カテゴリー「System of a Down」の9件の記事

2019年1月13日 (日)

祝ご成人(1998年4月〜1999年3月発売の洋楽アルバム20選)

新成人の皆さん、おめでとうございます。2014年度に初めて執筆したこの“洋楽版成人アルバム”企画、今回で5回目となります。毎年この時期にこの企画をやることで、温故知新というよりは「自分の20年前の音楽ライフはどんなだったか」を思い返す上で非常に重要なコンテンツになりつつあります。

しかも、今回は当サイトの前身サイトがスタートした時期(1998年12月)が被っていることから、選出時もいろいろ感慨深いものがあります。いやあ、長く続けるもんだ。

さて、この企画の説明です。この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に1998年4月〜1999年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品のうちSpotifyやApple Musicで試聴可能な作品を20枚ピックアップしました。今年度は残念ながら、選出した20枚すべてがSpotifyおよびApple Musicに揃っているものではありませんでした(各サービスともに1枚足りないという)。

でも、どれも名盤ばかりですし、もしまだ聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にチェックしてみてはどうでしょう。特に、現在20歳の方々は「これ、自分が生まれた年に出たんだ」とかいろいろ感慨深いものがあるような気もしますし。ちなみに、作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちら、2016年度の新成人編はこちら、2017年度の新成人編はこちらです)


ASIAN DUB FOUNDATION『RAFI'S REVENGE』(1998年11月発売)(Spotify

AT THE DRIVE-IN『IN/CASINO/OUT』(1998年8月発売)(Spotify)(レビュー

BEASTIE BOYS『HELLO NASTY』(1998年7月発売)(Spotify

BLUR『13』(1999年3月発売)(Spotify)(レビュー

BOARDS OF CANADA『MUSIC HAS THE RIGHT TO CHILDREN』(1998年4月発売)(Spotify

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2018年7月 3日 (火)

BRIDES OF LUCIFER『BRIDES OF LUCIFER』(2018)

昨年6月に開催された『GRASPOP METAL MEETING』など、海外のメタルフェスに出演したのを機に一部で話題になっていた、女性13人からなるHR/HMの名曲をカバーするコーラス隊BRIDES OF LUCIFERがアルバムをリリースしました。

本作でピックアップされている楽曲たちは下記のとおり(曲名後ろのカッコは原曲アーティスト名)。


01. Burn In Hell [TWISTED SISTER]
02. Walk [PANTERA
03. Warriors Of The World [MANOWAR]
04. Chop Suey! [SYSTEM OF A DOWN
05. Painkiller [JUDAS PRIEST
06. Fear Of The Dark [IRON MAIDEN
07. Roots Bloody Roots [SEPULTURA
08. O Father O Satan O Sun! [BEHEMOTH]
09. Holy Diver [DIO
10. South Of Heaven [SLAYER
11. Futility [SCALA & KOLACNY BROTHERS]
12. Halo [MACHINE HEAD
13. White Moon [SCALA & KOLACNY BROTHERS]


ライブではこのほか、RAMMSTEIN「Engel」あたりもカバーされているみたいですね。

ライブやレコーディングには彼女たちのほか、ドラム/ベース/ギター/ピアノが入り、原曲に比較的忠実なアレンジでカバーされています。もちろん、コーラスがメインになるので、彼女たちの歌声が前面に出るようなアレンジも新たに施されており、曲によってはギターソロパートをカットしていたりもします。

どのバンドの曲もボーカルのクセが強いものばかりで、特にPANTERAやSEPULTURAみたいなスクリームメインの楽曲、SYSTEM OF A DOWNのように変態的なボーカルが耳に残る曲すらも聖歌のようなボーカルアレンジで表現されているので、聴き進めていくうちに「あれ、こんなに聴きやすくて大丈夫?」と不安に陥る瞬間も。メタルファンには数年に1枚は世に産み落とされる“ネタCD”として楽しめば、そこまで不快ではないはず。むしろ、僕は積極的に楽しんでおります。

逆に、普段メタルに疎い人にこそ「ね? 意外と曲自体は悪くないんだよ?」と手に取ってほしい1枚だったりして。まあ、一緒に笑って聴いてみましょうよ。

あ、あと本作で2曲もピックアップされているSCALA & KOLACNY BROTHERSという存在。彼らはこのBRIDES OF LUCIFERの先輩的存在でもある、2000年代前半に90年代〜ゼロ年代のUKロックやグランジの代表曲をピアノ伴奏でカバーしたベルギーの少女合唱隊のこと。グループ名は指揮者&ピアノ伴奏者でもある中心人物となる兄弟の名前から取られています。このグループのオリジナル曲をカバーするあたりに、BRIDES OF LUCIFERの起源が見え隠れするのも興味深いところです。



▼BRIDES OF LUCIFER『BRIDES OF LUCIFER』
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2017年12月21日 (木)

SYSTEM OF A DOWN『STEAL THIS ALBUM!』(2002)

SYSTEM OF A DOWN(以下、SOAD)が2002年晩秋にリリースした、通算3作目のスタジオアルバム。初の全米No.1を獲得した前作『TOXICITY』(2001年)から1ヶ月ちょっとで発売されるという異例の自体で驚かされましたが、これにはしっかりした理由があるのです。

『TOXICITY』リリースから数ヶ月経った2002年初頭、同作のデモ音源がネット上に出回るというトラブルが生じました。これらは『TOXICITY II』と題し、『TOXICITY』本編に未収録の楽曲も含まれたファンいはヨダレものの内容でした。これにご立腹だったSOADメンバーは未発表の新曲16曲で構成された新作『STEAL THIS ALBUM!』(=本作)を正式リリースしたわけです。

録音時期自体は確かに『TOXICITY』と同時期のものばかりで、ある意味ではアウトテイク集とも受け取れるわけですが、そのクオリティはそんな冗談も言えないくらい高いもの。アルバムとしてのトータリティは若干希薄ですが、1曲1曲の完成度は『TOXICITY』収録曲に勝るとも劣らないものばかりです。

どこかシリアス度が高く感じられるのは、たまたまなんでしょうか。実際、歌詞は前作の流れにあるもので、当時のアメリカ社会や近代文化に対する批判が、彼らならではの皮肉とユーモアを交えて表現されています。サウンド含め、そこに「遊びが少ない」と感じる人もいるかもしれませんが、とはいえ本作はごまんといるSOADフォロワーなんて目じゃないくらいにレベルが高いアルバムなのは間違いありません。

どうしてもアルバムの構成・流れを意識して楽しむアルバムが多いイメージのSOADだけに、本作は肩ひじ張らず、リラックスして楽しめる1枚かもしれません(といって、別に脱力系アルバムという意味ではないですよ。上に書いたように、シリアステイストの楽曲が多いですし)。

本作のアートワーク、CD-Rにマジックでバンド名、アルバムタイトルを殴り書きという荒っぽいもので、実際にはCD盤面にこの文字がプリントされたものだけで、いわゆるブックレットは一切付いておりません(日本盤のみ独自解説&歌詞・対訳が掲載されたブックレット付き)。アルバムタイトル含め、このへんは先のブートレッグに対する彼らならではの皮肉なんでしょうね。

ちなみに、彼らが次のアルバム『MEZMERIZE』(2005年)をリリースするのは、本作の発表から3年半後のこと。『MEZMERIZE』も同時期にもう1枚、『HYPNOTIZE』(2005年)というアルバムを制作しており、『MEZMERIZE』発売から半年後にリリースしています。一回スタジオに入るとものすごい勢いで楽曲を完成させ、一度にアルバム2枚分ものマテリアルを生み出してしまう。彼らは2017年中にリリースされるのではと噂されている通算6枚目のアルバムを現在制作しているようですが(まだ希望を捨ててないですよ、あと10日残ってますし。笑)、もしかしたら次も6枚目、7枚目と間隔を空けずに発表してくれるのかもしれませんね(だと嬉しいな)。



▼SYSTEM OF A DOWN『STEAL THIS ALBUM!』
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2017年1月29日 (日)

SYSTEM OF A DOWN『TOXICITY』(2001)

「脳を犯す」

日本盤の帯に記されたこのキャッチコピーだけで十分に伝わるんじゃないでしょうか。そんなSYSTEM OF A DOWN(以下、SOAD)通算2枚目のスタジオアルバム『TOXICITY』は2001年晩夏にリリースされました。

1stアルバム『SYSTEM OF A DOWN』発売から約3年。この『TOXICITY』発売までの間に、SOADは1999年4月、2001年7月の二度来日公演を実施しています。このうち後者は『FUJI ROCK FESTIVAL '01』での来日で、3日目のGREEN STAGEでヘッドライナーのエミネム、準トリのTOOLに続く3番手というポジション。『TOXICITY』発売直前という絶妙なタイミングで、同作から早くも8曲も披露してくれました。僕もフルではないものの、途中から観てショックを受けたのを覚えています。

プロデューサーは前作から引き続きのリック・ルービンと、メンバーのダロン・マラキアン(G, Vo)。サージ・タンキアン(Vo, Key)もコ・プロデューサーとしてクレジットされています。内容は前作をより押し進めたもので、変態度、ハードコア度、そしてエモ度それぞれがメーターを振り切れんばかり。ただ、音が分厚くて暴力的な前作(デイヴ・サーディがミックス)より今作(アンディ・ウォレスがミックス)のほうがより洗練された印象があります。逆に洗練されたことにより、バンドの変態性がより際立ってきたという見方もできるので、これはこれでアリではないでしょうか。

オープニングの「Prison Song」の間を生かしたアンサンブル、激しさとエモさが同居したメロディに、冒頭から心を奪われます。そこから「Needles」を起点に始まるハードコアな流れも抜群だし、その合間に「Chop Suey!」や「ATWA」などの楽曲が挿入されることで、それぞれの魅力をより増幅させることに成功しています。アコースティックギターを導入することでより哀愁味が増した「Chop Suey!」、スローバラードの要素が強い「ATWA」はもちろんですが、ラストの「Aerials」が持つ壮大さも前作以上の広がりを見せていると思います。

本作最大のポイントは、ダロンがプロデューサーとして、そしてボーカリストとして実力を発揮し始めたことではないでしょうか。シンガーとしても活躍場所が前作から格段に増えてますし、今作の(よい意味での)整理された内容は彼の手腕によるものが大きいのではないかと。そして、その才能は2005年発売の二部作へと引き継がれることになります。



▼SYSTEM OF A DOWN『TOXICITY』
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2016年12月25日 (日)

SYSTEM OF A DOWN『SYSTEM OF A DOWN』(1998)

2017年、ついにニューアルバムをリリースか?と噂されるSYSTEM OF A DOWN。セルフタイトルとなる彼らの1stアルバムは今から約18年前の1998年6月(日本では同年10月)にリリースされました。

1998年というと、KORNが『FOLLOW THE LEADER』、マリリン・マンソンが『MECHANICAL ANIMALS』でそれぞれ全米1位を獲得し、AT THE DRIVE-INが『IN/CASINO/OUT』、THE OFFSPRINGが『AMERICANA』、ロブ・ゾンビが『HELLBILLY DELUXE』をそれぞれ発表し、マックス・カヴァレラ率いるSOULFLYが『SOULFLY』で、ZEBRAHEADが『WASTE OF MIND』でそれぞれデビュー(ZEBRAHEADはメジャーデビュー)を飾ったタイミング。REFUSEDの(この時点での)ラストアルバム『THE SHAPE OF PUNK TO COME』がリリースされたのもこの年でした。

そんな年にSYSTEM OF A DOWNもシーンに颯爽と登場したのですが、最初聴いたときは「??」というのが素直な感想でした。メタルなのかパンクなのかカテゴライズが難しく、どこかコミカルさが漂うサウンド。そこに乗るボーカルもヒステリックだったりデスメタル調だったり、あるいはオペラ調だったりと一筋縄でいかない感じだし。正直、最初は1、2回聴いただけで理解できず、しばらく放置していました。

その後、半年ぐらい経ってから(確か2000年前半頃)ふと思い立って聴いてみると、「あれ、これいいかも……」と感じるようになり、その後数回聴き返しているうちに「前半のコミカルな調子から、後半に進むにつれてシリアスになったり、ちょっと劇的になったりと、これはこれで面白いぞ?」と気づき。気がついたら、この掴みどころのない奇妙なサウンドの虜になっていたのでした。

このアルバム、そして続く2001年発売の2ndアルバム『TOXICITY』が当時のUSラウドシーン、そして日本国内のラウドシーンに与えた影響は計り知れないものがあります。2000年代前半以降に登場した数多くのバンドたちは、SYSTEM OF A DOWNから少なからず影響を受けているはずです。特定の名前はここでは挙げませんが、このアルバムを聴いてなんとなく思い浮かべる日本国内のバンドもちらほらいるのではないでしょうか。

カリフォルニア出身のバンドではあるものの、メンバーが皆アルメニア系アメリカ人ということも、その音楽性のルーツになっているのかもしれませんし、そういった生活環境が歌詞に与えた影響も大きいものがあるはずです。日本人がストレートに解釈するには難しい側面も多いですが、そのへんも含めて理解しようとすることで、このバンドの真の魅力が見えてくることでしょう。



▼SYSTEM OF A DOWN『SYSTEM OF A DOWN』
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2007年11月28日 (水)

SERJ TANKIAN『ELECT THE DEAD』(2007)

SYSTEM OF A DOWNを突然活動休止させ、フロントマンのサージ・タンキアンが完成させたのがこのソロアルバム。ほとんどの楽器を彼が担当し、ドラムのみSOADのジョン・ドルマイアンと、元PRIMUS(GUNS N'ROSESにもいたことがあったね)のブライアン・"ブレイン"・マンティアが叩いたという、まさにソロアルバムと呼ぶにふさわしい仕上がりとなっています。

SOADを好きだった人からすれば、このアルバムはとてもストレートに聞こえるかもしれません。それほど聴きやすくなっているんですよね……ま、普通のハードロック/ヘヴィロックと比較すれば、十分にねじれてますけど。SOADから変態性を希釈させ、いろんなコーティング(曲によってはピアノやストリングスの音も聞こえますよね?)を施して聴きやすくした印象を受けます。もっとも、その「聴きやすさ」は意図的にそうしたというよりも、本作に収録された楽曲に必要だと感じたからそうしたまでといったところでしょうか。

あのSOADの変態性って、結局はサージやジョン、ダロン・マラキアン(G/Vo)やシャヴォ・オダジアン(B)という4人が揃ってそこのものなんですよね。頭ではわかっていても、実際にこうやって出来上がったそるアルバムを聴いてみないと理解できないもんなんですよね、ファンというのは。

とにかく本作は、ちょっと映画を観てるかのような劇的な作品となっています。より正統派なメロディアス・ハードロックと化した曲もあれば、SOADのような複雑な展開を持つ楽曲もある。恐らく、これまで「SYSTEM OF A DOWNはちょっとわかりにくい」と感じていた人ほど、今回のアルバムにグッと引き寄せられるのかもしれませんね。

個人的には、不思議と「このアルバムをSOADでやったら面白いのに……」とは思わなかったんですよね。これはこれ、というふうに最初聴いたときから割り切れていたというか。この「ELECT THE DEAD」という作品集は、この形で完璧なんですよね。ここまでメランコリックなアルバムは、逆にSOADではやれないと思うし。そういう意味では、今回のソロ活動は正解だったんじゃないかと感じています。こうなると、(いつになるかはわからないけど)俄然SOADの次のアルバムが楽しみになってきますね。



▼SERJ TANKIAN『ELECT THE DEAD』
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2005年6月 8日 (水)

SYSTEM OF A DOWN『MEZMERIZE』(2005)

 全く、とんでもないアルバムを作ってくれたもんだ。

 現時点で、俺内2005年ベストアルバム。それがSYSTEM OF A DOWNの3rdアルバム「MEZMERIZE」‥‥とにかく、こんなにも爽快で熱くて笑っちゃって怒っちゃって考えちゃうアルバム、久し振りだ。コンパクトで聴きやすく、オープニングの "Soldier Side - Intro" からゆっくりとスタートし、その後に訪れる怒濤の展開からアッという間に最後のバラード "Lost In Hollywood" まで到達しちゃう。全11曲で40分前後というのも納得がいく、今時珍しいくらいに潔いアルバム。それでいて全然飽きさせないんだから‥‥1曲1曲が複雑に入り組んでいて、たった2分くらいの疾走チューンの中にもいろんな「味」や「要素」が詰め込まれてる‥‥元々その要素は十分にあったし、前作「TOXICITY」でもそれは既に開花してたんだけどね。ここに来て一気に完成型までたどり着いちゃったような、そんな感じ。それでいて、同時にもう1枚アルバムを作ってたんだから(この秋リリース予定と言われる「HYPNOTIZE」と呼ばれるアルバム)‥‥

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2004年10月30日 (土)

洋楽カレンダー事情

 さて。今年もあと2ヶ月ってことで、新年に向けていろいろ準備を始める人も多いんじゃないでしょうか。カレンダーもそのひとつですよね。わざわざ買う人もいれば、他所から貰ってきたもので済ます人もいる。人によってその重要度が全然違う一品ですが‥‥洋楽ファンにとってのカレンダーってどうなんでしょう? ビートルズくらい? いや、ブリトニー・スピアーズとかあの辺の女性シンガー系はあるんでしょうけど‥‥

 というわけで、海外制作の、日本からすれば「そんなアーティストのカレンダーなんかあるのかよ!?」みたいなものを幾つか紹介します。全部Amazonで買えるようになってますよー。


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2001年8月13日 (月)

「FUJI ROCK FESTIVAL '01」DAY 3@苗場スキー場(2001年7月29日)

◎BRAHMAN (at GREEN STAGE / 11:00~11:40)

  3年振りの最新作「A FORLORN HOPE」を引っ提げてのフジロック、しかも今回はグリーンステージだ。お約束の沖縄チックなSEに乗せてメンバーが続々とステージに現れる。最新作同様、1曲目は「For One's Life」からスタート。徐々に盛り上がるタイプの曲だが、すでにイントロから最前ブロックの客はヒートアップ気味。演奏がガツンとくるパートに入ると、モッシュ&だいぶの嵐。3日通したトップバッターの中で、一番殺伐とした空気が流れる。

  この曲の時点で気づいたのが、ボーカルのTOSHI-LOWの状態が芳しくないという事実。明らかに上のキーの音程が取れていない。音程が取れていて外すのと、完全に見失って外すのとでは明らかに違う。結局、終始辛そうな状態で40分を乗り切るのだった。

  新作から立て続けに、アルバムの曲順通りに5曲披露した後に前作から「See Off」や「Answer For…」といった人気曲を挟むものの、従来の切れやしなやかさを上手く表現できずにいる、もどかしそうなTOSHI-LOWを観るにつれ、こちらまで痛々しい気持ちになり、聴いてるのがつらくなる。彼らの最大の魅力である、独特なメロディーが全く伝えられない状況。そしてそれが全く伝わってこない状況。正直、途中でグリーンステージを後にしようかとも考えたくらいだ。ラストの「Arrival Time」での悲痛な叫びも何だか尻切れトンボの如くフェードアウトしていく。

  これが事実、これが現実だ。はっきり言う。この日のBRAHMANは最低だった。これはメンバー自身、特にTOSHI-LOW本人も認めるところだろう。これで「最高だった」と言い切ってしまうようだったら、いっそのこと解散してしまった方がいい。そのくらい、プロとしてはレベルの低いモノを、よりによってフジロックの大舞台で見せてしまったという失態。今後の彼らがこの現実とどう向き合っていくのか、そしてそれをあの場にいたファンがどう捉えるのか、非常に興味深い。最低なものは最低だったと言える勇気、そして正直さ。ファンならこれだけは決して忘れないでほしい。「やっぱサイコー」とかいう馴れ合いが、バンドを潰してしまうことだってあるのだから。


◎JOUJOUKA (at WHITE STAGE / 12:40~13:20)

  トランス系テクノのアーティストだという事しか知らなかった。一昨年、そして昨年もフジに出演してるそうだが、一昨年、観なかったなぁ。DJ Tsuyoshiが中心となっているユニットだが、ライブではどういう感じになるのか。

  ホワイトに着いた時点で、すでにステージは始まっていて、遠くからそのトランシーな音は聞こえてきていた。気持ち良さそう、それが第一印象。ようやくステージが見える位置までたどり着く。メンバー構成はDJ陣が2名、ギタリストがひとり、そして時々引っ込むベースがひとりの計4人編成。ギターは常時ステージ上で煽りまくっているので、どうやらベーシストはゲスト出演のようだ。基本的にはDJ陣がプレイするトランシーなサウンドの上に生楽器を重ねて、普通のトランステクノとしては終わらせない、魅せる要素も兼ね備えている。生楽器を被せるのは、どうやらDJ Tsuyoshiの信条らしく、とにかくギターのザクザクしたリフが気持ちよく、またベースもスラップまではいかないけど、バキバキしたサウンドでこれまた気持ちいい。ちょっと聴いた感じでは、UNDERWORLDにも通ずるロック感を見出すことができる。でも、歌がないぶん、こっちの方がよりダンスに徹することができる気もする。

  最初、軽い気持ちで観るはずが、結局終始気持ちよさげに踊り狂ってしまった。3日間の疲労が相当足にきてるにも関わらず、アホみたいに踊る俺を見て、友人に心配される始末。結局踊ってるうちに調子が戻ってきて、疲れなんて吹っ飛んでしまった。

  最後にはホワイトステージの総合MCであるブライアン・バートン・ルイスがボーカル&MCとして、即興で歌う。やっぱり歌が入ったほうが、それなりに盛り上がるけど、個人的には最後のは蛇足って気もしないでもない。このユニットは2人のDJ陣のプレイと、そこに被さるギター(時にベース)、そこから生み出されるトランシーで腰にクるテクノサウンド、それだけで十分だ。


◎SION (at FIELD OF HEAVEN / 13:20~14:20)

  SIONは、俺が知ってるあの頃のSIONのままだった。選曲的には、きっと先頃リリースされた最新作が中心になってるんだろうけど、俺の心臓が鷲掴みされたのは、名曲「Sorry Baby」。酔っていたせいもあるだろうけど、炎天下の中、ただステージ一点を見つめる俺。言葉のひとつひとつを噛みしめながら、一緒に歌う。このフジロックってフェスは、自分の現在・過去・未来を見つめ直すイベントなのか?って思えるくらいに、心にズシンとくる瞬間が非常に多かった。特に今回、30を目前としていただけに、そういう過去の想い出が走馬燈のように蘇ることが多かった。音楽で振り返る30年……人に自慢できるような大したモノじゃないけど、俺にとってはかけがえのない大切なもの。改めて音楽っていいな、歌っていいなと思った瞬間だった。

  気づけばラストの頃は前まで行って一緒に歌ってたっけ。よく知りもしない歌に合わせて。それだけのパワーを持っているのが音楽であって、歌である。きっと帰宅後もSIONの音楽に再び触れる機会はないのかもしれないが、それでも今この一瞬を大切にしたい。そう思って、力一杯踊った。このSIONのステージは、ちょっと俺の中では大切なものとなりそうだ。


◎SYSTEM OF A DOWN (at GREEN STAGE / 17:10~18:10)

  正直に言う。FOHのムーンライダーズを観るために、冒頭の数曲のみで移動してしまった。あとになって「なんで最後まで観なかったんだよ!」っていまだに後悔しているアクトのひとつ。

  今でもよく覚えているのは、始まる直前の場の異様な空気。あの瞬間の「別に人がそこまでパンパンではないんだけど、なぜか急に暴動が起こるんじゃないか?」と勘違いしてしまいそうなヒリヒリした空気だけは忘れられない。そしてステージに出てきた4人。すでに2人は半裸の状態だ。ダロンがギターを爪弾きながら、「ドラッグで病んでる?」「ドラッグやってる?」的変な日本語を交えつつ歌い、サージはそこにハーモニーを重ねていく。そこから「War?」へとなだれ込み一気に激しさを増す。すでに最前ブロックの盛り上がりは手に負えない状況だ。そこから数曲知らない曲が続くが、今思えばこの中には「TOXICITY」の1曲目「Prison Song」も含まれていた。イントロが異常にカッコよかったことだけは覚えており、のちにアルバムを聴いた瞬間に「あ、あの曲!」とすぐに気づいた……が、結局ノリきれずに途中で退散したのだった。


◎ムーンライダーズ (at FIELD OF HEAVEN / 17:20~18:30)

  この方々も活動歴が長い割に、実はちゃんと聴いてこなかったバンドのひとつ。とにかく、実験的要素満載にして極上のポップ。終始あっけに取られっぱなし。白井氏のギターは相変わらず変だし(ギターのブリッジ周辺にサンプラーをそのまま打ち付けてるし、しかもストラップの前後にギターのネックとボディーがそのままくくり付けてあるし)、鈴木慶一氏は終始クール。曲によってメインボーカルが変わるのだけど、基本的には慶一氏。あれは作曲者がリードを取るのだろうか。逆にキーボードとドラムの方々はコーラスに加わったり加わらなかったりで、演奏に徹していただけ。そこが職人っぽくて素敵だったけど。

  ちょっとトッド・ラングレンを彷彿とさせるくらい、楽曲のバラエティーが多彩で、なおかつそれらがすべてポップなのがすごい。コアなファンが多かったのか、周りの年齢層はやけに高かった。フジにも親子連れが多くなったようだね。最前列には初老の夫婦に小学生くらいの子供という親子がいたけど、前に押されることもなく、気持ちよさげにステージを楽しんでいたのが印象的だった。そうそう、3日目になってようやく、名物のトンボを多く見かけるようになった。マイクに止まったトンボを捕まえて、空に逃がす白井氏の姿も印象的だった。普段、進んで聴くことのないタイプの音楽だが、こういう場でならすんなりと聴けてしまう。しかもストーンと心の中に先入観なく入ってくるんだから、不思議だ。


◎TOOL (at GREEN STAGE / 19:10~20:30)

  一種異様ともいえる不穏な空気が流れる暗闇の中、照明やぐらの右隣に陣取りスタートするまで座って待つ。モッシュピットはすでに満員御礼、直前に演奏したSYSTEM OF A DOWNの熱気も冷めやらぬ状態で、みんな今にも暴れ出しそうな勢いだ。

  待望の初来日。俺は常々言ってきた。1998年の豊洲にKORNが初上陸した後、1999年にブレイク後の勢いのままLIMP BIZKITが苗場の地を踏んだ後。決まって「次はTOOLだな」と。もうTOOLしかないだろう、オーディエンスの度肝を抜かす存在は。その願いがいよいよ叶うときが来たのだ。しかも約5年振りの、全米ナンバー1アルバムを引っ提げて。

  ステージにメンバーが現れた。左にギターのアダム、右にベースのジャスティン……多分ね。照明がほとんど当たらない、非常に暗い状態の中で終始彼らはプレイしていたのだ。そして後方右側に、ドラムのダニーが陣取り、その左側には大型スクリーンとお立ち台のような一段高くなった舞台が‥‥そこに人影のようなものが常に動いている。そうこうしてるうちに、あのミステリアスなイントロが聞こえてくる。「The Grudge」だ。スクリーンには新作ジャケットをモチーフにした映像が終始流れている。歌がうっすらと聞こえてくる。しかしPAの調子が悪いのか、いまいち聞き取り難い。そして明るくなったスクリーンの前には、明らかに人影が。そう、そのお立ち台で怪しいダンスをしているのが、ボーカルのメイナードなのだ。ほとんど全裸に近い状態(パンツ一丁で、全身青塗り)で曲の起伏に合わせてユラユラと踊る、殆ど姿や表情は確認できないが明らかに存在感、カリスマ的オーラを感じることができる。

  噂には聞いていたが、これは衝撃的だ。流される映像も曲をイメージさせるというよりも、エログロに近いもので、PVが存在するシングル曲に関してはそれをモチーフにして再編集されているようだった。登場した時点で湧いていたモッシュピットも、気づけばみんな棒立ちでステージを見つめる者が続出。ノれないのではない、動けないのだ、この音とこの映像とあのバンドから発せられるオーラを前にしたら。背筋がゾッとしたのは、何も気温のせいではない。こんばバンド、今まで見たことがない。何なんだよ、こいつら。

  続く2曲目は、前作のトップナンバー「Stinkfist」の登場だ。さすがにオーディエンスがさっき以上の歓声で応える。しかし、それも最初だけ。曲が進むにつれて、やはり身動きがとれなくなってしまう。衝撃的なんて言葉、簡単には使いたくなかったのだが、それ以上もそれ以下でもない、本当の衝撃なのだ。こんなもん、見たことないんだから他の何ものとも比べようがない。唯一、映像を駆使するという点では、NINE INCH NAILSと比較することができるのかもしれないが、あれとはまったくの別物だ。

  それにしても、3曲目までボーカルが聞き取りにくかったなぁ。新作からの「Schism」あたりから、ようやくボーカルもクリアに聞こえるようになった。演奏に関しては、もう完璧すぎて何も言うことなし。確かにミスする場面もあったものの、そんなことが気にならないほど、アルバムと寸分違わぬ緻密で計算され尽くされた演奏を披露する。さらに、そこに乗るメイナードのボーカルも、時に力強く、時に潤いを感じさせる。決して「暗黒大将軍」ってわけではなく、あのボーカルとあの演奏が融合するからこそ生まれる浮遊感、それがさらにこの苗場という環境にマッチしていた。ギターのザクザク感はヘヴィロックのそれに近いのだが、パーカッシヴなドラム、時にリード楽器にもなりうるベース。4人それぞれの自己主張がぶつかり合いながらも、互いの持ち味を引き出そうと機能している。計算なのか、単なる偶発的事故なのか。終始握りしめていた拳に、ジワリと嫌な汗をかく。

  終盤はファーストからの「Sober」やセカンドの「Aenema」を交えながら、新作からのムーディで濃い楽曲群を我々に叩きつける。途中、メイナードが曲間に何かしゃべった。一瞬の出来事で聞き逃しそうだった。英語だと思ったのだが、二度目にようやく聞き取れ、理解できた。


「ポジティヴなものを生み出す、その気持ちを忘れるな。」


こんなことを第一声で発した来日アーティスト、これまでいただろうか? この一言にメイナードの、TOOLというバンドの揺るぎない姿勢を垣間見た気がした。「ニホンノミナサン、コンニチワ」でもなければ「アナタワ、ウツクシイ」でもない。「ココニコレテ、トテモウレシイ」といった社交辞令の挨拶ではない。オーディエンスとバンドの間に明確な信頼関係が、この一言で生まれたと思う。

  難解且つホラー映画と言っても過言ではない映像と、ステージ上が薄暗くてほとんど表情を伺うことができないバンドの演奏から、言い表しようのない威圧感が終始あったが、このメイナードの一言は、そしてそれを日本語で発したという事実は、そういう他の表現要素よりも深く、俺の心の中にえぐり込まれた。一生忘れない、忘れられない初来日公演となりそうだ。


01. The Grudge
02. Stinkfist
03. 46 & 2
04. Schism
05. Disposition
06. Reflection
07. Sober
08. Parabola
09. Aenema
10. Lateralus


◎EMINEM featuring D12 (at GREEN STAGE / 21:30~23:00)

  例の前妻に対する暴力沙汰の裁判、来日直前に審判が下り、その結果外国へも行くことができるようになったEMINEM。オーストラリアを回った後の来日ということもあり、きっと調子も昇り調子のはずだ。一体どんなステージを見せてくれるのだろう。TOOL同様、まったく予想がつかない展開になりそうだ。

  21時半を回った頃に、ステージ上手にDJらしき人物が現れるも、そのままの状態が10分程続く。すると急にステージが暗くなり、スクリーンに何か映像が流れ始める。ドキュメンタリー形式のドラマみたいだ。どうやらハンディーカメラを持って、EMINEM宅へ忍び込む青年2人組の話のようだ。カメラを持ったひとりが、もう一方にインタビュー形式で話しかける。あれっ、どこかで観た光景……次の場面で、EMINEM宅らしき家に忍び込んだ2人。ひとりが地下の方へと向かう。カメラを持ったもう一方が壁を映す。そこには「MY NAME IS...」「SLIM SHADY」「MARSHALL MATHERS」等といった文字がずらずらと書き殴られていた。あぁ、なるほど。先頃公開された2作目がコケた、例の低予算ホラー映画のパロディーなわけね。すると、例のごとく地下室から悲鳴が……カメラは走りながら地下室へと近づく。悲鳴を上げた若者をカメラが捕らえた瞬間、目の前にはチェーンソーを持ったジェイソン・マスクの男が……。

  フィルムがそこで終わると、ステージ上からチェーンソーの音が。ステージ上手からフィルム同様のジェイソン・マスクの男がチェーンソーを持って現れる。どこからどう観てもEMINEMだ。こりゃ面白い。ここまで馬鹿馬鹿しくやってくれると、逆に気持ちいい。

  ヒップホップ系のステージっていうと、個人的には昔観たRUN DMC初来日のイメージがあったので、どうしても中弛みしそうな感じがあったのだが、ことEMINEMに関してはそんな心配皆無だった。まず曲がポップだし、オーディエンスに対してコール&レスポンスを求め、一体感を大事にしている。確かにMCがネイティヴ・イングリッシュ(しかもバリバリのスラング入り)だったため、何度か理解に苦しむ場面に遭遇したが、それを補うだけのエンタテインメントが満載だった。

  曲毎に現れるD12の面々や、同じグリーンステージに登場したXZIBITのメンバー。日本酒やエクスタシーを持ってきたり、「PURPLE RAIN」で踊るエクスタシー錠剤の着ぐるみ(背中に「E」の文字が)、中盤再びスクリーンに映し出されたアニメ「THE SLIM SHADY SHOW」、「日本のオーディエンスに『俺の名前は何?(MY NAME IS)』か言わせるんだ」とEMINEMがDJに言うと、わざとヒット曲「My Name Is…」のイントロを流す等の寸劇、そしてパイロ。これだけ馬鹿馬鹿しい要素を含んだショー、今まで観たことないわ。ある意味、俺の中では「ZOO TV」ツアーでのU2を超えたんじゃないかな。

  そして、笑いだけではない。ちゃんとオーディエンスに合いの手を求めたり、一緒に歌ってくれといって流れ出す「Stan」のあのフレーズ。どれを取っても笑顔と感動の瞬間だった。これはもう、言葉で言い表すよりも一度は観てほしい。終始笑いっぱなしで、90分が短いと感じるほど充実した内容だった。

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