2018年5月16日 (水)

WHITESNAKE『SLIP OF THE TONGUE』(1989)

1989年11月にリリースされた、WHITESNAKE通算8作目のスタジオアルバム。1987年春に発表された前作『WHITESNAKE』からのシングル「Here I Go Again」は全米1位、「Is This Love」が全米2位という大ヒットとなり、アルバム自体も全米2位、全英8位まで上昇。アメリカだけで800万枚以上ものセールスの大出世作となりました。これを受けて、『WHITESNAKE』を携えたツアーでのバンドメンバー……エイドリアン・ヴァンデンバーグ(G)、ヴィヴィアン・キャンベル(G)、ルディ・サーゾ(B)、トミー・アルドリッジ(Dr)でレコーディングに突入しようとしたところ、ヴィヴィアンが脱退。代わりに加入したのがスティーヴ・ヴァイというゲテモノギタリストだったことから、当時はかなりの大騒ぎとなりました。

曰く「ブルースベースのハードロックバンドに、ブルースが弾けないキワモノギタリストが加入した」と。確かにそうかもしれませんが、そもそも前作『WHITESNAKE』の時点でWHITESNAKEはブルースという軸のひとつを放棄していたような気もするのですが……まあ、いいでしょう。

曲作りは基本的にデヴィッド・カヴァーデイル(Vo)とエイドリアンの2人で進め、さてスタジオに入りましょうというときにエイドリアンの腱鞘炎が発覚。完治までレコーディングを待てなかったカヴァーデイルは、エイドリアンのデモをもとにヴァイがすべてのギターパートを担当。エイドリアンがプレイしたベースの部分は残しつつも、ところどころにヴァイらしい派手なオカズが挿入された、“ギターオリンピック”的なサウンドが展開されてしまいます。

リリース当時、やれギターがうるさいだのなんだの叩かれましたが、ちゃんと聴くとそもそも楽曲のベースの部分がしっかり作り込まれていない、つまり詰めが甘いのではないかと気付くんじゃないでしょうか。例えばキー設定が高すぎて、デヴィッドはただわめいているように聴こえるし、それによってリズム隊も軽く聴こえてしまう。そこにあんなギターが乗るもんだから、ねぇ。エイドリアン、もうちょっとどうにかならなかったのかと。

そんなだから、リメイクした「Fool For Your Loving」も浮きまくり。この曲までキーを上げてしまい、原曲の雰囲気壊しまくりです。前作での「Here I Go Again」も「Crying In The Rain」も原曲どおりのキーだったからこそあの世界観をよりゴージャスにすることができたのに……嗚呼、全部空回り。

ただ、そんなアルバムの中にも「これは!」と呼べる楽曲がいくつか存在します。そこだけは声を大にして伝えておきたい。それが「Now You're Gone」や「The Deeper The Love」といった前作の延長線上にあるポップ路線と、「Judgment Day」と「Sailing Ships」の大作路線。特に「Judgment Day」は今でもライブで頻繁に演奏されており、いわば「WHITESNAKE版(LED ZEPPELINの)『Kashmir』」みたいな楽曲として愛されています(ホントかな)。で、「Sailing Ships」は……これは以前取り上げた『STARKERS IN TOKYO』(1997年)のアコースティックバージョンが素晴らしいので、こちらを聴いてもらえば(スタジオ版じゃないのかと)。スタジオ版は後半のボーカルキーが上がるところがちょっとね。悪くないんだけど、やりすぎ感が強くて。

と、ここまで書いたら「これは駄作なんじゃないか?」とお思いかもしれません。そう、駄作かもしれませんが……嫌いになれないのも事実。何気によく聴くんですよ、このアルバム。リリースタイミングが大学受験間際だったこともあり、受験の往復や勉強の合間によく聴いたし、浪人中もなんだかんだで聴いたので、そういう記憶が強いのかもしれません。だからこそ、嫌いになれない。少なくとも自分の中では「そこそこ」の1枚です。

なお、WHITESNAKEは本作をリリースした1年後の1990年秋、ワールドツアーの終焉をもってバンド活動を休止してしまいます。

あ、もうひとつ。『SLIDE IT IN』(1984年)や『WHITESNAKE』同様、本作には複数のバージョンが存在するので、そちらについても記しておきます。


<1889年バージョン>
01. Slip Of The Tongue
02. Cheap An' Nasty
03. Fool For Your Loving
04. Now You're Gone
05. Kittens Got Claws
06. Wings Of The Storm
07. The Deeper The Love
08. Judgment Day
09. Slow Poke Music
10. Sailing Ships


↑こちらは下↓のジャケットで発売された、オリジナルバージョン。僕はこの曲順に慣れ親しんでいたので、20年後に発表された20周年バージョンおよび現行のリマスターバージョンの曲順はなんとなく馴染めずにいます。



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で、こちら↓が現行バージョン。2曲目に「Judgment Day」の時点であり得ない。後半の侘び寂びの無さもあり得ない。戻してくれ、頼むから。


<2009年バージョン>
01. Slip Of The Tongue
02. Judgment Day
03. Fool For Your Loving
04. Now You're Gone
05. Kitten's Got Claws
06. Cheap An' Nasty
07. The Deeper The Love
08. Slow Poke Music
09. Wings Of The Storm
10. Sailing Ships
11. Sweet Lady Luck [Single B-Side]
12. Now You're Gone [U.S. Single Remix]
13. Fool For Your Loving [Vai Voltage Mix]
14. Judgment Day [Live... In the Shadow of the Blues]
15. Slip Of The Tongue [Live at Donington 1990]
16. Kitten's Got Claws [Live at Donington 1990]


再発版はシングルのみ収録のトラックや複数のライブ盤からのライブ音源も混ざっていて、なんだか忙しいので困ります。ホント、作り手の気まぐれで10数年経ってから曲順変えるのやめてほしい。お前にとってそれが正解でも、俺たちの思い出まで修正できないんだから。

というわけで、僕はリマスター盤もプレイリストでオリジナルの曲順に戻して再生してます。本作はまだストリーミング配信されてないみたいだけど、どうせじきに配信始まるはずだから、その際にはぜひオリジナルバージョンでの再生をオススメします!(まだ一度も聴いてない人にとっては、それこそこれもお節介かしらね)



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投稿: 2018 05 16 12:00 午前 [1989年の作品, Steve Vai, Whitesnake] | 固定リンク

2018年2月 9日 (金)

DAVID LEE ROTH『SKYSCRAPER』(1988)

1988年1月にリリースされた、デヴィッド・リー・ロスの2ndアルバム。VAN HALEN脱退後に発表された初のソロアルバム『EAT 'EM AND SMILE』(1986年)は同作の数ヶ月前に発表されたサミー・ヘイガー初参加アルバム『5150』(1986年)には及ばなかったものの、全米4位/100万枚という結果を残しました。

ただ、『EAT 'EM AND SMILE』からは全米トップ10に入るようなキャッチーなシングルが生まれなかったのも事実。スティーヴ・ヴァイ(G)やビリー・シーン(B)といった凄腕ストリングス隊のテクニックを活かしたハードロックナンバーと、“ダイヤモンド・デイヴ”の愛称にふさわしいジョービズ臭プンプンのスタンダードナンバーを並列させたことで、VAN HALENの大ヒット曲「Jump」のようなポップ色の強い楽曲が入る余地がなかったのです。

となると、続く2枚目のアルバムでの命題は必然的に「『Jump』にも匹敵するヒットシングルを生み出すこと」となるわけです。それが、今作における「Just Like Paradise」(全米6位)だったんでしょうね。

また、今作からバンドにはブレット・タグルというキーボーディストが正式参加。「The Bottom Line」のような前作の延長線上にあるアップテンポなハードロックも少なからず収録されているものの、どの曲にもキーボードが加えられており、全体的にソフトな印象を受けます。ステーヴ・ヴァイのギターは相変わらず暴れまくっているように聴こえるものの、前作と比較したら若干落ち着いたように受け取れる。ビリー・シーンのベースに至っては曲のボトムを支えることに終始し、テクニカルなソロプレイは一瞬フィーチャーされるのみ。そういった状況にストレスを感じたビリーは、本作完成後にバンドを脱退しています。結局、ビリーを含む編成での来日公演は実現しなかったんですよね(まあこの脱退があったおかげで、MR. BIGが結成されるわけですが)。

ポップで軽やかなロックナンバー「Knucklebones」からスタートする本作は、前作における「Yankee Rose」と比較してしまうと肩透かしを食らうかもしれません。が、全編キャッチーで親しみやすいオリジナル曲でまとめられた作風は、あの当時デイヴが目指した「ヒット曲でもVAN HALENに勝つ」という目標を達成させるためには必要な方向性だったんでしょうね。小ヒットに終わったダンサブルな「Stand Up」やスティーヴのギターアレンジが素晴らしいバラード「Damn Good」、地味でダークだけどこの編成じゃなければ生まれなかった隠れた名曲「Hina」など、異色ながらも聴きどころの多い作品ではないでしょうか。初期衝動がすべてだった『EAT 'EM AND SMILE』とは別ベクトルで、いかにもデイヴらしいアルバムだと思いますし、今でも嫌いになれない1枚です。



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投稿: 2018 02 09 12:00 午前 [1988年の作品, David Lee Roth, Steve Vai] | 固定リンク

2004年12月 8日 (水)

最強コンビ、再び。

スティーヴ・ヴァイ、新作リリース! ビリー・シーンも参加(CD Journal.com)

 へー、「ULTRA ZONE」からもう6年も経ってたのか。全然そんな気がしないんですが‥‥ライヴ盤とか企画盤とか、オフィシャルサイトでのボックス企画とかあるからかな。毎年何かしら音源出てるしね。

 今回の目玉は、やはり盟友ビリー・シーンとの約16年振りのレコーディングってことかしら。'88年の「SKYSCRAPER」(デヴィッド・リー・ロスの2ndフル・アルバム)以来だしな。ここ1〜2年の「G3」ツアー、ヴァイのバンドにはビリーも参加してるようだけど、音源となるとそれくらい振りなんだよね。しかも今回は1曲が長い大作インストばかりみたいなので、かなり期待大。もの凄いストリングス・バトルが聴けるんだろうな。このメンツでの来日にも期待。


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 そういえば去年の「G3」ツアーにはイングヴェイも参加してたんですよね。ジョー・サトリアーニがある意味フュージョン的な世界観を持ってる人であり、ヴァイは変態チックな世界観、インギーがクラシカル。ちょっと面白いよねこれは。「G3」って昔は日本にも来たことがあった気もするけど、最近は全然話題にもならないよなぁ。去年、似たような企画で「Guitar Wars」ってのがあったけど、あれもまた違うしなぁ。

 ヴァイのステージを最後に観たのも、'97年夏以来。既に7年以上経ってるんだね。そろそろ単独来日を期待したいところだなぁ。絶対に行くのに。



▼JOE SATRIANI / STEVE VAI / YNGWIE MALMSTEEN「G3 LIVE : ROCKIN' IN THE FREE WORLD」(amazon

投稿: 2004 12 08 09:17 午後 [Steve Vai] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック