STEPHEN PEARCY『VIEW TO A THRILL』(2018)
RATTのフロントマン、スティーヴン・パーシーの通算5作目となるソロアルバム。前作『SMASH』(2017年)から約1年半と、最近としては短いスパンで発表されました。
レコーディングに参加したのは、2005年からスティーヴンのソロ活動における片腕的存在のエリック・フェレンションズ(G)、初期RATTやROUGH CUTTのメンバーだったマット・ソーン(B)、元BRIDES OF DESTRUCTIONのメンバーでスティーヴンのソロバンドにも在籍経験を持つスコット・クーガン(Dr)という気心知れたメンバー。プロデュース自体もスティーヴン、マット、エリックの3名で手がけ、ミックスをマットが担当。ソングライティングはスティーヴンとエリックの2人で進められたとのことです。
基本的には前作までと同じく、RATTで展開される世界観をそのままソロに持ち込んだ、ミディアムテンポ中心のハードロック=ラットン・ロールが繰り広げられています。オープニングの「U Only Live Twice」は正直RATTでそのままやってもカッコよかったんじゃないか、ソロには勿体ないんじゃないかと思うくらいの1曲。掴みは完璧です。
が、そこから数曲はちょっとインパクトが弱いかなという印象。特に2曲目の「Sky Falling」はスティーヴンの悪い面……淡白で一本調子なところが前面に出てしまい、まったく印象に残らないという。5曲目「Double Shot」までアップテンポの楽曲がないというのも、アルバム全体のテンポの悪さにつながっているようにも思えました。
あと、曲の頭に思わせぶりなSEを付けるのも、アルバムのテンポに悪影響を及ぼしているような。これ、そのまま曲間縮めて構成していたら、もっとカッコよかったのになと思うのは、僕だけでしょうか。
「Not Killin' Me」や「I'm A Ratt」みたいに良曲もあるのですが、全体的にミドルテンポで似通った曲が多い。前作のほうがもうちょっとインパクトが強かった記憶があるんだけどなあ。ここまで薄い内容のアルバムを矢継ぎ早に作るのならば、もっと1曲1曲に手間暇かけたり練り込んだりしてほしかったかな。これはもうスティーヴン云々より、その周りにいるスタッフが悪いんじゃないかという気がしてきた。誰かが「No!」って言わないと、この先どんどんインパクトの薄いアルバムが増産されていくんじゃないか……そんな予感がします。
RATTのほうもウォーレン・デ・マルティーニ(G)抜きで再始動したようですが、こちらはフォアン・クルーシェがいるぶんまだマシなのかな……なんにせよ、新しいソロアルバムよりも本家の新作を先に期待したいところです。
▼STEPHEN PEARCY『VIEW TO A THRILL』
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