2018年11月 2日 (金)

WITHIN TEMPTATION『HYDRA』(2014)

オランダ出身のシンフォニックメタルバンド、WITHIN TEMPTATIONが2014年2月に発表した6thアルバム。前2作(2007年の『THE HEART OF EVERYTHING』、2011年の『THE UNFORGIVING』)をRoadrunner Recordsからリリースした彼らでしたが、このアルバムでNuclear Blast Recordsへ移籍。ここ日本でもワーナーからビクターへとリリース元を変更しております。

そういった環境の変化が音楽性にも変化を及ぼした……のかどうかは不明ですが、本作では新たな試みがいくつか用意されています。

まず、従来のゴシックなシンフォニックメタル路線からもう少し真ん中寄りの、ストレートなヘヴィロック(ただし美しいメロディを備えている)へと接近したこと。もちろん以前の作品にもそういった要素はところどころから感じられましたが、本作では少しだけそのテイストに変化が生じ、これによりバンドの雰囲気も若干変わったように感じられます。

そして、過去にもアルバムに1曲くらいは存在した他シンガーとの共演曲が4曲に急増していること。しかも、その人選もいかにも彼ららしいターヤ(元NIGHTWISH)から、ゼロ年代モダンヘヴィネスの代表格であるKILLSWITCH ENGAGEの元シンガー、ハワード・ジョーンズ、アメリカのラッパーであるイグジビット、さらにはUSオルタナティヴロックバンドSOUL ASYLUMのフロントマン、デイヴ・パーナーまで、かなりバラエティに富んだ布陣が揃っています。

僕自身は前作からこのバンドに入ったので、『THE UNFORGIVING』の路線はとても気に入っていたのですが、だからといって本作で展開される世界観がダメということはまったくなく、むしろこのバンドが本来持っているであろう色がより濃くなったことにより、焦点がよりぴったり合ったのではないかと感じました(過去作を大して聴いてないくせして言う意見ではないですが)。そんな中でも、より美しさを追求したターヤとのコラボ曲「Paradise (What About Us?)」はそれこそターヤ在籍時のNIGHTWISHを彷彿とさせ、ラップを導入した「And We Run」も特別風変わりなことをやっているようには感じられない。むしろアクセントとして良い方向に作用しているように思いました。

ファストチューンこそないものの、それに匹敵する攻撃的な「Silver Moonlight」や「Dangerous」は存在する。けれど、本作の醍醐味はやはり紅一点のシャロン・デン・アデル(Vo)の色香が濃厚なバラード、「Edge Of The World」や「Dog Days」、「Whole World Is Watching」にこそあるのではないか。そう感じています。

間もなく約5年ぶりの新作『RESIST』がリリース予定ですが、こちらでもさらなる変化を遂げているようですので、この『HYDRA』がその変化の第一歩だった……そう捉えることもできるでしょう。後から振り返ると、本作がバンドにとっての大きなターニングポイントだった……そう評価されるまでには、もうちょっと時間がかかるのかもしれませんね。



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投稿: 2018 11 02 12:00 午前 [2014年の作品, Killswitch Engage, Soul Asylum, Within Temptation] | 固定リンク

2018年5月31日 (木)

SOUL ASYLUM『GRAVE DANCERS UNION』(1992)

アメリカ・ミネソタ州ミネアポリス出身の4人組ギターロックバンド、SOUL ASYLUMが1992年10月にリリースした6thアルバムにして、最大のヒット作(日本では同年11月発売)。本作からシングルカットされた「Runaway Train」が1993年に入ってから全米5位を記録し、アルバムは最高11位まで上昇。200万枚を超えるヒット作となりました。

このバンド自体、実は本作リリース時点で結成10年を超えるキャリアの持ち主で、今作が6枚目のアルバムという事実からもそのへんの“苦節ウン年”的な空気を感じるかもしれません。

実際のところ、それまでトップ200内にチャートインすらしていなかった彼らがなぜ「Runaway Train」でいきなりブレイクできたのか。確かにグランジやオルタナティヴロックが主流だった時代ですし、彼らのような土着型のオルタナギターロックが受け入れられやすい環境は整っていたと思います。

が、実際のところはこの「Runaway Train」のMVに大きな理由が隠されています。「Runaway Train」=家を飛び出した若者を題材にしたこの楽曲のMVでは、アメリカで行方不明になっている少年少女の名前と顔写真が紹介され、何かしらの情報を求めていることが伝えられたのです。MVが単なる楽曲紹介のためのツールや、バンドや映像作家のための新たな表現手段だけで収まらず、ある種の社会貢献にもつながる可能性があることを、このMVは証明したわけです。

このMVがMTVを通じて大きな反響を呼び、曲の良さも相まって大ヒットに。事実、このMVの効果は絶大で、親元に無事戻った子供も少なくないそうですが、中には亡くなっていることが確認されたり、すさんだ家庭から距離を置いていた子供が無理やり元の場所に戻されるという不幸なケースもあったそう。必ずしも良いことばかりではないという、難しさも浮き彫りになりました。

と、「Runaway Train」の話題に終始しましたが、アルバム自体も適度なオルタナ感と土着的なカントリーロック感がミックスされた、“アダルトなオルタナロック”を展開。「Somebody To Shove」のような攻めのナンバーやヘヴィなミディアムチューン「April Fool」もあるものの、基本的にはアコギを多用したロック/ポップチューンが中心。「Runaway Train」が気に入ったなら、問題なく楽しめる1枚だと思います。

ちなみにSOUL ASYLUM、現在も細々と活動を継続中。2005年にはオリジナルメンバーのカール・ミューラー(B)が亡くなり、現在はTHE REPLACEMENTSやGUNS N' ROSESなどで活躍したトミー・スティンソンが在籍しています。また、2016年には実に21年ぶりの来日公演も実現したばかりです。



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投稿: 2018 05 31 12:00 午前 [1992年の作品, Soul Asylum] | 固定リンク