2017/04/12

STEVEN TYLER with THE LOVING MARY BAND: LIVE IN JAPAN 2017@日本武道館(2017年4月11日)

正直、スティーヴン・タイラーのソロアルバム『WE'RE ALL SOMEBODY FROM SOMEWHERE』がリリースされると決まったときはネガティブな感情しかなかったし、聴いてみたら実際良い内容だったけども、リリースから時間が経った今思うのは「やっぱりなぁ……」というどうしようもなくネガティブな気持ち。この感情を払拭するには、やはり4月に決定したソロ来日公演に行くしかないよな……ということで、発表された直後にチケットを確保したのでした。

武道館でAEROSMITH。正確にはエアロではなくスティーヴンのソロなんだけど、武道館で彼のパフォーマンスを観るのは、おそらく1994年の『GET A GRIP TOUR』以来。あのときは武道館で10公演近くやったり、横浜アリーナでもやったりと、本当に大成功ツアーだったよね。ちょうど春先だったんじゃなかったっけ? 僕も武道館に3回くらい足を運び、横浜アリーナにも行った記憶があるなぁ。

あいにくの雨の中、近場で18:40まで取材をしており、正直「ああ、オープニングには間に合わないなぁ……」と思っていたら、開演が20分近く遅れてくれたことで、余裕を持って席に着くことができました。1階席南東A列。限りなく南(真正面)寄りの最前列。最高じゃないですか。ブルースやカントリーに混ざりジョニー・キャッシュ「One」(U2のカバー)が流れた……と思ったら会場暗転。スクリーンにはスティーヴンのインタビュー映像などが映され、気付いたらステージ上にはバンドメンバーの姿が。そして、これまで何万回と聴いてきたあのベースのフレーズが……そう、1曲目はエアロの「Sweet Emotion」。ギター2人、リズム隊(ともに女性)という、バンジョー、そしてギターやハーモニカ、ピアノなどをプレイするマルチプレイヤー(女性)からなるTHE LOVING MARY BANDを携えたタイラー翁(あえてこう呼びたい)は、どこからどう見ても僕らがよく知ってる、あの“AEROSMITHのスティーヴン・タイラー”そのものでした。

さて、ここからはざっくばらんに感想を書いていきます。

僕が観たものは思ってた以上に、完全にAEROSMITHでした。正確には「AEROSMITHっぽい」、もっと正確に言うなら「タイラー翁が有能な若手ミュージシャンたちと、AEROSMITHの名曲たち(比較的ソフト路線)を愛でながら、時々ビートルズやらジャニスやらツェッペリンをカバーして、その合間にカントリー調のオリジナル曲を申し訳程度に演奏する宴」(やたら長い)という内容。そりゃあ悪い訳がない。当初思っていた以上に良かったし楽しかったです。

“AEROSMITHの名曲たち(比較的ソフト路線)”ということで、カバーされたのは80年代後半〜90年代の「売れ線ヒットシングル連発」期の楽曲ばかり。それが良い悪いではなく、ソロアルバムでやろうとしていることにもっとも近かった。だからこのセレクトは間違いないわけです。そこに「Sweet Emotion」と「Walk This Way」が入ることで、ライブにメリハリをつける。なんなら「Train Kept A Rollin'」もあるし、どうせカバーやるならツェッペリンもやっちゃおう!ってことで、「Walk This Way」からメドレー的に「Whole Lotta Love」までやっちゃう(しかもそれでライブを締めくくる)。タイラー翁が心のそこから楽しもうと思って、このツアーを計画したことがなんとなく理解できました。

バンドメンバーも素晴らしかった。6人中半分、しかもリズム隊が女性っていうのも良かったし、コーラス(主にベーシストとマルチプレイヤーの女性2人)もコーラスの域を超えたうまさ。で、タイラー翁がちゃんと彼女たちの見せ場を作ってあげたのも良かったと思う。

タイラー翁の調子はまずまず。以前と比べれば声は比較的出てたほうだと思います。高音が出切らずに要所要所ごまかすパートもあったけど、決めるべき箇所でちゃんと決めてたからしっかり歌えているように見えた(聞こえた)し、特に大きな問題なし。なにより現在69歳なのにここまでフロントマン然としたじいちゃん、数える程しかいないよね。圧巻です。

セトリは多分大阪とあまり変わらないのでは。序盤、日本のみでリリースされたソロ曲「Love Lives」(キムタク版ヤマトの主題歌)に客が無反応だったのには苦笑い。あと、エアロでもやってたことがある「Home Tonight」〜「Dream On」のメドレーはズルいし、ツェッペリン「Whole Lotta Love」の完コピは微笑ましかった。完コピといえば、バンドメンバーのエアロナンバーのコピー具合も目から鱗。散々聴き飽きた楽曲も、この編成で聴くのは悪くなかったよ。というか、愛が感じられましたし。と同時に、自分が思ってる以上に自分は今AEROSMITHのことを求めているんだと実感できた一夜でした。別にこのライブを観て「やっぱりスティーヴンの隣にはジョー・ペリーがいなくちゃ!」とか文句を言いたいわけじゃなくて、これはこれとして理屈抜きで楽しめました。

1時間45分くらいと、AEROSMITHの通常公演と比べたら若干短いけど、この程よさが今回はちょうど良かったと思います。これでソロアルバムを枚数重ねていったらソロ曲が増えて、ライブ自体が長くなりそうですしね。


[SETLIST]
01. Sweet Emotion [AEROSMITH]
02. Cryin' [AEROSMITH]
03. I'm Down / Oh! Darling [THE BEATLES]
04. Come Together [THE BEATLES]
05. Love Lives
06. Jaded
07. Love Is Your Name
08. I Make My Own Sunshine
09. Mercedes Benz [JANIS JOPLIN] / Piece Of My Heart [ERMA FRANKLIN]
10. Livin' On The Edge [AEROSMITH]
11. We're All Somebody From Somewhere
12. What It Takes [AEROSMITH]
13. My Own Worst Enemy
14. Home Tonight / Dream On [AEROSMITH]
15. Train Kept A Rollin' [TINY BRADSHAW / AEROSMITH]
--ENCORE--
16. Janie's Got A Gun [AEROSMITH]
17. Only Heaven
18. Walk This Way [AEROSMITH] / Whole Lotta Love [LED ZEPPELIN]



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投稿: 2017 04 12 12:19 午前 [2017年のライブ, Aerosmith, Steven Tyler] | 固定リンク

2016/12/20

STEVEN TYLER『WE'RE ALL SOMEBODY FROM SOMEWHERE』(2016)

聴く前からこんなにも不安でネガティブな気持ちになったソロアルバムって、自分の経験上そんなになかったんじゃないかな。だって、これが世に出るということは、バンドとしてしばらく機能しないということを示すわけだから。

そんな気持ちで接した、AEROSMITHのフロントマン、スティーヴン・タイラー初のソロアルバム『WE'RE ALL SOMEBODY FROM SOMEWHERE』。カントリーレーベルからのリリースということで、最初は「年寄りが趣味でやるんでしょ。はいはい」くらいの気持ちでいたんです。そもそも、アルバムの1年前に発表されたリードトラック「Love Is Your Name」がポップだけどレイドバックしまくりだったから、余計にね。いや、悪い曲じゃないんですよ。ぶっちゃけ、エアロの最新作『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』の楽曲よりも優れてると思ったし。いやいや、比べるのは違うか。

ここ数年、以前ほど高音が出にくくなって、声質もカサカサになってきたスティーヴンの声には、こういうサウンドが意外と合うんだな。そう前向きなことも考えました。でも、自分が聴きたいのはジョー・ペリーと並ぶスティーヴンの姿。ジョーがソロをやるのとは意味が違うんですよ。

ところが。不安を抱えたままアルバムと接すると……いいんです、これが。楽曲がどれも優れているというのは言うに及ばず、スティーヴンのボーカルワークも非常に素晴らしい。無理にシャウトせず淡々と歌っているんだけど、それでも存在感が溢れてしまう感じといいましょうか。サウンド的にもカントリーを軸にしてはいるものの、もっとアメリカンポップス寄り。そもそもスティーヴンの性分を考えれば、こうなるのも納得なわけで、古き良き時代のアメリカンポップスやカントリー、ブルース、そして適度にロックで適度にサイケ。思えばエアロの楽曲の大半はスティーヴンがジョーと一緒に書いてきたもの。こういう作風になるのは当然であり、演奏している人間が異なるんだからエアロにならないのも当たり前。なんでそんな簡単なことに気づかなかったんだろうと、聴き終えた後に反省しました。そんなフラットな気持ちで接すれば、「Janie's Got A Gun」のアーシーなセルフカバーも素直に受け入れられるわけです。

もしかしたらこの人は、もっと新曲をレコーディングしたかったのかな。でも、それが今のエアロでは叶わないというなんらかの障害が存在する。だったら自分の好きなように1枚作ろうと。そう納得することにしました。事実、このアルバムを出した後にはエアロはショートツアーも行っているわけで、以前ほど大々的な活動はないものの、今後もよきタイミングでライブをしてくれるはず、と。

そんなことを考えていたところに、来年のツアーを最後にAEROSMITHの活動終了という話が飛び込んできたり。さらに来春にはスティーヴンのソロ来日公演も決定。もう何が正しくて、何が間違っているのか判断がつきませんが……ひとまず武道館でのソロライブには行きます。夏にはエアロでフェスに出たりツアーをしたりするようなので、そちらでの来日にも期待したい。そして……せめてバンドでもう1枚アルバムを作ってください。それだけが僕の望みです。その夢が実現するまで、このソロアルバムやここ数年発表されたライブ作品を目に耳にし続けていこうと思います。



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投稿: 2016 12 20 12:00 午後 [2016年の作品, Aerosmith, Steven Tyler] | 固定リンク