2022年秋、当初は北米のみで実施されたMANIC STREET PREACHERSとSUEDEのダブルヘッドラインツアーが羨ましくて仕方なかったんです。マニックスは2019年から来日が実現していないし、SUEDEに至っては2016年のサマソニ以来とんとご無沙汰。現在の国内での知名度を考えると、単独来日は難しいだけに、この2組で日本に来たらなんとかなるんじゃないか……なんて淡い期待を寄せていたら2023年秋にようやく実現。いやあ、よかったよかった。
東京2公演のみというなかなかシビアな状況ですが、これは2公演とも観ないわけにはいかないと、早々にチケットを確保。初日はフロア後方からまったり観察し、2日目は真ん中あたりで思い切り楽しもうと、それぞれ違った角度から2日間楽しみました。
■11月18日
この日は先行がマニックス。ステージ上のバックドロップが10数年前のベストアルバム『NATIONAL TREASURES - THE COMPLETE SINGLES』(2011年)のジャケット……あれ、最新作『THE ULTRA VIVID LAMENT』(2021年)中心じゃないのか……はい、この時点で萎えました。ただでさえ新作からの楽曲以外は対して変わり映えがないマニックスなので、これは良くも悪くもいつもどおりか、と。
実際、オープニングの「Motorcycle Emptiness」「Everything Must Go」という既視感の強い流れを、冷静に眺めていた気がします。もちろん、久しぶりに生で見れた喜びはありますが、素直に入り込めない。う〜ん。完全なる贅沢病。その後「1985」や「Die In The Summertime」なんてレア曲でアガり、新作からの「Still Snowing In Sapporo」や近作からの「Walk Me To The Bridge」あたりでは高揚感も味わえたかな。
中盤のジェームズ・ディーン・ブラッドフィールド(Vo, G)によるアコースティックパートでは、珍しく「Suicide Is Painless (Theme From MASH)」をセレクト。そして「Slash 'n' Burn」でバンド編成に戻り、「Enola/Alone」や「International Blue」を含むものの王道の流れでクライマックスへ。「Motown Junk」なしの約80分のセットで終了しました。冷静に考えれば選曲や演奏含め、鉄壁の内容なんだけど、デビュー時から夢中になってきたバンドだからこそ自分の中でハードルが上がってるのかな。「もっと無茶してほしい!」と思ってしまうんですよね。そういう意味では、この日の内容は平均点+αといったところでしょうか。
約30分のインターバルを経て、この日のトリであるSUEDEが登場。こちらは完全なる新作モードのライブをぶちかましてくれました。最新作『AUTOFICTION』(2022年)のラストを飾る「Turn Off Your Brain And Yell」から始まる変化球的オープニングも、いかにもひねくれてるし、そこから「Personality Disorder」「15 Again」と新曲を連発する流れも最高。ブレット・アンダーソン(Vo)は若干年齢を感じさせるものの、相変わらずマイクをブンブン振り回しながら暴れまくり。いいぞ、もっとやれ。
新曲3連発で空気を十分に作ったところで、「Trash」「Animal Nitrate」の名曲オンパレード。さらに「Killing Of A Flashboy」なんてレア曲や前作『THE BLUE HOUR』(2018年)収録の名バラード「Life Is Golden」も飛び出し、前半だけで大満足。その後も新作からの楽曲と往年のヒット曲を交えてライブは進行するのですが、すべてがパーフェクト。「The Wild Ones」ではブレットがギター弾き語りを披露し(トラブルもありましたが)、終盤はヒットシングルのオンパレードで大団円。公演が土曜開催ということで、あの名曲披露にも期待したのですが、残念ながらなし。それだけが心残りでした。
セットリスト
MANIC STREET PREACHERS
01. Motorcycle Emptiness
02. Everything Must Go
03. 1985
04. You Stole The Sun From My Heart
05. Still Snowing In Sapporo
06. Die In The Summertime
07. Walk Me To The Bridge
08. From Despair To Where
09. A Design For Life
10. Suicide Is Painless (Theme From MASH)
11. Slash 'n' Burn
12. Your Love Alone Is Not Enough
13. Enola/Alone
14. International Blue
15. Stay Beautiful
16. You Love Us
17. If You Tolerate This Your Children Will Be Next
SUEDE
01. Turn Off Your Brain And Yell
02. Personality Disorder
03. 15 Again
04. Trash
05. Animal Nitrate
06. Killing Of A Flashboy
07. Life Is Golden
08. She Still Leads Me On
09. Can't Get Enough
10. Shadow Self
11. The Wild Ones
12. Everything Will Flow
13. So Young
14. Metal Mickey
15. Beautiful Ones
■11月19日
この日は出演順が入れ替わり、トップバッターをSUEDEが務めたのですが……セトリ、大幅に変えてきやがった! 「She Still Leads Me On」「Personality Disorder」と『AUTOFICTION』の冒頭と同じ流れで、前日のダークな幕開けとは異なる装い。そこから前日にはなかった「The Drowners」(!)を挟んで「Trash」「Animal Nitrate」……気づいたらどんどんフロア前方に移動している自分がいました。そんなの興奮せずにはいられないってば。
しかも、この日はそれ以降がまたすごい。「We Are The Pigs」「Flytipping」「This Hollywood Life」「Filmstar」って流れはどうなのよ。さらに、「The Asphalt World」をニール・コドリング(Key, G)のピアノ伴奏で歌ってくれたり……翌年に控えた2ndアルバム『DOG MAN STAR』(1994年)30周年を前祝いするような選曲を前に、「やっぱり2日間来てよかった」と強く実感するのでした。
そういえば、この日はブレットが突然ステージ上で倒れる場面がありました。どうやら、ステージ上が濡れていて滑ったようですが、あっちゃんの件のあとだけにヒヤッとしたんですよね……その後も元気そうにマイクをブンブン振り回していたのでホッとしましたが。みんな元気に、長生きしてくれ。
SUEDEが前日以上の白熱ぶりを見せたあとだけに、セトリを変える印象のないマニックスは分が悪いなと、ちょっと気持ちが落ち着き始めていたのですが、マニックスはマニックスなりに頑張ってました。演奏はもちろん鉄壁、セトリも序盤は前日と一緒なのですが、この日は「Die In The Summertime」から「Little Baby Nothing」に差し替えるサービスぶりを見せます。おお、いいじゃないか。
さらに、ジェームズのアコースティックパートでは、なんと「(I Miss the) Tokyo Skyline」をワンコーラス披露してから「This Is Yesterday」へと続ける大盤振る舞い。SUEDEのパフォーマンスに対抗意識を燃やしてか、ライブ全体の熱量も前日以上でした。あと、自分の周りのお客さんが海外の方ばかりだったことも影響して、こちら側も気づいたら前日以上の熱気でステージと向き合っていた気がします。単純と言えば単純ですが、そういうシチュエーションも大事ですよね。
マニックスもSUEDEも、どちらも90年代から夢中になって追い続けてきたバンドで、当初はマニックスに肩入れしていたものの、近年はSUEDEに傾きつつある自分。この2日間のレポからもそれは十分に伝わることでしょう。しかし、大好物2つを目の前にして過ごした週末を終え、最終的には「みんな違ってみんないい」精神で両者優勝!でいいじゃないかと。そんなポジティブな気持ちを抱え、帰路に着いたのでした。
セットリスト
SUEDE
01. She Still Leads Me On
02. Personality Disorder
03. The Drowners
04. Trash
05. Animal Nitrate
06. We Are The Pigs
07. Flytipping
08. This Hollywood Life
09. Filmstar
10. Shadow Self
11. The Asphalt World
12. The Only Way I Can Love You
13. So Young
14. Metal Mickey
15. Beautiful Ones
MANIC STREET PREACHERS
01. Motorcycle Emptiness
02. Everything Must Go
03. 1985
04. You Stole The Sun From My Heart
05. Still Snowing In Sapporo
06. Little Baby Nothing
07. Walk Me To The Bridge
08. From Despair To Where
09. A Design For Life
10. (I Miss the) Tokyo Skyline
11. This Is Yesterday
12. Slash 'n' Burn
13. Your Love Alone Is Not Enough
14. Enola/Alone
15. International Blue
16. Stay Beautiful
17. You Love Us
18. If You Tolerate This Your Children Will Be Next