カテゴリー「Steve Vai」の10件の記事

2020年10月 3日 (土)

DEREK SHERINIAN『THE PHOENIX』(2020)

2020年9月18日にリリースされたデレク・シェリニアンの8thソロアルバム。日本盤は同年9月30日に発売されました。

DREAM THEATER、現在はSONS OF APOLLOやBLACK COUNTRY COMMUNIONのキーボーディストとして活動中のデレク。ソロアルバムは『OCEANA』(2011年)以来、実に9年ぶりとなります。

全8曲から構成された本作は、過去のソロ作でもタッグを組んできたサイモン・フィリップス(Dr)との共同プロデュース作。サイモンは全曲でドラマーも務めており、デレクとサイモン以外は各曲ごとに異なるギタリスト/ベーシストを迎えています。

オープニングを飾るタイトルトラック「The Phoenix」では、過去のデレクのソロ作にも参加した経験を持つザック・ワイルド(G/BLACK LABEL SOCIETYOZZY OSBOURNEZAKK SABBATH)と、SONS OF APOLLOのバンドメイトであるビリー・シーン(B/MR. BIG、THE WINERY DOGSなど)、テルミン奏者のアルメン・ラーが参加。ザックとビリーのユニゾンプレイもさることながら、2人に触発されてデレクもインタープレイを聴かせてくれるところがポイントでしょうか。

2曲目「Empyrean Sky」では、同じくSONS OF APOLLOのロン“バンブルフット”サール(G)とジミー・ジョンソン(B/アラン・ホールズワースなど)と共演。SONS OF APOLLO的なヘヴィさもにじませつつも、シンセの音色&フレーズにより全体的にはフュージョン色が強い印象を受けます。3曲目「Clouds Of Ganymede」ではスティーヴ・ヴァイ(G)&トニー・フランクリン(B)という名手たちと共演。ヴァイがプレイすることで全体がヴァイ色に染まり、デレクのフレージングも自然とヴァイっぽくなってしまうのはご愛嬌。4曲目「Dragonfly」はアーネスト・ティブス(B)とのトリオ編成。アーネストはサイモンとの縁から参加したのでしょうか、シンセではなくピアノを軸にしたデレクのプレイと、ジャズ&フュージョン色濃厚なリズム隊のアンサンブルは前3曲とは異なる空気を醸し出しており、本作における良いアクセントとなっています。

中盤に入り、5曲目「Temple Of Helios」では再びバンブルフット&ジミー・ジョンソンと共演。プログレッシヴロック的でもありつつ、どこか往年のジェフ・ベック作品にも通ずるテイストが感じられ、改めてデレクってこういうことがやりたい人なんだろうなと感じました。6曲目「Them Changes」はバディ・マイルスのカバーで、本作唯一のボーカルナンバー。アーネスト・ティブスと、BLACK COUNTRY COMMUNIONのバンドメイトであるジョー・ボナマッサ(G, Vo)が参加しており、随所にテクニカルなプレイがフィーチャーされつつも軸はジョーのソウルフルなボーカルという、ほかの楽曲とは一線を画する風合いとなっています。7曲目「Octopus Pedigree」は本作3つめのバンブルフット&ジミー・ジョンソン共演曲で、ほか2曲との共通項も多い作風。ラストの8曲目「Pesadelo」はキコ・ルーレイロ(G/MEGADETH、ex. ANGRA)、トニー・フランクリン、アルメン・ラーという組み合わせの、ラテン風味のメタルチューンです。曲中盤にはキコのアコースティックギターもフィーチャーされており、先頃リリースされたキコのソロ作『OPEN SOURCE』(2020年)とひと味もふた味も違った良曲です。

デレクのソロ作に触れるのは本作が初めてのことで、そもそも個人的にもこの手のインストものはそこまで熱心に聴くタイプではありません。が、本作はSONS OF APOLLOの延長で楽しむことができました。キーボーディストのソロ作品ながらもギター比重が非常に高いので、少しでもギターを弾く素養のある方なら間違いなく堪能できる1枚だと思います。

 


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2020年8月 4日 (火)

ALCATRAZZ『BORN INNOCENT』(2020)

2020年7月末にリリースされたALCATRAZZの4thアルバム。『DANGEROUS GAMES』(1986年)以来、実に34年ぶり(!)のニューアルバムです。

『NO PAROLE FROM ROCK'N'ROLL』(1983年)ではイングヴェイ・マルムスティーン、『DISTURBING THE PEACE』(1985年)ではスティーヴ・ヴァイというクセの強いギタリストを迎えてきたALCATRAZZ(というかグラハム・ボネット)。『DANGEROUS GAMES』ではダニー・ジョンソンという前任2名と比べるとネームバリューもカリスマ性も劣る人選だったためか、バンドは同作を最後に解散することになります。

その後、2006年に再結成してからはハウイー・サイモンを迎えてライブ活動を行っていましたが、2019年にジョー・スタンプという技術的にも知名度的にも文句なしのアックスマンが加入。ゲイリー・シェア(B)やジミー・ウォルドー(Key)といったオリジナルメンバー、そしてマーク・ベンケチェア(Dr)という新編成でオリジナルアルバム完成へと至るわけです。

気になる内容ですが、ネオクラシカルを基盤にした「いかにもグラハム・ボネットらしい」ハードロックが展開されています。ALCATRAZZらしいと言えば「らしい」仕上がりですし、別にALCATRAZZ以外の名前で発表されたとしても「グラハム・ボネットが関わったバンド」として捉えたら納得のいく内容ではないでしょうか。つまり、ALCATRAZZでデビューして以降のグラハムは常にこういった楽曲スタイルが求められ続けてきた、という表れかもしれません。そういう意味では、文句なしに満足できる「HR/HMの良作」だと断言できます。

ジョー・スタンプのプレイはどうかといいますと、「London 1666」や「Darkness Awaits」などではジョー・スタンプらしいテク&フレーズ炸裂のリフ&ソロワークを楽しむことができます。が……実は日本盤ボーナストラック含む全15曲中、6曲でゲストギタリストをフィーチャーしており、せっかくの見せ場が少なくなっている気がしないでもありません。だって、タイトルトラック「Born Innocent」にはクリス・インペリテリ、「Finn McCool.」には若井望、「I Am The King」にはボブ・キューリック(R.I.P.)などが参加しているわけですから。それでも、クセの強いゲストに負けない個性を発揮しているので、最後まで安心して楽しめるのではないでしょうか。

とにかく本作、34年ぶりの新作というお祭り感が強く、スティーヴ・ヴァイが「Dirty Like The City」の作曲に携わったのに加え、RIOTRIOT Vのドン・ヴァン・スタヴァン(B)やMICHAEL SCHENKER FESTのスティーヴ・マン(今回はブラス・アレンジ)などもゲスト参加。その他のゲストプレイヤー含め、グラハムとALCATRAZZを祝福するような豪華な仕上がりとなっています。その結果が全15曲で68分半という長尺にも表れているのでしょう。海外盤は「Darkness Awaits」と「Reality」を除く13曲入りで60分以内に収まっていますが、はやり長すぎて1曲1曲のインパクトが薄まってしまっているのは否めません。特にその感覚は、後半に進めば進むほど……絞りに絞って、全10曲くらいのコンパクトな内容だったら、もっと手放しで喜べたんですけどねえ。

まあ、だからといって捨て曲が含まれているわけではないので、ここからじっくり時間をかけて、すべての曲を堪能できればと思います。良い曲が多いというのも困りものですね(苦笑)。

 


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2020年4月22日 (水)

VAI『SEX & RELIGION』(1993)

1993年7月に発表された、スティーヴ・ヴァイの新プロジェクトVAI唯一のアルバム。ヴァイのソロ作品としてカウントすると、通算3作目のスタジオアルバムに当たります。

1990年秋にWHITESNAKEがライブ活動を停止すると同時に、バンドを離れたヴァイは前作『PASSION AND WARFARE』(1990年)に続くアルバムの準備に取り掛かります。ここでヴァイは自分と肩を並べる“バケモノ級”アーティストを求め、T.M.スティーヴンス(B)&テリー・ボジオ(Dr)という強烈なリズム隊とタッグを組むことに。さらに、当時無名だった若干21歳のデヴィン・タウンゼンド(Vo, G)を発掘し、最終的にはVAIというバンド(プロジェクト)名でアルバムを完成させ、ツアーに臨むことになります。

全13曲(日本盤のみ14曲)中、インストは3曲。つまり、10曲が歌モノというヴァイの作品としては異色の内容。しかも、内1曲(ラストの「Rescue Me Or Bury Me」)ではヴァイ自身がボーカルも担当しています。作曲はもちろん、作詞まで含めて (2曲を除いて)すべてヴァイが手がけるという点にでは、歌われる内容やメッセージまで含めて彼の作品であるわけで、歌と言葉で何かを伝えようとする意識の変化には興味深いものがあるなと、リリース当時感じていました。

アルバムを聴くとまず何より、デヴィンというボーカリストの力量に驚かされるはずです。今やSTRAPPING YOUNG LADやDEVIN TOWNSEND PROJECTでお馴染みのデヴィンですが、声域の広さやパワフルさと繊細さを併せ持つ表現力、マイク・パットン(FAITH NO MORE)にも匹敵する変態性(ラップボーカルやスクリーム、さらにオペラボーカルまで)は、今まで出会ったことのないタイプで、正直どう捉えていいのかわからなかった記憶も。しかも、ヴィジュアルがアレじゃないですか(笑)。「あ、ヴァイやボジオと渡り歩くくらいだから、やっぱりヤバイ人なんだ」と(苦笑)。

「『PASSION AND WARFARE』に変態的なボーカルを乗せるとこんなふうになるのね」という内容は、歌モノロック/メタル観点で捉えれば若干の敷居の高さを覚える作風ですが、プレイヤー視点で聴くとギター、ドラム、ベースそれぞれのハイテクさに耳と心を奪われるはず。そういった意味では、80年代前半の“ニューウェイヴ期”のKING CRIMSONに通ずるものもあると、個人的には感じています。

序盤の「In My Dreams With You」や「Still My Bleeding Heart」で魅せるポップネスと、「Dirty Black Hole」でのセバスチャン・バック(ex. SKID ROW)ばりのシャウト&スクリームとのギャップ、ハンパないです(笑)。MVも制作された終盤の山場「Down Deep Into The Pain」からヴァイ自身が歌う「Rescue Me Or Bury Me」へと続く最後の構成など、とにかく最初から最後まで沸点みたいな変態度の高い1枚です。

 


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STEVE VAI『PASSION AND WARFARE』(1990)

1990年5月に発表されたスティーヴ・ヴァイの2ndアルバム。

イングヴェイ・マルムスティーンの後任としてALCATRAZZに加入したことで、メタルファンにその名を知らしめたスティーヴ・ヴァイ(もちろん、それ以前にはフランク・ザッパ門下生というキャリアがあるわけですが、HR/HM観点では今回は割愛)。その後、デヴィッド・リー・ロスとのコラボレーションでさらに知名度を上げ、1989年にはWHITESNAKEに加入して多くのファンを驚かせます。

このソロアルバムはWHITESNAKEの『SLIP OF THE TONGUE』(1989年)参加後に発表されたものですが、ALCATRAZZで名を上げてから初めてリリースされるソロアルバムでもありました。そういった意味でも、本作に対する注目度は当時かなり大きなものがありました。

それもあってか、WHITESNAKEのツアー中に発表された本作は全米18位と、インスト・アルバムにも関わらず大ヒットを記録。WHITESNAKEのライブでも本作から「For The Love Of God」と「The Audience Is Listening」がソロコーナーで披露されたことは、今でもよく覚えています。

さて、気になる内容ですが、先に書いた「スティーヴ・ヴァイというギタリストの原点」を考えれば納得のいくテイストで、全編HR/HMリスナーを満足させるような作りではないかもしれません。テイストのひとつにハードロックが用意されているだけで、実はジャズやフュージョンの要素も随所から感じられるし、インドなど東洋からのテイストも散りばめられている。それらがプログレッシヴなバンドアンサンブルで構築されることによって、「クセは強いのに意外と聴きやすい」作品へと昇華されているわけです。

その聴きやすさの要因に、色彩豊かなギターのサウンドメイクも付け加えられるはず。ALCATRAZZやデヴィッド・リー・ロス、あるいはWHITENAKE『SLIP OF THE TONGUE』を通過したリスナーなら、耳馴染みのあるカラフルなギターエフェクトが全編で感じることができ、そこも親しみやすさに一躍買っているのではないでしょうか。

アルバム中盤の「For The Love Of God」「The Audience Is Listening」を大きな山場として用意し、そこへ向けて、あるいはそれ以降も気持ちが盛り上がっていけるような、バラエティに富んだ楽曲が用意され、それらの曲順が緻密に考えられている。そこも含めて、スティーヴ・ヴァイという奇才らしい1枚と言えるでしょう。

ボーカルナンバーは皆無ですが、スティーヴ・ヴァイというギタリストに少しでも触れたことがあるリスナーなら、間違いなく響くはずの1枚。かつ、昨今のメタルコアやジェントなどのヘヴィ系ギターにも通ずる要素満載なので、何気に幅広い層にアピールできる良盤だと思っております。

 


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2019年10月 9日 (水)

WHITESNAKE『SLIP OF THE TONGUE: 30TH ANNIVERSARY EDITION』(2019)

WHITESNAKEの問題作『SLIP OF THE TONGUE』(1989年)が今年でリリース30周年。Geffen時代の音源権利がRhino Recordsに移ったこともあり、『WHITESNAKE』(1987年)『SLIDE IT IN』(1984年)に続いて最新リマスタリング&未発表音源をたっぷり追加したアニバーサリーエディションが2019年10月4日に発売されました(日本盤は少々遅れて、10月23日発売とのこと)。

『SLIP OF THE TONGUE』というアルバム自体に関しては、過去にこちらで執筆済み。そちらでは2009年に海外で発表された20周年エディションについても触れていますが、その際にはオリジナル盤からの改悪(曲順の変更)が加えられていましたが、今回の30周年盤も『WHITESNAKE』『SLIDE IT IN』同様にオリジナルとも20周年盤とも異なる新たな改悪(笑)が加えられており、さすがに頭を抱えております。

基本的にはデヴィッド・カヴァーデイル(Vo)とその側近によるアイデアなんでしょうけど……うん、アメリカかぶれしたイギリス人の考えることはわからない!とちゃぶ台をひっくり返したい気持ちです。

さてさて、30周年バージョンについてここからたっぷり書いていきますよ。本作はCD1枚モノの通常盤、CD2枚組のデラックスエディション、CD6枚+DVDからなるボックスセット(スーパーデラックスエディション)の3仕様が用意されていますが、今回ここで触れるのは未発表音源が豊富なボックスセット関して。それぞれのディスクの中身について触れていきたいと思います。

 

まずはDISC 1。こちらは最新リマスタリングを施した『SLIP OF THE TONGUE』本編に当時のシングルのみに収録された別テイクなどを追加したもの。全17曲入りで、こちらが基本となるのでしょうか。収録曲は下記のとおり。

<2019年バージョン>
01. Slip Of The Tongue
02. Kittens Got Claws
03. Cheap An' Nasty
04. Now You're Gone
05. The Deepr The Love
06. Judgment Day
07. Sailing Ships
08. Wings Of The Storm
09. Slow Pork Music
10. Fool For Your Loving 1989
11. Sweet Lady Luck (Single B-Side)
12. Now You're Gone (Chris Lord-Alge Single Remix)
13. Fool For Your Loving 1989 (Vai Voltage Mix)
14. Slip Of The Tongue (Alternate Intro & Breakdown)
15. Cheap An' Nasty (Alternate Solo & End)
16. Judgment Day (Alternate & Extended Solos)
17. Fool For Your Loving 1989 (Alternate AOR Mix With CHR Intro)

アルバム本編がM-1〜10なのですが、なんですかこの味わい深さもへったくれもない流れは……頭3曲の流れはまだいいとしても、M6「Judgment Day」〜M7「Sailing Ships」の構成は疑問しか残らない。長尺の大作を2曲並べたかったんだろうけど、アルバムの締め用に作られた壮大なアレンジの「Sailing Ships」のあとにまだ3曲も残っていて、「Sailing Ships」の余韻をぶち壊すかのように「Wings Of The Storm」が始まる。さらにエンディングが「Fool For Your Loving」て……正気ですか?

ちなみにこちら、リマスタリングといいながらも「Kittens Got Claws」がオリジナルからいじられていたりします。スティーヴ・ヴァイ(G)によるオープニングの“猫ギター”がカットされたのは明らかな変化ですが、ほかにもイントロのリフの裏で鳴っていたヴァイのソロが若干前に押し出されているような。あと、オリジナル盤では軽く感じられたドラムの音も2009年リマスター盤よりもさらに硬質にミキシングされている印象も受けました。これはこれで悪くないね(曲順を除けば)。

M-11〜13は2009年バージョンにも収録されていたもの。M-12「Now You're Gone (Chris Lord-Alge Single Remix)」は「U.S. Single Mix」として親しまれてきたものですね。さらに今回は初出の別バージョンを追加収録。M-14「Slip Of The Tongue (Alternate Intro & Breakdown)」はいきなりブラスシンセから始まるイントロ縮小&ギターソロ後のブレイクパートに変なソロ(笑)が追加されたバージョンです。いや、あの緊張感のあるブレイクにそれ入れちゃう?っていうヴァイのセンスよ……。M-15&16は文字どおり、ギターソロを差し替えたもので、M-17はM-10のミックス違い。M-14〜16に関してはオリジナルバージョンに30年慣れ親しんだこともあり、ちょっと違和感があるかな。

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2019年7月 4日 (木)

ALICE COOPER『HEY STOOPID』(1991)

1991年7月にリリースされた、アリス・クーパー通算19作目のスタジオアルバム。前作『TRASH』(1989年)で収めた成功をフォローアップするために制作された本作は、前作以上に多数のソングライター&ゲストが参加した豪華な内容となっています。

「Poison」(全米7位/全英2位)や「House Of Fire」(全米59位/全英65位)などの好記録もあり、アルバム『TRASH』は全米20位/全英2位という久しぶりのヒット作に。時代的にもギリギリHR/HMがシーンでもてはやされ、また制作時は景気的にもギリギリ不況に陥る前だったこともあり、この『HEY STOOPID』にはかなりの大金が注ぎ込まれたのではないか……そのサウンドプロダクションやゲスト陣を前にすると、改めてそう実感します。

プロデューサーにピーター・コリンズ(RUSHQUEENSRYCHEゲイリー・ムーアなど)を迎えた本作は、『TRASH』以上に産業ロック色の強い、きめ細やかなサウンドを伴う非常に“作り込まれた”1枚。ソングライティングは基本アリスとジャック・ポンティが軸になっていますが、「Dangerous Tonight」では前作での立役者デズモンド・チャイルド、「Feed My Frankenstein」ではゾディアック・ワープマインド、「Die For You」ではニッキー・シックス&ミックマーズ(MOTLEY CRUE)とジム・ヴァランスがそれぞれ関わっています。

で、特筆すべきなのはゲスト陣。タイトルトラック「Hey Stoopid」にはスラッシュ(G/GUNS N' ROSES)&ジョー・サトリアーニ(G)、オジー・オズボーン(Vo)が参加。それぞれ聴けばすぐにわかるくらいの個性を発揮しています。オジーなんてまんまだからね(笑)。

そのほか、「Burning Our Bed」「Little By Little」「Wind-Up Toy」にもジョー・サトリアーニ、「Feed My Frankenstein」にはニッキー・シックス(B)、スティーヴ・ヴァイ(G)、ジョー・サトリアーニ、「Hurricane Years」「Dirty Dreams」にはヴィニー・ムーア(G/彼は本作のツアーにも一部参加しました)、「Die For You」にはミック・マーズ(G)……と、クレジットを羅列するだけで文字数稼げてしまうくらい(笑)。

これだけ豪華なんだもん、出来が悪いわけがない。曲も良い、サウンドも良い、演奏も抜群。個人的には「Might As Well Be On Mars」みたいにドラマチックな曲がお気に入りです。

(そういえば、「Feed My Frankenstein」は映画『ウェインズ・ワールド』でも使用され、アリスも劇中に登場しましたね。懐かしい……)

ですが本作、先に記したように不景気に突入し、それによってウケる音楽の傾向も80年代的ハデなものからダークでシンプルなものへとシフトしていき(そう、1991年ってグランジ元年ですものね)……「Hey Stoopid」(全米78位/全英21位)、「Love's A Loaded Gun」(全英38位)、「Feed My Frankenstein」(同27位)とイギリスでこそまずまずのシングルヒットを残したものの、アルバム自体は全米47位/全英4位止まり。アメリカでの売り上げは前作の半分(50万枚)程度で終了しています。

そういえば、本作発売後にはJUDAS PRIESTMOTORHEAD、DANGEROUS TOYS、METAL CHURCHといったレーベルメイトとともに移動式フェスツアー『OPERATION ROCK & ROLL TOUR』も実施したのですが、不景気の煽りを受け31公演を終えたところで終了したという話も。あの時代を通過していない世代にはわかりにくい話かもしれませんが、結構深刻だったんですよ、あの頃は(と、急にオッサン目線)。

まあ、何はともあれ。あと1年早くリリースされていたら『TRASH』並みのヒット作になったはず。それくらい、力の入った(&お金をつぎ込んだ)隠れた名盤です。

 


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2018年5月16日 (水)

WHITESNAKE『SLIP OF THE TONGUE』(1989)

1989年11月にリリースされた、WHITESNAKE通算8作目のスタジオアルバム。1987年春に発表された前作『WHITESNAKE』からのシングル「Here I Go Again」は全米1位、「Is This Love」が全米2位という大ヒットとなり、アルバム自体も全米2位、全英8位まで上昇。アメリカだけで800万枚以上ものセールスの大出世作となりました。これを受けて、『WHITESNAKE』を携えたツアーでのバンドメンバー……エイドリアン・ヴァンデンバーグ(G)、ヴィヴィアン・キャンベル(G)、ルディ・サーゾ(B)、トミー・アルドリッジ(Dr)でレコーディングに突入しようとしたところ、ヴィヴィアンが脱退。代わりに加入したのがスティーヴ・ヴァイというゲテモノギタリストだったことから、当時はかなりの大騒ぎとなりました。

曰く「ブルースベースのハードロックバンドに、ブルースが弾けないキワモノギタリストが加入した」と。確かにそうかもしれませんが、そもそも前作『WHITESNAKE』の時点でWHITESNAKEはブルースという軸のひとつを放棄していたような気もするのですが……まあ、いいでしょう。

曲作りは基本的にデヴィッド・カヴァーデイル(Vo)とエイドリアンの2人で進め、さてスタジオに入りましょうというときにエイドリアンの腱鞘炎が発覚。完治までレコーディングを待てなかったカヴァーデイルは、エイドリアンのデモをもとにヴァイにすべてのギターパートを担当させる。エイドリアンがプレイしたベーシックな部分(プレイのテイスト)は残しつつも、ところどころにヴァイらしい派手なオカズが挿入された、“ギターオリンピック”的なサウンドが展開されてしまいます。

リリース当時、やれギターがうるさいだのなんだの叩かれましたが、ちゃんと聴くとそもそも楽曲の根本の部分がしっかり作り込まれていない、つまり詰めが甘いと気付くんじゃないでしょうか。例えばキー設定が高すぎてデヴィッドはただわめいているように聴こえるし、それによってリズム隊も軽く聴こえてしまう。そこにあんなギターが乗るもんだから、ねぇ。エイドリアン、もうちょっとどうにかならなかったのかと。

そんなだから、リメイクした「Fool For Your Loving」も浮きまくり。この曲までキーを上げてしまい、原曲の雰囲気壊しまくりです。前作での「Here I Go Again」も「Crying In The Rain」も原曲どおりのキーだったからこそあの世界観をよりゴージャスにすることができたのに……嗚呼、全部空回り。

ただ、そんなアルバムの中にも「これは!」と呼べる楽曲がいくつか存在します。そこだけは声を大にして伝えておきたい。それが「Now You're Gone」や「The Deeper The Love」といった前作の延長線上にあるポップ路線と、「Judgment Day」と「Sailing Ships」の大作路線。特に「Judgment Day」は今でもライブで頻繁に演奏されており、いわば「WHITESNAKE版(LED ZEPPELINの)『Kashmir』」みたいな楽曲として愛されています(ホントかな)。で、「Sailing Ships」は……これは以前取り上げた『STARKERS IN TOKYO』(1997年)のアコースティックバージョンが素晴らしいので、こちらを聴いてもらえば(スタジオ版じゃないのかと)。スタジオ版は後半のボーカルキーが上がるところがちょっとね。悪くないんだけど、やりすぎ感が強くて。

と、ここまで書いたら「これは駄作なんじゃないか?」とお思いかもしれません。そう、駄作かもしれませんが……嫌いになれないのも事実。何気によく聴くんですよ、このアルバム。リリースタイミングが大学受験間際だったこともあり、受験の往復や勉強の合間によく聴いたし、浪人中もなんだかんだで聴いたので、そういう記憶が強いのかもしれません。だからこそ、嫌いになれない。少なくとも自分の中では「そこそこ」の1枚です。

なお、WHITESNAKEは本作をリリースした1年後の1990年秋、ワールドツアーの終焉をもってバンド活動を休止してしまいます。

あ、もうひとつ。『SLIDE IT IN』(1984年)や『WHITESNAKE』同様、本作には複数のバージョンが存在するので、そちらについても記しておきます。

 

<1889年バージョン>
01. Slip Of The Tongue
02. Cheap An' Nasty
03. Fool For Your Loving
04. Now You're Gone
05. Kittens Got Claws
06. Wings Of The Storm
07. The Deeper The Love
08. Judgment Day
09. Slow Poke Music
10. Sailing Ships

↑こちらは下↓のジャケットで発売された、オリジナルバージョン。僕はこの曲順に慣れ親しんでいたので、20年後に発表された20周年バージョンおよび現行のリマスターバージョンの曲順はなんとなく馴染めずにいます。

 


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で、こちら↓が現行バージョン。2曲目に「Judgment Day」の時点であり得ない。後半の侘び寂びの無さもあり得ない。戻してくれ、頼むから。

<2009年バージョン>
01. Slip Of The Tongue
02. Judgment Day
03. Fool For Your Loving
04. Now You're Gone
05. Kitten's Got Claws
06. Cheap An' Nasty
07. The Deeper The Love
08. Slow Poke Music
09. Wings Of The Storm
10. Sailing Ships
11. Sweet Lady Luck [Single B-Side]
12. Now You're Gone [U.S. Single Remix]
13. Fool For Your Loving [Vai Voltage Mix]
14. Judgment Day [Live... In the Shadow of the Blues]
15. Slip Of The Tongue [Live at Donington 1990]
16. Kitten's Got Claws [Live at Donington 1990]

再発版はシングルのみ収録のトラックや複数のライブ盤からのライブ音源も混ざっていて、なんだか忙しいので困ります。ホント、作り手の気まぐれで10数年経ってから曲順変えるのやめてほしい。お前にとってそれが正解でも、俺たちの思い出まで修正できないんだから。

というわけで、僕はリマスター盤もプレイリストでオリジナルの曲順に戻して再生してます。本作はまだストリーミング配信されてないみたいだけど、どうせじきに配信始まるはずだから、その際にはぜひオリジナルバージョンでの再生をオススメします!(まだ一度も聴いてない人にとっては、それこそこれもお節介かしらね)

 


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2018年2月 9日 (金)

DAVID LEE ROTH『SKYSCRAPER』(1988)

1988年1月にリリースされた、デヴィッド・リー・ロスの2ndアルバム。VAN HALEN脱退後に発表された初のソロアルバム『EAT 'EM AND SMILE』(1986年)は同作の数ヶ月前に発表されたサミー・ヘイガー初参加アルバム『5150』(1986年)には及ばなかったものの、全米4位/100万枚という結果を残しました。

ただ、『EAT 'EM AND SMILE』からは全米トップ10に入るようなキャッチーなシングルが生まれなかったのも事実。スティーヴ・ヴァイ(G)やビリー・シーン(B)といった凄腕ストリングス隊のテクニックを活かしたハードロックナンバーと、“ダイヤモンド・デイヴ”の愛称にふさわしいジョービズ臭プンプンのスタンダードナンバーを並列させたことで、VAN HALENの大ヒット曲「Jump」のようなポップ色の強い楽曲が入る余地がなかったのです。

となると、続く2枚目のアルバムでの命題は必然的に「『Jump』にも匹敵するヒットシングルを生み出すこと」となるわけです。それが、今作における「Just Like Paradise」(全米6位)だったんでしょうね。

また、今作からバンドにはブレット・タグルというキーボーディストが正式参加。「The Bottom Line」のような前作の延長線上にあるアップテンポなハードロックも少なからず収録されているものの、どの曲にもキーボードが加えられており、全体的にソフトな印象を受けます。ステーヴ・ヴァイのギターは相変わらず暴れまくっているように聴こえるものの、前作と比較したら若干落ち着いたように受け取れる。ビリー・シーンのベースに至っては曲のボトムを支えることに終始し、テクニカルなソロプレイは一瞬フィーチャーされるのみ。そういった状況にストレスを感じたビリーは、本作完成後にバンドを脱退しています。結局、ビリーを含む編成での来日公演は実現しなかったんですよね(まあこの脱退があったおかげで、MR. BIGが結成されるわけですが)。

ポップで軽やかなロックナンバー「Knucklebones」からスタートする本作は、前作における「Yankee Rose」と比較してしまうと肩透かしを食らうかもしれません。が、全編キャッチーで親しみやすいオリジナル曲でまとめられた作風は、あの当時デイヴが目指した「ヒット曲でもVAN HALENに勝つ」という目標を達成させるためには必要な方向性だったんでしょうね。小ヒットに終わったダンサブルな「Stand Up」やスティーヴのギターアレンジが素晴らしいバラード「Damn Good」、地味でダークだけどこの編成じゃなければ生まれなかった隠れた名曲「Hina」など、異色ながらも聴きどころの多い作品ではないでしょうか。初期衝動がすべてだった『EAT 'EM AND SMILE』とは別ベクトルで、いかにもデイヴらしいアルバムだと思いますし、今でも嫌いになれない1枚です。

 


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2017年4月 3日 (月)

DAVID LEE ROTH『EAT 'EM AND SMILE』(1986)

VAN HALENを脱退したデヴィッド・リー・ロスが1986年に発表した、ソロとして初のフルアルバム。バンド在籍中に発表された『CRAZY FROM THE HEAT』(1985年)は4曲入りのEPだったこと、そのすべてがカバー曲だったことから当時は“遊び”と解釈することができましたが、バンドを脱退した後の『EAT 'EM AND SMILE』ではいよいよ本領発揮……といわんばかりのフルスロットルぶりが楽しめます。

アルバムおよび当時のツアーに参加したメンツはスティーヴ・ヴァイ(G)、ビリー・シーン(B)、グレッグ・ビソネット(Dr)という錚々たる面々……というのは、当時は一部のメタルファンの間でのみ。今でこそヴァイもビリーもロックファンなら誰もが知っている名プレイヤーですが、実は2人ともデイヴとの共演により知名度をグンと上げたというのが事実なのです。

アルバムはエイドリアン・ブリュー並みに“しゃべる”ギタープレイを披露する「Yankee Rose」からスタート。ヴァイの縦横無尽に暴れまくるギタープレイと、そのギターをボトムで支えているようで実はフレーズが暴れまくっているベース、その上でひたすら“ダイヤモンド・デイヴ”を演じまくるデイヴ。もちろん的確なビートで土台を支えるグレッグのプレイも欠かせません。同曲は全米16位まで上昇するヒットシングルとなっています。

そして2曲目はビリーが過去に在籍したバンド、TALASの楽曲「Shyboy」のカバー(というかリメイク)。高速ビートの上で披露される、ギターとベースによる超絶ユニゾンプレイに誰もが感嘆のため息をついたはずです。このユニゾンプレイが、のちにビリーが結成するMR.BIGにつながっていくわけですから(しかもMR.BIGでも再びカバーされてるし)、その後のHR/HMシーンにとって非常な重要な1曲と言えるかもしれません。

そして、本作には先のソロEP同様に数々のオールディーズカバーが収録されています。「I'm Easy」「That's Life」といったラウンジミュージックの名曲、60年代のガレージロックナンバー「Tabacco Road」の3曲がそれで、「Shyboy」を含めたら計4曲がカバーというわけです。そこを物足りないと感じるか、原曲を知らないしオリジナルとして聴いてもなんら違和感ないしと感じるかは聴き手次第かなと。ちなみにリリース時中学生だった僕は当然カバーの原曲を知らなかったので、完全に後者でした。

テクニカルで派手なプレイを含みつつも、楽曲時代はポップでブルージーでソウルフル。これって結局、デイヴがVAN HALEN時代にやっていたことと一緒なんですよね。全10曲で30分強というランニングタイムも、初期VAN HALENと一緒。ただ、このバンドにはエディ・ヴァン・ヘイレンが2人いる(ヴァイとビリー)のが大きな違いだったと。この編成が復活することは今や不可能に近いけど(一度だけデイヴ抜きでライブをやったこと、ありましたっけ)、一度は生で観たかったなぁ。この編成での来日は結局実現しなかったしね。

策士デイヴはこのアルバムでVAN HALENというバンドのスタイルをソロでも再現させ、続く2ndアルバム『SKYSCRAPER』(1988年)では「俺にだって『Jump』は作れる」と言わんばかりにポップな「Just Like Paradise」を大ヒットさせる。この2作で彼のVAN HALENに対する復讐は(形としては)完結するわけです。

そういえば、上に貼り付けた「Yankee Rose」含め、当時のデイヴはMVも凝った作品が多かったなぁ。どれもコミカルで、人を食ったかのような内容ばかり。あ……それで『EAT 'EM AND SMILE』なのか!(違います)

 


▼DAVID LEE ROTH『EAT 'EM AND SMILE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

 

2004年12月 8日 (水)

最強コンビ、再び。

スティーヴ・ヴァイ、新作リリース! ビリー・シーンも参加(CD Journal.com)

 へー、「ULTRA ZONE」からもう6年も経ってたのか。全然そんな気がしないんですが‥‥ライヴ盤とか企画盤とか、オフィシャルサイトでのボックス企画とかあるからかな。毎年何かしら音源出てるしね。

 今回の目玉は、やはり盟友ビリー・シーンとの約16年振りのレコーディングってことかしら。'88年の「SKYSCRAPER」(デヴィッド・リー・ロスの2ndフル・アルバム)以来だしな。ここ1〜2年の「G3」ツアー、ヴァイのバンドにはビリーも参加してるようだけど、音源となるとそれくらい振りなんだよね。しかも今回は1曲が長い大作インストばかりみたいなので、かなり期待大。もの凄いストリングス・バトルが聴けるんだろうな。このメンツでの来日にも期待。


▼STEVE VAI「REAL ILLUSIONS」(amazon


 そういえば去年の「G3」ツアーにはイングヴェイも参加してたんですよね。ジョー・サトリアーニがある意味フュージョン的な世界観を持ってる人であり、ヴァイは変態チックな世界観、インギーがクラシカル。ちょっと面白いよねこれは。「G3」って昔は日本にも来たことがあった気もするけど、最近は全然話題にもならないよなぁ。去年、似たような企画で「Guitar Wars」ってのがあったけど、あれもまた違うしなぁ。

 ヴァイのステージを最後に観たのも、'97年夏以来。既に7年以上経ってるんだね。そろそろ単独来日を期待したいところだなぁ。絶対に行くのに。



▼JOE SATRIANI / STEVE VAI / YNGWIE MALMSTEEN「G3 LIVE : ROCKIN' IN THE FREE WORLD」(amazon

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