2017/08/13

V.A.『SINGLES: ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK』(1992/2017)

1992年秋に全米公開された映画『シングルス(SINGLES)』のサウンドトラックアルバム。日本では先にサントラがリリースされ、映画は翌1993年春に公開されました(単館ではなかったものの公開劇場数は少なく、どこも小規模劇場での公開だったと記憶しています)。

シアトルを舞台にしたラブストーリーなのですが、当時のシアトルといえばグランジブームまっただ中。主人公のひとりであるクリフ(マット・ディロン)がロックバンドをやっていることなどもあり、劇中にはALICE IN CHAINSやクリス・コーネル(SOUNDGARDEN)、エディ・ヴェダー(PEARL JAM)なども登場します。

サントラは映画公開に先駆けて1992年6月にUS発売(日本では9月発売)。内容は当時人気のグランジバンドやシアトル出身のレジェンドたちの楽曲で大半が占められ、全13曲中11曲が当時未発表曲でした。リードトラックとしてALICE IN CHAINSの新曲「Would?」(同年9月発売の2ndアルバム『DIRT』にも収録)が公開されるやいなや、大反響を呼んだのをよく覚えています。

ALICE IN CHAINS、PEARL JAM、SOUNDGARDEN、MUDHONEYSMASHING PUMPKINSといった当時ど真ん中のバンドから、SCREAMING TREES、MOTHER LOVE BONEというグランジ黎明期のバンド、THE REPLACEMENTSのポール・ウェスターバーグ、HEARTのアン&ナンシー姉妹の別ユニットTHE LOVEMONGERS、ジミ・ヘンドリクスといったレジェントたちまで。さらにはクリス・コーネルのソロ曲まで含まれているのですから、当時のグランジシーンを振り返る、あるいはシアトルのロックシーン(メタルは除く)に触れるという点においては非常に重要な役割を果たすコンピレーションアルバムだと思います。

そのサントラ盤が、発売から25年を経た2017年に、未発表テイクや劇中で使用されたもののサントラ未収録だった楽曲を集めた2枚組デラックスエディションで再発。ディスク1は当時のままで、ディスク2にその貴重な音源がたっぷり収められています。

ここには、マット・ディロンが劇中で所属していたバンド・CITIZEN DICKの楽曲「Touch Me, I'm Dick」(MUDHONEY「Touch Me, I'm Sick」のパロディカバー)や、のちにSOUNDGARDENの楽曲として発表される「Spoonman」のクリス・コーネルソロバージョン、ALICE IN CHAINやSOUNDGARDENのライブ音源、TRULYやBLOOD CIRCUSの楽曲、マイク・マクレディ(PEARL JAM)のソロ曲などを収録。おまけ感の強いものから本気で貴重なテイクまで盛りだくさんの内容で、ここまでを含めて映画『シングルス』をしっかり振り返れるのかな?と改めて思いました。

映画自体は観ても観なくても大丈夫ですが(笑)、1992年という時代の節目を追体験したいのなら、NIRVANAやPEARL JAMのオリジナルアルバムだけではなく、ぜひ本作も聴いていただきたいと、あの当時をリアルタムで通過したオッサンは強く思うわけです。サントラと思ってバカにしたら、きっと痛い目を見るよ?

ちなみに、本作のデラックスエディションが発売されたのが5月19日(海外)。クリス・コーネルが亡くなったのがその前々日の17日ということもあり、真の意味での“グランジの終焉”を実感させる1枚になってしまったことも付け加えておきます。



▼V.A.『SINGLES: ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK』
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投稿: 2017 08 13 12:00 午前 [1992年の作品, 2017年の作品, Alice in Chains, Chris Cornell, Heart, Mudhoney, Pearl Jam, Smashing Pumpkins, Soundgarden] | 固定リンク

2017/06/29

SMASHING PUMPKINS『SIAMESE DREAM』(1993)

1993年夏に発表されたSMASHING PUMPKINSの2ndアルバム。前作『GISH』(1991年)はNIRVANA『NEVERMIND』やPEARL JAM『TEN』の数ヶ月前に発表されたものの、大きな話題にならずセールス的に惨敗。そこでビリー・コーガン(Vo, G)は「この流れに乗ってやる」とばかりに、“良い曲、良いアルバム”を目指してこの『SIAMESE DREAM』を制作するのでした。

前作はいわゆるインディーロックの範疇にある作風でしたが、その中にもキラリと光るメロディセンスやのちのポピュラリティにつながる要素は含まれていました。その秘めた才能は、本作に収められている「Today」や「Disarm」といったメロウな楽曲で存分に活かされることになります。

オープニングの「Cherub Rock」や「Geek U.S.A.」などで聴けるハードロック的手法は、確かに前作にも多少見え隠れしたテイストですが、ここではさらにその色を強めています。また、今作ではグランジ(主にNIRVANA)特有の“強弱法”(バースは静かめに、サビで一気に爆発するアレンジ法)を多用した楽曲が多いのも特徴で、「Today」や「Mayonaise」あたりはそのもっともたる楽曲。かと思えばストリングスを導入した「Disarm」や「Luna」、メロトロンをフィーチャーしたアコースティックナンバー「Spaceboy」などもあり、続く次作『MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS』(1995年)への布石も感じさせます。

もちろん、前作で顕著だったジャムセッション的な長尺ナンバーも、「Soma」や「Silverfuck」で引き継がれつつその強度をさらに増している。前作をなかったことにせず、しっかり延長線上にありながらも何十歩も先に進んだ、それがこの『SIAMESE DREAM』の強みだと思います。

音楽的才能の本格的開花は2枚組大作の3rd『MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS』に譲るとして、本作では我々がよく知るSMASHING PUMPKINSの根幹を作り上げたという点での“1stアルバム”なのかなと。もちろん『GISH』という習作があってこその本作なのですが、グランジという時代の流れにしっかり乗りながらバンドの個性を確立させたという意味では、本作は重要な1枚だったと言えるわけです。

そして、セールス的にもしっかり結果を出したのが本作。全米10位、400万枚以上もの売り上げを記録しております。ただ、意外にも本作からはBillboard TOP100に入るシングルヒットは生まれておらず、「Cherub Rock」「Today」「Disarm」がそれぞれBillboardオルタナティブソングチャートで7位、4位、8位にランクインしたのみ。ヒットシングル連発は次作以降なんですね。

グランジのイメージが強い彼らですが、シアトルの外からグランジに接近して独自の個性を磨いたという点においてはSTONE TEMPLE PILOTSに通ずるものがあるなと。思えば両バンドともに、HR/HM的なポピュラリティがしっかり備わってるところも似てますし。ただ、ビリー・コーガンという男が“まとも”だったことで、カートやスコット・ウェイランドみたいにはなれなかった。今となってはそれでよかったんですけどね。



▼SMASHING PUMPKINS『SIAMESE DREAM』
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投稿: 2017 06 29 12:00 午前 [1993年の作品, Smashing Pumpkins] | 固定リンク

2016/01/10

祝ご成人(1995年4月〜1996年3月発売の洋楽アルバム20枚)

新成人の皆さん、おめでとうございます。昨年度に初めて実施したこの企画、今回も新成人の皆さんが生まれた年(学年的に1995年4月〜1996年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品を20枚ピックアップしました。どれも名盤ばかりなので、もし聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にお手にしてみてはいかがでしょうか。とは言いながらも大半が名盤中の名盤なので、聴いたことがあるものばかりかもしれませんが。

並びはすべてアルファベット順です。(2015年の新成人編はこちら


Alice in Chains『Alice in Chains』(Amazon

Ben Folds Five『Ben Folds Five』(Amazon

Björk『Post』(Amazon

Blur『The Great Escape』(Amazon

Bon Jovi『These Days』(Amazon

The Chemical Brothers『Exit Planet Dust』(Amazon

Fear Factory『Demanufacture』(Amazon

Foo Fighters『Foo Fighters』(Amazon

The Fugees『The Score』(Amazon

Garbage『Garbage』(Amazon

King Crimson『Thrak』(Amazon

Oasis『(What's the Story) Morning Glory?』(Amazon

Pulp『Different Class』(Amazon

Queen『Made in Heaven』(Amazon

Red Hot Chili Peppers『One Hot Minute』(Amazon

Reef『Replenish』(Amazon

The Smashing Pumpkins『Mellon Collie and the Infinite Sadness』(Amazon

Sepultura『Roots』(Amazon

Teenage Fanclub『Grand Prix』(Amazon

The Wildhearts『P.H.U.Q.』(Amazon


残念ながらセレクトから漏れた作品も多いです。以下ざっと候補を羅列します。

Alanis Morissette『Jagged Little Pill』
Anthrax『Stomp 442』
The Beatles『Anthology 1』
The Boo Radleys『Wake Up!』
Bruce Springsteen『The Ghost of Tom Joad』
The Charlatans『The Charlatans』
D'Angelo『Brown Sugar』
David Bowie『Outside』
In Flames『The Jester Race』
Michael Jackson『HIStory: Past, Present and Future, Book I』
Nine Inch Nails『Further Down the Spiral』
Ozzy Osbourne『Ozzmosis』
Paul Weller『Stanley Road』
The Rentals『Return of the Rentals』
Ron Sexsmith『Ron Sexsmith』
Sonic Youth『Washing Machine』
Supergrass『I Should Coco』
Terence Trent D'Arby『Terence Trent D'Arby's Vibrator*』
Terrorvision『Regular Urban Survivors』
Underworld『Second Toughest in the Infants』
White Zombie『Astro-Creep: 2000』

こうやって振り返ると、1995年から1996年初頭ってブリットポップの最盛期だったんですね。1995年3月にはElasticaやGeneのアルバムも発表されてるし、1996年後半になるとKula Shakerの1stもリリースされますし。やっぱり1995年夏のBlur vs Oasisの直接対決がピークでしたね、いろんな意味で。

あ、Underworldをあえて選外にしたのは、日本盤のリリースが1996年6月だったから。海外では3月発売ですが、その後の「Born Slippy」のヒットなど含めて考えると、このアルバムは1996年から1997年の作品かなと思いまして。来年はマストかな。

メタルの世界はグランジがひと段落したものの、ポストグランジ的サウンドのバンドが増えつつあり、前年からのMotley Crue、Dokkenの失敗など、あまり芳しくない状況でした。そんな中、1994年のKornデビューを機にグルーヴ感のあるヘヴィロックが台頭し始めます。前年デビューのMachine Headもその1つですね。Sepulturaは前作『Chaos A.D.』でのシフトチェンジから、ブラジル音楽のルーツを取り入れた傑作『Roots』で活動のピークを迎えるのも、1996年初頭のお話。Fear Factoryのようなデジタル要素を取り入れたヘヴィバンドも人気を集め始めたのも印象に残ってます。同時期に国内ではTHE MAD CAPSULE MARKETSが『4 PLUGS』をリリースしたのも、海外の動きとリンクしていて興味深いです。

ちなみに日本国内ではこの頃、ブルーハーツの解散(6月)やUP-BEATの解散(8月)、光GENJI(光GENJI SUPER5)の“卒業”(9月)、Winkの活動停止(96年3月)といった出来事がありました。いわゆるTKサウンドがチャートを席巻し、MY LITTLE LOVERやglobeがデビューしたのもこの頃でした。

投稿: 2016 01 10 12:00 午前 [1995年の作品, 1996年の作品, Ben Folds, Bon Jovi, Foo Fighters, Queen, Smashing Pumpkins, Teenage Fanclub, Wildhearts, The, 「20年前」] | 固定リンク

2005/05/13

SMASHING PUMPKINS『GISH』(1991)

ビリー・コーガンが語る:ソロ・アルバム、R・スミスとのコラボ、そしてスマパン再結成の可能性(MTVJAPAN.COM)

 長い記事です。続きはこちらです。6月にリリースされる初のソロアルバムに関するインタビューなんだけど、最後はどうしても「SMASHING PUMPKINS再結成の可能性は‥‥」という話題になっちゃうんだよね。ここでさ、ZWANが短命に終ってなければこんなこと聞かれずに済んだのに‥‥

 ZWANがアルバムをリリースした2003年初頭。春にはもう初来日公演を果たし、既に来日中に「フジロックへの出演が決まった」とか何とか言われてたのに、気づいたら直前にメンバー脱退〜解散ですからね。ほぼ空中分解に近い形で。そして解散に関するコメントの中で「スマパンが恋しい」みたいな無防備な発言までしちゃったもんだから‥‥そりゃみんな「ヲイコラマテ!」ってなるわな。んでその後、スマパン解散の真相といって、まるで全ての理由がジェームズ・イハにあるみたいなこと言い出す始末。嗚呼‥‥

 上のインタビューでも「あの4人」でのスマパン再結成に関して、「4人のスマパンが見られる日は来ない。それはありえないことだ」と答え、「もし仮にスマパンが見られたとすれば、僕らは解散した時点から続けるんだ。非常にプログレッシヴで、アグレッシヴで、理解し難いユニットってことさ」とも答えてる‥‥要するに、ビリー/イハ/ダーシー/ジミーでのスマパン再結成はありえないけど、別の形でのスマパン復活ならありえる。でもそれは過去の焼き直しにならず、現代的なサウンドを持ち合わせたバンドになってるはず、そうじゃなきゃやる意味ないし‥‥と言いたいのか。まぁ‥‥ベースはメリッサを呼び戻したとしても、ギターがなぁ‥‥やっぱりイハじゃないと。イハのいないスマパンなんて考えられないしなぁ‥‥

 そんなスマパンなんだけど、俺デビュー当時のスマパンが超苦手で。苦手というよりも、ストレートに言って嫌いだった。バンドの持つ空気感や雰囲気が苦手で。サウンドを聴くより前に苦手意識を持ってしまっていて、初めて "Siva" だか何かのPVを観た時には、もう嫌悪感すらあって。友人の車の中でこの「GISH」というアルバムを初めて聴かされた時も‥‥全然耳に入ってこなくてね。

 スマパンと真正面から向き合えるようになったのは、3rdのメロンコリーからですよ。あのアルバムがアメリカでは数百万セットを売り上げてるのに、日本では2,000枚も売れてない‥‥みたいな記事を当時の新聞夕刊で読んで(確か執筆してたのは、故・福田一郎氏)。その直後に観た "1979" のPVとそのサウンドに目を耳を奪われてね‥‥その後はもう、ご存知の通り。気づいたら1stも、当時未聴だった2ndも後追いしましたよ。

 この「GISH」というアルバムは、確かにその後の彼等と比べれば地味だし未熟だと思う。如何にも「田舎のインディーバンド」といった印象だし。けど光るモノは既にこの時点から存在してたし、曲だって今聴けば全然悪くない。そう‥‥全ては「シアトル・ムーブメント」であるところのグランジ‥‥ここに括られてしまった時点で、彼等の不幸‥‥終わりのない悲しみがスタートしちゃったのかもしれないね。彼等は他のシアトル勢と比べても、非常にスマートで知的な印象があるのね。同じ田舎モンの集まりのはずなのに、そこには都会モンが持ち得るクールさが最初から備わってる。そう、バカ売れする前から。

 ファーストアルバムとしてみたら、水準高過ぎでしょう。けど、偏屈な方々は「出来過ぎ」とか「優等生過ぎ」といってスルー。みんなもっと派手で暴れられるNIRVANAやPEARL JAM、ALICE IN CHAINS、SOUNDGARDENみたいなバンドを選んだ‥‥勿論、俺もその中のひとりだったんだけどね。

 実はSONIC YOUTHと比較されるべきだったのは、サーストン達と仲が良かったNIRVANAではなくて、このSMASHING PUMPKINSの方だったのかもしれないね。

 でも‥‥その後のブレイクの仕方を思えば‥‥今はこれでよかったのかも‥‥と思えなくもないし。あの屈辱感があったからこそ、そして1枚目で大きな成功を収めなかったからこそ、その後ああいう方向に進んで大ブレイクできたんだろうけどさ。

 ま、とにかく‥‥ビリー・コーガンという男は本当に凄い奴だってことですよ。既に14年前からこういうアルバムを作っていたわけで、それから12年後にはZWANで更にそれを数十歩押し進めたような作品を生み出して、そして今‥‥その更に数歩先を見つめるソロアルバムをリリースしようとしてるんですから。

 でもでも‥‥やっぱりもう一度。もう一度だけでいいから、スマパン観たいよねぇ‥‥



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投稿: 2005 05 13 12:00 午前 [1991年の作品, Smashing Pumpkins] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/11/13

とみぃ洋楽100番勝負(87)

●第87回:「Tonight, Tonight」 THE SMASHING PUMPKINS ('95)

 スマパンがずっと苦手で。前のPEARL JAMの場合は単純に「自分的に決定打に欠ける」ってだけで、別に嫌いじゃなかったんだけど。スマパンの場合は‥‥なんだろ‥‥あの世界観が‥‥1stの頃とかね‥‥無理してやってるんじゃないの?くらいに思えて。だから「GISH」って殆どリアルタイムでは通過してないし、2nd「SIAMESE DREAM」にしても一部の "Today" とか "Disarm" といった楽曲を除いて、どうにものめり込めなくて。

 そんな俺がスポッと彼等にハマってしまったのは、この「メロンコリーそして終わりのない悲しみ」というアルバムタイトルと、"Tonight, Tonight" という楽曲のお陰だったのかな。でもね、そこにたどり着くまでには、アルバムリリースから半年以上もの時間を要したんだけど。

 完全に聴かず嫌い‥‥ちゃんと聴いてこなかったんだなぁ、と。いや、それを抜きにしてもこの2枚組アルバムの音楽的成熟度はハンパじゃなかったんですよ。むしろ俺がこれまで感じていた「無理してる感」が皆無で、30曲以上あるもんだからいろんなタイプの曲があって。それこそビリー・コーガンがどういった音楽から影響を受けて来たかが伺えるような要素がそこら中に見え隠れしてるわけ。で、それらが自分とかなりオーバーラップしていた、と。

 "Zero" とかああった世界観を持つ楽曲にもすんなり入っていけたし、"1979" なんて思わず吹き出してしまうタイプの曲もあったり‥‥けど俺は、彼等にそれこそアルバムタイトル通りの「メロンコリー」と「終わりのない悲しみ」を求めてしまってね。"Tonight, Tonight" もそうだし、ディスク2後半の流れとかさ‥‥それは続くアルバム「ADORE」にまで続くんだけど。

 誰も彼もがあの時代、同時代に登場したことで、そして先に逝ってしまったことで、カート・コバーンがそれまで担ってきた役割を背負わされそうになっていた。だからこそ、あのムーブメントが崩壊することで、それぞれが本来持っていたものを曝け出す必要があった。そしてPJにしろスマパンにしろ、そういった時代を担うことを拒否し、いち抜け二抜けしていき、独自の個性を磨いていった。その結果、俺は彼等の本当の姿に出会うことができた。そして今がある、と。

 ビリー・コーガンには本当に頑張って欲しいのよ。ZWANがああいった形で終わってしまったこともあってね‥‥もう一度スマパンをやって欲しいとは思わないけど、これを超えることは可能なんじゃないかな‥‥と信じて疑わないんですけど。絶対にやれると思う、あの男なら。ブリトニーとか気にしてる場合じゃなしに、好き放題やった時の本当の凄さは、このアルバムで実証済みなんだからさ。



▼THE SMASHING PUMPKINS「MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS」(amazon

投稿: 2004 11 13 12:00 午前 [1995年の作品, Smashing Pumpkins, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2001/08/12

「FUJI ROCK FESTIVAL '01」DAY 2@苗場スキー場(2001年7月28日)

◎NUMBER GIRL (at GREEN STAGE / 11:00~11:50)

  定刻通りにメンバーがステージに登場。向井「福岡県●▲出身、ナンバーガール~」等と自己紹介。いきなり和む。しかしギターが鳴らされた瞬間、場の空気は一変した。のっけからファストナンバーを連発だ。PAのやぐら前あたりで観ていたのだが、始まった瞬間、ブロックのかなり前の方まで走っていた。

  向井の歌は、こうやってライブで聴いていると、何となくカートを思い浮かべることがあった。確かにNIRVANAと共通する要素はいくつかあると思うが、単なるフォロワーではなく、それなりにオリジナリティを持ったバンドだ。例えば、向井がただ1曲だけギターを持たずにビールを持って歌った「Destruction Baby」は、完全にレゲエ/ダブ要素を加えたアレンジに変えられていたし(またそれが気持ちよかった)、そういう「パワー一辺倒」では終わらないところに今後の彼らが進むべき道を見たような気がした。

  向井のMCもなかなか笑わせてくれる。乾杯三唱をさせられたときにはどうしようと思ったが、それも今となってはいい思い出だ。結局45分程度のステージで、「この後ホワイトステージに行くんで、これにて終了」と言ってバンドは去っていった(11:30からホワイトではeastern youthが演奏していたのだが、この後本当に向井はホワイトで目撃されている)。朝イチで観る長さとしては腹八分目で丁度いい感じだった。


◎MO'SOME TONEBENDER (at RED MARQUEE / 12:40~13:20)

  何の期待もせずに、ステージ前近くで開演を待った。ドラムがサウンドチェックしてるとき、あるフレーズを延々と叩いていたのだが……あれ、これって何の曲のリフだっけ……あぁ、そうか、NIRVANAの「In Bloom」だ。しかもハードヒットで、リズムキープにも独特な重さを感じる。本当にデイヴ・グロールのプレイを聞いてるようだった。

  ライブ本編では、幻想的なシーケンス音に導かれてメンバー3人がステージに登場。続いてベースが独特な重さを持ったフレーズを弾き始める。それに呼応するかのように、ドラムもユニゾンプレイを繰り返す。ボーカルは線が細い声で危うさを感じさせるが、逆にそこが魅力的。特にヒステリックにシャウトしたときの歌い方が好きだ。

  楽曲はグランジ+サイケといったイメージで、パンキッシュなファストナンバーから幻想的なミディアムスロウまで多彩さを感じる。ガレージっぽいバンドの曲って、どちらかというとモノトーン調なイメージがあるのだが、このバンドの曲にはいろんな色彩を感じ取ることができる。そのへんがサイケ的イメージと直結してるのかもしれない。とにかく、音を肌で感じていて気持ちいい(特にラストに演奏された「Echo」が圧巻だった)。この日は演奏時間を短く感じてしまうほど、入り込んでいた。もっと観たい。

  MCらしいMCも特になく、最後に「終わりっ!」の一言で現実に引き戻された。この感覚、こりゃドラッグミュージックですわ。本当、気持ちよかった。


◎ソウル・フラワー・モノノケ・サミット (at FIELD OF HEAVEN / 15:10~16:20)

  一応「モノノケ」名義なのだけど、メンバーが揃わなかったこともあって、結局この日限りのスペシャルメンバー&スペシャルセットで挑むこととなったソウルフラワー。ユニオン=バンド形態でモノノケ=チンドンスタイルの楽曲を演奏するそうだが、果たしてどうなることやら。

  ステージに登場した中川は、客を観て驚く。一番前にいたのでその時まで気づかなかったが、ふと振り返ると、すごい人の海。昨日のくるりに匹敵するほどの人が入ってる。裏ではパティ・スミスがやっているってのに、本当に物好きが集まったもんだ(自分を含めて)。ステージ上には左から洋子さん、ベースの河村、中川、ヒデ坊、山口洋(HEATWAVE)。後方はドラムのコーキの右隣にキーボードの奥野という、大所帯。

  最初はユニオンの「ロンドン・デリー」からゆったりとスタート……かと思いつつ、この曲サビではタテノリになるんだった。後ろから押し潰されそうになったり、前の奴が腰で俺を突き飛ばしたりで倒れそうになるものの、何とか持ちこたえる。こりゃ音を堪能してる場合じゃないな。暴れて、踊ってナンボの音楽。最後まで踊り狂ってやるか! そう覚悟を決めたら最後、汚い笑顔で踊り狂う。

  セットリストとしてはユニオンが7、モノノケが3といった比率で、上手い具合に交互に演奏されていた。モノノケの楽曲もユニオン用アレンジに変えられており(中川は三線だったが、山口はエレキ、ドラムもそのままといった感じ)、古来の民謡や仕事歌もこういうアレンジで聴かされるとユニオンの楽曲の中のひとつとして聴けるのだから、意外だ。

  特に印象的だったのは、やはり新譜「SCREWBALL COMEDY」からの楽曲。いい意味で「ロック然」としているのだ。新作は原点回帰とかいろいろ言われているが、確かにこれまでの作品の中では最もストレートでニューエスト・モデル色が濃い。それにライブとスタジオテイクの違和感の差がそれ程感じられない。先の野音でもここから何曲か聴いていたが、ただストレートでノリがいいだけじゃなく、記憶に(心に)残る曲ばかりだったこと、そこが大きいと思う。特に、野音で初めて聴いて心臓を鷲掴みにされた「荒れ地にて」は、ここ苗場の大自然の中、日中に聴いてもググッときた。いい曲というのは場所や時間、シチュエーションを選ばないってことなのか。しかも立て続けに「満月の夕」「竹田の子守歌」とやられた日にゃあ……放水された水が顔面を直撃したお陰でうまい具合に涙を隠せたはずだ。

  そうえいば、ステージ袖の奥の方に非常にノリノリで踊ってるキレイなおねぇちゃんがいるなぁ、と思って見とれていた。しかも見覚えあるんだよなぁ、前に会ったことなかったっけ?なんてデジャブに近い勘違いでボーッとしてたら、終盤「エエジャナイカ」で中川に呼ばれてステージに登場した。「from THE 3PEACE!」 あぁ、かおりさんか! 前夜祭に登場したTHE 3PEACEのボーカル&ギターの原と、ベースの永野が飛び入りで参加したのだった。永野かおり嬢はメスカリン・ドライヴ~ソウルフラワーの1枚目まで参加しているので、早い話がファミリーなのだ。気づけばヒデ坊、洋子さん、かおりさんとメスカリンの3人が揃ってる。最後にはお約束の「海ゆかば 山ゆかば 踊るかばね」で大宴会。一度エンディングを迎えながらも、再び演奏を始めてしまう、いや、始めさせてしまう熱気。この文章だけで伝わるかな?

  「フジはいつも特別」とメンバーもファンも口にする通り、通常のライブとは違う熱気とおまけが付いたひととき。70分の予定が、「時間なんて気にしなくてもいいよな?」という中川の言葉通り、結局90分近い熱演となった。次のバンドまで1時間のインターバルがあったからよかったものの……「普段もこれくらい盛り上がってくれれば」との中川の言葉がすべてを物語ってるだろう。


01. ロンドン・デリー
02. サヴァイヴァーズ・バンケット
03. ホライズン・マーチ
04. 水平歌 ~ 農民歌 ~ 革命歌 [モノノケ]
05. 戦火のかなた ~ I don't like (MESCALINE DRIVE)
06. 霧の滴
07. 殺人狂ルーレット
08. アリラン ~ 密陽アリラン [モノノケ]
09. 聞け万国の労働者 [モノノケ]
10. 風の市
11. 荒れ地にて
12. 満月の夕
13. 竹田の子守唄 [モノノケ]
14. インターナショナル [モノノケ]
15. エエジャナイカ
16. 海ゆかば 山ゆかば 踊るかばね


◎MOGWAI (at WHITE STAGE / 18:50~19:40)

  ホワイトステージ手前の川で、メンバーのMCが聞こえてきた。どうやら丁度始まったとこみたいだ。7時前ってことで、いい具合に暗くなりつつあり、その静寂を断ち切るようにギターノイズが悲鳴を上げる。アルバムでしか聴いたことのなかったMOGWAI。どういうステージなのかまったく想像がつかなかった。

  メンバーは5人だったと思うが、ギターが3人(その内のひとりが曲によってキーボード、後半はチェロを弾いていた)とリズム隊で、ギターの轟音がとにかくすごい。それに合わせるかのように、照明のストロボが暗闇を裂く。新作「ROCK ACTION」からの楽曲がメインだったと思うが、とにかく楽曲云々よりも雰囲気を含めた全てを持ってMOGWAIのライブなんだな、という気がする。普通だったらマスターベーションと切り捨ててしまうようなギターノイズも、意外と計算されている印象を受けたし、ちゃんと楽曲として成り立っている。アルバム自体も日々好んでこればかりを聴くというタイプの音楽ではないが、この時この瞬間の気分やシチュエーションにはぴったりだったと、今はそう思う。

  万人を納得させる音楽では決してない。「ポストロック」なんてカテゴライズ、俺にはよく判らない。気持ちいいか否か、踊れるか否か。今の俺にとって、これがすべて。この日のMOGWAIは気持ちよかった。まぁ踊るどころか、呆気にとられて終始棒立ちに近い状態だったが。時々目を瞑り、その音圧のみを身体で感じてみたりもしたが、本当に気持ちよかった。頭を空っぽにして、ただ身体だけで感じる。せわしない日常の中で、こんな機会はそうはない。周りに何千、何万人いようがこうやって自分の空間を作り出すことができる。それがフジロックの好きなところだ。


◎渋さ知らズオーケストラ (at FIELD OF HEAVEN / 19:30~20:50)

  FOHに到着すると、まずその人の数に驚く。後ろの方まで人がいるのだ。しかもみんな気持ちよさそうに踊ってる。聞こえてくる音も気持ちよさげな音。響く音に合わせ踊りながら人混みに近づくと、ステージ上の人数に仰天する。少なく見積もっても20人はいるんじゃなかろうかという人の塊。決して広いとは言い難いFOHのステージ上、最前列にダンサーの女性陣が5~6人。その脇に歌&コーラスの男女がやはり7~8人。中央には指揮者。楽器隊はドラムがまったく見えず、ブラス隊、キーボードの女性が見えるのみ。間違いなくギターやベースといった楽器隊がいるはずなのだが。

  音楽は、もうノリノリでファンキーなソウルミュージック。レビュー形式で進んでいって(昨年サマソニのジェームズ・ブラウンみたいな感じ)、1曲が長くてそこにいろんなパートのソロを入れてく感じ。ここで初めてドラムが2人いることが判った(ドラムソロになったら、全員腰を屈めて後ろにもドラムが見えるように気遣うし)。

  曲の間に寸劇を挟んだりして、曲毎にメンバーが入れ替わったりする。途中、スーツ着てターバン巻いてたヒゲの男性が、石川さゆりの名曲「天城越え」を大熱唱。さらに後半、銀色の竜が客の頭上を飛び回る……が、すぐに心ない客の手によって破壊される。

  後半、山海塾(といって一体どれだけの人に理解してもらえるものか)も真っ青な全身白塗りダンサーが登場して、パフォーマンス。数曲のつもりが結局最後まで気持ちよく踊っちゃったもんなぁ。そのくらい、時間を忘れさせる程魅力的なライヴだったのだけは確か。こういうのは、家で聴くよりもこういう大自然の中で、大人数で消費するのが一番気持ちいいし、楽しい。


◎NEW ORDER (at WHITE STAGE / 22:20~24:00)

  16年振りですか、ここ日本にいらっしゃるのは。しかも今回はビリー・コーガンがギターで参加。ニール・ヤングと直前まで悩んだのだが、結局自身の“青春”を取ることとした。

  いやぁ、正直「Atomosphere」のイントロを聴いた瞬間、ジワッと涙が滲んだよ。懐かしさとかいろんなことがフラッシュバックして、その想いがとめどなく溢れそうになった。何で俺、NEW ORDERごときで泣かなきゃならねぇんだよ!って自分を疑ったが、こればっかりは仕方ない。暗黒の高校時代を思えば、それも致し方ないのかも。

  それにしてもビリー、あんま目立ってなかったね? スマパン時代はその「ガタイのデカさ」と「頭」だけが記憶に残る彼だが、この日はさすがサポートだけあって控えめ。一歩後ろに下がって、自身のプレイに徹する。時々コーラスを取ったり、バーニーとのデュエット的楽曲もあったが、最後まで帽子を被ったまま。あの威圧感がゼロだった。きっと、心底楽しんでるんだろうな、自分が憧れた、音楽を始める切っ掛けのひとつとなったバンドの一員としてフジロックみたいな大舞台に立てるんだから。スマパンの呪縛から解き放たれたような印象を受けたよ。こんな肩の力を抜いた雰囲気でのソロも見てみたい気がする。

  一方のNEW ORDERの面々は、ピーター・フック、暴れまくり。この日は参加できなかったギリアンがいないぶん、MARIONのギタリスト、フィル・カニンガムがキーボード&ギターとして参加。結局、JOY DIVISION+MARION+スマパンという、一見何が何やらな組み合わせだったのだけど……個人的には数々の名曲を思う存分聴けたこと、特にJOY DIVISION時代の「Isolation」「Love Will Tear Us Apart」といった大好きな曲を聴けたことが嬉しかった。勿論「Regret」や「Bizzare Love Triangle」「True Faith」「Temptation」等の代表曲も生で聴くと気持ちよかったし、新曲群も「これぞNEW ORDER!」的要素と「これからのNEW ORDER」を感じさせる要素が詰まった佳曲ばかりで、非常に期待が持てるものばかりだった。

  スタートが20分近く遅れた(実際には22:40頃スタート)ため、アンコールの時点で0時近かったが、そんなことお構いなし。前作からの「Ruined In A Day」他を披露後、最後の最後に超名曲「Blue Monday」。バーニー、ギターを置いて妙なステップで踊る。当然、声を振り絞って歌う。ロングバージョンとなった「Blue Monday」が終了した時点で、0時を10分程回っていた。結局90分というフルステージ状態のライブで底力を見せつけたNEW ORDER。「また16年後に会おう!」というバーニーの最後の一言、冗談に受け取れなかったんですけど。

  最後の最後に、ビリーにジャンプで飛びつくフッキー。帽子を取られたビリーを見て、あぁ、やっぱりビリーだな、と実感。

  聞けば裏のグリーンステージにおけるニール・ヤングも2時間半に渡る大熱演だったらしい。結局、どちらかを選ばなきゃならない運命だったのかなぁ。いやぁ、それにしてもいい夢観させてもらった!


01. Atomosphere
02. Crystal
03. Regret
04. Love Vigilantes
05. Isolation
06. Your Silent Face
07. Slow Jam
08. Turn My Way
09. Bizzare Love Triangle
10. Close Range
11. Touched By The Hand Of God
12. True Faith
13. Temptation
14. Love Will Tear Us Apart
---Encore---
15. Ruined In A Day
16. '60 Miles An Hour
17. Blue Monday


‥‥‥‥‥‥To be continued.

投稿: 2001 08 12 12:00 午前 [2001年のライブ, FUJI ROCK FESTIVAL, HEATWAVE, MO'SOME TONEBENDER, Mogwai, New Order, Smashing Pumpkins, Soul Flower Union, ナンバーガール, 渋さ知らズ] | 固定リンク

2000/07/10

SMASHING PUMPKINS@東京国際フォーラム ホールA(2000年7月2日)

  それ程思い入れもなかったSMASHING PUMPKINSだが、解散するということを知って、今回の日本最終公演に足を運ぶ事にした。コアなファンからすれば俺は邪道だろう。「解散する前に一目この目で観ておきたい」その程度の理由だった。勿論、嫌いだったらチケットに7,000円、交通費に5,000円も払ったりはしないだろう。ファーストアルバムからリアルタイムで常に聴いてきたものの、どうにものめり込む事が出来ず、ちゃんと評価するようになったのは3rd「MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS」('95)から、自分の趣味に近い音を出すようになった「ADORE」('98)に関しては、その年のベストアルバムの1枚に選んでいる。新作も勿論気に入っている。単に「いい曲だな」としか思ってこなかったし、ビリー・コーガンに対しても憧れとか好きとか、そういうのはなかった。その程度の人間が書くレビューである。コアなファンは目くじら立てずに最後までお付き合いいただきたい。

  東京国際フォーラム自体が初めてということもあり、俺なりにいろいろ感慨深いものがあった。(詳しくは、去年の5月末あたりの日記「ジェフ・ベックと私」を御参照いただきたい)東京駅から徒歩数分という事もあって、地方からライヴに来たお客にとってはアクセスに便利なのではないだろうか? 少なくとも俺にとってはかなりポイント高いが。(笑)
  会場となるのは、国際フォーラムの中のホールAという、一番キャパの大きな会場だった。およそ6,000人近く入ると聞いたが(間違ってたらごめんなさい)、俺の席が1階のかなり前(20列目)だった事も関係してくるのかもしれないが、見渡したところ、中野サンプラザをふた回り程大きくしたような感じだった。勿論あれよりも近代的な造りだし、特に2階などはどことなくオペラハウスをイメージさせる造りだった。(ってオペラハウスにも行ったことはないのだけど/苦笑)

  ウドー音楽事務所お得意の「土日祝日の開演時間17時」という、わけの判らない時間組みのお陰で、今日は終バスより前に帰れるだろう‥‥そう思っていた。ところが席について開演時間が近付くと「本日はSMASHING PUMPKINS日本最後の公演ということで、特別に休憩15分を挟んだ2部構成になっております‥‥」というアナウンスがあった。会場ドッと湧く。凄い歓声だ。本当に好きな奴らが集まってきたんだろうな‥‥何かそう思ったら、自分がこの場所にいる事が場違いのような気がしてきた。(苦笑)しかし、ロビーに出てビールを飲んでいると「スマパンよく知らないけど、もう観れないっていうから来ちゃった」というような会話を何度か耳にした。そうか、俺だけじゃないんだ。(笑)そう思うと少し気が楽になった。今日はニュートラルな状態で、純粋に楽しもう‥‥そう心に決めた。解散を抜きにして、どれだけ楽しめるステージを見せてくれるのか? 俺にとってはそれがポイントとなった。

●第1部

  何の前触れもなく、いきなり照明が落ち、暗闇の中から異様な物体が‥‥いや、ビリーの頭だった。(苦笑)アコースティックギターを持ったビリーが無言でステージに立ち、いきなり弾き語りを始めた。そうか、第1部はアコースティック・セットで行くんだな? そう理解した観客は大歓声で応える。今回のツアーでは中盤にアコースティックを2~3曲やっていたそうだが、かなりの曲数で特別な内容のステージが観れるなんて、得した気分だ。

  6弦や12弦ギターを駆使して、名曲の数々をアコースティック・アレンジで聴かせる。"Today"のような代表曲も含まれていた。ビリーのあの独特な声が逆に際立って、不快感に思うのではないか?なんて最初は思ったが、それは最後まで感じなかった。むしろ、あの声があるからこれらの楽曲が成り立つのかも‥‥そう思えてきた。そして演奏がギター1本だったお陰で、一番大切な事を再認識させてくれた‥‥スマパンが、ビリー・コーガンが作ってきた楽曲が、如何に優れた楽曲であったか、を。スマパンというと意外と「轟音ギター」をイメージするかもしれないが(俺も最初そういうイメージを持っていた)アルバムを聴くと実にバラエティーに富んだ内容だという事が判る。そして、ただバラエティーに富んでいるだけでなく、それらの楽曲がかなり高品質である事。当たり前のようなそんな事実を、目の前にいるビリーは最後の最後で教えてくれた気がした。

  途中お客とのコミュニケーションを取りつつも、ライヴは淡々と進み、5曲を終えたところで、エレキギターを持ったジェームズ・イハが登場。上下白のスーツである。そうそう、これとは対照的にビリーは上下黒、上はレザーで下はスカート。長身でガッチリした体形のせいで、物凄い威圧感がある。最近私生活でお坊さんを見る機会が多かった為、どうにもステージ上のビリーが住職に見えて仕方なかった。(爆)

  話を元に戻そう。イハが加わり二人でメドレー形式にしたアレンジで何曲かを演奏。イハはソロを弾くというよりは、スライドバー等を駆使して効果音的にギターを奏でていた。プレイされたのが「ADORE」収録の曲ばかりだったため、幻想的な空気が会場を包んだ。

  続いてステージには白いドレスを纏ったメリッサと、黒のベストを着たジミーが登場。いよいよバンド形態でのプレイとなった。メリッサは普通のプレシジョン・ベースを弾いたが、ジミーはスティックを鳴りの弱いものに代えてプレイしていた。ここでは新作からの曲がメインとなったが、何やらメリッサがプレイを間違えたらしく、ビリーがメリッサをいじめる?シーンにも遭遇した。それは陰険なものではなく、どこか微笑ましいものだった。客席からも笑みがこぼれる。これが解散を決意したバンドの、異国での最後のステージか?と思わせるくらいに和んだ空気だった。更にビリーは曲の合間にアコギでLED ZEPPELIN "Whole Lotta Love", DEEP PURPLE "Smoke On The Water", RAINBOW "All Night Long"のリフを披露。何だかメリッサをからかう姿といい、小学生のガキ大将的な姿を見た気がした。前回の来日でも初の武道館を意識してか、CHEAP TRICK "I Want You To Want Me"の「AT BUDOKAN」バージョンをカヴァーしていたし‥‥バンドを、ギターを始めた頃の初心をこの異国の地で思い出していたのだろうか。それとも単に気まぐれなのだろうか? どっちにしろ、とても貴重なものを目に/耳に出来たような気がした。

  盛り上がっていく中、第1部は名曲"Disarm"で閉められた。約1時間に及ぶ、素晴らしい、そして貴重な体験であった。


●第2部

  15分後に再び会場が暗転し、今度は最初からメンバー4人がステージに登場。ビリーもイハもエレキを持っている。そして真っ暗なステージの上でおもむろにビリーが独特なヘヴィリフを叩き出した。そう、第2部は新作の1曲目"The Everlasting Gaze"からスタートだ。噂には聞いていたが、こんなにもハイテンションでプレイされるとは‥‥スマパンのライヴで印象的なのは、アップテンポなナンバーも、ライヴではアルバムよりも更にテンポアップされる。それはドラムが走り気味だとかそういう理由からではない。とにかくミドルテンポ以下の曲以外は概ねテンポアップされた、ハイパーバージョンでプレイされる。ただでさえ速い曲なのに、更に速く‥‥第1部の時も思っていたが、ジミーのドラムの音がデカい。PAの問題ではなく、生音がデカいのだ。これはステージから近かったから判った事実だが、あれだけギターが大きな音で鳴らされているにも関わらず、ドラムの生音が客席まで届く‥‥如何にジミー・チェンバレンというドラマーがハードヒットを信条とするドラマーかがよく判った。そして何故ビリーが最後まで「オリジナルメンバー」にこだわったかが、これで理解できた。ただ単に「オリジナルメンバーで終わりたかった」だけではないだろう。ドラムに関して言えば、やはりジミーを差し置いては他にはいなかったのだろう。

  続く2曲目"Heavy Metal Machine"でもヘヴィなプレイが続く。スマパン流HMとでも言えばいいのだろうか? 終盤ドラムのみをバックに、ビリーは客席に向かって「Heavy Metal!」と何度も叫び、そして絶叫を繰り返した。もしかしたら俺達に唄わせたかったのかもしれない。この御時世にHMという言葉にこだわるビリー‥‥グランジという言葉で片付けられてきた彼等だが、もしかしたら純粋にHM/HRがやりたかったのかもしれない。田舎のHR少年だったビリーは、他に漏れずツェッペリンやパープル、エアロやKISSやCHEAP TRICKを愛し、そして自らがバンドを率いた時、「自分流のHR」を作りたかったのかもしれない。それが1990年代に登場したが為に、ガレージだ、グランジだ、といったジャンルで括られてしまった。もしかしたら、それは不幸な事だったのかもしれない。自分達が既にオルタナティヴな存在ではない事を認識しつつ、「メインストリームの中で以下にオルタナティヴでいるか?」といった命題と戦う宿命にあった、「ADORE」以降のスマパン。それは傍目には成功しているように見えた。しかし、内部では悲鳴を上げながら終焉に向かっていたのかもしれない。

  イハがヴォーカルをとる曲等も含んだ第2部は、それこそ新作からの名曲群と代表曲のオンパレードだった。ビリーは曲の途中で何度も絶叫を繰り返し、それは思い入れのない俺の胸にも突き刺さった。痛い。曲のタイプのせいもあるだろうが、とにかく胸に沁みる。エンターテイメント性を打ち出しながらも、どこか切ない。これがSMASHING PUMPKINSというバンドなのだろうか? 今回のツアーはキーボーディストがいない、純粋に4人で演奏されている為、どの曲もハードに響くが、それでも楽曲にある哀愁の色は決して色褪せていない。完成された楽曲の凄み。そしてそれを怒濤の演奏で我々に叩き付ける4人の凄み。空気的には解散を感じさせなかったが、やはりこの「凄み」は「解散」という現実に向けられたものなのだろうか? そう感じずにはいられなかった。

  2度のアンコールに応え、最後の最後に彼等が選んだ曲は"1979"だった。リズムボックスをバックに、ジミーまでもがアコギを持って前に出てきて、予めライヴの最後を想定して作られたかのような形となった。ビリーやジミーの顔からは笑顔がこぼれる。客席もそれに応える。しかし、ぽつぽつと泣いてる女性もいた。ビリーの「Next...maybe last song」という言葉が頭から離れなかった。そして曲の終わりと共に、ライヴも終了した。ジミーを除いたメンバーが意外とあっさりとしているのに対し、ビリーは名残り惜しむかのように、ステージの右から左まで、お客ひとりひとりと握手を交わしていた。途中、アンパンマンのぬいぐるみをファンからプレゼントされ、その生き写しともいえる姿(爆)に観客は最後の最後で大爆笑した。誰だ!ビリーにアンパンマン渡したのは? お前、オイシすぎるぞ!!!(笑)ビリーがステージから去った後も、スマパンを求める観客の拍手は止まなかった。しかし、無情にも会場に明かりが灯る。そして終わりを告げるアナウンス‥‥完全に、全てが終わった。

  本当ならこの"1979"の後にもう1曲、"Mayonaise"が用意されていた事を後で知った。しかしメンバーのファンサービスのお陰で会場を使用できる時間ギリギリになっていた為、あそこで終わったのだという。(実際、全て終わった時点で20時5分前だった。音を出せるのが20時まで、という契約だったのかもしれない)しかし、俺としてはああいう終わり方でよかったと思っている。あの形で終わった事で、SMASHING PUMPKINSは最後の最後まで「4人組のバンド」だったことを我々ファンの胸に焼きつけたのだから。
  それ程ファンでもなかった俺でもこれだけ楽しめたのだ。本当のファンはどういう心境であのステージを観ていたのだろうか‥‥是非伺ってみたい。

  そして最後に。こんな最後の最後でSMASHING PUMPKINSにハマッてしまうとは‥‥残念というか、不覚というか。とにかく楽曲・ライヴ共に素晴らしいバンドだったという事が最後の最後に確認できただけでも、俺にとっては収穫だった。


[SETLIST]
[First Set : Acoustic Set]
01. Speed Kills
02. Today
03. Muzzle
04. Once Upon A Time
05. Improding Voice
06. To Sheila ~ Shame ~ Drown ~ To Sheila
07. Glass And The Ghost Children
08. This Time
09. Stand Inside Your Love
10. Disarm
-----interval ; 15min.-----
[Second Set]
11. The Everlasting Gaze
12. Heavy Metal Machine
13. Blue Skies Bring Tears
14. I Am One
15. Raindrops + Sunshowers
16. Blew Away (Vocal : James Iha)
17. Tonight Tonight
18. I Of The Mourning
19. Rock On
20. Bullet With Butterfly Wings
21. Once In A Life Time
 [encore-1]
22. Perfect
23. Cherub Rock
 [encore-2]
24. 1979



▼SMASHING PUMPKINS『MACHINA: THE MACHINES OF GOD』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2000 07 10 12:00 午前 [2000年のライブ, Smashing Pumpkins] | 固定リンク