カテゴリー「Smashing Pumpkins」の18件の記事

2020年7月27日 (月)

THE SMASHING PUMPKINS『MACHINA: THE MACHINES OF GOD』(2000)

2000年2月末にリリースされたTHE SMASHING PUMPKINSの5thアルバム。

ジミー・チェンバレン(Dr)の脱退を経て、打ち込み主体のダークな前作『ADORE』(1998年)が賛否両論を巻き起こしたスマパン。その後、ジミーがバンドに復帰し、ビリー・コーガン(Vo, G)、ジェイムズ・イハ(G)、ダーシー(B)とのオリメンで早くも新作制作へと突入しますが、今度はレコーディング終了後にダーシーが脱退。後任として元HOLEのメリッサ・オフ・ダ・マーを迎えて、ツアーへと臨みます。

アルバムはジミーのダイナミックなドラミングを活かしたハードロックナンバー「The Everlasting Gaze」からスタート。全編この調子で進むのかと思いきや、続く「Raindrops + Sunshowers」は前作での経験が見事に反映されたデジタル色を散りばめたロックチューンだし、シングル向きなポップロック「Stand Inside Your Love」や「Try, Try, Try」のような楽曲も用意されている。穏やかなニューウェイヴ感が心地よい「I Of The Mourning」、打ち込みリズムを同期させたキャッチーな「The Sacred And Profane」、ヘヴィなギターリフと重々しいリズムがタイトルまんまな「Heavy Metal Machine」、『GISH』(1991年)の頃のフリーキーさを存分に堪能できる約10分もの大作「Glass And The Ghost Children」など、全体を通してこれまでの“メジャー感が強いスマパン”の魅力が凝縮された集大成的内容に仕上がっています。全15曲で約73分という長尺なトータルランニングも、アナログなら2枚組になるところをCD1枚にギリギリ収めようとするあたりに、超大作『MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS』(1995年)よりも気軽に楽しんでほしいという意思が感じられます。

ですが、ここまでがっつり作り込んだものの、不思議なもので過去作ほど強く印象に残らないのが本作唯一の欠点かもしれません。1曲1曲は非常によく作り込まれているものの、アルバムとして並んだときのストーリーがそこまで強く感じられない。CD1枚にまとめてしまったことで、逆に全体像がぼんやりしてしまった(『メロンコリー』のようにディスク2枚に分けていれば、また印象も変わったのかも)。いろんなことが裏目でに出てしまった、残念な1枚と言えるかもしれませんね。

本作からは1曲もシングルヒットが生まれることなく、アルバム自体も全米3位まで上昇。セールス面では前作のミリオンにまで達しない、50万枚程度という惨敗ぶり……チャートの上位にはブリトニー・スピアーズやBACKSTREET BOYSのようなポップ・アイコンたちが名を連ねる現状を前に、スマパンは2000年末のツアー終了を持ってバンド解散を決意します。このラストツアーの一環で行われた日本公演については、当時このサイトでもレポートを残していますので、よろしければご参考まで。

オフィシャルな形ではラストアルバムとなってしまった本作。実は、アンオフィシャルな形でもう1枚(「枚」という概念はないかな。笑)、『MACHINA II: THE FRIENDS & ENEMIES OF MODERN MUSIC』(2000年)という作品を同年9月にネット配信することになるのですが、それについてはまた別の機会に。

 


▼THE SMASHING PUMPKINS『MACHINA: THE MACHINES OF GOD』
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2020年4月 3日 (金)

TINTED WINDOWS『TINTED WINDOWS』(2009)

2009年4月に発売されたTINTED WINDOWS唯一のオリジナルアルバム。日本盤は1ヶ月遅れでリリースされています。

TINTED WINDOWSはテイラー・ハンソン(Vo/HANSON)、ジェイムズ・イハ(G/THE SMASHIN PUMPKINS、ex. A PERFECT CIRCLE)、アダム・シュレシンジャー(B/FOUNTAINS OF WAYNE、IVY)、バン・E・カルロス(Dr/ex. CHEAP TRICK)という名うてのプレイヤー/ミュージシャンたちによって結成されたスーパーグループ。テイラーとアダムは90年代半ばから親交があり、またイハとアダムも各バンドのツアーなどで顔を合わせる機会が多く、2000年代に入ってからはイハがIVYのレコーディングに参加したり、共同でレーベルやスタジオを設立していました。そんな3人が意気投合し、それぞれが影響を受けた70〜80年代のパワーポップやニューウェイヴをモダンな形で表現するバンドとして結成されたのがこのTINTED WINDOWSでした。

彼らは大切なルーツのひとつであるレジェンド・CHEAP TRICKからバン・Eを迎え、アダム&イハのプロデュースで完成したのが本作。ボーナストラックを除く全11曲中、「Back With You」をイハ、「Nothing To Me」をテイラー、「Take Me Back」をテイラー&アダムが手がけ、残りの8曲すべてをアダムが単独で書き下ろしています。

HANSONが持つ突き抜けるようなポップネス、FOUNTAINS OF WAYNEのベースにあるオルタナティヴロック経由のパワーポップ感、そしてバン・Eを除く3人が多大な影響を受けたであろうCHEAP TRICKの香り。本作はそのすべてが凝縮された、終始ストレートに突き進むキャッチーなギターロックを堪能できる1枚と言えるでしょう。

FOWが持つカントリーテイストやCHEAP TRICKに備わっていたサイケデリック感は残念ながらここには含まれておらず(いわゆるハードロック的側面もだいぶ弱いかと)、どちらかというと「テイラー・ハンソンというフロントマンを、才能ある作曲家アダムが調理してみました」という印象が強い内容かもしれません。聴く人によってはそこに物足りなさを感じるかもしれませんが、個人的にはそこを抜きにしてもよく出来たパワーポップ/ギターロックアルバムだと断言したいな。だって、何度聴いて飽きがこないですからね。爆音で、気持ちよく楽しめる1枚です。

本作を携えた来日公演(2010年1月)にも足を運びましたが、当日は本作からの楽曲にTHE KNACK「Let Me Out」、BUZZCOCKS「I Don't Mind」のカバーを披露したことが特に印象に残っています。本作に参加したメンバーの各メインバンド、そしてカバーでピックアップしたバンド。ここにTINTED WINDOWSの本質があるのではないでしょうか。

テイラーは近年、TINTED WINDOWSは決して解散したわけではないと名言していましたが、結局2作目が制作されることなくアダムは新型コロナウイルスが原因で4月1日(現地時間)、この世を去りました。アダムといえばFOWかIVY、もしくは彼が手がけた映画『すべてをあなたに』の劇中曲「That Thing You Do!」が有名でしょうけど、僕的にはこのスーパーバンドも忘れたくないな……。

 


▼TINTED WINDOWS『TINTED WINDOWS』
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2020年1月 2日 (木)

banned songs of US radio after 9.11

つい先日、今年の9月11日に配信されたKERRNG!の記事「HERE ARE THE 164 SONGS THAT WERE BANNED FROM AMERICAN RADIO AFTER 9/11」がTwitterで流れてきたんですね。このリスト自体、これまでも完全版・不完全版問わずさまざまな形で流出していたと思いますし、実際僕も学生時代に湾岸戦争をテーマに「表現の自由」や「自主規制」について卒論を書いていたので、常に気になってチェックしていました。今回の記事も特別目新しさはなかったのですが、急にふと「そういえば、卒論書いてた90年代前半は実際にそういう曲を全部聴くのに相当苦労したけど、今ってストリーミングサービスがあるし、もしかしてこのリストの曲全部聴けるんじゃないかな……」と思ったんですね。

で、実際にプレイリストを作ってみようと思い、検索を開始……始めたのが明け方だったのですが、気づいたら1、2時間でプレイリスト完成。記事中に登場する曲名やアーティスト名に多少の間違いがあったので、ネット上で公開されている同様の記事(結局Wikipediaが一番便利でした)とも照らし合わせつつ、完全なるプレイリストを完成させました。

さすがに全曲ありました。すごいですね、Spotify(今回はApple Music版は作成せず。だって2つも作るの時間かかるし)。RAGE AGAINST THE MACHINEのみ全曲放送禁止だったので、本来なら彼らの楽曲はすべて入れるべきなんでしょうけど、それだと埒が明かないので各アルバムから主要ナンバー1曲ずつ、計4曲を入れることにしました。そこに「Knockin' On Heaven's Door」のみボブ・ディラン版とGUNS N' ROSES版の2曲を用意して、全168曲/11時間14分というアホほど長いプレイリストが完成したわけです(笑)。

一応、アーティスト名アルファベット順、複数の曲がリストにあるアーティストに関しては曲名もアルファベット順で並べてあります。なので、AC/DCみたいにいきなり7曲も続いてしまうこともありますが、シャッフル再生すると普通にラジオ感覚で楽しめるのではないでしょうか……しかも、いい曲ばかりですし。

こんなご時世だからこそ、こういった楽曲を手軽に楽しめる自由をかみしめつつ、今の生活に感謝したいと思います。またいつ、これらの楽曲やほかのヒット曲が放送禁止になるか、本当にわかりませんしね(しかも、あの当時よりも状況的には最悪ですから)。

 

2019年1月24日 (木)

FILTER『TITLE OF RECORD』(1999)

1999年8月(日本盤は9月)にリリースされた、FILTERの2ndアルバム。本作は「Take A Picture」のシングルヒット(全米12位)があったおかげで、アルバム自体も全米30位まで上昇。100万枚を超えるセールスを記録しました。

FILTERはNINE INCH NAILSでギタリストを務めたリチャード・パトリック(Vo, G)が1993年にブライアン・リーゼガング(G, Programming)と結成したユニットで、1995年にアルバム『SHORT BUS』でデビュー。ブライアンは1997年に脱退してしまいますが、その後ジーノ・レナード(G)、フランク・カヴァナフ(B)、スティーヴン・ギルス(Dr)というバンド編成に移行し、本作『TITLE OF RECORD』を完成させます。

デビュー作『SHORT BUS』はヘヴィなギターサウンドを軸にしながらも、リチャードのNINE INCH NAILS出身というバックボーンが全体に反映されており、インダストリアルヘヴィロックとしてかなり優れた内容でした。反面、ボーカル面での弱さも露呈し、そこが個人的には勿体ないなと思っていたのもまた事実。

ところが、続くこの『TITLE OF RECOD』では若干のインダストリアルテイストを残しつつも、軸になるのは大陸的なアメリカンハードロック。そこに90年代以降のグランジやオルタナティヴロックのフレイバーも加えられ、NINE INCH NAILSとも、そして当時流行りつつあったニューメタルとも異なる、普遍性の強いロックが展開されています。

オープニングを飾る「Welcome To The Fold」のダイナミズムには、当時かなり圧倒されたものです。リチャードのボーカルも不安定さが払拭され、かなり堂々としたものに成長しています。そういったパワフルなロックチューンがありつつも、「It's Gonna Kill Me」ではしっかり前作までの流れを当時のスタイルでバージョンアップさせている。かと思えば、優しく響く「Take A Picture」や「Skinny」のような楽曲もあり、バンドとして着実にスケールアップしていることが伺えます。

また、「Cancer」には当時THE SMASHING PUMPKINSのメンバーだったダーシー(B, Vo)がボーカルでゲスト参加。この曲はまた、ほかの楽曲とは異なるダークさが感じられ、本作中でもかなり地味な部類ながらも個人的にはお気に入りだったりします。まず何より、ダーシーのコーラスが良い味を出していますしね。スマパンファンにもぜひ聴いてほしい1曲です。

NINよりはハードロック寄り、前作でのデジタル色からロックバンド的スタンスへと移行しつつある絶妙なタイミングの本作は、デビューアルバムのファンには不評だったようですが、HR/HMリスナーには好意的に受け入れられた記憶が。ポストグランジ以降のハードロックを愛聴する方なら、間違いなくハマる1枚かと思います。

なお、FILTERは2003年に一度歩みを止めるものの、2007年には活動再開。昨年、オリジナルメンバーのブライアンも復帰しており、『REBUS』と題されたニューアルバムのリリースが控えています。タイトルからして、デビュー作に回帰したものになるのかどうか、こちらも気になるところです。



▼FILTER『TITLE OF RECORD』
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2019年1月13日 (日)

祝ご成人(1998年4月〜1999年3月発売の洋楽アルバム20選)

新成人の皆さん、おめでとうございます。2014年度に初めて執筆したこの“洋楽版成人アルバム”企画、今回で5回目となります。毎年この時期にこの企画をやることで、温故知新というよりは「自分の20年前の音楽ライフはどんなだったか」を思い返す上で非常に重要なコンテンツになりつつあります。

しかも、今回は当サイトの前身サイトがスタートした時期(1998年12月)が被っていることから、選出時もいろいろ感慨深いものがあります。いやあ、長く続けるもんだ。

さて、この企画の説明です。この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に1998年4月〜1999年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品のうちSpotifyやApple Musicで試聴可能な作品を20枚ピックアップしました。今年度は残念ながら、選出した20枚すべてがSpotifyおよびApple Musicに揃っているものではありませんでした(各サービスともに1枚足りないという)。

でも、どれも名盤ばかりですし、もしまだ聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にチェックしてみてはどうでしょう。特に、現在20歳の方々は「これ、自分が生まれた年に出たんだ」とかいろいろ感慨深いものがあるような気もしますし。ちなみに、作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちら、2016年度の新成人編はこちら、2017年度の新成人編はこちらです)


ASIAN DUB FOUNDATION『RAFI'S REVENGE』(1998年11月発売)(Spotify

AT THE DRIVE-IN『IN/CASINO/OUT』(1998年8月発売)(Spotify)(レビュー

BEASTIE BOYS『HELLO NASTY』(1998年7月発売)(Spotify

BLUR『13』(1999年3月発売)(Spotify)(レビュー

BOARDS OF CANADA『MUSIC HAS THE RIGHT TO CHILDREN』(1998年4月発売)(Spotify

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2018年9月 1日 (土)

THE SMASHING PUMPKINS『ADORE』(1998)

1998年6月発売の、THE SMASHING PUMPKINS通算4作目のスタジオアルバム。前作『MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS』(1995年)が初の全米No.1を獲得したほか、トータルで1000万枚を超えるメガヒット作になりました(2枚組作品なので、実質500万セット販売)。しかし、こうした好状況とは相反し、同作のツアー中にサポートメンバーのジョナサン・メルビン(Key)がドラッグの過剰摂取で死亡。この際、同じ現場にいたジミー・チェンバレン(Dr)も逮捕され、結果的にバンドを解雇されることに。

そんな中でも、ビリー・コーガン(Vo, G)はバンドの歩みを止めることなく、新作のレコーディングに突入します。プロデューサーにフラッドとブラッド・ウッドを迎えて制作されたアルバムは、マット・ウォーカー(FILTER)やマット・キャメロン(SOUNDGARDENPEARL JAM)、ジョーイ・ワロンカー(ベックR.E.M.、ATOMS FOR PEACEなど)といったセッションドラマーが参加しつつも、基本的には打ち込みリズムを基盤としたサウンドメイキングが施されています。

前作で「1979」というニューウェイブの影響をあらわにしたスマパンおよびビリーは、このアルバムでそうしたニューウェイブ魂を一気に爆発させたのです。オープニングの「To Sheila」や一部の楽曲はこれまでにもあったアコースティックの耽美な楽曲ですが、シングルカットされた「Ava Adore」や「Apples + Oranjes」など大半はシンセを主体としたエレクトロ/ニューウェイブ調の楽曲。「1979」の延長線上にある「Perfect」なども含まれているものの、ここには「Cherub Rock」も「Today」も「Bullet With Butterfly Wings」も「Zero」もありません。轟音ギターは鳴りをひそめ、ギター自体があくまでニューウェイブ調楽曲の味付けとしての役割にとどまっているのです。

そりゃあ、“あの”スマパンが好きな人は驚いただろうし、ショックだったことでしょう。しかし、前作でその片鱗を見せていたニューウェイブからの影響、また本作と同時期にリリースされたDEPECHE MODEのトリビュートアルバム『FOR THE MASSES』(1998年)での「Never Let Me Down Again」カバーを聴いた人なら、この路線は納得のいくものだったのではないでしょうか。

パーマネントのドラマー不在によって訪れた転機。これを吉と受け取るか凶と受け取るか……世の中的には凶とみなし、チャート的には全米2位を記録したものの、セールス的には100万枚程度と前作から一気に落とす結果に。残念でなりません。

でも、アルバムとしては非常に優れたものだと思いますし、本作以降のビリーの活動を見ていればこの作風はもはやスタンダードなものなんじゃないでしょうか。なんてことも、リリースから20年経った今だから言えるんですけどね。アルバム単位で言えば、僕個人彼らの作品で一番好きな1枚です。



▼THE SMASHING PUMPKINS『ADORE』
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2018年3月 7日 (水)

A PERFECT CIRCLE『THIRTEENTH STEP』(2003)

2003年9月に発表された、A PERFECT CIRCLEの2ndアルバム。ご存知のとおり、このバンドはTOOLのメイナード・キーナン(Vo)が、バンドのギターテクを勤めていたビリー・ハワーデル(G)という才能と出会ったことで誕生し、TOOLが所属レーベルとの裁判で思うように活動的なかった2000年に1stアルバム『Mer de Noms』を発表しています。その経緯などについては、2003年10月に執筆した同作のレビューに詳しいので、そちらに譲ります。

さて、前作レビューを執筆したあと、この2ndアルバムについて書くことができなかったので、14年ぶりの新作が今年4月に発売されるこのタイミングに改めて書いてみたいと思います。

前作のときにも書いたように、A PERFECT CIRCLEはメイナードの“ソロプロジェクト”ではないし、TOOLとは完全に別モノ。むしろ、ビリーという才能の塊と遭遇したことで、メイナードの創作意欲がTOOLとは別の形で爆発した、新しいバンドと受け取るほうが正しい解釈だと思っています。

なので、そのサウンドもTOOLのようにプログレッシヴな展開をするものとは別次元で展開されており、特に本作はヘヴィな印象が強かったデビュー作『Mer de Noms』とは若干異なるカラーを打ち出し始めています。

ちなみに、当時のバンドメンバーはメイナード、ビリーのほか、ジョシュ・フリース(Dr)、当時MARILYN MANSONを脱退した“トゥイギー・ラミレズ”ことジョーディー・ホワイト(B)、元THE SMASHING PUMPKINSのジェイムズ・イハ(G)。イハはレコーディング後にバンドに合流しており、レコーディングにはNINE INCH NAILSなどで知られるダニー・ローナー(G)が参加しています。

このメンツから想像できる音……ではないかもしれません。特に本作は美しさや優しさの側面が強まっているため、ダイナミックかつヘヴィなアンサンブルを得意とするこのメンバーの特徴を抑えめに、あくまで曲の持つ世界観を再現することに徹したのではないかと思われます。

だからといって、ヘヴィなサウンドが皆無かというとそんなことはありません。8分近くにおよぶオープニングトラック「The Package」は序盤こそ穏やかですが、曲が進むにつれて影に隠れていたヘヴィさが顔を見せ始めますし、不穏なギターリフが印象的な「Pet」のような曲も含まれていますしね。それ以外にも、各曲の至るところにそういった要素は散りばめられているので、前作から激変したというわけではありません。

でも、本作の軸になる部分は“そこ”ではない、と。浮遊感の強いサウンドメイキングやアレンジ、TOOLでは聴くことができないメイナードの異なる表情(声)、そして鬼才ビリー・ハワーデルのソングライティング。これらが三位一体となってリスナーの前に姿を現す。油断してると魂を持っていかれそうになるけど、信用して心を預けてみたら予想外の気持ち良さが味わえる、そんなアルバムではないでしょうか。非常に抽象的な表現が多い気がしますが、そういう抽象的なものこそがA PERFECT CIRCLEというバンドには合っているような気がします。

 


▼A PERFECT CIRCLE『THIRTEENTH STEP』
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2018年3月 3日 (土)

THE SMASHING PUMPKINS『MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS』(1995)

1995年10月にリリースされたSMASHING PUMPKINSの3rdアルバム。CD2枚組、全28曲から構成されたトータル120分にもおよぶ大作で、収録されている楽曲のタイプもさまざまという、まさにビリー・コーガン(Vo, G)というバンドの頭脳がそのときできることをすべて詰め込んだかのような作品集です。本作は初の全米No.1を獲得し、トータル500万セット以上(1000万枚換算)を売り上げ、「Bullet With Butterfly Wings」(全米22位)、「1979」(全米12位)、「Tonight, Tonigt」(全米36位)、「Thirty-Three」(全米39位)という数多くのヒットシングルを生み出しました。

前作『SIAMESE DREAM』(1993年)の時点で、単なるオルタナ/グランジバンドとは異なるポピュラリティを携えたバンドであることを主張してきたスマパン。その後、1994年4月にカート・コバーン(NIRVANA)が自殺したことを経て、シアトルを中心にしたグランジムーブメントは衰退し始め、そのグランジの死を看取ったのが1995年夏に発表されたFOO FIGHTERSデビューアルバムと、このスマパンの大作だったと個人的には考えています(1994年末発売のPEARL JAMの3rdアルバム『VITALOGY』も、レクイエムとして同じような役割を果たした作品かもしれませんね)。

美しさを強調したアルバムと同タイトルのインスト曲から、そのまま壮大なロックチューン「Tonight, Tonight」で幕を開ける本作。このオープニングからして“闇抜け”にふさわしい構成ですが、以降は「Jellybelly」「Zero」「Here Is No Why」「Bullet With Butterfly Wings」とグランジの流れを汲む彼ららしいメタリックな楽曲が並びます。フォーキーでダウナーな「To Forgive」で小休止したかと思えば、「Fuck You (An Ode To No One)」で再び攻撃性を見せ、エレクトロとグラムロックがミックスした「Love」、落ち着いた雰囲気の「Cupid de Locke」「Galapogos」、大きなノリを持つミディアムチューン「Muzzle」、9分半におよぶ大作「Porcelina Of The Vast Ocean」、サイケデリックなアコースティックバラード「Take Me Down」という流れでディスク1を締めくくります。

ディスク2も、これもグランジロックと呼ぶにふさわしいヘヴィな「Where Boys Fear To Tread」を筆頭に、力強いビートのハードロック「Bodies」、美しい音色のバラード「Thirty-Three」、ダークさを伴うアコースティックチューン「In The Arms Of Sleep」、バンドのニューウェイブ色とポップセンスが遺憾なく発揮された名曲「1979」、各楽器が一体となって攻撃するかのようなプレイが楽しめる「Tales Of A Scorched Earth」、グランジバラードという表現がなんとなく似合うプログレッシヴな「Thru The Eyes Of Ruby」とバラエティ豊かな展開。

そして後半はアコギ弾き語り「Stumbleine」、ヘヴィさとダークさが極限まで達した「X.Y.U.」、デジタルとアコースティックが融合しながらもどこか牧歌的な「We Only Come Out At Night」、アーシーさが心地よい「Beautiful」「Lily (My One And Only)」、ビリー・コーガンというポップセンスに改めて脱帽のバラード「By Starlight」「Farewell And Goodnight」(後者はジェームズ・イハとの共作)と、比較的落ち着いた作風の楽曲が並びます。ちゃんとスマパンに求められるもの(ヘヴィさやポップさ)を残しつつ、しかもそれらがしっかりブラッシュアップされ、なおかつ次作『ADORE』(1998年)への布石も至るところに散りばめられている。単に「できた曲を全部詰め込みました」的な内容ではなく、しっかり計算され尽くされているあたりが策士ビリー・コーガンらしいなと。じゃなきゃ、ここまで売れませんって。

情報量が多い作品ですし、数回聴いただけですべてを理解することは難しいアルバムかもしれません。実際、本作よりも『SIAMESE DREAM』のほうがわかりやすくて好き、というリスナーも少なくありません。しかし、だからこそリリースから20年以上経った今のような時代にフィットする作品なんじゃないかとも思うわけです。“グランジバンド”としての正解は『SIAMESE DREAM』かもしれませんが、僕は本作で示した作風/スタイルこそを支持します。



▼THE SMASHING PUMPKINS『MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS』
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2017年10月29日 (日)

WILLIAM PATRICK CORGAN『OGILALA』(2017)

SMASHING PUMPKINSのフロントマン、ビリー・コーガンによる2ndソロアルバム。本作は本名である「ウィリアム・パトリック・コーガン」名義でのリリースとなります。

ソロアルバムはスマパン〜ZWANの解散を経て、2005年に発表した『THEFUTUREEMBRACE』以来12年ぶり。前作はヘヴィなサウンドのみならずニューウェイブやシューゲイザーなどさまざまなジャンルを打ち込み中心で表現した(ファンに求められているか否かは別として)意欲的内容でしたが、本作は本名名義での発表ということもあってか、非常にパーソナルな内容に仕上がっています。

そのパーソナルというのも、非常にわかりやすい形で表現されており、基本はアコースティックギターの弾き語りを軸にしており、そこに歪んでないエレキギターやピアノ、メロトロン、パーカッションなどが加わっています。とはいえ、そこまで音数は多くなく、むしろ全体的に“空白”を生かしたアレンジの楽曲がずらりと並びます。スマパンで言うなれば、「Disarm」「Thirty-Three」あたりに通ずると言えばわかりやすいでしょうか。

とはいえ、「Disarm」のようなドラマチックさはなく、「Thirty-Three」ほどのきらめきも……まったくないと言ったら嘘になりますが、その輝きは若さならではの生命力によるものとは違った、同時に影を感じさせるものといいましょうか。キュンとする切なさとは違う、郷愁感に似たものなのかもしれません。

ビリーの歌声も強く張り上げることなく、終始リラックスしたもので、聴き手側も肩の力を抜いて楽しめるんじゃないでしょうか。

ただ、統一感の強いカラーのせいなのか、「これ!」といったキメの1曲が見当たらないのがマイナスポイント。どれも平均点を軽く超えた仕上がりですが、抜きん出て素晴らしいと呼べるものを探すのは難しい。そういった意味では、非常に“雰囲気モノ”の1枚として全体の空気感を楽しむ作品と言えるでしょう。そんな楽しみ方があるのかどうかは別として。

90年代にあれだけ高性能ハードロック&ポップスを量産してきたビリー。00年代以降は本作に限らず、確かに「これ!」という1曲を生み出せていないんですよね。その才能はある人だと思うんですが……。

と思っていたら、本作ってビリーが脚本を手がけたショートフィルム『PILLBOX』のサウンドトラック的立ち位置の作品みたい。なるほど、サントラということで考えたらこの統一感も理解できるし、極端に目立ちすぎる曲が少ないというのも頷けるか……ってこれ、ショートフィルムが先かアルバムが先かで、捉え方も変わってくるような。本当はどっちが先なんでしょうね。

ちなみに本作には、元バンド名とのジェイムズ・イハが1曲(「Processional」)ギターとメロトロンでゲスト参加。実はアルバム未収録でもう1曲、共演曲があるとのこと。今後のリリースのみならず、再びステージでの共演含め、今後に期待しておきましょう。



▼WILLIAM PATRICK CORGAN『OGILALA』
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2017年8月13日 (日)

V.A.『SINGLES: ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK』(1992/2017)

1992年秋に全米公開された映画『シングルス(SINGLES)』のサウンドトラックアルバム。日本では先にサントラがリリースされ、映画は翌1993年春に公開されました(単館ではなかったものの公開劇場数は少なく、どこも小規模劇場での公開だったと記憶しています)。

シアトルを舞台にしたラブストーリーなのですが、当時のシアトルといえばグランジブームまっただ中。主人公のひとりであるクリフ(マット・ディロン)がロックバンドをやっていることなどもあり、劇中にはALICE IN CHAINSやクリス・コーネル(SOUNDGARDEN)、エディ・ヴェダー(PEARL JAM)なども登場します。

サントラは映画公開に先駆けて1992年6月にUS発売(日本では9月発売)。内容は当時人気のグランジバンドやシアトル出身のレジェンドたちの楽曲で大半が占められ、全13曲中11曲が当時未発表曲でした。リードトラックとしてALICE IN CHAINSの新曲「Would?」(同年9月発売の2ndアルバム『DIRT』にも収録)が公開されるやいなや、大反響を呼んだのをよく覚えています。

ALICE IN CHAINS、PEARL JAM、SOUNDGARDEN、MUDHONEYSMASHING PUMPKINSといった当時ど真ん中のバンドから、SCREAMING TREES、MOTHER LOVE BONEというグランジ黎明期のバンド、THE REPLACEMENTSのポール・ウェスターバーグ、HEARTのアン&ナンシー姉妹の別ユニットTHE LOVEMONGERS、ジミ・ヘンドリクスといったレジェントたちまで。さらにはクリス・コーネルのソロ曲まで含まれているのですから、当時のグランジシーンを振り返る、あるいはシアトルのロックシーン(メタルは除く)に触れるという点においては非常に重要な役割を果たすコンピレーションアルバムだと思います。

そのサントラ盤が、発売から25年を経た2017年に、未発表テイクや劇中で使用されたもののサントラ未収録だった楽曲を集めた2枚組デラックスエディションで再発。ディスク1は当時のままで、ディスク2にその貴重な音源がたっぷり収められています。

ここには、マット・ディロンが劇中で所属していたバンド・CITIZEN DICKの楽曲「Touch Me, I'm Dick」(MUDHONEY「Touch Me, I'm Sick」のパロディカバー)や、のちにSOUNDGARDENの楽曲として発表される「Spoonman」のクリス・コーネルソロバージョン、ALICE IN CHAINやSOUNDGARDENのライブ音源、TRULYやBLOOD CIRCUSの楽曲、マイク・マクレディ(PEARL JAM)のソロ曲などを収録。おまけ感の強いものから本気で貴重なテイクまで盛りだくさんの内容で、ここまでを含めて映画『シングルス』をしっかり振り返れるのかな?と改めて思いました。

映画自体は観ても観なくても大丈夫ですが(笑)、1992年という時代の節目を追体験したいのなら、NIRVANAやPEARL JAMのオリジナルアルバムだけではなく、ぜひ本作も聴いていただきたいと、あの当時をリアルタムで通過したオッサンは強く思うわけです。サントラと思ってバカにしたら、きっと痛い目を見るよ?

ちなみに、本作のデラックスエディションが発売されたのが5月19日(海外)。クリス・コーネルが亡くなったのがその前々日の17日ということもあり、真の意味での“グランジの終焉”を実感させる1枚になってしまったことも付け加えておきます。



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