SPARTA『WIRETAP SCARS』(2002)
2001年のAT THE DRIVE-IN最初の解散後、メンバーのジム・ワード(G)、ポール・ヒジョス(B)、トニー・ハジャー(Dr)の3人を中心に結成されたのがSPARTAというバンド。ジムがボーカル&ギター、ポールがリード・ギターにスイッチし、マット・ミラー(B)を新たに迎えて本格始動。2002年夏にGeffen Records傘下のDream Works Recordsからリリースされたのが、彼らのデビューアルバム『WIRETAP SCARS』です。
プロデュースを手がけたのはパンク、オルタナ系でおなじみのジェリー・フィン(GREEN DAY、SUM 41、BLINK-182など)。「Cut Your Ribbon」「Air」といったシングルヒットが後押しし、アルバム自体も全米71位という好記録を残しています。
セドリック・ビクスラー(Vo)、オマー・ロドリゲス(G)といったAT THE DRIVE-INの“顔”はTHE MARS VOLTAを結成しており、当時は言い方こそ悪いですがSPARTA組は“残りカス”みたいな見られ方をしていました。事実、僕もそういう目で見ていましたし(ごめんなさい)。
しかし、こうやって届けられたデビューアルバムではAT THE DRIVE-INでの試みからハードコアな要素を取り除き、残されたエモーショナルな要素をメジャー流にブラッシュアップした、非常に高品質なオルタナティヴロックを堪能することができます。
ジムのボーカルはセドリックほどのヒステリックこそないものの、当時のパンクロック/オルタナロック/エモの系譜に属する、適度に激しく適度に甘いもの。そこに端正なサウンドプロダクションとキャッチーな楽曲、破綻しないバンドアンサンブルが加わることで、良くも悪くも“メインストリームにいるオルタナバンド”的な立ち位置を示すことに成功しています(まあ、そもそもオルタナがメインストリームにいること自体に矛盾があるわけですが)。
「Sans Cosm」のようなキャッチーさは、それこそAT THE DRIVE-INにも存在した要素のひとつですが、表現方法が少し違うだけでこうもメジャー感が強まるんだなと、改めて驚かされます。ですが、このバンドの持ち味はそういった前身バンドとは別のところにあると思うのです。「Cut Your Ribbon」でのアグレッション、「Air」でのエモーショナルさ、「Light Burns Clear」で表現されるドラマチックなアンサンブルなど、要所要所に聴きどころが満載で、決して最後まで飽きさせることのない仕上がりではないでしょうか。
ですが、ここに少しでもAT THE DRIVE-INの面影を求めようと、途端に“弱く”感じてしまう。すごく損な役回りですが、こればかりは仕方ないかな……とはいえ、この手のバンドの作品としては相当レベルは高いほうなので、聴いて損はないと思います。