BIG SCENIC NOWHERE『VISION BEYOND HORIZON』(2020)
2020年1月末にリリースされたBIG SCENIC NOWHEREの1stアルバム。日本盤未発売。
BIG SCENIC NOWHEREはFU MANCHUのボブ・ボールチ(G, B)、YAWNING MANのゲイリー・アルセ(G)、マリオ・ラリ(B)およびビル・スティンソン(Dr)、MOS GENERATORのトニー・リード(Vo, Key, Dr)、MONDO GENERATOR(かつex. KYUSS、ex. QUEENS OF THE STONE AGE)のニック・オリヴェリ(B)、SPIRITUAL BEGGARSのペル・ヴィバリ(Key)、THE WELLのイアン・グラハム(Vo)とリサ・アレイ(Vo)、ELEVENやTHEM CROOKED VULTURESなどでの活動で知られるアラン・ヨハネス(Vo, G)という総勢10名からなるスーパーバンド。バンド名を見ればおわかりのとおり、いわゆるストーナー・ロック、デザート・ロックと呼ばれるジャンルの有名バンドばかりで、この手のジャンルでこの手のプロジェクトが組まれるというのも非常に興味深いものがありますよね。
昨年9月末発売の4曲(CDやデジタルでは3曲が1トラックにまとめられた2曲)入りEP『DYING ON THE MOUNTAIN』(2019年)に続く本作は、全体的に4〜5分台の楽曲でまとめられた全9曲、トータル44分台というコンパクトな仕上がり。それもあってか、ストーナー・ロックならではのクセの強さがそこまで表出しておらず、むしろ全体的に聴きやすい印象を受けます。
もちろん、それらしいスロー&ヘヴィな楽曲が数多く収められているのですが、歌メロが親しみやすいことがあってか、全体的にポップなんですよね。ペル・ヴィバリらによるオルガンやエレピの音色がいい感じにアシッド感を醸し出しており、こういったテイストが聴いているうちにどんどんクセになってハマっていく。そんなスルメ度の高さが本作最大の魅力ではないでしょうか。
また、ダウナーなサウンドとモノトーンかつメランコリックなメロディの相性も抜群で、この質感がゴシック・ロックやゴシック・メタルのみならず、90年代前半のグランジ(主にハードロック流れのグランジ・バンド)にも通ずるものがます。改めてBLACK SABBATHをルーツにさまざまなサブジャンルへと派生していったことも、このアルバムから感じ取れるのではないでしょうか。そういった意味では、非常に歴史的資料としての価値が高い1枚とも言えます。
ストーナー・ロック、デザート・ロックと聞くとなんとなく構えてしまうという敷居の高さがパブリックイメージとして付きまとうジャンルかもしれませんが、このアルバムはむしろそういったビギナーにこそ触れてもらいたい内容であり、ここを起点にマニアへの扉を開くのも悪くないんじゃないかな。そんな重要な役割を存分に果たしてくれるであろう、非常によく出来た良作です。
▼BIG SCENIC NOWHERE『VISION BEYOND HORIZON』
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