STRYPER『IN GOD WE TRUST』(1988)
1988年6月28日にリリースされたSTRYPERの3rdフルアルバム。日本盤は同年7月10日発売。
「Honestly」のシングルヒット(全米23位)も手伝い、アルバム自体も最高32位/100万枚突破という好成績を残した前作『TO HELL WITH THE DEVIL』(1986年)から約1年8ヶ月ぶりの新作。バンドとの共同プロデューサーとしてポップス系のマイケル・ロイド(ベリンダ・カーライル、THE MONKEES、エリック・カルメンなど)を迎えた、ソフトサイドが強調された1枚に仕上がっています。
アルバム冒頭を飾る疾走メタルチューン「In God We Trust」や「The Writing On The Wall」、オズ・フォックス(G)が手がけたファストナンバー「The Reign」など攻撃的な楽曲も用意されているものの、本作の軸となっているのはリードシングル「Always There For You」はメロウなスローバラード「I Believe In You」などのメロディアスで親しみやすいポップナンバー。「Honestly」のヒットを受け、レーベル側からのテコ入れがあったのではないかと察します(プロデューサーの人選にもその思惑が見え隠れしますし)。
ミックス自体もマイケル・ロイドが関わっているためか、本作におけるドラムサウンドの軽さは当時から疑問視されてきました。特にスネアの軽さはメタルとは程遠いもので、「Always There For You」のような楽曲にはフィットするものの、「In God We Trust」みたいなメタル寄りの楽曲には難が生じてしまう。現在市場に出回っているCDやサブスクで耳にすることができる音源は、おそらくリマスタリングが施されたものだとは思うのですが、1988年の初出時と比べたらいくらかドラムの質感が調整されているようで、昔聴いていたときよりも聴きやすいバランスになっている印象を受けました。
ただ、それでも「It's Up 2 U」みたいなメタルバラード(パワーバラード)になると、ポップス調の「I Believe In You」ほどの調和は感じられない。楽曲スタイルにより一長一短のあるミックスかもしれませんね。
先の疾走チューン以外は全体的に似通ったトーンで統一された楽曲たちは、「Always There For You」以外はそれほど突出した印象が感じられず。「Keep The Fire Burning」あたりはいい線いってますが、無駄にキラキラした「Come To The Everlife」(ピコピコしたシンセの影響もあるんでしょうね)あたりには「ん?」と感じてしまうかも。あと、バラードタイプの楽曲が多いのも本作の特徴で、これもレーベルが“「Honestly」の二番煎じ”を狙わせた結果なのでしょうか。ただ、上に挙げた「I Believe In You」や「It's Up 2 U」よりも哀愁味の強い泣きのバラード「Lonely」が、予想外によい出来なんですよね。個人的にはシングル曲以外だと、タイトルトラックとこの曲、そしてラストの「The Reign」のために聴くといった印象かな。
激しさと優しさ、両サイドに振り切った曲はそれぞれよいものの、アルバムとしてはそれらをつなぐミディアムテンポのハード&メロウな楽曲(前作でいうところの「Free」のような曲)が存在しないことで、全体的にまとまりのない仕上がりになってしまった印象。ミックス的な欠点もあり、いろいろな意味で勿体ない1枚です。
……とはいえ、個人的には本作を携えて行われた日本武道館公演(1989年3月かな)に足を運び、初めて彼らを生で目撃できたという点で、忘れられない1枚なんですけどね。
▼STRYPER『IN GOD WE TRUST』
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