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2004年3月22日 (月)

「MAGIC ROCK OUT」@幕張メッセ(2004年3月20日)

  「MAGIC ROCK OUT」に行ってきました。昨年からスタートした屋内オールナイト・イベントなんですが、何か全然盛り上がってないですよね? 実は昨年の時も俺、行こうと思ってたんですよ。恐らくメインを張ることになるであろうFOO FIGHTERS、注目のTHE VINES、そしてDEATH IN VEGAS辺りを目当てに。が、その中のひとつ、THE VINESが直前になってキャンセルになり、結局行くのを止めたという(元々当日券で行くつもりだったから被害はなかったんですが)。

  で、今年。PRIMAL SCREAMとIGGY AND THE STOOGESがダブルヘッドライナーという豪華振り。しかもテーマはズバリ「ロックンロール!」ときたもんだ。そりゃ行くしかないっしょ!というわけで、張り切ってチケット取って会場入りしたわけですが‥‥

  当日(3/20土曜)はあいにくの雨。しかもこの日の俺、17時開場だったにもかかわらず、目が覚めたのが14時ちょっと前という‥‥前日、4時頃までネットラジオ聴いたりサイト弄ったりしてたからなぁ。先週睡眠時間少なかったのもあるし。つうわけで、焦って準備して、雨の中高速飛ばして(コラコラ)無事16時半に幕張メッセ到着‥‥いや、予定より早く着き過ぎだから俺。

  17時ちょっと前に入場口前に行ってみたんだけど‥‥思ったよりも全然人が並んでなくて、ガックシ。とりあえず寒かったので、列に並んでみて‥‥10分くらい入場が遅れたのかな。けどまぁ手荷物チェックする辺りでの混雑はあったものの、思ったよりもすんなり入れました。車だったから手荷物もないし、傘もささずに駐車場から歩いて来たから楽なこと。

  とりあえずフロアへ下りてみるも‥‥ガラガラ。ま、仕方ないか。また始まった‥‥いや、始まってないもんな。物販や飲食店をブラーッと観てからステージへ‥‥人、ホントいないし。これなら楽々前へ行けそう。ま、いくらなんでもこの後増えるだろうけどさ。

  聞くところによると今回のチケット、さすがに完売にはならず、当日券目当てで来た人も結構いたみたい。まぁ18時スタートってのと雨っていう悪条件が重なって出足が悪いってのもあるんでしょうけど‥‥とりあえず1発目、期待のDIFFUSERを観て楽しむことにしますか‥‥


●DIFFUSER

  1発目はDIFFUSER。先月に日本でもセカンドアルバム「MAKING THE GRADE」がリリースになったばかり。王道ともいえるアメリカン・ハードロックを基調とし、今風のいろんな要素を取り込んだ、まぁ流行りものっぽいパンクポップなんだけど、これがやはり良かった。アルバムより雑な印象が強かったけど、'80年代のHRバンドを思わせるボーカルの決めポーズ、とにかく定位置という言葉が存在しないベース、しっかりボトムを支えるドラム、怪しいフレーズ満載のリードギター、等々。客は少なかったけどね。俺は好きだよ。

  で、改めて「やっぱり'80年代のUSハードロックの影響強いよなぁ‥‥」と思ってた矢先に、「Shot through the heart, and you're to blame~」っていう、それこそ俺が14才のころから数万回と口ずさんだフレーズをボーカルが歌うわけですよ、ええ。当然BON JOVIの "You Give Love A Bad Name" なわけですが‥‥これをまかさこの場でカバーしてしまうとは‥‥!! 引いてる客、前へ前へと進んで行く客、賛否両論といった感じですが、俺はずっと笑ってた、腹抱えて。で、妙に納得しちゃったよ。もうね、大好きになった、このバンド。

  多分今のアメリカのポップパンクシーンを支えてる世代って、こういったBON JOVI等のハードロックバンドが不遇の時代だった'90年代半ばに音楽を聴き始めた世代なんだと思うけど‥‥嬉しいよね、グランジとかに走らないでこっちに進んでくれて。勿論そっちも聴いてたんだろうけどさ。SR-71なんかもそうだけど、こういったバンドがもっとオーバーグラウンドで日の目を見ることを願ってます。バンドとしてはまだまだ未熟な面があるけど、間違いなく「これから」を感じさせる、いいバンドなのでね。


01. Karma
02. New High
03. Here's To You
04. You Give Love A Bad Name [BON JOVI]
05. She's All Mine
06. Why
07. Get It On
08. Only In The Movies
09. Nothing Left To Say
10. I Wonder
11. Leaving With A California Tilt


●UN

  この日、観るのが一番怖かったのが、この元ROOSTERSの大江慎也率いるニューバンド・UN。空白の10数年、いや、自分にとっては約20年近い「不在」だったわけですよ。アルバムの中の大江しか知らないんだから‥‥

  昨年ROCK'N'ROLL GYPSIESのライヴに飛び入りした辺りから大江の周囲がざわつき始め、気づけばこの旧知の友人達と組んだ新しいバンドで、いきなりアリーナクラスでライヴをやってるんだから‥‥本当に心配という言葉以外、頭になかった。

  けど、そんな心配は無用だったよ。大江は確かに太ったし、以前のような精細さはあまり感じられないかもしれない。けど、前進することを選んだんだから。それが十分に伝わってくる、時にルーズで、時に切迫感溢れるロックンロールをオーディエンスにぶつけて来た。戸惑う奴もいれば、明らかにノリノリの奴もいる。多分、ルースターズなんて名前しか知らないような子が多かったんじゃないかな‥‥そんな中で、UNは、大江は善戦したと思う。実際、俺もずっとステージを凝視しっぱなしだったし。

  あとね、このバンド、元ロッカーズの鶴川の存在も大きい。ビジュアル的にも、そして大江を支える意味でも。リズム隊の安定感に関しては言うまでもないでしょう。とにかくオリジナル曲がカッコ良かった。音源としてリリースされる機会があるのかどうかは疑問だけど、できることならちゃんとした形で聴きたいな。

  7曲のオリジナル曲の後、とうとう鳴らされたルースターズナンバー。しかもよりによって "CASE OF INSANITY" を選ぶなんて‥‥この曲の時だけ、明らかに大江は「狂って」た。演技か、それとも素なのか‥‥とにかく、俺は泣いたよ。思いっきり目頭が熱くなったもん。いろんな意味で興味深い、そしていろんな意味で感慨深いステージでした。


01. THEME OF UN
02. NONE KNOWS
03. DUST IN MY HEAD
04. CALL ME
05. I'M NOT LIKE YOU
06. MAKE YOU HAPPY
07. CRY MY HEART
08. CASE OF INSANITY [ROOSTERS]


●FUNERAL FOR A FRIEND

  MRO唯一のヘヴィメタルバンド(いやだから違うから)、FUNERAL for a FRIEND。とにかくこのイベントは出演者それぞれの色が殆ど被ってない。そこが素晴らしくもあり、取っ付き難さを醸し出してるのもありで、一長一短かな、と。ある程度の統一感があったら、もっと集客も良かったんだろうけどさ(個人的には全然「アリ」なんですけどね)。

  で、FFAF。ボーカルがフレッドペリーのポロシャツを着て来た時には思わず苦笑いしちゃったけど、そういうところも含めて全てが「Very British」なバンドでした。豪快なエモ/スクリーモ・サウンドを聴かせてくれるんだけど、繊細さがあるんだよね。サウンドやボーカルに陰があるというか。そういうところが気に入ってる面でもあるわけですが。

  とにかく客の受けが良かったな、と。こういうバンドのファンばかりじゃなかったはずなのに、多分ライヴ観てハマッたって人が多かったってことなのかな。勿論俺もライヴ観て更に気に入ったわけですが。

  ラストに決めナンバー "Juneau"、"Escape Artists Never Die" の2連発。これは効いた。その前にやられた激ハードコア "Art Of American Football" もパンチが効いてて良かったし。夏頃に単独で来日すればいいのに。あるいはLOSTPROPHETS辺りと一緒に回るとかさ。


01. She Drove Me To Daytime Television
02. Rookie Of The Year
03. Bend Your Arms To Look Like Wings
04. This Year's Most Open Heartbreak
05. Red Is The New Black
06. Kiss And Makeup (All Bets Are Off)
07. Bullet Theory
08. Art Of American Football
09. Juneau
10. Escape Artists Never Die


●Ken Yokoyama

  間違いなく、この日最初の山場だった横山健初のソロステージ。こんなにも祝福ムードで迎えられながらも、本人は若干緊張気味で、かなりMCが長かったのもその表れかな、と。出て来ていきなり「今日はメガネ外してきましたーっ!」にまずやられた。そしてエレキを抱えてアルバム1曲目のアコースティックナンバー "I Go Alone" を歌い出すんだけど‥‥途中でバンドが加わってパンクバージョンへと様変わり。つうか今回のツアーメンバー、アルバムと違うメンツなのな。しかももう一人のギター(リードを取る機会多し)とベースが外人という‥‥なんじゃこりゃ!? ま、健さんらしいというか。

  多分、ここにいる子達の何割かはHi-STANDARDが実働していた頃をリアルタイムで知らない若い世代なんじゃないかな‥‥そんな気がするんだけど、だとしてもこれだけ支持されるというのは、やはりハイスタが持つ普遍性と、そしてその後に健さんがやってきた事に対する結果の表れだよね。それが凄く実感できるステージでした。事実、俺にとってもハイスタ、特に'99年のフジロックでのステージは自分の人生における5本指に入る程のライヴなわけだし。逆に健さんソロを観ることで改めて、彼らの不在の大きさを実感させられました。

  ある曲の演奏中に照明が真っ暗になってしまうというトラブルがあり、演奏中断。が、そこは健さん。「ちょっと待って! 押尾学風に言えば、ファッキンライト?」‥‥会場大爆笑。俺はそんなあなたが大好きですよ。

  普通曲と曲の間にMCが毎回入るとダレてしまうんだけど、何故か今日だけはそう感じなかったのは、やはり贔屓目もあるし、それ以上に例の「祝福モード」が大きかったように思います。あと、1曲1曲の濃度の濃さね。特に名曲度ハイランクなラスト3曲の流れといったら‥‥素直に感動しました。最後の方のMCで「夏頃にまたみんなに会いたいね」とか例のフジロックに呼べ的発言とか、いろいろ興味深い内容もありましたが‥‥うん、また夏に会いましょう。


01. I Go Alone
02. Eight-Hour Drive
03. Waiting For So Long
04. Popcorn Love [BBQ CHICKENS]
05. The Story Of The Fallin' Sleet
06. Funny Things
07. Handsome Johnny
08. The Cost Of My Freedom
09. Believer
10. Running On The Winding Road


●THE DISTILLERS

  もうね、パンク版ジョーン・ジェット! 多分立ち位置(RANCIDのティム・アームストロングの元妻。男女混合バンドのシンガー、等)からコートニー・ラヴと比較されることが多いと思うけど、明らかに別の位置にいる人だな、と。コートニーはもっとエンターテイメント性が強いけど(自ずとそういう方向にいっちゃったしね)、ブロディの場合は‥‥ストイック過ぎるのよ。メチャクチャカッコいい。すっげー近くで観てたんだけど、エロくてカッコいい(しかも写真よりも実物の方がカッコいいしキレイ)。しかもそれが全然滑稽じゃない。曲のカッコ良さもあるんだけど、それ以上にひとりのフロントマンとして既に完成しちゃってるのよ。うん。

  曲は昨年出た3rd「CORAL FANG」を中心に、古い曲もバシバシやってたんだけど、60'sガレージのTHE 13TH FLOOR ELEVATORSの曲なんかもやってて意外。あと、やっぱり "City Of Angels" はいい曲だよな、とか、新作の曲はシンガロング出来るのが多くて好きだな、とか、こないだネットラジオでかけた "Die On A Rope" からステージが始まってドキリとしたな、とか。とにかく50分でこれだけ内容の詰まったライヴをやられちゃうと、本気でまた観たくなるじゃないですか。ラストの "Death Sex でのどうしようもないくらいの疾走感、そしてそのままなだれ込むインスト‥‥フォードバックノイズを残してステージを去るんだけど‥‥正直、すっげーヤラれた、と。カッコ良さだけでいったら、この日ナンバーワン。昇天しました。


01. Die On A Rope
02. Dismantle Me
03. City Of Angels
04. Sing Sing Death House
05. Bullet And The Bullseye
06. The Gallow Is God
07. Hall Of Mirrors
08. I Am Revenant
09. Beat Your Heart Out
10. You're Gonna Miss Me [THE 13TH FLOOR ELEVATORS]
11. The Hunger
12. Gypsy Rose Lee
13. Sick Of It All
14. Drain The Blood
15. Death Sex


●IGGY AND THE STOOGES

  実はこの方達も最初はすっげー不安だったのよ。去年のフジで観たイギー・ポップのソロが、昨年1年を通してもベストに挙げられるような素晴らしいライヴだっただけにね‥‥折角良いバンドをバックに付けたのに、よりによって暫く現役を退いてたようなオッサン達をまた引き連れて、しかもSTOOGESとしてやるわけだからさ‥‥35周年という名目以外に、イギーがどういうつもりでこのメンバーでまたやろうと思ったのか判らないけど(勿論一時的なものではあるわけですが)‥‥とにかく大好きなイギーが、STOOGESとしてライヴをやるという事実が嬉しい反面、不安要素の大きいものでもあったわけですよ。

  で、実際はどうだったかというと‥‥そんな心配、無駄でした。だってイギーはどこにいてもイギーなんだもん。いや、むしろオリジナルに忠実に再現されるSTOOGESの名曲の数々に鳥肌立てまくる俺がそこにはいたわけですよ。頭2曲の流れは去年のフジと全く同じなので、目新しさはなかったんですが、それでも「アルバムと同じように再現される」演奏には正直ググッとくるものが‥‥ギターのロン・アシェトンはただの太ったオッサンだったし、ドラムのスコット・アシェトンも普通のオッサンって感じだったけど‥‥唯一、今回STOOGESのメンバーではないベースのマイク・ワット、彼の存在が一番大きかったように思います。とにかくね、派手にベースを弾きまくるわけですよ、バキバキとベースを叩きながら。判りやすい例えて言うと、レッチリのフリーみたいな感じ?(いや、全然違うんだけど) それくらいのインパクトはありました。

  当のイギーもかなり機嫌が良さそうで。フジの時はマイクを床に投げまくりだったのに、今日のイギーは少しフレンドリーな気が‥‥けど、いざ歌い出すと殺気立ったアクション連発なんですけどね。マイクを腹筋の辺りでバンバン叩いたり(しかも本気で)、両脇のアンプによじ上ったり、客席にマイク投げたり、自ら下りていったり、恒例の「ステージにファンを上げる」時間もあったり(今回はSTOOGESってことで "Real Cool Time" の時でした)。STOOGESだろうがソロだろうが、イギー・ポップはイギー・ポップのままでした。当たり前だけど。

  意外だったのが、「RAW POWER」の楽曲が一切無視されていたこと。ジェームズ・ウィリアムソン在籍時代に対して、アシェトン兄弟的に嫌な思いがあるのか、それとも単に「オリジナルSTOOGES」にこだわった結果なのか。正直 "Raw Power" や "Search And Destroy" といったナンバーを期待していただけに、ちょっと肩すかし。ま、ここら辺はソロでも聴けますしね。逆にいえば、それだけ'60年代のSTOOGESに対して、イギーがそれだけ思い入れを持ってるとも取れるわけだし‥‥それに演奏されるとは思ってなかった曲("Dirt" や "Little Doll" といった辺り)が聴けたのは正直嬉しかったし。どの曲も原曲の雰囲気をそのまま再現してくれてたし。そこは凄く嬉しかった。

  ちゃんと新作「SKULL RING」に収録されたSTOOGESとしての新曲も演奏され、しっかりと「今の」STOOGESで本編が終わる辺りは、さすがというか。現役感タップリでした。

  それにしても‥‥アンコールで再び "I Wanna Be Your Dog" を演奏した時には、ビックリしたと同時に発狂しちゃったね。あり得ねーっ!!って。持ち曲もっとあるだろうに、そんな中でもこの代表曲を再び演奏しちゃう辺りに、イギーの「やってる方もホント楽しいんだよ!」っていうような気持ちが伝わって来たような気がして、観てるこちらとしても嬉しかったりしてね。いや、いい曲は何回演奏しようがいいんです! 完全肯定。つうか否定したら本気で殴られそうなので、この際却下!


01. Loose
02. Down On The Street
03. 1969
04. I Wanna Be Your Dog
05. T.V. Eye
06. Dirt
07. Real Cool Time
08. No Fun
09. 1970 (I Feel Alright)
10. Fun House
11. Skull Ring
12. Dead Rock Star
13. Little Electric Chair
---encore---
14. Little Doll
15. I Wanna Be Your Dog


●PRIMAL SCREAM

  実はPRIMAL SCREAMのライヴを観るのって、10年振りくらいだったりします‥‥「今まで何やってたの!?」って突っ込まれそうだけど、ホントなんだから仕方ない。「GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP」での1回目の来日('94年。翌'95年にも来ましたよね)を観に行って、それっきり。特にここ5年くらいはフジとかサマソニとか単独で毎年のように来てるんだけど、何故か一度も観る機会がなく、「俺、プライマルと相性悪いんじゃないかな‥‥」なんて思い始める始末。いや、単に俺が他のスケジュールだったり、フェスでも他のアーティストを優先したが為に観れないだけなんですが。

  というわけで、満を持してのプライマル。そうか、ケヴィン・シールズどころかマニが加入してからも初のライヴってことになるのか、俺にとって。マニとか普通にフジロックの会場内で出くわしてるのにね。不思議な感覚。

  で、肝心のライヴですが‥‥悪い訳がない。正直、直前のイギーで完全に心も体も満たされていて、観るのキツイなーとか思ってたんですよ。後ろで座って観ようかな、とか。けど開演前のSEに往年のパンク名曲メドレーが延々とかかるわけですよ。DAMNEDだったりCLASHだったりRAMONESだったり。そりゃ前に行きますよ、ええ。

  「VANISHING POINT」以降のアルバムは全部、自身の年間10枚に選ぶ程好きな作品ばかりなので、それらを中心としたベストヒット的内容だもん、いいに決まってるわけですよ。しかもライヴになると超轟音、超テンポアップするパンクチューン "Accelerator" からライヴがスタートするもんだから‥‥マジで心奪われた。そのまま "Miss Lucifer" や "Rise" といった打ち込みと同期する曲も、マイブラが恋しくなるような轟音キラメキナンバー "Shoot Speed / Kill Light" といい、人工ファンク "Exterminator" や "Burning Wheels" といい、サイケな且つダビーな "Long Life" といい、21世紀のプラスチック・ソウル "Kill All Hippies" といい‥‥って全曲例えちゃいそうな勢いだけど、ホントどれも馴染み深い曲ばかりで、それらが生で演奏されることで更に強烈な個性を発揮するという、如何にも彼ららしい魅力を再認識。ボビーといい他のメンバーといい、既に40を超えるオッサンばかりなのに、そしてある意味イギーとは向かってる方向が違うようなのに、何故か気づくとリンクしているという。毎回てんでバラバラなことやってるのに、この説得力。やっぱりプライマルはカッコ良かった。今までスルーしてきたことを改めて後悔。ホントすんまそん。

  当初セットリストにはなかった即興 "Jesus" なんていうレア曲や、アンコールでも予定になかった "Medication" を聴けたりして(その代わりに "Loaded" がカットされたそうですが‥‥嗚呼)、とにかくアンコールは「ロックンロール」にこだわった、ノリが非常によろしい選曲で嬉しかった。テクノロジーを駆使したりダブの要素を取り入れたりとかしながらも、しっかり根底には「パンク/ロック」が未だに生き続けている。だからこそファンは彼らのことを信用し切ることができるんだろうね。そしてこれだけの人を毎年集められるんだと。ベスト盤が続いたけど、そろそろ新しいアルバムが聴きたいです‥‥って多分来年だろうけどさ。次の単独来日は絶対に行くんで! 必ず!


01. Accelerator
02. Miss Lucifer
03. Rise
04. Shoot Speed / Kill Light
05. Exterminator
06. Burning Wheels
07. Long Life
08. Kill All Hippies
09. Detroit
10. City
11. Rocks
12. Kowalski
13. Swastika Eyes
14. Jesus
15. Movin' On Up
---encore---
16. Medication
17. Jailbird
18. Skull X


●SOUTH

  ‥‥で、イギーとプライマルで完全に「終わった」空気が会場を包む中、申し訳程度な客の数を前に、SOUTHが深い時間帯(3時過ぎ‥‥)に登場。正直メンバーもあの冷えきったフロアを見て、さぞガッカリしたことでしょうね。

  まぁそうはいいながらも、彼らの出番を心待ちにしていたファンも結構いたようで、チルアウト的役割は十分に果たしていたと思います。実際、観たいけど体がついていかない状態に陥っていた俺も、結局最後までステージ間近で立ったまま観てましたからね。

  一応トリオ編成なんですが、サポートメンバーがひとり入っていて、曲によってキーボードだったりギターだったりベースだったりを弾くマルチプレイヤー振りを発揮。ボーカルは通常ベースを弾くんですが、新作からも曲ではアコギを弾いたりもして、音の広がり感はトリオとは到底思えないような印象。リードギターもエフェクトをいろいろ使ってて、スペーシーな色付けをしたりしてて、結構好み。アルバムではいろいろ音を重ねてたので「正直ライヴはどうなの?」と思ってたけど、上手い事再現してましたね。圧巻でした。

  が、機材トラブルにギターが悩まされたり、ちょっと詰めが甘いかなと思わせる部分があったり等、まだまだこれからかな‥‥と思う一面も。勿論、曲はかなり良かったし、実際最後まで飽きさせなかったわけですが。これで経験や実力がもっとついたら、本当に素晴らしいバンドになると思いますよ。うん、もうちょっと長いセットで観てみたいですね。正直40分じゃちょっと物足りなかったし。

  あ、ボーカルが「イギー・ポップと同じ会場で、同じステージに立てるなんて‥‥Wao! 感激だよ」みたいなことを言ってたのが印象的。心の底から感激してるのがしっかりと伝わってきました。こういうピュアなところ、ちょっと好きかも。


01. Broken Head
02. Colours In Waves
03. Loosen Your Hold
04. Fragile Day
05. Nine Lives
06. Motiveless Crime
※ゴメン、ちゃんとしたセットリスト判らず。誰か教えて!


●総評

  で、イベント自体はこの後もJUDEやプライマルのマニによるDJプレイ等が朝6時半過ぎまであったわけですが、俺は4時過ぎに限界突破。車だったし、本格的に眠くなる前に岐路につきました。4時半に会場を後にして、4時50分に駐車場を出て、6時20分に無事帰宅。雨の後ってことで霧が濃い中、高速を飛ばして帰りましたよ。勿論、安全運転で!(いや既に安全じゃないからそれ)

  さて‥‥俺はこのイベント、大いに楽しめました。つうかこれで11,000円なら安いもんだと思いますよ。これからっていうニューカマーを幾つも楽しめ、大江の復活の場にも立ち会え、横山健の新たなる第一歩にも立ち会え、STOOGESの伝説的なステージをほぼフルステージで体感でき、尚かつプライマルもベストヒット的内容のステージをほぼフルステージ体験できたんだから。収穫も多かったし、とにかくハズレが全くなかった。ま、これは俺が今回のイベント前に全出演者(UNとJUDEは除く)のCDを聴き込んで臨んだから、というのもあるんでしょうけどね。最初から最後まで、本当に笑顔の絶えないオールナイトイベントだったと断言できます。

  じゃあ来年も行くの?と問われると‥‥まぁこの手のイベントものはフェスとは違うし、何よりもテーマや出演者に左右されるところが大きいですからね。もし来年も開催され、今年みたいな感じでやってくれるなら、喜んで参加するんですけどね。つうかテクノ/ダンス系は「ELECTRAGLIDE」があるわけだし、いっそのことMROは毎年「ロックンロール」をテーマに、国内外の有名/無名、大物/ニューカマーをバンバン出していけばいいんじゃないかな、と思います。それこそHANOI ROCKSとコンタクトが同じステージに上がってしまうような、そんな訳の判らないイベントね!(と、完全に思い付きで書いてみたけど、食い合わせ悪そうだなぁそれ)

  ま、とにかく。行った人、大正解でしたね。行けなかった人、ザマァミロ!(嘘ウソゴメン。けどホント後悔した方がいいかも)

2004年3月 4日 (木)

SOUTH『WITH THE TIDES』(2003)

どうしてもSOUTHというと、「MO'WAX」に所属するギターロック・バンド、親分がジェームズ・ラヴェル(U.N.K.L.E.)、という事柄が最初に挙げられることが多かったんだけど、まぁあのダンス系レーベルに所属した数少ないギターロック・バンドってことで、確かに注目されてもおかしくないわけで。けど、それが時として足枷になることだってあるんですよ。

ロンドンを拠点に活動するこのバンドの、約2年振りのセカンドアルバム「WITH THE TIDES」はそんな「MO'WAX」を離れ、新たにBMG傘下の「Kinetic」からのリリース。当然プロデュースにジェームズ・ラヴェルは絡んでません。当たり前か。

ここで繰り広げられている音楽は、以前実践されていた「テクノロジーとギターロックの融合」とはある意味真逆の、人肌の温度に近い「生身のロック」。プロデューサーにMANIC STREET PREACHERSやASHを手掛けたデイヴ・エリンガを迎え、トリオの演奏を軸にしながらもストリングスやバンジョー、ハープシコードといった楽器を導入、中心にある「歌」を劇的に盛り上げるのに一役買っています。

多分、誰もが「これがあのSOUTH!?」と驚くのではないでしょうか? ここまでメランコリックに、且つソウルフルに「歌」を聴かせるバンドに変わっているとは。ゆったりとした空気を保ったまま、サウンドに身を委ねてゆらゆらしていると、最終曲に到達している‥‥そんなアルバム。当然ダンサブルな要素は皆無。そういったものを彼らに求めていた人にとっては、この変化は裏切り以外の何者でもないでしょう。が、個人的には前作に全く思い入れとかなかったから、すんなり受け入れることができました。ま、確かに「これ、ホントに同じバンド!?」と耳を疑ったりはしましたが。

所々、前作で養った要素‥‥効果音やサウンドエフェクト面ですが‥‥を感じつつも、それはほんの飾り。RADIOHEAD辺りがそういう要素を前面に出すのと違い、ここでは必要最低限に抑えられてる印象。無理矢理こじつければ、U2が「ALL THAT YOU CAN LEFT BEHIND」で実践したことを、更にエモーショナルにした感じ‥‥ってのはどうでしょう? ちょっと強引かな?

今現在、こういったサウンドを鳴らすバンドはイギリスにごまんといるでしょう。'90年代中盤以降、大ヒットを連発していた頃のマニックス、ある時期のRADIOHEADもここに入るだろうし、最近じゃTRAVISみたいなバンドだっている。そういう意味で、まだSOUTHは「その他大勢」なのかもしれません。確固たる個性みたいなものはちょっと希薄かな?と感じる瞬間もあるし。けど、良い作品なのには違いない。ここまで「聴いていて落ち着ける」ギターロックアルバム、最近あんまり聴いてなかったので、とても新鮮でした。

これらの楽曲をライヴではどう表現するのか‥‥3人で全部やるのか、それともサポートを入れるのか、あるいは全く違うアレンジにするのか‥‥そう考えると、今度の「MAGIC ROCK OUT」はある意味見物なのかもしれませんね。

上にも書いたように、RADIOHEADの「THE BENDS」やマニックス「EVERYTHING MUST GO」辺りが好きだというUKロックファンなら間違いなく気に入る1枚。俺は大好きですよ。



▼SOUTH『WITH THE TIDES』
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