RONNIE ATKINS『ONE SHOT』(2021)
2021年3月12日にリリースされたPRETTY MAIDSのフロントマン、ロニー・アトキンスの1stソロアルバム。
昨年10月、以前から闘病を続けてきた癌が再発し、ステージ4と宣告されたことを公式発表したロニー。ちょうど前年秋にバンドとして3年半ぶりの新作『UNDERESS YOUR MADNESS』(2019年)を発表し、コロナ明けには2018年秋以来となる待望の来日公演も……なんて思った矢先に飛び込んできたニュースだけに、驚きを隠せませんでした。
しかし、ロニーはそこで「残りの余生を静かに過ごす」ことを選ばず、最後まで表現者として最高の1枚を残し続けることを選択。気づけば、バンド名とのクリス・レイニー(G, Key)とともに人生初のソロアルバム制作へと向かっていったわけです。
現メンバーのクリスとの共同プロデュース作となる本作には、アラン・ソーレンセン(Dr)やモルテン・サンダゲル(Key)といったかつてのバンドメイトに加え、ポンタス・ノルグレン(G/KING DIAMOND)、キー・マルセロ(G/ex. EUROPE、OUT OF THIS WORLD)、オリヴァー・ハートマン(G/ex. AT VANCE)、ビョーン・ストリッド(Back Vo/SOILWORK)など名だたる面々が多数参加。ミックスにはPRETTY MAIDSの近作を手掛けてきたヤコブ・ハンセン(DIZZY MIZZ LIZZY、VOLBEAT、AMARANTHEなど)が携わった、北欧メロディックハードロック極みの1枚と呼ぶにふさわしい内容に仕上げられています。
アルバム冒頭を飾る「Real」を筆頭に、かつての「Please Don't Leave Me」などPRETTY MAIDSのポップ/ソフトサイドをさらに純度を高めて昇華させたような作風は、その爽やかなテイスト相まって全体的に生命力に満ち溢れた仕上がりと言えるでしょう。「Scorpio」などではメタリックでパワフルなボーカルも相変わらず健在で、そのスケール感の大きなハードロックサウンドとの相性は抜群。これが嫌いな人なんているわけがない!(言い過ぎかと思われるでしょうが、それくらい素晴らしいんです)。
もちろん、「One Shot」のような美しいバラード(ボーナストラックとして追加収録された同曲のオーケストラバージョンも、違った味わい深さがありまた良し)も、「Before The Rise Of An Empire」みたいな豪快メタルチューンもしっかり用意されており、全体を通して緩急に富んだ構成は完璧の一言。確かにPRETTY MAIDSのパブリックイメージと比較したらソフトすぎるかもしれませんが、この美メロ三昧の1枚を前にしたらそんな贅沢な不満などそのうち吹き飛ぶはず。それくらい、良曲/良パフォーマンスが詰め込まれた極上のメロディックハードロックアルバムだと断言できます。
一度でもPRETTY MAIDSというバンドに触れたことがあるリスナーならば、間違いなく引っかかるものがあるでしょうし、良質なハードロックを愛聴するファンならばマストで聴くべき傑作。と同時に、この先も延々リピートし続けるであろう至高の1枚。これが最後とならずに、この先もソロやPRETTY MAIDSの新作に出会えることを願いつつ、ひたすらリピートしたいと思います。
▼RONNIE ATKINS『ONE SHOT』
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