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カテゴリー「Stone Sour」の13件の記事

2021年10月 2日 (土)

MINISTRY『MORAL HYGIENE』(2021)

2021年10月1日にリリースされたMINISTRYの15thアルバム。

前作『AMERIKKKANT』(2018年)から約3年半ぶりの新作。前作は当時のドナルド・トランプ政権に対するアメリカへの怒りがそのまま作品として昇華されていました。では、当時と状況が大きく変化した現在、アル・ジュールゲンセン(Vo, G)はどんな思いを抱え、表現の源泉としているのでしょう。

プレスリリースには、本作に対して「トランプも退陣し、民主党政権となった現在のアメリカで、アルは何を思うのか。彼によれば、『道徳的衛生』と題された本作は、『怒りよりも教訓的な内容』になっているとのこと。レーガンが新自由主義を掲げると、強欲が美徳となった。人々は他人を顧みず、自分のことだけを考えるようになってしまった。今こそ、そんな世の中を変える時だ。我々が必要としているのは『道徳的衛生』なのだ。そんなメッセージが、おなじみのミニストリーのヘヴィなビート乗って、紡ぎ出されていく」との説明があります。作品のテーマは前作での怒りとは異なるものですが、世界を変えようとする彼の意思はまったくブレておらず、そのへんが過去作の延長線上にある作風にて表現されているように感じます。

確かに前作ほどストレートなアングリー感はありませんが、それでもMINISTRYらしいご機嫌のヘヴィなインダストリアルサウンドは健在。従来の作品を楽しんできたファンなら問答無用で楽しめる内容と言えるでしょう。ここ数作で再び復活した「TV」シリーズの新曲「TV Song #6 (Right Arount The Corner Mix)」も収録されていますしね。

ゲストミュージシャンも相変わらず豪華の一言。「Sabotage Is Sex」では元DEAD KENNEDYSのジェフ・ビアフラ(Vo)が、いかにも彼らしいボーカルを披露しており、イギー・ポップ率いるTHE STOOGESの名曲「Search And Destroy」のインダストリアル風カバーではビリー・モリソン(G/ビリー・アイドル、ex. THE CULTなど)が豪快なギタープレイを聴かせてくれます。このほか、プロフェッサーXことアラビアン・プリンス(DJ)がオープニングトラック「Alert Level」が参加しているほか、ロイ・マイヨルガ(Dr/STONE SOUR)、デイヴィッド・エレフソン(B/ex. MEGADETH)などの名前を見つけることもできます。

個人的には「ちょっとユルいかな……」と感じる場面もある1枚で、正直言え均的、いかにも普通な仕上がりなんですよ。全体的に楽曲1つひとつがコンパクトなのもそうですし、ちょっと薄味かな、と。それはこのバンド/ユニットに対する期待値が、常に一定水準以上のものを求めてしまっているからなのかもしれません。特に、サウンドに関してはもはや新しいテイストを求めていないような気もしますし(もちろん、MINISTRYという存在にとってはそれが正解かもしれませんが)。

となると、このバンドにとっての正解は、やはり歌詞やメッセージ、姿勢、体制で作品の真価を問うことなのかな。こと日本人にとっては、そのへんを深く理解するにはちょっと難しいのかもしれませんが(対訳だけでは伝わらない、英詞から垣間見えるものもありますし)、そのへんも含めしっかり評価できるようになりたいなと、個人的には考えています。

なので、音的には70点、メッセージ性を含めてプラス15点くらいの内容かな、と。あくまで個人的観点ですが。

 


▼MINISTRY『MORAL HYGIENE』
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2021年9月24日 (金)

SAMI YAFFA『THE INNERMOST JOURNEY TO YOUR OUTERMOST MIND』(2021)

2021年9月24日にリリースされたサミ・ヤッファの1stソロアルバム。日本盤は同年9月22日に先行発売。

HANOI ROCKSのベーシストとしてシーンに登場し、バンド解散後はジョニー・サンダース(ex. NEW YORK DOLLS)との活動を経てJETBOYに加入。90年代は盟友マイケル・モンローJERUSALEM SLIMDEMOLITION 23.といったバンドで活動し、以降はJOAN JETT & THE BLACKHEARTSNEW YORK DOLLSMICHAEL MONROEで活躍してきたサミ。40年以上のキャリアの中でソロ活動を一切行ってこなかった彼ですが、ここにきてついに重い腰を上げてソロアルバムを完成させました。

パンクの洗礼を経て、シンプルで生々しいロックンロール、レゲエやダブ、スカ、ラテンミュージックなどを通過したサウンドは、いかにも彼らしいもの。そこにマイケル・モンローやアンディ・マッコイといったHANOI ROCKS時代の仲間たちとの共通点も見つけられ、またサミならではの独自性も見つけられる。というか、ほかの2人と比べてかなり器用な人なんだなと驚かされました。

とにかく、ここで聴けるロックンロールの多彩さとそのナチュラルさ、そして完成度の高さには舌を巻くばかり。ソングライティング面では現在活動をともにするリッチ・ジョーンズ(G/MICHAEL MONROE、ex. THE BLACK HALOS、ex. AMEN、ex. THE YO-YO'Sなど)のサポートが非常に大きく、彼の手腕によるものもかなりあるようです。実際、マイケルのアルバムでも彼のソングライティング力は非凡なものがありますからね。

レコーディングは地元フィンランドの旧友たち、ヤンネ・ハーヴィスト(Dr)やラネ(G/ex. SMACK)、ティモ・カルティオ(G)、そしてクリスチャン・マルトゥッチ(G/STONE SOURコリィ・テイラーBLACK STAR RIDERS)、マイケル・モンロー(Sax, Harp)、リッチ・ジョーンズ(Cho)などが参加。サミもボーカルやベース以外に、ギターやグロッケン、メロディカとさまざまな楽器に挑戦しています。歌声も意外とサマになっており、この派手すぎない、けど地味すぎもしないサウンドと見事にマッチしています。

彼がこれまでに参加してきたバンドのテイストは随所から感じられるし、またそのルーツもしっかり伝わる仕上がり。2021年に聴くには古臭いと敬遠されそうな音かもしれませんが、裏を返せば時代を選ばないロックンロールサウンドでもあるのかなと。説得力とその重みが、同系統のバンドとはまったく違うものが感じられるのもこの人ならでは。HANOI ROCKSやマイケル・モンローのファンはもちろんのこと、1980年代のバッドボーイズ・ロックンロールや2000年代以降のリバイバル・ガレージロックのリスナーにも間違いなくヒットする、捨て曲ゼロのご機嫌な1枚です。

 


▼SAMI YAFFA『THE INNERMOST JOURNEY TO YOUR OUTERMOST MIND』
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2021年5月16日 (日)

CHARLIE BENANTE『SILVER LININGS』(2021)

ANTHRAXのドラマー、チャーリー・ベナンテが2021年5月14日に発表した初のソロアルバム。日本盤未発売。

このアルバムはCOVID-19パンデミックにより世の中のさまざまなことがストップした中でスタートさせた、「Quarantine Video Series」の総決算的作品。ANTHRAXのバンドメイトや気心知れた他バンドの仲間たちと、新旧のお気に入りナンバーをリモートセッションしていき、その中から選りすぐりの14曲がこのアルバムに収録されています。

カバー曲の内訳は以下のとおり。

M-1. City Of Blinding Lights [U2]
M-2. Chloe Dance / Crown Of Horns [MOTHER LOVE BONE]
M-3. Teardrop [MASSIVE ATTACK]
M-4. Run DMC [RUN DMC]
M-5. Rhiannon [FLEETWOOD MAC]
M-6. Yer So Bad [トム・ペティ]
M-7. Transylvannia [IRON MAIDEN]
M-8. Presto Vivace [U.K.]
M-9. Bad Guy [ビリー・アイリッシュ]
M-10. Jimmy James Jam [BEASTIE BOYS]
M-11. All The Way [KISS]
M-12. Mr. Speed [KISS]
M-13. Public Image [PUBLIC IMAGE]
M-14. Funny Vibe [LIVING COLOUR]

参加メンバーも実に多彩で、スコット・イアンやフランク・ベロといった盟友たちのほか、マーク・オセグエダ(Vo/DEATH ANGEL)、カーラ・ハーヴェイ(Vo/BUTCHER BABIES)、コリィ・テイラー(Vo/SLIPKNOTSTONE SOUR)、DMC(MC/RUN DMC)、ロブ・カジアーノ(G/VOLBEAT、ex. ANTHRAX)、デイヴ・セイボ(G/SKID ROW)、アレックス・スコルニック(G/TESTAMENT)、ジョン・5(G/ROB ZOMBIE)、ラ・ディアス(B/SUICIDAL TENDENCIES)、マーク・メンギー(B/METAL ALLEGIANCE)、ジョーダン・ルーデス(Key/DREAM THEATER)など。参加アーティストはHR/HM界隈中心ですが、選曲はチャーリーらしいセレクトで、メタルらしいメタルはIRON MAIDENくらい。もはやお約束となったKISSは2曲用意され、新しいところだとビリー・アイリッシュ「Bad Guy」もカバーされています。

いきなりU2の比較的最近の楽曲からスタートする本作は、そのサウンド的にはメタルからは少し離れたもので、チャーリー・ベナンテという鬼才の一端が表されているといったところでしょうか。もっとも、チャーリー自身は本作をソロアルバムとは捉えておらず、「非常に暗い時期に、友人の何人かと一緒に作ったお気に入りの楽曲集」程度なんだとか。なので、受け手側も「あのANTHRAXのチャーリーのソロプロジェクト」なんて構えずに、幅広い年代/幅広いジャンルの名曲セッション集くらい気軽に楽しめばいいのではないでしょうか。少なくとも僕自身、そういうふうに捉えてリピートしています。

どの曲のアレンジも組み合わせの妙が存分に楽しめるし、遊び心に満ち溢れていると思います。個人的にはメタルアレンジな「Bad Guy」がお気に入り。バンドアレンジにしてもカッコいい曲はカッコいいんだと気付かせてくれます。あとは、MASSIVE ATTACK「Teardrop」やFLEETWOOD MAC「Rhiannon」、トム・ペティ「Yer So Bad」も。女性ボーカル曲は総じて良いですね。プラス、KISSは録音状態まで含めてオリジナルに敬意を払っているのも好印象。遊ぶならここまでしないと。

なお、本作から生じた収益の一部は、音楽教育とメンタルヘルスを提唱するニール・カザル音楽財団に寄付されるとのことです。

 


▼CHARLIE BENANTE『SILVER LININGS』
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2020年10月 7日 (水)

COREY TAYLOR『CMFT』(2020)

2020年10月2日にリリースされたコリィ・テイラーSLIPKNOTSTONE SOUR)の1stソロアルバム。

メインバンドであるSLIPKNOTとSTONE SOURはどちらかの活動がひと段落している間に片方が動くという形でしたが、SLIPKNOTが『WE ARE NOT YOUR KIND』(2019年)に伴う活動が(コロナの影響もあって早めに)落ち着いたタイミングに、コリィはSTONE SOURとしての活動に移行するのではなく初めてのソロ名義でのアルバム作りに挑むことになります(STONE SOURとしては2017年のオリジナルアルバム『HYDROGRAD』と、それに伴うツアーの模様を収めた2019年のライブアルバム『HELLO, YOU BASTARDS: LIVE IN RENO』を持ってしばらく小休止に入るようです)。

アルバムはコリィと、STONE SOURの作品でも共作しているジェイ・ラストンの共同プロデュース。レコーディングにはSTONE SOURのメンバーでもあるクリスチャン・マルトゥッチ(G)、俳優でもあるザック・ストーン(G)、2011年にSTONE SOURのライブにサポート参加した経験を持つジェイソン・クリストファー(B/ex. PRONG、ex. MINISTRY、ex. セバスチャン・バックなど)、ダスティン・ロバート(Dr)という布陣が参加し、STONE SOURよりもレイドバックしたオーソドックスなハードロックを展開しています。

コリィが歌っている時点でSTONE SOURとの共通点はいくらでも見つけられますが、とりわけ本作では80年代の王道アメリカンハードロックにスポットを当てたような、どこか懐かしさが感じられるキャッチーな楽曲が多数用意されています。「Samantha's Gone」なんてヘアメタルチックなメジャーキーの楽曲ですし、「Kansas」あたりもレイドバックしたヘアメタル的なポップ感が強まっている。かと思えば、「Meine Lux」の歌い出しの〈1, 2, 1, 2, 3, 4!〉はブルース・スプリングスティーン的だし楽曲自体はVAN HALEN以降のハードブギーだし、アコースティックギターを軸にしたブルージーなバラード「Silverfish」のような楽曲もしっかり用意されています。

かと思えば後半でに入ると、「Culture Head」では全体的には80年代的な香りがするけどオルタナ感を髣髴とさせるリフは90年代的で、「Everybody Dies On My Birthday」もグランジ以降の作風に80's風メロディを乗せた印象を受ける。思いっきり肩の力が抜けた「The Maria Fire」はSTONE SOURでは体験できなかったテイストで、続くピアノバラード「Home」もソロアルバムならではの試み。そんな中、ヒップホップアーティストのテック・ナインとキッド・ブーキーをフィーチャーしたラップメタル調の「CMFT Must Be Stopped」は唯一SLIPKNOTの匂いを感じさせる(あくまでボーカルスタイルのみ。楽曲自体はアリーナ/スタジアムロック風)。で、最後の最後にハードコアパンク・スタイルのファストナンバー「European Tour Bus Bathroom Song」で締めくくり。いやあ、やりたい放題だな(笑)。

アルバムとしてはひとつの音楽スタイルを軸に持って構築されていくようなものとは異なり、ソロアルバムならではの“とっ散らかり感”が強い作風ですが、コリィ・テイラーという才能が特定のバンド2つの中だけでは表現しきれなかった個がここで余すところなく発揮されていると考えれば、非常に納得のいく内容ではないでしょうか。巨大になりすぎた2つのモダンメタルバンドのフロントマンが、いろんな意味でガス抜きを行なった結果がこれなら、今後アルバムを重ねるごとにもっと違った側面も見えてくるかもしれない。例えば、今回みたいに自身のルーツを見せるのではなく、今夢中になっている“HR/HM以外の”音楽を表現するとか。むしろそっちのほうが気になったりして。

改めて、コリィ・テイラーが歌えば(それがHR/HMの範疇にあれば)どんな楽曲でも“コリィ・テイラーの曲”になる。それだけ強烈な個性を持つシンガーなんだってことを再確認させてくれる、彼のキャリアにおける重要作のひとつだと断言できます。

 


▼COREY TAYLOR『CMFT』
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2020年7月17日 (金)

STONE SOUR『AUDIO SECRECY』(2010)

2010年9月初頭にリリースされたSTONE SOURの3rdアルバム。

4thアルバム『ALL HOPE IS GONE』(2008年)を携えたSLIPKNOTのワールドツアーを終えるも、201年5月にポール・グレイ(B)が急逝。そんな悲しみに包まれたタイミングにコリィ・テイラー(Vo)、ジェイムズ・ルート(G)が完成された本作は、亡きポールに捧げられた1枚でもあります。

前作『COME WHAT(EVER) MAY』(2006年)制作時はサポート扱いだったロイ・マヨルガ(Dr)が正式加入し、コリィ、ポール、ジョシュ・ランド(G)、ショウン・エコノマキ(B)、ロイという布陣で制作された最初で最後の1枚(ショウンは本作を伴う活動終了後に脱退)。前作から引き続きニック・ラスクリネクツ(DEFTONESFOO FIGHTERSHALESTORMなど)をプロデューサーに迎えた本作は、よりキャッチーでメロディアスな1枚に仕上がっています。

土着的な70'sハードロックと、リフでゴリゴリ押し切る90年代以降のオルタナ・メタルからの影響を程よくブレンドした過去2作とは一線を画し、本作はとにかくポップさ、わかりやすさがより際立つ内容で、コリィの“歌”を武器にして楽曲の良さで勝負しようとする気概が感じられます。耽美なオープニングSE「Audio Secrecy」はまさにポールへの鎮魂歌のようにも聴こえますが、続くリードトラック「Mission Statement」を筆頭に、歌メロが耳や脳にこびりつく良質なハードロックナンバーを次々に繰り出します。

もちろん「Dying」や「Miracles」にように過去2作にもあった土着的バラードも存在するのですが、以前だったらそれが武器のひとつになっていたところを、本作では「こういうのもできます」と薬味程度の扱いに収めている。むしろ、大陸的なパワーバラード「Hesitate」のほうが本作では印象に残るのですから……それくらいメロディアスさが印象的な作品集なわけです。いわゆるポスト・グランジ的立ち位置だった過去2作から、ここで一気に個性を確立させた……そう捉えることもできるのではないでしょうか。それくらい、完成度の高いHR/HMアルバムだと思います。

ただ、そんな本作にも唯一の欠点が。それは曲数が多いことで、通常盤14曲(54分)、スペシャル・エディション18曲(69分)というのはいかがなものかと。すべてそれなりに完成度が高いのはわかるんですよ。でも、これを12〜3曲程度にまとめていたら、もっと完成度の高い傑作として評価されたんじゃないでしょうか。これ、今だったら残りの5〜6曲をEPとして配信限定リリースすることもできるんでしょうけどね。もし、ゆったりめの曲多めのEPを別に作っていたら、ALICE IN CHAINSにおける『SAP』(1992年)的良作が完成していたのでは……なんていうのは邪推でしょうか。

バンドにスタンス的に意外と古き良き時代のHR/HMを大切にしているような印象を受けるけど、リリース形態に関しては「あるもの全部出しちゃえ」というGUNS N' ROSES的な精神が玉に瑕(苦笑)。いい曲が多いのにアルバムとして「これ!」という1枚が少ない、このバンドの弱点が表面化してしまった惜しい1枚です。

 


▼STONE SOUR『AUDIO SECRECY』
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2020年5月 2日 (土)

V.A.『RONNIE JAMES DIO: THIS IS YOUR LIFE』(2014)

2014年4月初頭にリリースされた、ロニー・ジェイムズ・ディオのトリビュートアルバム。日本盤は海外に先駆け、同年3月下旬に発売されました。

2010年5月にがんのためこの世を去ったディオを追悼すべく、メタル界の重鎮から次世代バンドまで幅広い層が一堂に会したこのアルバム。全14曲(ボーナストラック除く)中、本作のために録音された未発表テイクは10曲と単なる埋め合わせ的アルバムでないことが伺えます。

そのラインナップもロブ・ハルフォードJUDAS PRIEST)やグレン・ヒューズ(ex. DEEP PURPLE)、SCORPIONSMOTÖRHEAD、ビフ・バイフォード(SAXON)といった大御所からMETALLICAANTHRAX、DOROなど直接的なフォロワー、そしてHALESTORM、コリィ・テイラー(SLIPKNOTSTONE SOUR)、KILLSWITCH ENGAGEなどの次世代アーティスト、さらにはヴィニー・アピス、ダグ・アルドリッジ、ジェフ・ピルソン、ルディ・サーゾ、クレイグ・ゴールディ、サイモン・ライト、スコット・ウォーレンといったDIOオールスターズまで、世代的にもかなり広いものとなっています。

本編ラストに収められたDIO「This Is Your Life」(1996年の『ANGRY MACHINES』収録曲)を除く13曲中、RAINBOWナンバーを選んだのが5組、BLACK SABBATHナンバーが3組、DIOナンバーが5組とやはりRAINBOWへの人気が集中。METALLICAに至ってはメドレー形式で4曲取り上げてますからね。ズルいわ(笑)。

サバス曲は当然すべて80年代の……と思いきや、オニ・ローガン(Vo/ex. LYNCH MOB)は『DEHUMANIZER』(1992年)からの「I」を選ぶ通ぶりを発揮。こちらはジミー・ベイン(B)やローワン・ロバートソン(G)といった旧DIO組も参加しています。この曲、こうやって聴くと思ったほどモダンなテイストが少なくて、80年代のディオ・サバスを踏襲してたんだねと気づかされます。

1曲ずつ解説していたらキリがないので割愛しますが、ANTHRAX「Neon Knights」におけるジョー・ベラドナのモノマネぶりが相変わらず最高なことと、SCORPIONS「The Temple Of The King」が完全に自分のものと化していること、METALLICAメドレーの強引ぶりなどは特筆すべきものがあるかなと。もちろん、ほかの楽曲も最高なので、原曲を知らないリスナーでも楽しめるはずです。

なお、日本盤にはSTRYPERによる「Heaven & Hell」、DIO DISCIPLES(DIO最終ラインナップのディオ抜き)による「Stand Up And Shout」を追加収録。ストリーミングなどのデジタルバージョンではHATEBREEDのフロントマン、ジャスタによる「Buried Alive」を聴くことができます。ここはぜひ、日本盤を手に入れておきたいところです。

 


▼V.A.『RONNIE JAMES DIO: THIS IS YOUR LIFE』
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2019年12月20日 (金)

STONE SOUR『HELLO, YOU BASTARDS: LIVE IN RENO』(2019)

2019年12月中旬にリリースされた、STONE SOURのライブアルバム。

STONE SOURは2007年夏にiTunes限定の配信ライブアルバム『LIVE IN MOSCOW』を発表していますが、フィジカル(CD)でのライブアルバム発売はこれが初めて。かつ、今作はデビューから在籍してきたRoadrunner Recordsではなく、Cooking Vinylからのリリースという事実に驚かされます。

本作は最新オリジナルアルバム『HYDROGRAD』(2017年)を携え行われたツアーの中から、2018年10月5日のネヴァダ州リノでの公演を収録したもの。setlist.fmで当日のセットリストを調べてみると、アルバム収録内容と完全一致するので、フルスケールでのライブを完全収録したもののようです。

選曲的には全16曲(オープニングSEの「YSIF」を除くと全15曲)中『HYDROGRAD』から7曲(歌モノ6曲)と大半を占め、それ以外は1stアルバム『STONE SOUR』(2002年)から2曲、2ndアルバム『COME WHAT(EVER) MAY』(2006年)から4曲、4thアルバム『HOUSE OF GOLD & BONES - PART 1』(2013年)から2曲、5thアルバム『HOUSE OF GOLD & BONES - PART 2』(2014年)から1曲という内訳。なぜか3rdアルバム『AUDIO SECRECY』(2010年)からは1曲もセレクトされていませんが、それ以外の楽曲はほぼシングルカットおよびMV制作された楽曲ばかりなので、いわば2019年時点でのSTONE SOURのグレイテスト・ヒッツ的な1枚と言えるでしょう。

こうやって過去の楽曲を交えたセットリストで現在のコリィ・テイラー(Vo)がSTONE SOURの楽曲を歌うと、やはり完全に“歌モノ・メタル”なんだなと実感させられます。あと、実は楽曲の質感や方向性がデビューから現在まで、ほぼブレていないという事実にも気付かされます。例えば序盤の最新作からの楽曲とそれ以前の楽曲を交えた構成や、中盤における「Bother」「Tired」のメドレー的な流れとそれに続く「Rose Red Violent Blue」というメロウなナンバー、「30/30-150」から始まる怒涛の代表曲の応酬……どれもが自然と連なっており、バンドの方向性がしっかり定まっていることが伺える。改めていいバンドだな、良心的なメタルバンドだなと思います。

コリィのボーカルもベストコンディションですし、バンドも破綻することなく、楽曲も持ち味を活かしたそつないプレイに徹している。悪い言い方をしてしまえば面白みに若干欠けるかなと思わなくもないけど、ここまでやられたら逆に文句言えなくなりそう。それくらい、いい曲をベストなプレイで届けようとする生真面目さが音源から伝わってきます。

現在はSLIPKNOTとしてワールドツアー中のコリィなので、しばらくはSTONE SOURとして活動することもないと思われます。なので、STONE SOURが恋しくなったらこのライブベストを聴いて、来たる次回作に思いを馳せてはいかがでしょう。

 


▼STONE SOUR『HELLO, YOU BASTARDS: LIVE IN RENO』
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2019年10月25日 (金)

STONE SOUR『STONE SOUR』(2002)

2002年8月にリリースされた、STONE SOURのデビューアルバム。

STONE SOURはコリィ・テイラー(Vo)がSLIPKNOT加入前(1992〜1997年)にジェイムズ・ルート(G/現在はSTONE SOUR脱退済み)に在籍していたHR/HMバンドで、コリィとジェイムズのSLIPKNOT加入を機に一度解散。しかし、『IOWA』(2001年)の活動がひと段落する頃に再結成し、SLIPKNOTが所属するRoadrunner Recordsと契約することになります。

デビューアルバムの参加メンバーはコリィとジェイムズのほか、ジョシュ・ランド(G)、ショーン・エコノマキ(B)、ジョエル・エクマン(Dr)という解散前の布陣。バンドとトム・タットマンのプロデュース、トビー・ライト(ALICE IN CHAINSKORNSLAYERなど)のミキシングにより完成した本作は全米46位を記録、売り上げ50万枚を突破する、デビュー作としては上出来な結果を残しました。

また、本作収録曲の「Bother」が映画『スパイダーマン』(2002年)のサウンドトラックにも収録、シングルカットされた結果全米56位のヒットとなりました。この曲は今でもライブで必ず歌われる、彼らにとって代表曲のひとつと言えるでしょう。

そして、本作での活動をもってコリィやジェイムズが素顔を公開。「マスクの下はこうなっていたんだ! コリィ、イケメソじゃん!」と瞳をキラキラさせたお嬢さん方も少なくなかったようです。

内容に関してですが、SLIPKNOTで聴くことができたコリィの歌唱力の高さが存分に発揮された、メロディアスなHR/HMアルバムに仕上がっています。ヘヴィさもしっかり楽しめるのですが、SLIPKNOTのそれとは異なる質感で、あくまでHR/HMの範疇にあるヘヴィさといいますか。要するに、エクストリーム・ミュージックのそれとは相反するヘヴィさなんです(SLIPKNOTが「エクストリーム/ヘヴィの中に、ほんのちょっとのメロウさ」だとしたら、STONE SOURは「メロディアスさの中に、味付けとしてのヘヴィさ」。要するにスタート地点が真逆なのです)。

と同時に、伝統的なHR/HMにこだわったというだけではなく、しっかり彼のルーツ……グランジ以降のオルタナティヴロックのカラーもしっかりと感じられる。王道のメタルとは一線を画するものかもしれませんが、間違いなくこれは“90年代以降のHR/HMのそれ”以外の何ものでもありません。かつ、コリィが歌えばどれもSLIPKNOTとの共通点が自然と感じられています。特に、本作を経て制作されたSLIPKNOTの3rdアルバム『VOL.3 : (THE SUBLIMINAL VERSES)』(2004年)はこのSTONE SOURでの経験がなければ到達できなかった作品だったのではないでしょうか(事実、『IOWA』以降の不和がコリィをSTONE SOURへと突き動かしたわけですし、下手したらそのまま解散しても不思議じゃなかったわけですから)。

今やサイドプロジェクトなんて目で見る人はいないほど、SLIPKNOTと交互で動くコリィのメインバンドのひとつ。その完成度は作品を追うごとに高まっていますが、SLIPKNOTとのつながりという意味では本作の重要性は非常に高いですし、その後の“歌モノ・ヘヴィロック/ニューメタル”を語る上でも重要な1枚ではないでしょうか。

 


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2019年3月 2日 (土)

MARK MORTON『ANESTHETIC』(2019)

2000年代を代表するUSヘヴィロック/ヘヴィメタルバンドLAMB OF GODのギタリスト、マーク・モートンによる初のソロアルバム。全10曲すべてが歌モノで、それぞれ異なるシンガーを迎えて制作されたものとなっています。そういう意味ではギタリストのエゴが前面に打ち出されたものではなく、あくまでソングライター/表現者としてバンドとは異なるアプローチで作り上げた1枚と言えるでしょう。

参加シンガーはチェスター・ベニントン(LINKIN PARK)、ジャコビー・シャディックス(PAPA ROACH)、マーク・ラネガン(ex. SCREAMING TREES)、チャック・ビリー(TESTAMENT)、ジェイク・オニ(ONI)、マイルス・ケネディ(ALTER BRIDGESLASH)、マーク・モラレス(SONS OF TEXAS)、ジョシュ・トッド(BUCKCHERRY)、ネイマー・マドックス、アリッサ・ホワイト-グルーズ(ARCH ENEMY)、そしてLAMB OF GODのフロントマンであるランディ・ブライとマーク自身という豪華かつバラエティに富んだ面々。演奏面ではギターをマークがすべて担当したほか、STONE SOURのロイ・マイヨルガ(Dr)、MEGADETHのデイヴィッド・エレフソン(B)、KORNのレイ・ルジアー(Dr)、ALICE IN CHAINSのマイク・アイネズ(B)、TRIVIUMのパオロ・グレゴリート(B)&アレックス・ベント(Dr)、CLUTCHのジャン・ポール・ガスター(Dr)、元THE BLACK CROWESのスティーヴ・ゴーマン(Dr)&マーク・フォード(G)といったジャンルの垣根を超えた布陣が顔を揃えています。

アルバムはマークとジェイク・オニ、そしてLAMB OF GODのプロデューサーとして知られるジョシュ・ウィルバーとの共同制作によるもの。楽曲自体はマークが「いつかバンドとは別の形で発表したい」と長年書き溜めてきたものなのですが、各シンガーの個性が強いこともあってか、それぞれのシンガーに合った手法で書き下ろされたものと錯覚してしまいそうになります(もちろんそういう曲も含まれていますが)。

チェスターが亡くなる数ヶ月前に制作されたオープニングトラック「Cross Off」はLINKIN PARKをよりモダンヘヴィネス寄りにした良曲ですし、ジャコビーが歌う「Sworn Apart」もPAPA ROACHのアルバムに入っていたとしても不思議じゃない1曲。かと思えばマーク・ラネガンが歌う「Axis」ではアーシーさが前面に打ち出されているし、チャック・ビリー&ジェイク・オニによる「The Never」のスラッシュ&王道メタルなノリもひたすらカッコいい。

マイルス・ケネディ歌唱による「Save Defiance」は完全にマイルスのノリだし、マーク・モラレス参加の「Blur」はSONS OF TEXAS寄りのスモーキーさが表出している。ジョシュ・トッドが歌う「Back From The Dead」なんてBUCKCHERRYをヘヴィにさせたノリで好印象だし、ネイマー・マドックスによる「Reveal」はどこかファンキー。マーク本人が歌唱する「Imaginary Days」は正統派ハードロックの香りが感じられ、ラストを飾るランディ&アリッサによる「The Truth Is Dead」は2人の声の対比も良いし、なにより楽曲がLAMB OF GODの延長線上にあるのが良い。

マークのギタリストとしての非凡さも随所に感じられるし、何よりも曲のバラエティ豊かさに驚かされる。このひと、こんなに多才だったんだと驚き連発の1枚です。

LAMB OF GOD本体は、昨年BURN THE PRIEST名義のカバーアルバム『LEGION: XX』を発表したりと若干リラックスモードかもしれませんが、こういったガス抜きを経て次にどんなオリジナルアルバムを届けてくれるのか、今から楽しみでなりません。まずは奇跡の共演が実現した(特に、貴重なチェスターの声が残された)この意欲作をじっくり聴き込みたいと思います。

 


▼MARK MORTON『ANESTHETIC』
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2018年6月20日 (水)

DAMAGEPLAN『NEW FOUND POWER』(2004)

2003年にPANTERAを解散させたヴィニー・ポール(Dr)&ダイムバッグ・ダレル(G)兄弟が、同年のうちに新バンドDAMAGEPLANを結成。パトリック・ラックマン(Vo/元HALFORDのギタリスト)、ボブ・ジラ(B/のちにHELLYEAH加入)の4人編成でアルバムを制作し、2004年2月に最初にして最後のアルバム『NEW FOUND POWER』をリリースします。

後期PANTERAのスタイルを継承しつつも、どこか気難しさが強かった同スタイルよりもキャッチーさが増したような楽曲の数々は、良く言えば取っつきやすい、悪く言えばクセが弱いものだったかもしれません。しかし、ボーカリストならまだしも、聴いた瞬間に「そうそう、このドラミング!」とか「これこれ、このギターソロよ!」とか気づけるアーティスト/プレイヤーって、今の時代なかなかいないと思うんですよ。それをバンドが変わっても維持し続けたヴィニー&ダイムバッグ兄弟の個性って、改めてすごいなと。

PANTERAという比較対象がいる以上、どうしてもインパクトの強さを求めてしまいがちですが、そこは正直そこまで強くないかなと。ボーカルのパトリック・ラックマンはそこそこ存在感の強い歌声/ダミ声で主張しており、これはこれでアリ。この声の合わせてなのか、音のほうもどこかモダンで、PANTERAの頭脳チームがあえて時代に寄せていったような雰囲気も。ニューメタル的な色合いや、ALICE IN CHAINS寄りのグランジ/サイケデリックヘヴィロック、90年代後半以降に登場したモダンヘヴィネス系の側面も感じられるのですが、そんな中でもしっかり自身の色を主張するPANTERA組が健気といいますか。嫌いになれないんですね。

「Fuck You」ではSLIPKNOTSTONE SOURのコリィ・テイラー(Vo)が個性強めのボーカルを聴かせ、「Reborn」ではBLACK LABEL SOCIETYザック・ワイルド(G)が“らしい”ギタープレイを披露している(さらに「Soul Bleed」では歌声まで)。また、日本盤ボーナストラックの「Ashes To Ashes」にはALICE IN CHAINSのジェリー・カントレル(G, Vo)もボーカルでゲスト参加しています。完全にご祝儀的なやつですが、これらのコラボレーションがカッコいいったらありゃしない。「Fuck You」ではパトリックもコリィに負けじと叫びまくってるし、このへんは今聴いても本当にカッコいいです。

バンドとしては本作で展開した青写真をもとに、次作あたりで大化けしてもおかしくなかったんですが、アルバム発売から10ヶ月後の2004年12月8日、あんなことになってしまうとは……。

カラーヴァイナルが近々発売されるというニュースを知り、久しぶりに聴いてみたんですが……1周回ってカッコよさが増しているような。もはやダイムバッグ・ダレルのギタープレイを生で聴けないという現実がそうさせるのかはわかりませんが、リリース時に聴いたときよりもポジティブに楽しめる自分がいます。PANTERAを期待すると痛い目を見るかもしれませんが、これはこれで“らしい”作品だと思います。

※2018.6.23.追記 ダイムバッグ・ダレルの実兄であるヴィニー・ポールが現地時間6月22日、お亡くなりになったとのこと。(ソース) この記事を書いたときは、数日後にまさかこんなことになるなんて思いもしませんでした。改めてヴィニーのご冥福をお祈りいたします。

HELLYEAHであなたのプレイ、もう一度観たかったです。

 


▼DAMAGEPLAN『NEW FOUND POWER』
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