THE SMITHS『STRANGEWAYS, HERE WE COME』(1987)
1987年9月28日にリリースされた、THE SMITHSの4作目にして最後のオリジナルアルバム。日本盤は同年9月21日に先行発売。
前作『THE QUEEN IS DEAD』(1986年)は全英2位まで上昇し、本国イギリスでは(オリジナルアルバムとしては)最大のヒット作に。また、アルバム未収録のシングルを連発していたことで、翌1987年に入ると2作目のコンピレーションアルバム『THE WORLD WON'T LISTEN』をヨーロッパで発表し、一方アメリカでは同年3月に『LOUDER THAN BOMBS』と題した内容の異なるコンピ盤を続発します。
一方、モリッシー(Vo)とジョニー・マー(G)の関係性はどんどん悪化。そんな中でも1987年春には本作のレコーディングに突入します。スティーヴン・ストリート(BLUR、THE CRANBERRIES、KAISER CHIESなど)を共同プロデューサーに向か入れ、4月には一度完成するものの、翌月にシングル用にレコーディングを追加で実施。しかし、そのあとでジョニー・マーが渡米してしまい、夏には彼のバンド脱退がアナウンスされます。公認ギタリストを迎えて一度はセッションを試みるものの満足いかず、結局9月に入ってバンド解散を発表。アルバム発売を前にして、THE SMITHSは約5年にわたる短い歴史に幕を下ろすのでした。
ここ日本にもアルバム発売前後に「どうやらTHE SMITHSが解散したらしい」という情報は伝わってきており、僕も本作を聴く際にはすでにその事実を認識していました。変な話、そういったネガティブな要素のせいで本作をまともに聴くことができませんでした。シングルとして先行リリースされていた「Stop Me If You Think You've Heard This One Before」や「Girlfriend In A Coma」は解散前には耳にしていたものの、アルバムの流れで聴いたときは不思議とネガティブに響いてしまったのです。
緩急に富んだ内容ながらもタイトル曲のささくれ立った感が個人的に響いた前作『THE QUEEN IS DEAD』と比べると、本作は全体的に穏やかな空気に包まれている。それを成熟したと受け取るか日和ったと切り離すかで評価は分かれると思いますが、リリースから約35年経った今の耳で聴くと間違いなく前者。「I Started Something I Couldn't Finish」の音像やスタイルなんて完全にモリッシーのグラムロック趣味が反映されたものだし、「Stop Me If You Think You've Heard This One Before」終盤のギターワークは“これぞジョニー・マー!”と太鼓判を押したくなるほどで、このへんは個人的にも大好物です。
かと思えば、後半はダークさを極めた「Last Night I Dreamt That Somebody Loved Me」や“これぞ成熟の極み”な「Unhappy Birthday」、遊び心に満ちた「Death At One's Elbow」、アルバムの締め括りに相応しい「I Won't Share You」など佳曲揃い。アルバムとしてのまとまりも過去イチだと思うし、結果論ですがこれが最終作になってしまったのも納得がいく内容です。
若い頃はTHE SMITHSのアルバム中もっとも聴く頻度の低かった1枚でしたが、歳を重ねるごとにその現象が逆転。今では『THE QUEEN IS DEAD』や『MEAT IS MURDER』(1985年)と同じくらいリピートする機会の多いアルバムです(一番再生しているのは、コンピ盤『THE WORLD WON'T LISTEN』ですが。苦笑)。あと、このアルバムを聴いたあとにモリッシーのソロ第1弾アルバム『VIVA HATE』(1988年)に触れると、いろんな意味で納得できるのではないでしょうか。
▼THE SMITHS『STRANGEWAYS, HERE WE COME』
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