2 MANY DJ'S『AS HEARD ON RADIO SOULWAX PT.2』(2003)
先日の「ELECTRAGLIDE」にも出演した2人組DJユニット、2 many dj's。彼等が今年の初めに発表したDJミックスCD第2弾がこれ。彼等はベルギー出身の2人組で、実はSOULWAXというバンドのメンバーであるステファン・ディワーラとデヴィッド・ディワーラの兄弟によるDJユニット。既に地元ベルギーでは有名らしく、彼等のミックスを流すラジオ番組まである程なんだそうで。その延長線上で制作されたのが、このCDなわけですが‥‥純粋に考えて、これは凄い労力の塊だと思いますよ。
実際に彼等のDJを体験したことがある人なら判ると思いますが、とにかくジャンルが幅広いんですよ。最新のテクノやダンスのヒット曲から、'90年代のR&B、グランジ、ガレージ、'80年代のMTVヒット曲、そして'70年代のルーツロック、パンク等々。何でもありなのが、彼等のDJスタイル。エレグラでもビヨンセやらNIRVANAやらNEW ORDERやら、挙げ句の果てに西城秀樹まで飛び出す始末。このスタイルでミックスCDを作ろうとすると‥‥まぁ権利関係で揉めるわけですよね。単なるコンピレーション・アルバムを作るだけでも、レコード会社の枠を超えた問題等から収録出来ないなんてことがあるのに、ここではAというバンドのバックトラックの上にBというダンスユニットの歌部分のみを被せてしまったりしてるわけですから‥‥ヒップホップでいうところの「サンプリング・ネタ」なわけですからね。'90年代に入ってから、この手の権利問題がかなり厳しくなったんで余計ですよね。
で、そんな労力をかけて作られたこのミックスCD。凄いいいんですよ! オフィシャルサイトに行くと、このアルバムに収録された楽曲のジャケットが載っていて、そこをクリックすると「如何にその楽曲の使用許可を貰うまでに苦労したか」とか「どういう風に使った」というコメントがいちいち細かく書いてあるんですよ。更にこのアルバムを作るにあたって許可を貰えたにも関わらず、使用しなかった楽曲のリスト。最後に「アーティスト側から拒否された、あるいは最後まで返事を貰えなず使えなかった楽曲」のリストまであるんでね。一度聴いた後にこれらのリストを見ると‥‥何か判ってくるんですよね。この人達、ドップリと'80年代に浸かってきた奴らだなぁと。CD聴いても判るんですが、兎に角使われてるネタが俺のストライクゾーンばかり。例えばオープニングでいきなりEMERSON, LAKE & PALMERのライヴアルバムから "Peter Gunn" でスタートしたかと思うと、その上にBASEMENT JAXXの "Where's Your Head At (Head-a-Pella)" を被せるし。もうこのオープニングで俺の心を鷲掴み。更にその後もVELVET UNDERGROUNDの "I'm Waiting For The Man" が登場したり(クレジットはないけど、この曲の後のドラムってもしかしてPRIMAL SCREAMの "Rocks" だったりしませんか?)、THE STOOGESの "No Fun" のバックトラックの上にSALT 'N PEPAの "Push It" を被せてしまったり、もうそのアイデアの奇抜さにはただただ驚かされるばかり。この後も懐かしいNENAの "99 Luftballons" が出てきたり、10CCの "Dreadlock Holiday" のバックトラックの上にかのDESTINY'S CHILDの大ヒット曲 "Independent Women Part 1"(映画「チャーリーズ・エンジェル」主題歌ね)のボーカルトラックを被せちゃったり、THE BREEDERSは飛び出すわ、THE CRAMPSは飛び出すわ、ELECTRIC SIXからKISS(の "I Was Made For Loving You" をカバーした女性ボーカルのエレポップ)へ繋いで、そのまま上手いことNEW ORDERの "The Beach"("Blue Monday" のインストバージョン)へ繋いじゃったり。もう60分笑いっぱなし。大音量でかけてると、自然と踊っちゃってるんだよね、家の中で。
自分でもDJとかよくやってたけど、俺の場合は単純に曲と曲を上手いこと繋いでくだけで、ここまで芸が細かくないわけ。つうかやっぱりこういうのを聴いちゃうと、「こういう人達をDJっていうんだよなぁ~」と改めて尊敬の目で見てしまうわけ。そしてだからこそ、俺はあくまで「なんちゃってDJ」なわけよ。絶対にDJだなんて口が裂けても言えないッスよ。
何やらこのミックス・シリーズ。今後も続々とCDが出ていくようですよ。有り難いことですが‥‥本家のSOULWAXの方もそろそろねぇ‥‥一昨年の「SUMMER SONIC」での来日以来、音沙汰がないような気がするんですが、気のせい?
そうそう、最後に‥‥このCDには46曲のクレジットがあるんですが、実はクレジットにない楽曲も使用されていたりします。所謂「シークレット」的存在ですかね。上に書いたPRIMAL SCREAMももしかしたらそうかもしれないし‥‥それ以上にもっと大ネタがあるんですよね‥‥洋楽ファンなら聴けば判ると思いますが‥‥例えば「最近逮捕されてすぐに釈放されたキング・オブ・ポップス」とか「かつて名前を放棄して記号表記とかするようになってた王子様」とか‥‥他にもあるようなので、判ったら俺にそっと教えてください。
とにかく、これからのパーティー・シーズンに持ってこいの1枚。これかけてるだけで気持ちいいし、あるいは話のネタになるし、とにかく重宝すること間違いなし。踊り狂ってくださいまし。
▼2 MANY DJ'S『AS HEARD ON RADIO SOULWAX PT.2』
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