SKILLS『DIFFERENT WORLDS』(2022)
2022年5月13日にリリースされたSKILLSの1stアルバム。
このバンドはブラッド・ギルス(G/NIGHT RANGER)、ビリー・シーン(B/MR. BIG、SONS OF APOLLOなど)、デヴィッド・ハフ(Dr/GIANT)、レナン・ゾンタ(Vo/ELECTRIC MOB)によって結成されたスーパーバンド。テクニック的に文句なしのブラッド、ビリーに安定したサポート力を誇るデヴィッド、そしてブラジルの気鋭シンガーという4人が揃ったことで、この「名は体を表す」ストレートなバンド名が用いられたのでしょうか(だとしたら、いろんな意味で嫌味にも取れますが)。
技巧派のストリングス隊が揃ったことで、テクニック至上主義かプログメタル的なスタイルを重視するのかと思いきや、意外にもその楽曲重視の姿勢に、まずアルバムを聴いて驚かされることでしょう。それもそのはず、ソングライターとしてアレッサンドロ・デル・ヴェッキオやピート・アルペンボルグといった強力な布陣が楽曲提供しており、Frontiers Records総出で「よし、メタルファンから小金ぶんどってやるぞ」という前向きな姿勢(笑)が伝わってきます。
まあ、冗談はさておき。いわゆる産業ロック/産業メタル的な作り込まれた楽曲(比較的哀愁味の強いナンバーばかり)を中心に、アレンジとして適度にテクニカルなギター(いかにもブラッドらしいフレーズやプレイ)を散りばめ、リズムは比較的地味めに曲を支える側に回り(その中でもビリーのベースは、その音色を聴けば彼とわかるほど個性的ですが)、その演奏の上を1970年代的なソウルフルシンガーが歌い上げる。なんなら、味付けとして心地よく響くオルガンも重ねちゃおう……ってなもんで、寸分の隙も感じられないほど、しっかり計算し尽くされた楽曲群がずらりと並びます。ヘヴィメタルというよりはハードロック、しかも70年代の香りをさせた1980年代の王道メロディアスハードロック。好きな人にはたまらない1枚ではないでしょうか。
どの曲も3〜4分台と、この手のバンドにしてはコンパクトで聴きやすいし、そこも含めて計算が伝わる。あまり「計算、計算」と言うとネガティブに捉えられるかもしれませんが、もちろん良い意味で使ってます。要するに、文句の付けどころがないんです。マイナーキーの楽曲続きのところ、中盤に用意されたメジャーキーのハードポップ「Show Me The Way」も良いアクセントになっていますし、王道のパワーバラード「Just When I Needed You」も非常に良曲。まったく破綻が感じられない優等生的な1枚だと断言しておきます。
でも、だからこそ物足りなさも感じるというのが正直な気持ち。良いことには違いないんだけど、このメンツだからこその“プラスアルファ”が欲しかったかな。そこがいわゆるメンバー主導のバンドと作られたバンドの違いなのかな(いや、作られたバンドかどうかは知らんですが)。せっかく随所に派手なプレイを用意しているのに、それが地味に聞こえてしまうぐらい全体のまとまり/バランスが良すぎて、あまり耳に残らない。なぜなんでしょうね、これ。
安定を求めるリスナーには100点満点な内容なんでしょうけど、今の自分には無難すぎてあまり強く響かなかった。その完成度の高さから万人を満足させそうですが、実は聴く人を選ぶ1枚かもしれません。
▼SKILLS『DIFFERENT WORLDS』
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