2019年3月 2日 (土)

MARK MORTON『ANESTHETIC』(2019)

2000年代を代表するUSヘヴィロック/ヘヴィメタルバンドLAMB OF GODのギタリスト、マーク・モートンによる初のソロアルバム。全10曲すべてが歌モノで、それぞれ異なるシンガーを迎えて制作されたものとなっています。そういう意味ではギタリストのエゴが前面に打ち出されたものではなく、あくまでソングライター/表現者としてバンドとは異なるアプローチで作り上げた1枚と言えるでしょう。

参加シンガーはチェスター・ベニントン(LINKIN PARK)、ジャコビー・シャディックス(PAPA ROACH)、マーク・ラネガン(ex. SCREAMING TREES)、チャック・ビリー(TESTAMENT)、ジェイク・オニ(ONI)、マイルス・ケネディ(ALTER BRIDGESLASH)、マーク・モラレス(SONS OF TEXAS)、ジョシュ・トッド(BUCKCHERRY)、ネイマー・マドックス、アリッサ・ホワイト-グルーズ(ARCH ENEMY)、そしてLAMB OF GODのフロントマンであるランディ・ブライとマーク自身という豪華かつバラエティに富んだ面々。演奏面ではギターをマークがすべて担当したほか、STONE SOURのロイ・マイヨルガ(Dr)、MEGADETHのデイヴィッド・エレフソン(B)、KORNのレイ・ルジアー(Dr)、ALICE IN CHAINSのマイク・アイネズ(B)、TRIVIUMのパオロ・グレゴリート(B)&アレックス・ベント(Dr)、CLUTCHのジャン・ポール・ガスター(Dr)、元THE BLACK CROWESのスティーヴ・ゴーマン(Dr)&マーク・フォード(G)といったジャンルの垣根を超えた布陣が顔を揃えています。

アルバムはマークとジェイク・オニ、そしてLAMB OF GODのプロデューサーとして知られるジョシュ・ウィルバーとの共同制作によるもの。楽曲自体はマークが「いつかバンドとは別の形で発表したい」と長年書き溜めてきたものなのですが、各シンガーの個性が強いこともあってか、それぞれのシンガーに合った手法で書き下ろされたものと錯覚してしまいそうになります(もちろんそういう曲も含まれていますが)。

チェスターが亡くなる数ヶ月前に制作されたオープニングトラック「Cross Off」はLINKIN PARKをよりモダンヘヴィネス寄りにした良曲ですし、ジャコビーが歌う「Sworn Apart」もPAPA ROACHのアルバムに入っていたとしても不思議じゃない1曲。かと思えばマーク・ラネガンが歌う「Axis」ではアーシーさが前面に打ち出されているし、チャック・ビリー&ジェイク・オニによる「The Never」のスラッシュ&王道メタルなノリもひたすらカッコいい。

マイルス・ケネディ歌唱による「Save Defiance」は完全にマイルスのノリだし、マーク・モラレス参加の「Blur」はSONS OF TEXAS寄りのスモーキーさが表出している。ジョシュ・トッドが歌う「Back From The Dead」なんてBUCKCHERRYをヘヴィにさせたノリで好印象だし、ネイマー・マドックスによる「Reveal」はどこかファンキー。マーク本人が歌唱する「Imaginary Days」は正統派ハードロックの香りが感じられ、ラストを飾るランディ&アリッサによる「The Truth Is Dead」は2人の声の対比も良いし、なにより楽曲がLAMB OF GODの延長線上にあるのが良い。

マークのギタリストとしての非凡さも随所に感じられるし、何よりも曲のバラエティ豊かさに驚かされる。このひと、こんなに多才だったんだと驚き連発の1枚です。

LAMB OF GOD本体は、昨年BURN THE PRIEST名義のカバーアルバム『LEGION: XX』を発表したりと若干リラックスモードかもしれませんが、こういったガス抜きを経て次にどんなオリジナルアルバムを届けてくれるのか、今から楽しみでなりません。まずは奇跡の共演が実現した(特に、貴重なチェスターの声が残された)この意欲作をじっくり聴き込みたいと思います。



▼MARK MORTON『ANESTHETIC』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2019 03 02 12:00 午前 [2019年の作品, Alice in Chains, Alter Bridge, Arch Enemy, Black Crowes, the, Buckcherry, Clutch, Korn, Lamb of God, Marilyn Manson, Megadeth, Myles Kennedy, Papa Roach, Slash, Sons of Texas, Stone Sour, Testament, Trivium] | 固定リンク

2018年6月20日 (水)

DAMAGEPLAN『NEW FOUND POWER』(2004)

2003年にPANTERAを解散させたヴィニー・ポール(Dr)&ダイムバッグ・ダレル(G)兄弟が、同年のうちに新バンドDAMAGEPLANを結成。パトリック・ラックマン(Vo/元HALFORDのギタリスト)、ボブ・ジラ(B/のちにHELLYEAH加入)の4人編成でアルバムを制作し、2004年2月に最初にして最後のアルバム『NEW FOUND POWER』をリリースします。

後期PANTERAのスタイルを継承しつつも、どこか気難しさが強かった同スタイルよりもキャッチーさが増したような楽曲の数々は、良く言えば取っつきやすい、悪く言えばクセが弱いものだったかもしれません。しかし、ボーカリストならまだしも、聴いた瞬間に「そうそう、このドラミング!」とか「これこれ、このギターソロよ!」とか気づけるアーティスト/プレイヤーって、今の時代なかなかいないと思うんですよ。それをバンドが変わっても維持し続けたヴィニー&ダイムバッグ兄弟の個性って、改めてすごいなと。

PANTERAという比較対象がいる以上、どうしてもインパクトの強さを求めてしまいがちですが、そこは正直そこまで強くないかなと。ボーカルのパトリック・ラックマンはそこそこ存在感の強い歌声/ダミ声で主張しており、これはこれでアリ。この声の合わせてなのか、音のほうもどこかモダンで、PANTERAの頭脳チームがあえて時代に寄せていったような雰囲気も。ニューメタル的な色合いや、ALICE IN CHAINS寄りのグランジ/サイケデリックヘヴィロック、90年代後半以降に登場したモダンヘヴィネス系の側面も感じられるのですが、そんな中でもしっかり自身の色を主張するPANTERA組が健気といいますか。嫌いになれないんですね。

「Fuck You」ではSLIPKNOTSTONE SOURのコリィ・テイラー(Vo)が個性強めのボーカルを聴かせ、「Reborn」ではBLACK LABEL SOCIETYザック・ワイルド(G)が“らしい”ギタープレイを披露している(さらに「Soul Bleed」では歌声まで)。また、日本盤ボーナストラックの「Ashes To Ashes」にはALICE IN CHAINSのジェリー・カントレル(G, Vo)もボーカルでゲスト参加しています。完全にご祝儀的なやつですが、これらのコラボレーションがカッコいいったらありゃしない。「Fuck You」ではパトリックもコリィに負けじと叫びまくってるし、このへんは今聴いても本当にカッコいいです。

バンドとしては本作で展開した青写真をもとに、次作あたりで大化けしてもおかしくなかったんですが、アルバム発売から10ヶ月後の2004年12月8日、あんなことになってしまうとは……。

カラーヴァイナルが近々発売されるというニュースを知り、久しぶりに聴いてみたんですが……1周回ってカッコよさが増しているような。もはやダイムバッグ・ダレルのギタープレイを生で聴けないという現実がそうさせるのかはわかりませんが、リリース時に聴いたときよりもポジティブに楽しめる自分がいます。PANTERAを期待すると痛い目を見るかもしれませんが、これはこれで“らしい”作品だと思います。

※2018.6.23.追記
ダイムバッグ・ダレルの実兄であるヴィニー・ポールが現地時間6月22日、お亡くなりになったとのこと。(ソース) この記事を書いたときは、数日後にまさかこんなことになるなんて思いもしませんでした。改めてヴィニーのご冥福をお祈りいたします。

HELLYEAHであなたのプレイ、もう一度観たかったです。



▼DAMAGEPLAN『NEW FOUND POWER』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

投稿: 2018 06 20 12:00 午前 [2004年の作品, Alice in Chains, Black Label Society, Damageplan, Pantera, Slipknot, Stone Sour, Zakk Wylde] | 固定リンク

2017年7月 8日 (土)

STONE SOUR『HYDROGRAD』(2017)

SLIPKNOTのフロントマン、コリィ・テイラー(Vo)による別バンド、STONE SOURの4年ぶり、通算6枚目のスタジオアルバム。前々作『HOUSE OF GOLD & BONES - PART 1』(2012年)および前作『HOUSE OF GOLD & BONES - PART 2』(2013年)が連作かつコンセプチュアルな作品だったこともあり、無駄に小難しさを与えてしまった印象もなきにしもあらずですが、そういうこと抜きにしてもよくできたヘヴィロックアルバムだったんですけどね。ただ、個人的には半年というスパンで2枚のアルバムを出す理由がいまいち掴めなかったというか。だったら2枚同時か2枚組にしてほしかったなと。1年ぐらい間が空けば1枚1枚をじっくり楽しめたと思うんですが、そこまで体に馴染む前に新しいのが出ちゃって、結局そこまで両方楽しめなかったというのが本音なので。

で、STONE SOURとしてはその後、HR/HMの名曲たちをまんまカバー(というかほぼコピー)した2枚のEP(『MEANWHILE IN BURBANK…』『STRAIGHT OUTTA BURBANK…』)を2015年に発表し、そこから1年半経った今年6月末にこの『HYDROGRAD』というオリジナルアルバムを発表したわけです。

えーっと、最初に聴いたときはとにかく驚きました。いや、驚いたというよりもぶったまげた、と言ったほうが正しいか。良い意味で予想を裏切ってくれた、清々しいまでにまっすぐなHR/HMアルバムなんですよこれが。

SLIPKNOTと比べれば存分にメロディアスなんだけど、やはり餅は餅屋というか、特に前2作にはヘヴィさや重苦しさがつきまとっていたわけです。ところが、HR/HMの名曲コピーに勤しんだこともあり、今作では自らのルーツに立ち返ったと言わんばかりに、シンプルでど直球なストリングスタイルのHR/HMを聴かせてくれるんです。もちろんアレンジにおける味付けには現代的なフレイバーが散りばめられていますが、それは許容範囲内。30〜40代のリスナーが進んで楽しめる要素が芯にしっかりあるから、問題なく楽しめるわけです。

コリィの歌唱スタイルやメロディの運び方、そしてメロディアスかつフラッシーなギタープレイ含め、ここにあるのは間違いなく80年代の黄金期の影響下にあるHR/HM。スタート時こそ90年代のオルタナロック〜グランジからの影響が強かったものの(もちろん本作にもその要素はしっかりありますが、それ以上に王道色のほうが強い)、ここで一気に開き直ったというか先祖返りしたというか。ホンモノが求められるこんな時代だからこそ、彼らのようなバンドがこういう音を鳴らしてくれるのは本当に嬉しい。これを聴いたからって、別にSTONE SOURがNICKELBACKになったとは誰も思わないって(笑)。

70分近くもある大作(全15曲入り)ですが、珍しく最後まで飽きずに楽しめる1枚でした。しかも日本盤にはさらにボーナストラックとして、VAN HALEN「Unchained」のカバーを追加。これも先のカバーEPの名残りですね。おまけとしては十分。ぜひ日本盤で購入することをオススメします。



▼STONE SOUR『HYDROGRAD』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 07 08 12:00 午前 [2017年の作品, Slipknot, Stone Sour] | 固定リンク

2006年8月 7日 (月)

STONE SOUR『COME WHAT(EVER) MAY』(2006)

 '70年代チックなジャケットを見た瞬間、「お、これってストーム・トーガソン‥‥いや、違うな。誰だろう。見覚えあるんだけど‥‥」っていう思いが頭の中を巡ったんだけど‥‥そう、そんなアルバムなんです。

 コリィ・テイラーとジェイムズ・ルートがSLIPKNOT加入前からやっていたバンド、STONE SOUR。4年前のデビューアルバムに続くこの「COME WHAT(EVER) MAY」は、'70年代的なハードロックを21世紀の手法でアレンジしたアルバムと言えなくないかな。どうしてもSLIPKNOTとの比較をしちゃうんだけど、あそこまでハードコアな要素はないし、もっとオールドスクールな印象が強いんだよね(もちろん良い意味で)。コリィが終始歌おうとしてるってのも大きいけど、ギターひとつ取ってもメタル/ラウドロックというよりは(いや、ラウドロックのそれなんだけどさ)もっとハードロック的な要素が強く感じられるんだよね。なんていうか、聴いていてとても安心するというか‥‥ま、俺がそういうロックを通過してるから、単にそう感じるだけなんだろうけどさ。

 ハードコアなSLIPKNOTファンからすればこれはヤワな音楽って映るのかしら。正直そういうファンや若い子たちがどう感じるのかは、俺には一切わからない。ただ言えることは、素直にカッコいいと思える音楽をやってること。これは確かにSLIPKNOTと比較すりゃあ『息抜き』なのかもしれない。でも、その息抜きがこのクオリティなんだから、その本気度は十二分なはず。下手なラウド系を比較するのが申し訳なく思えるほどに、カッコいいし。

 やっぱりこのコリィ・テイラーって人は『Motherfucker』って叫ぶのが似合うよな。と同時に、前作で見せた側面(そしてそれをSLIPKNOTにも持ち帰った)‥‥『静』の要素も彼ならではのもの、と改めて実感したよ。"Sillyworld" しかり、"Through Glass" しかりね。こういった曲で見せる顔は、完全に'70年代のハードロックバンドのそれなんだよね。だから、ついつい嬉しくなっちゃうという。

 このアルバムが米・Billboardのアルバムチャートで初登場4位にランクインしたそうです。それも納得の作品ですわ。昨年はSLIPKNOTで、今年はSTONE SOURで出演するサマソニが今から楽しみでなりませんな。

 そうそう、先のジャケットの件。手がけたのは「Hugh Syme」でした。納得。



▼STONE SOUR「COME WHAT(EVER) MAY」(amazon:US盤日本盤

投稿: 2006 08 07 10:43 午後 [2006年の作品, Slipknot, Stone Sour] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック