カテゴリー「Stone Temple Pilots」の12件の記事

2020年4月28日 (火)

STONE TEMPLE PILOTS『STONE TEMPLE PILOTS (2010)』(2010)

2010年5月下旬に発表された、STONE TEMPLE PILOTSの6thアルバム。

2001年に5thアルバム『SHANGRI-LA DEE DA』を発表するも、翌2002年にスコット・ウェイランド(Vo)がVELVET REVOVERに加入したことでSTPを脱退。結局、バンドはそのまま解散の道を選びます。しかし、2007年にスコットがVELVET REVOLVERを脱退すると、そのままSTP組に合流してバンドとして再始動することに。2008年に60本以上におよぶ北米ツアーを行い、そのまま6作目のスタジオアルバム制作へと突入します。

9年ぶりに届けられた新作は、バンド名を冠したシンプルなタイトル。中身も変化球など一切ない、正真正銘のSTPサウンドで聴く者を納得させる内容でした。その甲斐あって、全米2位という高ランクを獲得。まだまだ行ける!とその健在ぶりを証明したのでした。

2〜3分台とコンパクトにまとめられた楽曲群は、過去5作のキャリアを総括するような仕上がりで、デビュー作『CORE』(1992年)にあったポスト・グランジ的なゴリゴ感こそ薄れていますが、2rdアルバム『PURPLE』(1994年)や3rdアルバム『THE MUSIC...SONGS FROM THE VATICAN GIFT SHOP』(1996年)で表現されたサイケデリック感やグラムロック、バブルガムポップからの影響が強くにじみ出た、貫禄あるロックナンバーをたっぷり楽しむことができます。

VELVET REVOLVERの2作を経て再びSTPに戻ったスコットですが、2バンドで楽しむことができたサイケポップ感はやはりスコットによるものが大きかったんだなと、このアルバムを聴いた当時強く感じたものです。もちろん、それがドラッグの影響によるものだとは言いませんが、もともとこの人って70年代前半の英国グラムロックからの影響が強い人だったんでしょうね。特に本作からはそのへんのルーツがいろいろ垣間見えますし、個人的にはデヴィッド・ボウイあたりからの影響が強いのかな?と感じずにはいられません。

そんなスコットのポップさを、安定感の強いバンドアンサンブルで支える。特に本作で鳴らされる音はハードロックのそれというよりは、もっと土着的で自然体という印象が強く、オープニングの王道チューン「Between The Lines」はもちろん、「Hickory Dichotomy」や「Dare If You Dare」といったサイケナンバー、パワーポップ感の強い「Cinnamon」、STP流ファンクロック「Hazy Daze」など佳曲揃い。楽曲の幅を徐々に広げることで、戦うフィールドもさらに拡大していくことになりそう、と感じさせるに十分な1枚だと思います。

ここからさらなる進化が楽しみだ……とワクワクしたものの、案の定バンドからスコットが再脱退。チェスター・ベニントン(LINKIN PARK)をフィーチャーした編成などでの活動もありましたが、結局2015年12月にスコットは帰らぬ人に。バンドは2016年にジェフ・グートを新メンバーに迎え、2018年初頭に本作と同じタイトルの新作『STONE TEMPLE PILOTS』を発表しています。

 



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2020年2月16日 (日)

STONE TEMPLE PILOTS『PERDIDA』(2020)

2020年2月上旬にリリースされた、STONE TEMPLE PILOTSの8thアルバム。

前作『STONE TEMPLE PILOTS』(2018年)から加入したジェフ・グート(Vo)参加後2作目にあたる本作は、初の全編アコースティック・アレンジによるフルアルバム。2019年前半には本作の制作に取り組んでいたとのことで、レコーディングはエリック・クラッツ(Dr)所有のBomb Shelter Studioにて行われたそうです。

タイトルはスペイン語で“Loss”(喪失、損失)を意味する言葉ですが、聞こえてくる音色やサウンドからは彼ら特有のネガティヴさや内省的な雰囲気はあまり感じられません。いや、多少内省的な部分はあるんでしょうけど、それはダークさという意味ではなく、むしろ穏やかさや心の平穏さが表現されたものに近い印象を受けるのです。

曲によってはフルートやサックスなどの管楽器、あるいはチェロやバイオリンなどの弦楽器もフィーチャーされ、楽曲の持つ緩やかな世界観をより強調させている。そこに彼ら特有の美しいハーモニーが重なり合うのですが、メジャーキーで軽やかに奏でられるそれらの楽曲群は非常に心地よく響くものばかりで、これまでのアルバムだったら箸休め的に挿入されたトラッド調ナンバーやカントリーテイストの楽曲がアルバムの冒頭から最後まで、ぎっしり詰め込まれているわけです。

なので、ぶっちゃけ突き抜けるような爽快感や開放感を求めると痛い目を見る1枚かもしれません。豪快なギターリフもなければ、バカデカいビートも力強いシャウトも皆無なわけですから。

でもね。最初から最後まで気持ちよく楽しめるのもまた事実。だって、どこからどう聴いてもこれ、STONE TEMPLE PILOTSの音ですから。LED ZEPPLEINでいえば3rdアルバムALICE IN CHAINSでいえばEP『SAP』(1992年)や『JAR OF FLIES』(1994年)……というのは言い過ぎかしら。とにかく、そういう側面も心を広く持って楽しめるというリスナーにはうってつけの1枚です。

あとね。本作を聴いて思ったのは……結局、彼らも“アメリカのバンド”なんだな、と。当たり前っちゃあ当たり前なんですが、やっぱりこういうこともやりたい人たちなんでしょうね。それはお国柄なのか、あるいはミュージシャンとしてのエゴや成長の表れなのかはわかりませんが、これが今後永久に続くわけでもなさそうですし、今はこのモードを素直に楽しみたいと思います。

 


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2020年1月 2日 (木)

banned songs of US radio after 9.11

つい先日、昨年の9月11日に配信されたKERRNG!の記事「HERE ARE THE 164 SONGS THAT WERE BANNED FROM AMERICAN RADIO AFTER 9/11」がTwitterで流れてきたんですね。このリスト自体、これまでも完全版・不完全版問わずさまざまな形で流出していたと思いますし、実際僕も学生時代に湾岸戦争をテーマに「表現の自由」や「自主規制」について卒論を書いていたので、常に気になってチェックしていました。今回の記事も特別目新しさはなかったのですが、急にふと「そういえば、卒論書いてた90年代前半は実際にそういう曲を全部聴くのに相当苦労したけど、今ってストリーミングサービスがあるし、もしかしてこのリストの曲全部聴けるんじゃないかな……」と思ったんですね。

で、実際にプレイリストを作ってみようと思い、検索を開始……始めたのが明け方だったのですが、気づいたら1、2時間でプレイリスト完成。記事中に登場する曲名やアーティスト名に多少の間違いがあったので、ネット上で公開されている同様の記事(結局Wikipediaが一番便利でした)とも照らし合わせつつ、完全なるプレイリストを完成させました。

さすがに全曲ありました。すごいですね、Spotify(今回はApple Music版は作成せず。だって2つも作るの時間かかるし)。RAGE AGAINST THE MACHINEのみ全曲放送禁止だったので、本来なら彼らの楽曲はすべて入れるべきなんでしょうけど、それだと埒が明かないので各アルバムから主要ナンバー1曲ずつ、計4曲を入れることにしました。そこに「Knockin' On Heaven's Door」のみボブ・ディラン版とGUNS N' ROSES版の2曲を用意して、全168曲/11時間14分というアホほど長いプレイリストが完成したわけです(笑)。

一応、アーティスト名アルファベット順、複数の曲がリストにあるアーティストに関しては曲名もアルファベット順で並べてあります。なので、AC/DCみたいにいきなり7曲も続いてしまうこともありますが、シャッフル再生すると普通にラジオ感覚で楽しめるのではないでしょうか……しかも、いい曲ばかりですし。

こんなご時世だからこそ、こういった楽曲を手軽に楽しめる自由をかみしめつつ、今の生活に感謝したいと思います。またいつ、これらの楽曲やほかのヒット曲が放送禁止になるか、本当にわかりませんしね(しかも、あの当時よりも状況的には最悪ですから)。

 

※ブラウザ(記事上)でプレイリストを再生すると100曲しか表示されないようなので、プレイヤー右上のSpotifyロゴをクリックして、自身のSpotifyプレイヤーで再生することをオススメします。

2019年9月23日 (月)

STONE TEMPLE PILOTS『PURPLE』(1994)

1994年6月にリリースされた、STONE TEMPLE PILOTSの2ndアルバム。

グランジ・ムーブメントの後押しもあり、デビューアルバム『CORE』(1992年)は1993年に入ってからバカ売れ。全米3位まで上昇し、800万枚を超えるメガセールスを記録しました。

ブレンダン・オブライエン(PEARL JAMAEROSMITHRED HOT CHILI PEPPERSなど)がプロデュース&ミックス、ニック・ディディア(INCUBUSRAGE AGAINST THE MACHINEAUDIOSLAVEなど)の黄金コンビが再びタッグを組んだ本作は、基本的には前作の延長線上にある内容。かっちり作り込まれた1stアルバムと比較すると少々肩の力が抜けた感があり、その恩恵もあってかグルーヴ感は前作以上ではないかと思います。

バンドとしての安定感も前作以上に増しており、終始安心して楽しめる1枚だと思います。『CORE』を気に入った人なら間違いなく楽しめる内容ですしね。

……で終わってしまいそうですが(苦笑)。本当にこれ以上書きようがないくらい、STONE TEMPLE PILOTSらしい1枚なんですよね。

だからなのかわかりませんが、リリース当時はこのアルバム、僕はそこまでハマれなかったんですよ。良いのはわかるんです。聴いていて体が反応しますし。だけど、「だったら、前のやつ聴くからいいや」と思ったのもまた事実でして。それくらい前作を踏襲しすぎていて引っかからなかったという。

思えば、アルバム発売の1年前に、映画『クロウ/飛翔伝説』のサントラに提供した新曲「Big Empty」の時点で、「ん?」と感じていたんですよ。「いやいや、周りが絶賛するほどすごい曲か?」って。彼らにしては普通の出来ですし、平均点をクリアしてるんでいいでしょ?くらいの意気込みしか感じられないというか。

でも、思えばそれって、すでに始まっていたスコット・ウェイランド(Vo)のドラッグ癖の影響だったのかもしれませんね。

「Vasoline」や「Interstate Love Song」といったシングル曲、後期にも通ずるアコースティックチューン「Pretty Penny」、パーカッシヴな「Lounge Fly」など特筆すべき楽曲は確かにいくつもあるんだけど、アルバムとして通して聴いたときにピンとこない。なぜなんでしょうね。

そういったモヤモヤ感を、まさか続く3rdアルバム『THE MUSIC... SONGS FROM THE VATICAN GIFT SHOP』(1996年)が払拭してくれることになるとは、この『PURPLE』がリリースされた当時は思いもしませんでしたが。

ちなみに本作、前作からの勢いを引き継ぎ、初の全米1位を獲得。セールス的にも前作に匹敵する600万枚以上を売り上げています。

 


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2019年1月31日 (木)

STONE TEMPLE PILOTS『NO.4』(1999)

1999年10月にリリースされた、STONE TEMPLE PILOTSの4thアルバム。スコット・ウェイランド(Vo)のドラッグ問題およびそれに伴う裁判などがあり、バンドは宙ぶらりんな状態に。そんなスコットにしびれを切らした残りのメンバー3人は別のシンガーとともに別バンドTALK SHOWを結成、アルバム『TALK SHOW』(1997年)をリリース。それを受けて、当のスコットはソロアルバム『12 BAR BLUES』(1998年)を発表し、もうバンド復活は望めないかと思っていたところ、4人は再度膝を付き合わしてアルバム制作に臨み、完成させたのがこのアルバムになるわけです。

プロデュースはデビューアルバム『CORE』(1992年)から4作連続での担当となるブレンダン・オブライエン。『THE MUSIC... SONGS FROM THE VATICAN GIFT SHOP』(1996年)では軽めで若干スカスカ感のあるサウンドで、ポップかつグラマラスな世界観を作り上げることに成功したものの、続くここでは過去イチで音が太くて重くて、それでいてキャッチーさがしっかり備わっている良バランスの1枚に仕上げられています。

オープニングの「Down」からして初期作にあった危うさやヘヴィさが復活していますが、以前と決定的に異なるのは“グランジ”のグの字も存在しないこと。完全にSTPのオリジナルとして完結しており、多くのSTPファンおよびヘヴィロックファンを納得させるクールさを持つ1曲となっています。

その後も「Heaven & Hot Rods」や「Pruno」と、メロがしっかりしたヘヴィロックが続きますが、「Church On Tuesday」あたりから少しずつ趣向が変化していきます。このあたりは完全に前作で得たグラマラスロックの効果がはっきりと表れており、その決定打となるのが5曲目の「Sour Girl」。この曲のキャッチーさ、美しさといったら……スコット、まだこんな曲を歌えるんだね。と、当時はホッとしたものです。

この前半だけでも最高なのに、6曲目「No Way Out」からの後半戦も素晴らしいんです。ヘヴィでサイケデリックな同曲から、攻めのアップチューン「Sex & Violence」、サイケポップという呼び名がふさわしい「Glide」、カントリーの香りすらする「I Got You」、タイトルからしてまんまなパンクチューン「MC5」、ラストを飾るにふさわしいドラマチックなアコースティックバラード「Atlanta」……全11曲、完璧な構成です。

過去3作での経験を無駄にせず、しっかりバンドとして前進することを選んだ。その結果が“らしさ”しか感じられないこの4thアルバムなわけですが、正直言うと初めて聴いたときは「ああ、これで解散かな。ラストアルバムっぽいな」と思ったのもまた事実。実際、バンドは本当に解散しても不思議じゃない状況だったわけですが、彼らはこのあともう1枚だけアルバムを制作することになりますが、それはまた別のお話。

なお、本作はそういった素晴らしい内容にも関わらず、過去最低となる全米6位(100万枚止まり)で終了しています。ただ、「Sour Girl」が全米78位とキャリア唯一のシングルヒットを残しており、それだけでも本作は大きな意味を残したと言えるのかな。個人的には前作と同じくらい好きな1枚です。



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2018年3月18日 (日)

STONE TEMPLE PILOTS『STONE TEMPLE PILOTS (2018)』(2018)

前作『STONE TEMPLE PILOTS』(2010年)と同タイトルですが、内容は別モノとなるSTONE TEMPLE PILOTS通算7作目のオリジナルアルバム。フルアルバムとしてはスコット・ウェイランド参加最終作であり、彼の復帰後最初で最後のアルバムとなった『STONE TEMPLE PILOTS』以来8年ぶり、新音源としてはそのスコットの後任としてLINKIN PARKから兼任参加したチェスター・ベニントンとのEP『HIGH RISE』(2013年)以来5年ぶり。まあとにかく、ここ数年のストテンはツイてない。解雇したスコットは2015年12月に、やはりというかドラッグのオーバードーズで死去。さらに2017年7月にはLINKIN PARKへと戻っていったチェスターも自殺と、歴代シンガーをことごとく不幸な形で失っているのですから。

しかし、バンドとして歩みを止めることなく、ストテンは2016年秋に新ボーカリストオーディションを開始。その結果はしばらく発表されることなく、彼らは水面下で後任を決め、そのままレコーディングに突入。しばらく沈黙を貫き(チェスター死去のときはコメント出しましたが)、昨年11月に新メンバーとしてジェフ・グートが加わったことと、新曲「Meadow」の配信を発表し、年明け2月にはアルバムリリースがアナウンスされたのでした。

「Meadow」を聴いた時点で、まあボーカリストが変わろうがストテンはストテンのままなんだろうな、とは思っていましたが……アルバムも“まんま”でした。もちろん良い意味で。

ジェフ・グートの歌声は決してアクが強いというわけではないものの、どことなくスコットにもチェスターにも似てるような印象もあり(そう聞こえてくる瞬間が多々あり)、前任たちからかけ離れているとは思えない。もちろん、ディレクションによって歌い方を“寄せている”のもあるんでしょう。20年以上にわたり貫きとおしてきた信念を強く感じさせる仕上がりです。

楽曲自体も適度にハード、かつ適度にポップ。最初の解散前にあったサイケデリックな要素もしっかり兼ね備えており、ある種の集大成感すら感じさせます。が、思えば前作『STONE TEMPLE PILOTS』(タイトルややこしい)の時点で「再結成一発目にしてセルフタイトル」を名乗っていたのですから、あの時点で「今自分たちがやるべきこと=集大成的作品を作ること」というコンセプトがあったと思うんです。実際、そういうアルバムだと思いましたし(もちろん、ただの“焼き直し”だけでは終わっていませんでしたが)。

そういう点において、今作も同じコンセプトのもとに制作されているように感じるのですが、ただ前回と今回は同じ“立て直し後一発目”でも、そこへ向かうまでの経緯やメンバーのテンションもまったく異なるもの。特に今回は少なからずどんよりした空気を抱えていたでしょうし……。そこを打ち消すことができたのは、やはりフレッシュな新メンバーのおかげなんでしょうね(フレッシュといいながら、ジェフはすでに40歳オーバーですけどね)。それに、無駄に若くてメラメラな奴ではなく、ある程度落ち着き払った、それなりにキャリアのある人間を迎えたのも大きいのかなと。

もしあなたが過去のストテンの作品に少しでも触れたことがあり、1枚でも好きなアルバム、1曲でも好きなナンバーがあるのなら、本作にはあなたの琴線にっ触れる要素があるはずです。むしろ、「ボーカルが違う」「オリメンじゃない」なんてつまらないことにこだわらなければ、今までの“続き”として普通に楽しめることでしょう。衝撃こそないけど、いつ何時でも安心して楽しめる1枚。



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2018年3月 4日 (日)

STONE TEMPLE PILOTS『THE MUSIC...SONGS FROM THE VATICAN GIFT SHOP』(1996)

1996年3月(US。日本では4月)にリリースされた、STONE TEMPLE PILOTSの3作目にあたるスタジオアルバム。デビューアルバム『CORE』(1992年)が800万枚を超えるメガヒット作となり、続く2ndアルバム『PURPLE』(1994年)は全米1位を獲得し、600万枚もの売り上げを記録。シアトル出身ではないものの、当時勃発したグランジムーブメントにうまく乗っかってトップバンドの仲間入りを果たしたものの、スコット・ウェイランド(Vo)のドラッグ癖やそれにまつわる逮捕〜薬物施設入院などの連発により、バンド活動は破綻しかけていました。

そんな中、バンドは3rdアルバム制作にあたり合宿生活的なレコーディングを敢行。しかし、スコットはレコーディングや曲作りになかなか顔を出さず、ひとつ屋根の下で生活しながらも顔を合わせずに制作は進んでいったそうです。あちゃあ。

で、完成した本作。最初に聴いたときは正直面食らいました。「あれ、違う」と。前作、前々作ではグランジ(ALICE IN CHAINSSOUNDGARDENあたり)寄りのハードロックサウンドを聴かせてくれた彼らでしたが、本作ではそういった手法を捨て去り、もっとシンプルでわかりやすりロックを作り上げています。ラウンジミュージック的なオープニングのインスト「Press Play」には度肝を抜かれましたが、続く「Pop's Love Suicide」での肩の力の抜けっぷり、最高じゃないですか。このユルさ、嫌いじゃないです。かと思えば、続く「Tumble In The Rough」ではタイトさを強調し、再び「Big Bang Baby」で脱力。良く言えばリラックスしたロックアルバム、悪く言えば緊張感皆無でバンドとしてのまとまりゼロ。そこは聴き手の受け取り方によって大きく変わってくるかもしれません。

が、本作はその後のストテンの方向性を考える上で、非常に重要な作品だと断言していいと思います。メロディアスなポップロック「Lady Picture Show」やサイケデリックなバラード「And So I Know」で示したスタイルは、以降の音楽性における大きな武器になっていくのですから。

「Trippin' On A Hole In A Paper Heart」や「Ride the Cliche」のように従来の彼らを彷彿とさせるグルーヴィーなハードロックも存在しますが、過去2作よりもラフでアーシーなプレイスタイルで表現されており、かっちり作り込まれた前2作と大きく異なります。むしろ、本作でのシンプルなプレイスタイルのほうが従来のグランジに近いのでは……と思ってしまうほど。むしろ、デビュー作が異常に出来過ぎだったんですよね。

バンドとしては危機的状況下にあったものの、実際に完成したアルバムはバンドの新たな可能性が存分に感じられる意欲的な内容だったというのは、なんとも皮肉な話ですね。なお、本作は全米4位まで上昇し、200万枚以上を売り上げるという成績を残しています。過去2作が売れすぎたせいでセールスダウンした感が否めませんが、グランジムーブメントが終わった1996年という時代にこれだけの成績を残したことは、むしろ褒められるべきことだと思いますよ。



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2017年5月 7日 (日)

STONE TEMPLE PILOTS with CHESTER BENNINGTON『HIGH RISE』(2013)

LINKIN PARKのチェスター・ベニントンはバンド活動以外にも、さまざまな音楽ユニット/バンドに参加しています。例えば2009年にアルバム『OUT OF ASHES』を発表したバンドDEAD BY SUNRISE、そして2013年に加入したSTONE TEMPLE PILOTSあたりは有名かと思います(前者は最近のファンには身近ではないかもしれませんが)。

スコット・ウェイランドが脱退し、ボーカリスト不在となったストテンはチェスターをボーカルに迎え、新たに“STONE TEMPLE PILOTS with CHESTER BENNINGTON”名義で活動を続けていくことを発表。2013年春にはこの編成で初のオリジナル曲「Out Of Time」を配信し、秋には同曲を含む5曲入り『HIGH RISE』をCDリリースするのでした。

スコットが再加入して2010年に発表したアルバム『STONE TEMPLE PILOTS』は“いかにも”な作風で、古くからのファンを喜ばせてくれました。そこから3年後に制作されたこの『HIGH RISE』も、基本的には従来のストテンサウンドなんですが、そこにチェスターのボーカルが乗ることで若干の違和感が生じる結果に。スコットほどのアクの強さもないし、線も細いチェスターの歌声はこういうオーソドックスなロックには向いてないのではないか。一聴したときはそう思ったものでした。

しかし、何度か聴き返すうちに不思議と馴染んでくるんです。これはこれで悪くないかも、と。もともと楽曲自体は過去のストテンのアルバムに入っていても不思議じゃないナンバーばかりだし、チェスターが入ったからといって特に新しいことをやろうとしていない。「いや、むしろ俺たちはこれがやりたいんだ!」という従来のストテンメンバー3人からの強い意志が感じられる、“この先”へつなげるための重要な作品集なんですね。

バンド名の「with〜」表記からもわかるように、この編成は永遠ではない。実際、2015年秋にはチェスターはストテンからの離脱を発表。その1ヶ月後にはスコットも急逝しており、バンドは今も新ボーカリストを探している最中です。オーバードーズという形でこの世を去り、ロックシーンにその名を刻み込んだスコット。LINKIN PARKという世界的に大成功したバンドから少し離れて、大先輩たちの共演でアク抜きしてバンドへと戻っていったチェスター。そして地道に続けることを選んだストテン。どの生き方が正しいとか間違ってるとか言いがたいけど、今は再びSTONE TEMPLE PILOTSとしての新作を気長に待ちたいところです。

 


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2017年4月26日 (水)

STONE TEMPLE PILOTS『CORE』(1992)

ALICE IN CHAINSが『FACELIFT』(1990年)でメジャーデビューをし、NIRVANAがメジャー第1弾アルバム(通算2枚目)『NEVER MIND』(1991年)、そしてPEARL JAMが『TEN』(1991年)、SMASHING PUMPKINSが『GISH』(1991年)という1stアルバムをそれぞれ発表し、SOUNDGARDENが『BADMOTORFINGER』(1991年)をドロップしたことで、1992年に入ると一気に盛り上がりが加熱したシアトルのグランジシーン。特にNIRVANA、PEARL JAMの大ヒットがその後のロックシーンを大きく変えていくことになるわけですが、この流れに呼応するかのようにカリフォルニアから1組のバンドがデビューします。それが今回紹介するSTONE TEMPLE PILOTSというバンドです。

……って説明、今更いらないと思いますが。スコット・ウェイランド(Vo)、ディーン・ディレオ(G)、ロバート・ディレオ(B)、エリック・クレッツ(Dr)の4人からなるこのバンドは、1992年9月にAtlantic Recordsからアルバム『CORE』でメジャーデビュー。日本盤リリースは確か翌1993年春頃だったと記憶しています。ちょうど1992年末から1993年初頭にかけて、FENなどのラジオ局でこのアルバムからのシングル曲「Sex Type Thing」を耳にするようになりまして、正直そのときは「PERAL JAMみたいな音、声だな。新曲か?」くらいに思ってたのですが、それがSTONE TEMPLE PILOTSという名前のバンドだと知ったのは、ちょっと時間が経ってからでした。

「Sex Type Thing」のALICE IN CHAINS+PEARL JAMな“グランジかぶれ”サウンドは評価よりも嘲笑の対象になりかねない1曲でしたが、アルバムを聴くとそのかぶれっぷりはさらにひどいもの……いや、東海岸で起こっていたムーブメントに対する西海岸からの回答と受け取れるような内容でした。

オープニング「Dead & Bloated」や「Where The River Goes」のタメを効かせたプレイや、「Wicked Garden」「Sin」あたりに漂うサイケデリック感はSOUNDGARDENにも通ずるものがあるし、「Creep」の枯れたアコースティックテイストはPEARL JAMともNIRVANAとも言えなくない。「Plush」のポップ感は……と、言い出したらキリがないのでこのへんに止めておきますが、とにかくあの時代の“良いとこ取り”なテイストはある意味卑怯でもあり、一周回って天才ですらあるなと。

ただね、どの曲もメロディやアレンジ、楽曲の作りは優れているんですよ。模倣からスタートしたのかどうかは別として、そこだけは素直に評価したい。結果、最初から最後まで素直に楽しもうとすれば最高のハードロックアルバムだと思いますしね。

また、本作の時点ではまだ露呈してなかったスコットの良くも悪くもカリスマチックな面は、作品を重ねていくごとに肥大しくことに。最終的にはそこがマイナスに働きバンド脱退〜オーバードーズでの急逝というバッドエンドへとつながるわけですが。

それと、すでに本作からも存分に感じられると思いますが、楽器隊の演奏能力の高さ、特にディーンのギタリストとしての非凡さはもっと評価されてもいいのではないかと思います。そのルックス含め、ジミー・ペイジ直系的印象が強いですし。

今ではそこまでネガティブに捉えられることはないと思う作品ですが、若い方々は偏見なく、そしてあの時代をリアルタイムで通過したおっさんおばさんたちは一度フラットな気持ちで本作に接してみてはどうでしょう。ほら、意外と良かったでしょ?



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2007年11月15日 (木)

VELVET REVOLVER『LIBERTAD』(2007)

いやぁ、しかし笑わせてもらいました、今回のVELVET REVOLVER来日キャンセル。公演10日前になっていきなりの中止、しかも理由が「VISAが下りない」って……いやいや、楽しみにしていたファンの皆さんにとっては(特に宿や交通手段を予約していた遠方の方々にとっては)笑えない残念な知らせですよね。失礼しました。でもね、ひさしぶりにこんな理由で来日できないアーティストを目にしたもんだからさぁ。彼らは確か、2004年初頭の『SONIC MANIA』でアルバムリリース前に初来日を果たす予定だったものの、そこでも入国に難ありということで発表前にキャンセルになったんでしたっけ。今回は特にいろいろ厳しくなったもんだから、逮捕歴のあるメンバーの過去が問題になったようですが……だからといって、日本で何をするというわけでもないのにね。そりゃガッカリしますよ、ファンもバンドも。

3年前のデビューアルバム『CONTRABAND』が(CCCDだったにもかかわらず)いきなり全米チャート1位を記録した、元GUNS N' ROSES残党&元STONE TEMPLE PILOTSのVo+αによるVELVET REVOLVER。両バンドとも好きな存在だっただけに、その組み合わせはうまくいくのか音を聴くまでは心配だったものの、出来上がったアルバムは無難な仕上がりで納得させられたものです。スラッシュ特有のリフ・ゴリ押しオールドスクール・ロックンロールと、スコット・ウェイランドが持つ独特なポップセンス&サイケ感がうまく融合しており、これがガンズの代わりになるとは思わなかったけどそれはそれとして楽しんだものです。

続いてリリースされた本作は、前作以上に楽曲ひとつひとつがバラエティ豊かになったなぁと一聴して感じました。前作にあったような「いかにもスラッシュが書きましたという、ガンズの亜流ナンバー」はなくなり、前作の延長線上にありながらも新たな要素を感じさせる力作に仕上がってます。特にスコットの色が前作以上に濃く表れていて、個人的にはこの進化は大歓迎。シンプルな疾走ロックンロール「Let It Roll」からスタートし、前作にあったようなミドルテンポのハードロックチューン、スコットならではのサイケポップ「The Last Fight」「Gravedancer」、前作と同系統のようでよりひねりが効いた「Just Sixteen」「Spay」、ELECTRIC LIGHT ORCHESTRAのカバー「Can't Get It Out Of My Head」といった、興味深い楽曲が並んでいます。さらに日本盤には、海外でリリースされたシングルに収録されていたTALKING HEADSのカバー「Psycho Killer」も追加収録。ちょっと意外な選曲で、今回は驚かされますね(これまではSEX PISTOLSNIRVANACHEAP TRICKといった王道だったし)。

アメリカでは前作ほどのセールスを上げていないこともあってあまり評価されていないみたいですが、個人的には前作以上に好きなアルバムです。だからこそ、生で聴いてみたかったなぁ(といっても、ライヴじゃハードな曲がメインなんでしょうけど)。次に来日する可能性があるのは、サマソニとか『LOUD PARK』といったフェスかなぁ。でも、どうせなら単独で観たいよね(今回チケットを取っていなかったお前が何を言う!?といった感じですが)。

結局のところ、誰も『APPETITE FOR DESTRUCTION』の頃のガンズサウンドを引き継いでいないのが面白いなぁ、アクセルにしろ、スラッシュやダフにしろ。ライブじゃ初期の曲をガンガンやってるアクセルだけど、オリジナル曲はまったくの別物だし、VELVET REVOLVERにしてもスコットの色を加えることでより違った方向へと突き進んでいるしね。そういう意味で、もっとも原点に忠実なのは、実はイジー・ストラドリンでもギルビー・クラークでもなく、スティーヴン・アドラーなのかもしれないね?(それはそれでどうかと思うが)

 


▼VELVET REVOLVER『LIBERTAD』
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