2018年11月 8日 (木)

THE STRUTS『YOUNG & DANGEROUS』(2018)

昨日取り上げたGRETA VAN FLEET同様、現在Universal Recordsが力を入れているロックバンドがこのTHE STRUTSなのは間違いないと思います。本作は本国イギリスで2014年に発売され、その後2016年に再リリースされたデビューアルバム『EVERYBODY WANTS』に続く2ndアルバム。個人的にはGRETA VAN FLEET以上に“待望の”という表現がぴったりな1枚でした。

前作をワールドワイドリリースして以降、シングルを小出しにするなどして2作目のアルバムへと向かっていった彼ら。プロデューサーにはブッチ・ウォーカーFALL OUT BOYアヴリル・ラヴィーン、ケイティ・ペリーなど)とサム・ホランダー(PANIC! AT THE DISCOWEEZER、ONE DIRECTIONなど)というアメリカ有数の名ソングライターを迎えて制作。結果、前作以上にモダンでカラフルなアルバムに仕上がりました。

フロントマンのルーク・スピラー(Vo)のフレディ・マーキュリーを思わせるルックスやファッション、歌声などから“第二のQUEEN”的な扱いをされることも少なくないTHE STRUTS。このアルバムもそうしたQUEEN的雑多さ満載の1枚で、聴く人によっては「焦点の定まらないもの」とネガティヴに受け取られる可能性もあります。が、そもそも80年代のQUEEN自体がそういう傾向が強かったため、70年代の彼らを評価するリスナーからは敬遠されていたところもあったと思います。その一方で、ロックだとかハードロックだとか固定のジャンルにこだわらないリスナーからは「ヒットチャートを賑わせるアーティストのひとつ」として、そのポップでキャッチーな楽曲自体を純粋に評価された。結果、彼らは80年代半ばにライブにおいてキャリア最大のピークを迎えるわけですから、世の中わからないものです。

それと同じことが、このTHE STRUTSの2作目にも言えるんじゃないか。そんな気がしています。ストレートなロックチューンもあれば、モダンな味付けがされたポップナンバーもある。前作以上にアメリカンフレイバーが強まっていますが、その軸には古き良き時代のブリティッシュポップ/ロックからの影響が感じられる。それらの楽曲を、どこかフレディ・マーキュリーを彷彿とさせるシンガー(ルーク)が歌うのですから、嫌が応にもQUEENを思い浮かべてしまう。そりゃあ僕が嫌いなわけがない(自分の話で恐縮ですが)。

アルバム中盤の「Fire (Part 1)」や終盤の「Ash (Part 2)」なんて、本当にQUEENですよね。ちょっと泣けましたもん。かと思えば、KE$SHAとコラボしたバージョンも捨てがたい「Body Talks」や「Primadonna Like Me」みたいな“今ドキ”な音もある。エヴァーグリーンな「Somebody New」や「Tatler Magazine」を聴いてもなお「売れ線に走ったバンド」と揶揄するというのなら、きっとこのバンドはあなたには合わないんだと思います。けど、1曲くらいは引っかかる曲、あるはずです。そういう“お子様ランチ”的アルバムなのですから。

お子様ランチは子どもがある一定の年齢に達すると注文するのを躊躇し、ある程度大人になると「子どもの食べ物」だと敬遠される。けど、自我を確立した大人になるとちょっと懐かしくなって食べてみたくなったりもする……このアルバムを聴いて、そんなことを思い浮かべたりもしました。自分の好きな食材(=音楽要素)がてんこ盛りの1枚。こういうバンドが2018年に存在してくれることに感謝したいです。



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投稿: 2018 11 08 12:00 午前 [2018年の作品, Struts, The] | 固定リンク

2017年4月15日 (土)

THE STRUTS『EVERYBODY WANTS』(2016)

2010年代後半のUKロック(主にHR/HM寄り)を牽引していくであろうバンド、THE STRUTSの記念すべきデビューアルバム。ここ日本では昨年8月の夏フェス『SUMMER SONIC 16』に国内デビュー前に突如出演したことでその名を知らしめたかと思います。今回紹介する1stアルバム『EVERYBODY WANTS』もすでに昨年春先から輸入盤で出回っていたので、そこで知ったという人もいるかもしれません。または、僕と同じようにたまたま観たMVに登場する“そのルックスと声・歌唱法がフレディ・マーキュリーっぽいフロントマン”ことルーク・スピラーに惹かれた人も少なくないはずです。

実は彼らのデビュー作、本国イギリスでは2014年7月に一度発売されています。しかし、リリース元の変更(Virgin EMI→Interscope)を経て、本国から国外(アメリカ)に向けたプロモーション展開にあわせて2016年3月に新曲を加えた構成で再発売。これが現在出回っている本作のベースになるものです。また、日本盤のみ今年初頭の単独来日公演にあわせて、同年2月に遅れてリリースされたこともあって、さらに新曲や未発表テイクなどを加えた内容。現行の輸入盤が13曲入り、日本盤はそこに5曲加えた全18曲入りなので、これから購入するなら輸入盤よりもちょっとだけお高い日本盤をオススメします。ジャケットは正直輸入盤のほうが好きですけどね。

さて、本作の内容です。先にルークのことを“そのルックスと声・歌唱法がフレディ・マーキュリーっぽいフロントマン”と例えましたが、楽曲自体もQUEENや古き良き時代のブリティッシュロックを現代的に解釈した楽曲がずらりと並びます。どことなく初期のQUEENみたいなロックンロール「Roll Up」やドラマチックなミディアムチューン「Mary Go Round」はまさにその好例。もしかしたら前者を聴いてTHE DARKNESSを思い浮かべる人もいるかもしれませんが、こちらのバンドのほうがよりポップ色が強いので親しみやすいかもしれません。

また、シングルカットもされた「Could Have Been Me」「Kiss This」「Put Your Money On Me」にはブリットポップ以降のカラーも見られ、単なるハードロックでは片付けられない魅力が満載。黒っぽいロック「Dirty Sexy Money」あたりもデジタルテイストを加えたアレンジを施すことで妙に親しみやすくなっているし、「The Ol' Switcheroo」みたいにブラスやピアノを加えた強いビートのポップチューンにはBAY CITY ROLLERSを重ねたくなるし。ボーカルがやたらと前時代的(ルックス、歌唱法含め)なため、もしかしたらじっくり聴く前に引いてしまっている方もいるかもしれませんが、完全に食わず嫌いですよ。むしろ本作はHR/HMを通過していない、80年代〜90年代のブリティッシュロック/ブリットポップで青春時代を過ごした人にこそ聴いてもらいたい。と同時に、その頃をリアルタイムで知らない若い世代には、純粋にポップで親しみやすい楽曲満載のアルバムとして楽しむことができる。そんな多くの可能性を秘めた1枚だと思います。

再発続きで最初のリリースからすでに3年近く経過してしまってますが、今年8月には『SUMMER SONIC 17』での再来日が早くも決まりましたし、アメリカでも本格的な成功を収めたいはずなので、ぜひ年内に強烈な2ndアルバムを発表してくれないかな……と勝手に思ってます。

そういや自分、まだ生で観たことないんだよね。今年はサマソニで観ておきたいな。



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投稿: 2017 04 15 12:00 午前 [2016年の作品, Struts, The] | 固定リンク