JAMES DEAN BRADFIELD『THE GREAT WESTERN』(2006)
2006年7月24日にリリースされたジェイムズ・ディーン・ブラッドフィールドの1stアルバム。日本盤は同年8月23日発売。
MANIC STREET PREACHERSのフロントマンによる初のソロアルバム。バンドとしての当時の最新作『LIFEBLOOD』(2004年)を携えたツアーを終え、2005年に2年間の活動休止を発表したことで、ジェイムズとニッキー・ワイヤー(B)はそれぞれキャリア初のソロ作品制作に取り掛かります。リリースタイミングも2006年夏ということもあり、2人は日本を含む各地でツーマンソロツアーを予定していましたが、ここでの創作欲を早くバンドに持ち帰りたいということで9月以降のスケジュールをすべてキャンセル。そのままバンドの次作制作に取り掛かり、翌2007年5月には待望の8thアルバム『SEND AWAY THE TIGERS』(2007年)をリリースすることになります。
プロデュースを手がけたのはマニックスの諸作品に携わってきたデイヴ・エリンガやアレックス・シルヴァ、直近の『LIFEBLOOD』で中心にいたグレッグ・ヘイヴァー(彼はニッキーのソロ作『I KILLED THE ZEITGEIST』もプロデュース)、RADIOHEADやSPIRITUALIZEDなどに関わってきたガイ・マッシーという錚々たる布陣。レコーディングではジェイムズは当然のように全曲のボーカル&ギターのほか、一部楽曲でベースやドラムもプレイしています。また、キーボードにマニックスのサポートメンバーであるニック・ネイスミス、ドラマーに元REVOLVERのニック・ディウィー、SUPER FURRY ANIMALSのダヴィズ・イェイアン、SWEET BILLY PILGRIMのアリステアー・ヘイマーがゲスト参加。エンジニア陣のアレックスもベース、グレッグはドラム&キーボード、デイヴはキーボードでそれぞれ華を添えています。
マニックスの制作においてメロディラインなどの基盤をほぼ彼が手がけてきたこともあり、ここで聴くことができる楽曲はマニックスの延長線上にあると言って間違いないでしょう。もっとも、ジェイムズが歌えばそれらしく聞こえてくるわけで、そこに彼の歌(および彼の作るメロディ)とギターがあれば余計にそう響く。そういった意味で、バンドとは異なるものが聴けるという驚きは皆無ですが、おそらく彼のファンやマニックスのリスナーが求めるであろう“らしさ”はほぼ揃っているので、そこにおいては失望することはないでしょう。
ただ、本作では全11曲(日本盤ボーナストラックを除く)中7曲でジェイムズがひとりで、残り2曲でスコットランド出身の作家ジョン・ニーヴンとの共作と大半で作詞を担当。それもあって、歌詞に目を通すとマニックスならではの小難しさ(笑)は薄らいでおり、より言葉がストレートに響くのではないでしょうか。特に、本作にはニッキー作詞による「Bad Boys And Painkillers」も含まれているので、その象徴的なタイトル含め違いは歴然です。
個人的にはマニックスらしいエモーショナルさが際立つ「Émigré」が好みだったな。でも、この曲ではコーラスワークがマニックスでやらないスタイルだったりして、そこが実にソロ作らしいのかなと。また、唯一のカバー曲「To See A Friend In Tears」(オリジナルはシャンソン歌手ジャック・ブレル)もアコースティックギターを軸に、フォーキーかつスペーシーな音作りはマニックスのシングルにカップリングとして収録されていても不思議じゃない仕上がり。全体的にマニックスよりも肩肘張っていなくて、適度なリラックス&レイドバック感のおかげでこちらも気構えることなく楽しめる。マニックスに対して偏見を持っている人こそ、このアルバムを糸口に興味を持っていただけたらなと思わずにはいられません。
『EVERYTHING MUST GO』(1996年)から積み重ねてきた第2期マニックスのスピンアウト的作品であると同時に、続く『SEND AWAY THE TIGERS』から始まる新シーズンへの序章にも思える、実はそれくらい彼らの歴史において重要な1枚ではないか……個人的にはそう思っています。
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