな予感も伝わり、これが次作『STING IN THE TAIL』(2010年)での完全復活へとつながっていくと思うと、本作も非常に意味の大きな1枚ではないでしょうか。

 


▼SCORPIONS『HUMANITY: HOUR I』
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2020年12月18日 (金)

THE SMASHING PUMPKINS『CYR』(2020)

2020年11月27日にリリースされたTHE SMASHING PUMPKINSの11thアルバム。

再結成第1弾アルバム(通算7作目)『ZEITGEIST』(2007年)以降、毎回レーベル(配給元)を変え、国内でもその都度リリース元が変わるという落ち着きのなさを見せ続けるスマパン。今回のリリース元はなんと、かのSumerian Recordsというから驚きました。と同時に、そんなメタルコア/ポストハードコア/ジェント&プログレメタルを主軸とするレーベルからどんな作品を発表するのか、不思議と期待が高まったのです。

というのも、再結成後の数作に対しては正直「?」という感想しか湧かず、ぶっちゃけ「続ける意味あるのかな?」とすら思っていたほど。だってさ、今さら『GISH』(1991年)『SIAMESE DREAM』(1993年)の焼き直し/水増しを聴かされたって、こっちは“濡れない”わけですよ(笑)。もっと言えば、フォロワーのほうがそれっぽいことやっていて、かつ完成度の高い作品を作っているわけですから、ビリー・コーガン(Vo, G)が“お仕事”として“スマパンっぽいもの”を作ったって満足できるわけがない。だったら、多くのファンが考える“本筋”から外れたっていいから、やりたいことを全力でやってほしい、と。ソロアルバムなんて作っている場合じゃないだろ、と。

そういう意味では『SHINY AND OH SO BRIGHT VOL. 1 / LP: NO PAST. NO FUTURE. NO SUN.』(2018年)はかなり“取り戻し”始めているなと感じたのですが、前作から2年という短いスパンで届けられた本作でようやく振り切ってくれました。ビリーのセルフプロデュースで完成された本作、轟音ギターは皆無です。代わりに、これでもかと言わんばかりのシンセサウンドが採用されており、バンド(というかビリー)のルーツのひとつであるエレポップ(シンセポップ)やゴシックロックからの影響が色濃く表れた内容に仕上がっているのです。やったね。

思えばスマパンは4作目『ADORE』(1998年)で路線変更してコケたなとか、同じ頃DEPECHE MODEのトリビュートアルバムにも参加してたなとか、スマパン解散後に一時期NEW ORDERサポートギタリストを務めていたなとか、ソロではエレポップ的なことにも挑戦していたなとか、いろいろ思い当たる要素はあり、それがようやくバンドでも結果として花開いたかと思うわけです。つまり、これは突然変異ではなくて、以前からトライしてきたことの進化型であると。

だって、メロディやアレンジのテイスト自体はスパマン以外の何者でもないし、仮に『ADORE』や『MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS』(1995年)に本作収録曲が含まれていたとしても違和感はないはずですから。確かに、ギタリストが複数存在するのに、その活躍の場が少ないという見方もあります。だけど、そのギターがフィーチャーされた楽曲ではしっかり個性を発揮している。「Wyttch」なんてその代表格ですよね。

結局、前作と今作とミックスすることで『ADORE』や『メロンコリー〜』のようなアルバムが完成するんじゃないか、と思うわけです。そういった意味では、ここ数作での試みというのは大人になったビリー・コーガンが“真の意味で”スマパンを再生させる(NOT焼き直し)ためのプロジェクトだったんじゃないかと。そう思えてなりません。

「前作は久しぶりに良かった」と思っていたスマパン信者には、きっと本作は低評価で期待外れの1枚なのかもしれません。が、個人的には再結成後で一番好きなアルバムだし、なんなら全キャリアでも上位入り確実の1枚。まあ、一番好きなアルバムが『ADORE』と『メロンコリー〜』と言っちゃうような人間の評価ですから(笑)。僕個人はこの進化を高評価しております。頑張れスマパン。

 


▼THE SMASHING PUMPKINS『CYR』
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2020年7月27日 (月)

THE SMASHING PUMPKINS『MACHINA: THE MACHINES OF GOD』(2000)

2000年2月末にリリースされたTHE SMASHING PUMPKINSの5thアルバム。

ジミー・チェンバレン(Dr)の脱退を経て、打ち込み主体のダークな前作『ADORE』(1998年)が賛否両論を巻き起こしたスマパン。その後、ジミーがバンドに復帰し、ビリー・コーガン(Vo, G)、ジェイムズ・イハ(G)、ダーシー(B)とのオリメンで早くも新作制作へと突入しますが、今度はレコーディング終了後にダーシーが脱退。後任として元HOLEのメリッサ・オフ・ダ・マーを迎えて、ツアーへと臨みます。

アルバムはジミーのダイナミックなドラミングを活かしたハードロックナンバー「The Everlasting Gaze」からスタート。全編この調子で進むのかと思いきや、続く「Raindrops + Sunshowers」は前作での経験が見事に反映されたデジタル色を散りばめたロックチューンだし、シングル向きなポップロック「Stand Inside Your Love」や「Try, Try, Try」のような楽曲も用意されている。穏やかなニューウェイヴ感が心地よい「I Of The Mourning」、打ち込みリズムを同期させたキャッチーな「The Sacred And Profane」、ヘヴィなギターリフと重々しいリズムがタイトルまんまな「Heavy Metal Machine」、『GISH』(1991年)の頃のフリーキーさを存分に堪能できる約10分もの大作「Glass And The Ghost Children」など、全体を通してこれまでの“メジャー感が強いスマパン”の魅力が凝縮された集大成的内容に仕上がっています。全15曲で約73分という長尺なトータルランニングも、アナログなら2枚組になるところをCD1枚にギリギリ収めようとするあたりに、超大作『MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS』(1995年)よりも気軽に楽しんでほしいという意思が感じられます。

ですが、ここまでがっつり作り込んだものの、不思議なもので過去作ほど強く印象に残らないのが本作唯一の欠点かもしれません。1曲1曲は非常によく作り込まれているものの、アルバムとして並んだときのストーリーがそこまで強く感じられない。CD1枚にまとめてしまったことで、逆に全体像がぼんやりしてしまった(『メロンコリー』のようにディスク2枚に分けていれば、また印象も変わったのかも)。いろんなことが裏目でに出てしまった、残念な1枚と言えるかもしれませんね。

本作からは1曲もシングルヒットが生まれることなく、アルバム自体も全米3位まで上昇。セールス面では前作のミリオンにまで達しない、50万枚程度という惨敗ぶり……チャートの上位にはブリトニー・スピアーズやBACKSTREET BOYSのようなポップ・アイコンたちが名を連ねる現状を前に、スマパンは2000年末のツアー終了を持ってバンド解散を決意します。このラストツアーの一環で行われた日本公演については、当時このサイトでもレポートを残していますので、よろしければご参考まで。

オフィシャルな形ではラストアルバムとなってしまった本作。実は、アンオフィシャルな形でもう1枚(「枚」という概念はないかな。笑)、『MACHINA II: THE FRIENDS & ENEMIES OF MODERN MUSIC』(2000年)という作品を同年9月にネット配信することになるのですが、それについてはまた別の機会に。

 


▼THE SMASHING PUMPKINS『MACHINA: THE MACHINES OF GOD』
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2020年4月 3日 (金)

TINTED WINDOWS『TINTED WINDOWS』(2009)

2009年4月に発売されたTINTED WINDOWS唯一のオリジナルアルバム。日本盤は1ヶ月遅れでリリースされています。

TINTED WINDOWSはテイラー・ハンソン(Vo/HANSON)、ジェイムズ・イハ(G/THE SMASHIN PUMPKINS、ex. A PERFECT CIRCLE)、アダム・シュレシンジャー(B/FOUNTAINS OF WAYNE、IVY)、バン・E・カルロス(Dr/ex. CHEAP TRICK)という名うてのプレイヤー/ミュージシャンたちによって結成されたスーパーグループ。テイラーとアダムは90年代半ばから親交があり、またイハとアダムも各バンドのツアーなどで顔を合わせる機会が多く、2000年代に入ってからはイハがIVYのレコーディングに参加したり、共同でレーベルやスタジオを設立していました。そんな3人が意気投合し、それぞれが影響を受けた70〜80年代のパワーポップやニューウェイヴをモダンな形で表現するバンドとして結成されたのがこのTINTED WINDOWSでした。

彼らは大切なルーツのひとつであるレジェンド・CHEAP TRICKからバン・Eを迎え、アダム&イハのプロデュースで完成したのが本作。ボーナストラックを除く全11曲中、「Back With You」をイハ、「Nothing To Me」をテイラー、「Take Me Back」をテイラー&アダムが手がけ、残りの8曲すべてをアダムが単独で書き下ろしています。

HANSONが持つ突き抜けるようなポップネス、FOUNTAINS OF WAYNEのベースにあるオルタナティヴロック経由のパワーポップ感、そしてバン・Eを除く3人が多大な影響を受けたであろうCHEAP TRICKの香り。本作はそのすべてが凝縮された、終始ストレートに突き進むキャッチーなギターロックを堪能できる1枚と言えるでしょう。

FOWが持つカントリーテイストやCHEAP TRICKに備わっていたサイケデリック感は残念ながらここには含まれておらず(いわゆるハードロック的側面もだいぶ弱いかと)、どちらかというと「テイラー・ハンソンというフロントマンを、才能ある作曲家アダムが調理してみました」という印象が強い内容かもしれません。聴く人によってはそこに物足りなさを感じるかもしれませんが、個人的にはそこを抜きにしてもよく出来たパワーポップ/ギターロックアルバムだと断言したいな。だって、何度聴いて飽きがこないですからね。爆音で、気持ちよく楽しめる1枚です。

本作を携えた来日公演(2010年1月)にも足を運びましたが、当日は本作からの楽曲にTHE KNACK「Let Me Out」、BUZZCOCKS「I Don't Mind」のカバーを披露したことが特に印象に残っています。本作に参加したメンバーの各メインバンド、そしてカバーでピックアップしたバンド。ここにTINTED WINDOWSの本質があるのではないでしょうか。

テイラーは近年、TINTED WINDOWSは決して解散したわけではないと名言していましたが、結局2作目が制作されることなくアダムは新型コロナウイルスが原因で4月1日(現地時間)、この世を去りました。アダムといえばFOWかIVY、もしくは彼が手がけた映画『すべてをあなたに』の劇中曲「That Thing You Do!」が有名でしょうけど、僕的にはこのスーパーバンドも忘れたくないな……。

 


▼TINTED WINDOWS『TINTED WINDOWS』
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2020年1月 2日 (木)

banned songs of US radio after 9.11

つい先日、昨年の9月11日に配信されたKERRNG!の記事「HERE ARE THE 164 SONGS THAT WERE BANNED FROM AMERICAN RADIO AFTER 9/11」がTwitterで流れてきたんですね。このリスト自体、これまでも完全版・不完全版問わずさまざまな形で流出していたと思いますし、実際僕も学生時代に湾岸戦争をテーマに「表現の自由」や「自主規制」について卒論を書いていたので、常に気になってチェックしていました。今回の記事も特別目新しさはなかったのですが、急にふと「そういえば、卒論書いてた90年代前半は実際にそういう曲を全部聴くのに相当苦労したけど、今ってストリーミングサービスがあるし、もしかしてこのリストの曲全部聴けるんじゃないかな……」と思ったんですね。

で、実際にプレイリストを作ってみようと思い、検索を開始……始めたのが明け方だったのですが、気づいたら1、2時間でプレイリスト完成。記事中に登場する曲名やアーティスト名に多少の間違いがあったので、ネット上で公開されている同様の記事(結局Wikipediaが一番便利でした)とも照らし合わせつつ、完全なるプレイリストを完成させました。

さすがに全曲ありました。すごいですね、Spotify(今回はApple Music版は作成せず。だって2つも作るの時間かかるし)。RAGE AGAINST THE MACHINEのみ全曲放送禁止だったので、本来なら彼らの楽曲はすべて入れるべきなんでしょうけど、それだと埒が明かないので各アルバムから主要ナンバー1曲ずつ、計4曲を入れることにしました。そこに「Knockin' On Heaven's Door」のみボブ・ディラン版とGUNS N' ROSES版の2曲を用意して、全168曲/11時間14分というアホほど長いプレイリストが完成したわけです(笑)。

一応、アーティスト名アルファベット順、複数の曲がリストにあるアーティストに関しては曲名もアルファベット順で並べてあります。なので、AC/DCみたいにいきなり7曲も続いてしまうこともありますが、シャッフル再生すると普通にラジオ感覚で楽しめるのではないでしょうか……しかも、いい曲ばかりですし。

こんなご時世だからこそ、こういった楽曲を手軽に楽しめる自由をかみしめつつ、今の生活に感謝したいと思います。またいつ、これらの楽曲やほかのヒット曲が放送禁止になるか、本当にわかりませんしね(しかも、あの当時よりも状況的には最悪ですから)。

 

※ブラウザ(記事上)でプレイリストを再生すると100曲しか表示されないようなので、プレイヤー右上のSpotifyロゴをクリックして、自身のSpotifyプレイヤーで再生することをオススメします。

2019年1月24日 (木)

FILTER『TITLE OF RECORD』(1999)

1999年8月(日本盤は9月)にリリースされた、FILTERの2ndアルバム。本作は「Take A Picture」のシングルヒット(全米12位)があったおかげで、アルバム自体も全米30位まで上昇。100万枚を超えるセールスを記録しました。

FILTERはNINE INCH NAILSでギタリストを務めたリチャード・パトリック(Vo, G)が1993年にブライアン・リーゼガング(G, Programming)と結成したユニットで、1995年にアルバム『SHORT BUS』でデビュー。ブライアンは1997年に脱退してしまいますが、その後ジーノ・レナード(G)、フランク・カヴァナフ(B)、スティーヴン・ギルス(Dr)というバンド編成に移行し、本作『TITLE OF RECORD』を完成させます。

デビュー作『SHORT BUS』はヘヴィなギターサウンドを軸にしながらも、リチャードのNINE INCH NAILS出身というバックボーンが全体に反映されており、インダストリアルヘヴィロックとしてかなり優れた内容でした。反面、ボーカル面での弱さも露呈し、そこが個人的には勿体ないなと思っていたのもまた事実。

ところが、続くこの『TITLE OF RECOD』では若干のインダストリアルテイストを残しつつも、軸になるのは大陸的なアメリカンハードロック。そこに90年代以降のグランジやオルタナティヴロックのフレイバーも加えられ、NINE INCH NAILSとも、そして当時流行りつつあったニューメタルとも異なる、普遍性の強いロックが展開されています。

オープニングを飾る「Welcome To The Fold」のダイナミズムには、当時かなり圧倒されたものです。リチャードのボーカルも不安定さが払拭され、かなり堂々としたものに成長しています。そういったパワフルなロックチューンがありつつも、「It's Gonna Kill Me」ではしっかり前作までの流れを当時のスタイルでバージョンアップさせている。かと思えば、優しく響く「Take A Picture」や「Skinny」のような楽曲もあり、バンドとして着実にスケールアップしていることが伺えます。

また、「Cancer」には当時THE SMASHING PUMPKINSのメンバーだったダーシー(B, Vo)がボーカルでゲスト参加。この曲はまた、ほかの楽曲とは異なるダークさが感じられ、本作中でもかなり地味な部類ながらも個人的にはお気に入りだったりします。まず何より、ダーシーのコーラスが良い味を出していますしね。スマパンファンにもぜひ聴いてほしい1曲です。

NINよりはハードロック寄り、前作でのデジタル色からロックバンド的スタンスへと移行しつつある絶妙なタイミングの本作は、デビューアルバムのファンには不評だったようですが、HR/HMリスナーには好意的に受け入れられた記憶が。ポストグランジ以降のハードロックを愛聴する方なら、間違いなくハマる1枚かと思います。

なお、FILTERは2003年に一度歩みを止めるものの、2007年には活動再開。昨年、オリジナルメンバーのブライアンも復帰しており、『REBUS』と題されたニューアルバムのリリースが控えています。タイトルからして、デビュー作に回帰したものになるのかどうか、こちらも気になるところです。



▼FILTER『TITLE OF RECORD』
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2019年1月13日 (日)

祝ご成人(1998年4月〜1999年3月発売の洋楽アルバム20選)

新成人の皆さん、おめでとうございます。2014年度に初めて執筆したこの“洋楽版成人アルバム”企画、今回で5回目となります。毎年この時期にこの企画をやることで、温故知新というよりは「自分の20年前の音楽ライフはどんなだったか」を思い返す上で非常に重要なコンテンツになりつつあります。

しかも、今回は当サイトの前身サイトがスタートした時期(1998年12月)が被っていることから、選出時もいろいろ感慨深いものがあります。いやあ、長く続けるもんだ。

さて、この企画の説明です。この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に1998年4月〜1999年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品のうちSpotifyやApple Musicで試聴可能な作品を20枚ピックアップしました。今年度は残念ながら、選出した20枚すべてがSpotifyおよびApple Musicに揃っているものではありませんでした(各サービスともに1枚足りないという)。

でも、どれも名盤ばかりですし、もしまだ聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にチェックしてみてはどうでしょう。特に、現在20歳の方々は「これ、自分が生まれた年に出たんだ」とかいろいろ感慨深いものがあるような気もしますし。ちなみに、作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちら、2016年度の新成人編はこちら、2017年度の新成人編はこちらです)


ASIAN DUB FOUNDATION『RAFI'S REVENGE』(1998年11月発売)(Spotify

AT THE DRIVE-IN『IN/CASINO/OUT』(1998年8月発売)(Spotify)(レビュー

BEASTIE BOYS『HELLO NASTY』(1998年7月発売)(Spotify

BLUR『13』(1999年3月発売)(Spotify)(レビュー

BOARDS OF CANADA『MUSIC HAS THE RIGHT TO CHILDREN』(1998年4月発売)(Spotify

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2018年9月 1日 (土)

THE SMASHING PUMPKINS『ADORE』(1998)

1998年6月発売の、THE SMASHING PUMPKINS通算4作目のスタジオアルバム。前作『MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS』(1995年)が初の全米No.1を獲得したほか、トータルで1000万枚を超えるメガヒット作になりました(2枚組作品なので、実質500万セット販売)。しかし、こうした好状況とは相反し、同作のツアー中にサポートメンバーのジョナサン・メルビン(Key)がドラッグの過剰摂取で死亡。この際、同じ現場にいたジミー・チェンバレン(Dr)も逮捕され、結果的にバンドを解雇されることに。

そんな中でも、ビリー・コーガン(Vo, G)はバンドの歩みを止めることなく、新作のレコーディングに突入します。プロデューサーにフラッドとブラッド・ウッドを迎えて制作されたアルバムは、マット・ウォーカー(FILTER)やマット・キャメロン(SOUNDGARDENPEARL JAM)、ジョーイ・ワロンカー(ベックR.E.M.、ATOMS FOR PEACEなど)といったセッションドラマーが参加しつつも、基本的には打ち込みリズムを基盤としたサウンドメイキングが施されています。

前作で「1979」というニューウェイブの影響をあらわにしたスマパンおよびビリーは、このアルバムでそうしたニューウェイブ魂を一気に爆発させたのです。オープニングの「To Sheila」や一部の楽曲はこれまでにもあったアコースティックの耽美な楽曲ですが、シングルカットされた「Ava Adore」や「Apples + Oranjes」など大半はシンセを主体としたエレクトロ/ニューウェイブ調の楽曲。「1979」の延長線上にある「Perfect」なども含まれているものの、ここには「Cherub Rock」も「Today」も「Bullet With Butterfly Wings」も「Zero」もありません。轟音ギターは鳴りをひそめ、ギター自体があくまでニューウェイブ調楽曲の味付けとしての役割にとどまっているのです。

そりゃあ、“あの”スマパンが好きな人は驚いただろうし、ショックだったことでしょう。しかし、前作でその片鱗を見せていたニューウェイブからの影響、また本作と同時期にリリースされたDEPECHE MODEのトリビュートアルバム『FOR THE MASSES』(1998年)での「Never Let Me Down Again」カバーを聴いた人なら、この路線は納得のいくものだったのではないでしょうか。

パーマネントのドラマー不在によって訪れた転機。これを吉と受け取るか凶と受け取るか……世の中的には凶とみなし、チャート的には全米2位を記録したものの、セールス的には100万枚程度と前作から一気に落とす結果に。残念でなりません。

でも、アルバムとしては非常に優れたものだと思いますし、本作以降のビリーの活動を見ていればこの作風はもはやスタンダードなものなんじゃないでしょうか。なんてことも、リリースから20年経った今だから言えるんですけどね。アルバム単位で言えば、僕個人彼らの作品で一番好きな1枚です。



▼THE SMASHING PUMPKINS『ADORE』
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2018年3月 7日 (水)

A PERFECT CIRCLE『THIRTEENTH STEP』(2003)

2003年9月に発表された、A PERFECT CIRCLEの2ndアルバム。ご存知のとおり、このバンドはTOOLのメイナード・キーナン(Vo)が、バンドのギターテクを勤めていたビリー・ハワーデル(G)という才能と出会ったことで誕生し、TOOLが所属レーベルとの裁判で思うように活動的なかった2000年に1stアルバム『Mer de Noms』を発表しています。その経緯などについては、2003年10月に執筆した同作のレビューに詳しいので、そちらに譲ります。

さて、前作レビューを執筆したあと、この2ndアルバムについて書くことができなかったので、14年ぶりの新作が今年4月に発売されるこのタイミングに改めて書いてみたいと思います。

前作のときにも書いたように、A PERFECT CIRCLEはメイナードの“ソロプロジェクト”ではないし、TOOLとは完全に別モノ。むしろ、ビリーという才能の塊と遭遇したことで、メイナードの創作意欲がTOOLとは別の形で爆発した、新しいバンドと受け取るほうが正しい解釈だと思っています。

なので、そのサウンドもTOOLのようにプログレッシヴな展開をするものとは別次元で展開されており、特に本作はヘヴィな印象が強かったデビュー作『Mer de Noms』とは若干異なるカラーを打ち出し始めています。

ちなみに、当時のバンドメンバーはメイナード、ビリーのほか、ジョシュ・フリース(Dr)、当時MARILYN MANSONを脱退した“トゥイギー・ラミレズ”ことジョーディー・ホワイト(B)、元THE SMASHING PUMPKINSのジェイムズ・イハ(G)。イハはレコーディング後にバンドに合流しており、レコーディングにはNINE INCH NAILSなどで知られるダニー・ローナー(G)が参加しています。

このメンツから想像できる音……ではないかもしれません。特に本作は美しさや優しさの側面が強まっているため、ダイナミックかつヘヴィなアンサンブルを得意とするこのメンバーの特徴を抑えめに、あくまで曲の持つ世界観を再現することに徹したのではないかと思われます。

だからといって、ヘヴィなサウンドが皆無かというとそんなことはありません。8分近くにおよぶオープニングトラック「The Package」は序盤こそ穏やかですが、曲が進むにつれて影に隠れていたヘヴィさが顔を見せ始めますし、不穏なギターリフが印象的な「Pet」のような曲も含まれていますしね。それ以外にも、各曲の至るところにそういった要素は散りばめられているので、前作から激変したというわけではありません。

でも、本作の軸になる部分は“そこ”ではない、と。浮遊感の強いサウンドメイキングやアレンジ、TOOLでは聴くことができないメイナードの異なる表情(声)、そして鬼才ビリー・ハワーデルのソングライティング。これらが三位一体となってリスナーの前に姿を現す。油断してると魂を持っていかれそうになるけど、信用して心を預けてみたら予想外の気持ち良さが味わえる、そんなアルバムではないでしょうか。非常に抽象的な表現が多い気がしますが、そういう抽象的なものこそがA PERFECT CIRCLEというバンドには合っているような気がします。

 


▼A PERFECT CIRCLE『THIRTEENTH STEP』
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2018年3月 3日 (土)

THE SMASHING PUMPKINS『MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS』(1995)

1995年10月にリリースされたSMASHING PUMPKINSの3rdアルバム。CD2枚組、全28曲から構成されたトータル120分にもおよぶ大作で、収録されている楽曲のタイプもさまざまという、まさにビリー・コーガン(Vo, G)というバンドの頭脳がそのときできることをすべて詰め込んだかのような作品集です。本作は初の全米No.1を獲得し、トータル500万セット以上(1000万枚換算)を売り上げ、「Bullet With Butterfly Wings」(全米22位)、「1979」(全米12位)、「Tonight, Tonigt」(全米36位)、「Thirty-Three」(全米39位)という数多くのヒットシングルを生み出しました。

前作『SIAMESE DREAM』(1993年)の時点で、単なるオルタナ/グランジバンドとは異なるポピュラリティを携えたバンドであることを主張してきたスマパン。その後、1994年4月にカート・コバーン(NIRVANA)が自殺したことを経て、シアトルを中心にしたグランジムーブメントは衰退し始め、そのグランジの死を看取ったのが1995年夏に発表されたFOO FIGHTERSデビューアルバムと、このスマパンの大作だったと個人的には考えています(1994年末発売のPEARL JAMの3rdアルバム『VITALOGY』も、レクイエムとして同じような役割を果たした作品かもしれませんね)。

美しさを強調したアルバムと同タイトルのインスト曲から、そのまま壮大なロックチューン「Tonight, Tonight」で幕を開ける本作。このオープニングからして“闇抜け”にふさわしい構成ですが、以降は「Jellybelly」「Zero」「Here Is No Why」「Bullet With Butterfly Wings」とグランジの流れを汲む彼ららしいメタリックな楽曲が並びます。フォーキーでダウナーな「To Forgive」で小休止したかと思えば、「Fuck You (An Ode To No One)」で再び攻撃性を見せ、エレクトロとグラムロックがミックスした「Love」、落ち着いた雰囲気の「Cupid de Locke」「Galapogos」、大きなノリを持つミディアムチューン「Muzzle」、9分半におよぶ大作「Porcelina Of The Vast Ocean」、サイケデリックなアコースティックバラード「Take Me Down」という流れでディスク1を締めくくります。

ディスク2も、これもグランジロックと呼ぶにふさわしいヘヴィな「Where Boys Fear To Tread」を筆頭に、力強いビートのハードロック「Bodies」、美しい音色のバラード「Thirty-Three」、ダークさを伴うアコースティックチューン「In The Arms Of Sleep」、バンドのニューウェイブ色とポップセンスが遺憾なく発揮された名曲「1979」、各楽器が一体となって攻撃するかのようなプレイが楽しめる「Tales Of A Scorched Earth」、グランジバラードという表現がなんとなく似合うプログレッシヴな「Thru The Eyes Of Ruby」とバラエティ豊かな展開。

そして後半はアコギ弾き語り「Stumbleine」、ヘヴィさとダークさが極限まで達した「X.Y.U.」、デジタルとアコースティックが融合しながらもどこか牧歌的な「We Only Come Out At Night」、アーシーさが心地よい「Beautiful」「Lily (My One And Only)」、ビリー・コーガンというポップセンスに改めて脱帽のバラード「By Starlight」「Farewell And Goodnight」(後者はジェームズ・イハとの共作)と、比較的落ち着いた作風の楽曲が並びます。ちゃんとスマパンに求められるもの(ヘヴィさやポップさ)を残しつつ、しかもそれらがしっかりブラッシュアップされ、なおかつ次作『ADORE』(1998年)への布石も至るところに散りばめられている。単に「できた曲を全部詰め込みました」的な内容ではなく、しっかり計算され尽くされているあたりが策士ビリー・コーガンらしいなと。じゃなきゃ、ここまで売れませんって。

情報量が多い作品ですし、数回聴いただけですべてを理解することは難しいアルバムかもしれません。実際、本作よりも『SIAMESE DREAM』のほうがわかりやすくて好き、というリスナーも少なくありません。しかし、だからこそリリースから20年以上経った今のような時代にフィットする作品なんじゃないかとも思うわけです。“グランジバンド”としての正解は『SIAMESE DREAM』かもしれませんが、僕は本作で示した作風/スタイルこそを支持します。



▼THE SMASHING PUMPKINS『MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS』
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