2018年12月23日 (日)

STEVE PERRY『TRACES』(2018)

年明け1月には70歳の誕生日を迎える、元JOURNEYスティーヴ・ペリーによる通算3作目のソロアルバム。前作『FOR THE LOVE OF STRANGE MEDICINE』(1994年)から実に24年ぶりの新作……びっくりですよね。そもそも、その24年の間に発表された“新作”って、JOURNEY再結成アルバムの『TRIAL BY FIRE』(1996年)と、ソロベストアルバム『GREATEST HITS + FIVE UNRELEASED』(1998年)に収録された未発表曲くらいですから(それも、1988年に2枚目のソロアルバム用にレコーディングしながらもお蔵入りした10年前のテイク)。

前作『FOR THE LOVE OF STRANGE MEDICINE』が1994年という時代性を完全に無視した、良くも悪くも“産業ロック”テイストにJOURNEY時代から引き継ぐソウルテイストを加えた「いかにもスティーヴ・ペリーらしい」仕上がりでしたが、あれから時は24年も流れて音楽業界も流行りのサイクルが何回転も繰り返し……今作では「結局俺にはこれしかできないし、これしか歌えない」という開き直りにも似た、過去2作の延長線上にありながらもしっかり“大人”になったスタイルが展開されています。

オープニングの「No Erasin'」を先行配信で聴いた瞬間、「そうそう、これだよね、スティーヴ・ペリーって」と妙に納得させられたことを覚えています。JOURNEYをよりソフトにしながらも、しっかりそのイメージをギリギリのところで保っている。で、彼が歌えばそれが確実に“それっぽく”成立する。なかなかの佳曲だと思います。

じゃあ、アルバム全体でそういったソフトな産業ロックが展開されているのかというと、そこは齢69のスティーヴ・ペリー御大。メロディアスなミディアム/スロウナンバーを中心に、要所要所にソウルやR&Bのカラーを加えたポップロック/バラードがずらりと並びます。刺激的な要素は皆無。もちろん、彼にそういったものは求めるはずもなく、最初から最後まで安心して楽しめる1に仕上がっています。

前作の時点で感じた声の“枯れ”はさすがにあれから24年も経っていることもあり、さらに加速していますが、それでも伸びのあるハイトーンは健在。とはいえ、その“かつての武器”をこれでもかと使い回すことはせず、すごく自然に使うことで曲の中に溶け込ませている。まったく嫌味のない、本当にナチュラルな“歌”が楽しめるはずです。

「No Erasin'」や「Sun Shine Gray」(ROB ZOMBIEのギタリスト、ジョン・5がソングライティングやギターで参加)程度しかロックと呼べるものはないので、ハードロック寄りのリスナーには少々厳しい内容かもしれませんが、例えばJOURNEYが好きでマイケル・ボルトンあたりのAORシンガーも好みという方には間違いなくハマる内容だと断言できます。完成度だけは無駄に高いです。年間ベストには選ばないもののふとした瞬間に聴きたくなる、自分的にはそんな“癒し”の1枚。

ちなみに本作、全米6位/全英40位と、ともにキャリア最高記録を更新しています。



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投稿: 2018 12 23 12:00 午前 [2018年の作品, Journey, Rob Zombie, Steve Perry] | 固定リンク

2018年8月18日 (土)

STEVE PERRY『FOR THE LOVE OF STRANGE MEDICINE』(1994)

1994年7月にリリースされた、元JOURNEYのフロントマンであるスティーヴ・ペリーの2ndソロアルバム。ソロ作品としては前作『STREET TALK』(1984年)からおよそ10年ぶり、スティーヴが参加したスタジオアルバムとしてもJOURNEYの『RAISED ON RADIO』(1986年)以来8年ぶりと、ファンにとってはまさに待望の新作でした。

事実、当時JOURNEYに大した思い入れのなかった僕ですら、「おお、久しぶりに!」と真っ先に飛びついたくらいですから。

ニール・ショーン(G)やジョナサン・ケイン(Key)といったJOURNEY組は1989年にBAD ENGLISHとして再デビューしてブレイクを果たしましたが、スティーヴは自身が先にバンドから離れたにも関わらず、このアルバムまでかなりの時間を要しています。

プロデュースに当たったのはスティーヴ本人と、ジェイムズ・ジンボ・バートン(QUEENSRYCHE、TRIXTER、LITTLE ANGELSなど)、ゴスペル/R&B系シンガーソングライターのティム・マイナーの3人。作品自体、このメンツからも想像できるような高品質の産業ハードロックとR&Bテイストの歌モノロックが入り混じった、我々が想像する“JOURNEYのスティーヴ・ペリー”らしい1枚に仕上がっています。

1曲目の「You Better Wait」のオープニングに感じられる讃美歌調のアレンジ、そこから流れるように突入するメロディアスハードロックサウンドに、当時は歓喜したものです。だって、1994年といえばカート・コバーン(NIRVANA)の急逝はあったものの、シーンはまだまだグランジまっただ中、かつヘヴィでラウドな音楽がもてはやされる時期でしたから。

ミディアムテンポでAOR寄りのハードロック/ハードポップと、じっくり聴かせるミディアム/スローバラードの数々。新しい要素はこれといって見受けられませんが、終始安心して聴ける1枚。各楽曲、非常に手の込んだ完成度の高いものです。『ESCAPE』(1981年)から『RAISED ON RADIO』までのJOURNEYらしさも至るところから感じられますし、ファンなら間違いなく気に入る作品集ではないでしょうか。特に後半の盛り上げで重要な役割を果たす壮大なバラード「Missing You」と、ラストの大人びたスローナンバー「Anyway」は涙なしには聴けない1曲なはずです。

ですが、スティーヴの歌声……最初に聴いたときは、その“枯れ”っぷりに驚きを隠せなかったことも、記しておかねばなりません。最近公開された24年ぶりの新曲「No Erasin'」を聴いて、さらなるその“枯れ”っぷりに時の流れを感じたものですが(とはいえ、すでにスティーヴも69歳。そりゃあ衰えますよ)、それを最初に感じたのはこのアルバムだったな、と久しぶりに本作を聴いて思い出しました。

上記のような時代背景や、8年ぶりの音源などといった不安要素があったものの、本作は全米15位、50万枚を超えるヒットとなりました。また、「You Better Wait」(全米29位)、「Missing You」(同74位)というシングルヒットも生まれています。このアルバムを携え、ソロとしての来日公演も予定されていましたが、二度目のJOURNEY脱退理由にもなった退行性骨関節疾患のために実現せず。その後、JOURNEY再結成などいろいろありながらも、ソロとしては3作目となる『TRACES』(2018年)が完成するまでには、さらに24年もの歳月を要するのでした。



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投稿: 2018 08 18 12:00 午前 [1994年の作品, Journey, Steve Perry] | 固定リンク