2018年9月15日 (土)

SUICIDAL TENDENCIES『STILL CYCO PUNK AFTER ALL THESE YEARS』(2018)

前作『WORLD GONE MAD』(2016年)からちょうど2年ぶりに発表された、SUICIDAL TENDENCIESの通算13枚目となるオリジナルアルバム。前作から加入したデイヴ・ロンバード(Dr/ex. SLAYERDEAD CROSSなど)が叩く2枚目のアルバムとなります。本作の前には、今春に10曲入りEP『GET YOUR FIGHT ON!』が発売されており、そちらには本作にも収められている「Nothin' To Lose」が先行収録されています。

このアルバムは、マイク・ミューア(Vo)が1996年にCYCO MIKO名義でリリースしたソロアルバム『LOST MY BRAIN! (ONCE AGAIN)』を現メンバーでリメイクしたもの。基本的にはオリジナルに近いアレンジで、軽いサウンドメイクと疾走感が気持ちよかったオリジナル版に、デイヴ・ロンバードのドラミングにより重さが加わり、よりハードコア感が増したような印象を受けました。

また、オリジナル版がプロジェクト色の強いものだったこともあり、今回のリメイク版はよりバンド感が増しているのも特徴。そのへん、本作にはこの布陣ならではのタイトさも表れており、どちらが好きかと尋ねられたら迷わず今回のリメイク版を挙げることでしょう。

また、本作は完全リメイクというわけではなく、「Ain't Mess'n Around」は未収録(こちらのみEP『GET YOUR FIGHT ON!』にリメイク版が収録されています)。また、オリジナル版では「Cyco Miko Loves You」というタイトルだった楽曲がバックトラックはオリジナルの雰囲気を再現しつつ、歌詞とメロディラインを変え、「Sippin’ From The Insanitea」と題して収録されています。

本作に対して、マイク・ミューアはこんなコメントを残しています。


「デイヴ・ロンバードがSUICIDAL TENDENCIESにいる今、SUICIDAL TENDENCIESのレトロではないモダンなサイコ・パンク・レコードとして、このアルバムはリリースされなくてはならない。何年もの間、俺はこのアルバムの曲が好きだった。おそらく、30才であった当時より、今のほうが俺はこのアルバムの曲が好きだ。そして皮肉なことに、SUICIDAL TENDENCIESの作品ではなかったアルバムが俺をよりSUICIDAL TENDENCIESにした」


前作『WORLD GONE MAD』ではメタリックな楽曲も含まれており、曲によっては6分もあったりと持ち前のミクスチャー感を全面にアピールしていましたが、今作はそういうわけでど直球のパンク/ハードコア。そんななので、全11曲で41分というトータルランニングになっています。これ、10曲入りだった前のEP(45分)より短いんですけどね。まあ、潔くて良いじゃないですか。

まあ、これをデイヴ・ロンバードがいる編成でやらなくてもいいじゃないか……という声も聞こえてきそうですが、これはこれで楽しいのでよろしいのでは。何も考えずに楽しめる1枚ですし。

なお、本作のレコーディングをもってジェフ・ポーガン(G)が脱退。ツアーには昨年解散した THE DILLINGER ESCAPE PLANのベン・ワインマンが参加するそうです。それはそれで見てみたいぞ。



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投稿: 2018 09 15 12:00 午前 [2018年の作品, Suicidal Tendencies] | 固定リンク

2017年8月17日 (木)

DEAD CROSS『DEAD CROSS』(2017)

にしても、すごいバンドが誕生したものです。FAITH NO MOREのマイク・パットン(Vo)、元SLAYER/現SUICIDAL TENDENCIESのデイヴ・ロンバード(Dr)、THE LOCUST/RETOXのジャスティン・ピアソン(B)、同じくRETOXのマイク・クライン(G)というメタル/オルタナ/ハードコア界のそうそうたるメンツが一堂に会したスーパーバンド、DEAD CROSS。彼らのデビューアルバム『DEAD CROSS』が8月上旬にリリースされました(ここ日本では同月23日に発売)。

もともと2015年に結成された際にはTHE LOCUSTのゲイブ・セルビアンがボーカルでしたが(THE LOCUSTではドラマー)、翌2016年に脱退。新たにパットン先生が加入し、現在のサウンドスタイルが確立されたとのことです。

おそらくパットン先生が加わるまでは、意外とストレートなハードコアが展開されていたんだろうなと思うのですが、このアルバムで聴けるサウンドは単なるハードコアとは言い難い、非常に複雑怪奇なもの。カオティックハードコアとでも呼べばいいのでしょうか。単なる暴力的なエクストリームサウンドというよりも、どこか知的さがにじみ出た、まさしくカオスな世界観が展開されています。

パットン先生のボーカルはFAITH NO MORE以上に振り切れたものもあれば、そこから一転して冷静さを感じさせるものもあり、FAITH NO MOREやパットン関連作品愛好家なら一発で気にいるはず。ロンバードのドラムもオープニングの「Seizure And Desist」からツーバス&ブラストビート全開(この曲のボーカルオーケストレーションも最高)。SUICIDAL TENDENCIES『WORLD GONE MAD』(2016年)でのプレイよりも、SLAYERでパンキッシュな楽曲を叩くときのプレイに近いイメージと言えば共感いただけるでしょうか。要するに、ひたすらカッコイイということです。思えばパットンとロンバードは過去にFANTOMASでも活動をともにしたことがあるので、相性は悪くないんでしょうね。

ギターやベースに触れずじまいですが、決して空気なわけではないですよ。このドラムにこのベース、このギターという絶妙なプレイを聴かせてくれていますし。ただ、ここにパットン先生の声が乗ると……全部持っていっちゃうんですよね。それだけアクが強いというか唯一無二というか。まぁまずは、頭を空っぽにして楽しんでください。アレンジがどうだとか、この曲のここがこうだとか、BAUHAUS「Bela Lugosi's Dead」のカバーのアレンジがどうだとか、そういう小難しいことは数回無心で楽しんだあとにでも。ね?



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投稿: 2017 08 17 12:00 午前 [2017年の作品, Dead Cross, Faith No More, Slayer, Suicidal Tendencies] | 固定リンク

2017年4月21日 (金)

SUICIDAL TENDENCIES『WORLD GONE MAD』(2016)

マイク・ミューア(Vo)率いるアメリカのクロスオーバー/ハードコアバンドの、通算12枚目となるスタジオオリジナルアルバム。実は彼らの新作を聴くのはずいぶん久しぶりのことで、振り返ればそれこそ90年代前半以来かも……と気づかされるわけです。そうそう、ロッキー・ジョージ&マイク・クラークのツインギター編成で、今ではMETALLICAの一員としておなじみのロバート・トゥルージロ(B)なんかが在籍していた頃です。当時はハードコアとスラッシュメタルの接近&融合を“クロスオーバー”なんて括りで呼んでいましたが、一時のSUICIDAL TENDENCIESはそのクロスオーバーさえ飛び越えて“まんまヘヴィメタル”みたいなことをやってましたけどね。

そんな彼らもすでに結成から30年以上を経たベテランバンド。オリジナルメンバーはマイク以外残っておらず、90年代半ばの再結成から在籍のディーン・プレザンツ(G)以外はかなり入れ替わっています。本作の制作に際してもリズムギター、ベース、ドラムを一新。新ドラマーにはなんと、元SLAYERのデイヴ・ロンバードが加わり、発表当時大きな話題となりました。SLAYER黄金期の土台を支えたデイヴがSUICIDAL TENDENCIESに加わると、どんなプレイを聞かせてくれるのか、と……。

さて、完成したこの『WORLD GONE MAD』というアルバム。オープングの「Clap Like Ozzy」というメタルファンならクスッとしてしまうタイトルの疾走ハードコアチューンからスタートします。スラッシュともハードコアとも受け取れるこの楽曲こそ、まさにクロスオーバーと呼ぶにふさわしい1曲。その後もヘヴィなミドルチューン「The New Degeneration」、どこかジャジーなテイストも含む「Living For Life」、バラード風ミドルヘヴィサウンドに泣きメロギターソロとラップ調ボーカルが乗る「Get Your Fight On!」(曲中盤でアップテンポになる展開はメタルそのもの)などバラエティに富んだ楽曲が続きます。

全体的にドラムがかなり前に出ている印象があるものの、かといってSLAYER時代ほど派手さはない。また新加入のベーシスト、ラー・ディアスのプレイもスラップを多用した派手なもので、デイヴとの相性も抜群。そこに派手に暴れまくるディーンのギターソロが加わると、不思議と我々がよく知る「80年代末から90年代前半のSUICIDAL TENDENCIES」とイメージがオーバーラップするのです。かといって、楽曲自体にはあの頃みたいに大袈裟な展開やアレンジは皆無なのですが。不思議です。

初期の作品に通ずるものがありつつも、しっかりメタル期とオーバラップする部分もある。なのにそれらの時期とは完全に一致するわけではなく、新しさ(今までのSUICIDAL TENDENCIESにはなかったような魅力)も感じられる。デイヴ・ロンバードを迎えたことでマイク・ミューアの心に再び火がついたのかもしれませんね。個人的にはハードコアやパンクリスナーよりもメタルファンにこそ触れてほしい1枚です。



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投稿: 2017 04 21 12:00 午前 [2016年の作品, Suicidal Tendencies] | 固定リンク